4か月の限定販売を経て、AVXボールが全米中の販売店で購入可能になるという。

MyGolfspyはAVXの発売当初に記事を掲載したが、その時の私の見解は少し偏っていたかもしれない。当時の記事をぜひ読み返していただきたい。

今回はAVXの知識がなく、概要だけをかいつまんで知りたい人のために、私の知っている事実を簡単に説明する。ほとんどはタイトリストのゴルフボールの宣伝で、耳慣れたフレーズである。

AVXは、タイトリストのツアー/プレミアムボールの最新作だ。ProV1シリーズ以外のカテゴリ―では、初のモダンボールである。この新モデルのリリースがラインナップのニーズを満たし、フィッティングオプションも増加するだろう。

補足しておくと、ゴルフボールにもフィッティングは重要である。違いが分からないという人もいるだろうが、考え直したほうがいい。

AVXは、タイトリストのツアーボールの中で最も軟らかい。

飛びの素晴らしさは、タイトリストが「高速かつ低圧縮」と称するコアによるものだ。(聞き覚えがあるだろうか?)

グリーン周りのコントロール性能が、「GRN41」と呼ばれる独自の熱硬化性ウレタンエラストマーカバー技術によって向上された。

カテナリーディンプルパターンによって、Pro V1 や Pro V1xより低い弾道の安定した飛びを実現する。

色の選択肢にはイエローもあり、これはタイトリストのプレミアムボールでは初めてである。

わずか47.99ドルで、これらすべての特長を備えたボールを手に入れることができる。

コストコの3層カークランドシグネチャーほど安価ではないが、グラフェン素材でないことを除けば、2018年に発売されたキャロウェイのクロムソフトといい勝負だ。クロムソフトには確固たる支持者がいる一方で、一部のゴルファー層には価値が問題視された。価格を上げ、新素材で強度をアップしたからだ。利益率を上げるために競争優位性を犠牲にしたのである。これによりAVXにもチャンスが広がるかもしれない。

あくまで私の予想だが、消費者が新しいクロムソフトの価格を気に入らなければ、タイトリストにとってこれ以上ありがたいことはない。少なくとも、彼らにとっては喜ばしい話だ。

AVXの挑戦

AVXは、タイトリストにとってはテストケースであった。未知数の要因が多く、失敗して会社に悪影響を及ぼすリスクもあった。しかし、よほどひどい結果に終わらないかぎり、AVXは主流商品になると多くの人が想定していた。

MyGoflSpyで以前に掲載した記事(読んでいただけただろうか)に、AVX と Pro V1 /Pro V1xの位置づけに関する質問があった。

想定されるAVXの購入者は誰だろう。Pro V1 や Pro V1xを購入するゴルファーと同じなのか。もしPro V1の購入者層を狙って売り上げを伸ばすのなら、それは成功とは呼べない。

競合ブランドはどうだろう。タイトリストは、失ったマーケットシェアをAVXで取り戻すことができるだろうか。

高性能の代名詞のようなブランドを確立するために努力してきたブランドは、「打感」が売り物の商品で、どうすれば成功を収められるだろう。

もしあなたがタイトリストだったら、Pro V1に勝るとも劣らない他のボールに対して、どのような販売戦略をとるだろうか。

タイトリストも同じ疑問に直面したに違いない。だからこそ、AVXを3つの州での限定販売からスタートさせ、ボールの箱にアンケートを同封して回答を促したのだ。そして使用後の感想を確認するため、フォローアップのアンケートも実施した。

アンケートの結果、AVXを購入したきっかけは、予想通り「好奇心」からであった。ボールマーケットを主導するタイトリストが、全く新しいソフトなプレミアムボールを発売したというだけで、十分な購入理由になった。長年タイトリストのボールを避けてきた私でさえも、興味がある。

重要なのは、その売り上げがどこから来ているかである。通常の新製品ボールの場合よりも、かなり多い割合の購入者が、以前には他のブランドのボールを使用していたという。アンケートでは、多くのゴルファーがAVXを再購入すると答えている。アンケート結果が実際の売り上げに反映するとは限らないし、限定販売した地域での成功が、より大きな市場でも通用する保証もない。だが少なくともAVXには、タイトリストが他の2つのプレミアムボールで逃していた市場での需要を満たす可能性があることを示唆している。

