まだ「無意識に」かもしれないが、あなたはドライバーの重心位置(CG)が気になり始めているはずだ。
重心位置は、ドライバーの性能に大きく関係する。アベレージゴルファーには、「重心位置とは何か」「なぜ重要か」はよくわからないかもしれないが、ドライバーをリリースするメーカーが重心位置を重視し議論するのには理由がある。適切な重量配分によって設定された重心位置は、「高打ち出し」「低スピン」「非常にやさしい」「より良い性能の」ドライバーの条件だからだ。
現在のドライバーの重心位置は、「後方下部」がトレンドだ(以前は「前方下部」も少し流行ったが)。コブラがZero CGを、キャロウェイがSub Zeroを出すなど、あらゆるメーカーが手を変え品を変え、差別化を図ろうと努力を重ねている。
最初の問題に戻るが、重心位置とは何か。その重要性とは何か。また誰がその正解を教えてくれるのだろうか。これらが今回明らかにする内容だ。
それでは、今シーズン最も注目されたドライバーの「実際の重心位置」に関する真実をお伝えしよう。この記事を読み終わる頃には、なぜ重心位置が重要なのか理解しているはずだ。
初めて見る重心位置のチャートは少し難しいかもしれないが、詳しく解説するのでぜひ読み進めてもらいたい。
事前説明
チャートに移る前に、ドライバーヘッドはUSGA規定に基づき計測されるが、それに際して(計測と製造それぞれの)許容誤差が適用されることをまず理解する必要がある。我々の測定における許容誤差は、約0.7mmだ。これを考慮に入れ、点ではなく大き目のドットを使ってチャート上に重心位置を表した。
ドライバーの重心位置を公表しているメーカーは、ほとんどがCADデザイン上での測定を基本としている。製造や組み立て、溶接、研磨などを経た商品はCADデザインと完全に一致するとは限らないため、我々のデータは実際に販売されている商品(ドライバー)を計測したものだ。
ドットがチャートのどこに位置しているか、また互いの位置関係を確認することで、特定のヘッド同士が似た(あるいは異なる)性能を持っていることがわかる。
最後に、チャート上のすべてのドットは、最大でも14mm☓12mmという非常に小さい範囲に存在していることを伝えておこう。
チャートを読む
以下のチャートを作成するにあたり、我々は2018年モデルのドライバーを選定した。ピンG400シリーズ、PXG 0811xは発売が比較的最近なので対象とした。なお下記の考察は、2018年モデルに特化している。
では、早速データを紹介しよう。
フェースの中心と重心位置の関係(CG YZ)
下のチャートの縦軸は重心の高さがフェースの中心からどのくらい離れているか、横軸はフェース面から見た重心の深さを表している。チャートはヘッドの14mm☓12mmの範囲を表している。これらの測定値は、中立軸との関係やロフトを考慮していない。基本的に、このチャートが示すのは各ドライバーの実際の重心位置である。
考察
・テーラーメイドM3とM3 440は、重心位置が動く範囲が広い。
・コブラ、ミズノ、キャロウェイは可動式ウェイトがしっかり機能している。一方、PXGは豊富なスクリューウェイトがあるにもかかわらず、実際の調節能力は小さい範囲に留まっている。
・2018年モデルのドライバーで最も重心位置が低かったのは、キャロウェイRogue Sub Zero(前重心に設定)。
・今年は、どのメーカーも重心の高さを大幅に変える調節機能は採用していない。
・テーラーメイドM4、M4 D-Type、ベガ RAD-04、ツアーエッジH3は比較的高い重心位置が特徴。
・ピンG400 MAXの重心位置が最も後方にあり、ウィルソンC300が最も前方にあった。
中立軸とMOIに対する重心位置
上のイラストから分かるように、中立軸とはロフトのあるドライバーのフェースの中心からヘッド後方に延ばした垂線のことだ。質問される前に、なぜこれが重要なのかお教えしよう。
端的に言えば、重心位置が中立軸に近いほど「ねじれ」が小さくなり、クラブからボールへより効率的にエネルギーが移動する。他のチャートと同様に、重心位置から中立軸までの距離(略してCG NA)をミリメートルで計測する。これらの数値が、重要な指標になる。
多くのゴルフメーカーが、「速い」とか「やさしい」といった表現を使って広告宣伝を行う。気づいていないかもしれないが、これらは重心位置と中立軸に関係している。
ボールがフェースの中心に当たると仮定すると、インパクト時のねじれを減らし、ストローク効率を最大限まで上げるためには、重心位置が中立軸に近いことが条件となる。やさしさに関しては、MOI(下に表示)が高くなければならない。あなたがどんな宣伝文句を信じていようが、「本当に速い」かつ「本当にやさしい」という組み合わせを実現するのは最も難しいのだ。