成功の可能性は十分だ。

アンケート結果は、タイトリストがクロムソフトや他のブランドに奪われたボール市場を、AVXによって取り戻せるという楽観的な希望を与えた。

打感 VS パフォーマンス

これまでにも述べたが、ゴルフボールのトレンドは、「より柔らかいボール」にシフトしている。クロムソフトやDuo、Project (a)などがいい例だ。これらの製品は、より高い圧縮のボールより性能が優れているわけではない。しかしゴルファーの中には、パフォーマンスよりもソフトな打感を優先する人もいる。

いずれにしても大差はないと思っているかもしれないが、打感は快適なほうがいいではないか。理由はどうであれ、ロジックは理解できる。

ソフトな打感を求めてAVXを購入するゴルファーがいることは確かだが、タイトリストがこれまでパフォーマンスを重視してきたことを考えれば、矛盾しているとも言える。しかしタイトリストは、AVXには購入を検討する理由があることを、消費者に知ってもらいたいと願っている。

タイトリストは、Pro V1が多くのゴルファーにとって最高のパフォーマンスを発揮するボールだと考えている。シャフトの説明から言葉を借りれば、AVXはプレミアムボールに比べて、平均的な打ち出し、平均的なスピンが特徴の「平均的」なボールである。

一方、Pro V1xは高い打ち出しと高スピンが特長だ。遠くまで伸びたベルカーブを想像してほしい。

AVXの描くベルカーブはそれほど遠くまで伸びない。タイトリストによれば、グリーン周りでのスピンは低くないが、(前出のGRN41技術による)Pro  V1 や Pro V1xと比べれば打ち出しが低く、低スピンである。

AVXに向いているのは、スピンには問題がなく、高さを抑えたいゴルファーだ。AVX と Pro V1  / Pro V1xの主な違いは、ミドル~ロングアイアンで顕著に表れる。AVXに向いているゴルファーにとっては、グリーンを捉えながらも低スピンによって距離を伸ばすことが可能なのだ。

AVXを試した結果に満足し、愛用し始めるゴルファーがいる反面、自分には合わないとしてPro  V1や、これまで使っていたブランドに戻るゴルファーもいる。

これで3つのプレミアム/ツアーボールを含む、最新のマトリクスが出来上がった。フィッティングで注目すべきポイントは、ヘッドスピードではない。「打ち出し」と「スピン」と「パフォーマンスを最適化する力」である。

AVXとボール戦争

タイトリストがAVXを完全リリースしたことで、キャロウェイが仕掛けたボール戦争に勢いが増すのではないだろうか。タイトリストはアイオノマーカバーのTour Softをリリースした際に、キャロウェイのウレタンカバーのクロムソフトよりも優れていると主張した。

キャロウェイは、その広告に対して宣戦布告したという経緯がある。次はどのような作戦に出るだろう。AVXは、クロムソフトよりはるかに優れているというタイトリストの主張から想像するに、どうやら激戦になりそうだ。

クロムソフトには一定のファンもいるし、確かに優れたボールだ。しかし、たとえグラフェンが高価な素材でも、5ドルの値上げに値するかは疑問だという声も上がっている。

(ちなみに以前のボールは値上げ前の価格で購入可能)この点を考慮して、タイトリストのAVXは40ドル以下の価格設定にする向きもあったが、プレミアムの価格帯を維持する決定を下した。これによりAVXの魅力が減少する可能性がある。

40ドルという価格は、多くのゴルファーにとっては境界線のようだ。この価格帯は、キャロウェイやSnellのような直販型のブランドが成功を収めた理由の1つだ。

消費者が高価格を敬遠するのは言うまでもないが、タイトリストはプレミアムボールの平均的な販売価格を、1ダース40ドル以上に設定することに自信を持っている。他社にはなかなかできないことだ。それが可能なのは、テーラーメードぐらいであろう。

タイトリストの挑戦は、Pro V1以外でツアーレベルのボールを求める一般のゴルファーを誘い込むことだ。そのためには、ボールフィッティングの重要性を知らしめなければならない。だが、25ドル以下でコストコの3層ウレタンカバーボールが2ダース買えることを考えれば、容易なことではない。

ボール市場は過去2年で大きく変化した。タイトリストの第3のプレミアム価格ボールが、たとえソフトな打感だったとしても、市場に受け入れられない可能性も残っている。

タイトリストAVXゴルフボールは、全米の小売店で購入可能になった。他の地域については、2018年後半に販売を予定している。希望小売価格は1ダース47.99ドル。

もしAVXを試したら、その感想をぜひ聞かせてほしい。