注意:基本的にデータとスケールが異なるため、このチャートは上記のCG YZチャートとは比較できない。
CG NAとMOIの関係
縦軸は中立軸と重心の距離、横軸はMOI(数値が大きいほどやさしい)を表している。
考察
・2018年モデルで中立軸より下に重心があったのは、キャロウェイRogue Sub Zero(前重心に設定)だけだった。
・次に重心が低いのは、PXG 0811X。
・テーラーメイドM3とM3 440(前重心に設定)の両方が、低重心・前重心設計だと判断できる。
・MOIに関して、ピンG400 MAXだけが別格だ。測定していないが、聞くところによるとPXG 0811XFもこれに近い。キャロウェイRogue、テーラーメイドM4、ピンG400も「やさしい」クラブとされているが、G400 MAXには及ばない。
・2018年モデルで重心位置(中立軸に対して)が最も高かったのは、テーラーメイド M4 D-Typeだった。一般的に、この類のドライバーは一部のゴルファーにしか適さない。
・他のピンG400のラインナップと比較して、G400 SFTのMOIが低いことに注目したい。SFTやRogue Draw、M4 D-Typeは弾道を修正してくれるが(多くはドローバイアス)、これには必ずMOIという代償がついてくる。
ヒール/トゥ方向の重心位置(CG XY)
このチャートのデータは興味深いのだが、分類に関しては注意書きが必要だ。CG XYの測定は単純ではない。
例えば、似たような重心位置を持つドライバーを探そうとしても、フェースの高さや形状、クラウンの湾曲、バルジ・ロールなどすべてが異なる。CG XYにおける類似性を探ろうとすると、各クラブが持つ設計要素によって異なる結果が出てしまいかねない。そのため、このチャートはドロー/フェードバイアスと同様、クラブのX軸に沿った重心位置(CG)の動きを示すが、CG NAとMOIチャートのほうが性能を比較する上ではより役に立つはずだ。
注意:縦軸は重心の高さがフェースの中心からどのくらい離れているか、横軸はフェースのヒール/トゥ方向のどの位置に重心があるかを表している。向かって左側がトゥ側だ。中心より右側にあるドットはドローバイアス、左側はフェードバイアスを表す。
考察
・全体的に、前年以前に比べて2018年はフェードバイアスのモデルが多い。
・最もドローバイアス(ヒールウェイティング)なのがRogue Draw。M4 D-Typeとミズノ GT180(ドロー設定を最大にした場合)、ブリヂストンTour XD-5もかなりドローバイアスといえる。
・フェードバイアスのドライバーなら、テーラーメイドM3、ピンG400 LST、コブラF8+、そして意外かもしれないがピン G400 MAXを検討するといいだろう。
・ドロー/フェードを変えられるモデルなら、テーラーメイド M3/M3 440、PXG 0811X、ミズノ GT180を勧める。
結局、ベストな重心位置は?
ゴルファー全員に合う、特定の重心位置は存在しない。また、一部のクラブはニッチ向けに設計されており、大多数のゴルファーには合わない場合もあるし、そもそも重心位置に正解も不正解もない。メーカーには、各々の哲学や設計・製造能力がある。それは、自分に最適なクラブが見つかる可能性が増えるという意味で、とてもありがたい話なのだ。
結局のところ、ベルカーブの中央付近(ボリュームゾーン)にいるゴルファーが、高MOIや低~中重心のドライバーにたどり着くのだろう。
ボールをもっと高く上げる必要のあるヘッドスピードが遅いゴルファーは、高/深重心設計との相性がいい。スピンを減らしたいゴルファー(特にボールを叩きに行くタイプのゴルファー)は、たとえやさしさを犠牲にしても、低/前重心のドライバーを使うことで良い結果が得られるかもしれない。
また、フェース上部でボールを打つ傾向のあるゴルファーは、重心位置が高めのドライバーがいいだろう。反対に、フェース下部で打つ癖があるゴルファーは、低重心ドライバーのメリットを得やすいはずだ。
繰り返しになるが、ゴルフの世界で「絶対」は存在しない。ただし自分に適した重心位置を明らかにすることで数あるドライバーから絞り込み、自分がその性能を最大限に引き出せるクラブを購入することができるだろう。
あなたの宿題
読者の皆さんには、ぜひ自分で実験を行ってもらいたい。
今回のチャートにあるモデルを4つのグループに分けてみよう。もしやる気があるなら、6つに分けてもいい。そして、同じグループ内にあるクラブを比較し、どのクラブが似た性能を示すか、また違うグループのモデル間の相違点を確認してみることをお勧めする。さらにどのグループのドライバーが、別のグループのものより自分に合っているか、ぜひ確認してもらいたい。
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