https://youtu.be/cztCDOwDQRE

ゴルフ用品メーカーの研究開発部やマーケティング部の優秀な人たちと多くの時間を共にすれば、業界のほとんどの情報が手に入る。「貴重な発見」と「単なる戯言」の境界線は曖昧だが、私は彼らとの交流の中で2つの違いを理解できた(少なくとも、できたと思っていた)。

キャロウェイのエピックフラッシュついて、私はPR資料を読み込み、キャロウェイのアラン・ホックネル博士とかなりの時間をかけて話し合い、理論的に機能するかどうか検証もした。

あらゆる角度から考えてみたが、キャロウェイの最新テクノロジーは、私がこれまでに見聞きした技術とはまったく違うものだった。私がこれを信じるかどうかはまだわからないが、少なくとも致命的な欠点は見当たらない。

Callaway EpicFlash Driver

もしフラッシュフェース(世界を変えるキャロウェイの最新の技術)が本当に機能するなら、実に画期的なことだ。

今後のゴルフクラブの設計を根本的に変える可能性がある。ゴルフ用品業界にとって、必要なものと不要なものが明らかになり、小売と技術両方のリーダーとしてのキャロウェイの地位が確立するだろう。

もしそれが、実際のパフォーマンスにはあまり関係がないと証明されても、少なくとも売上には貢献するだろう。たとえそれが「ブレイクスルー」ではなくても問題はない。キャロウェイにとってマイナス要因にはならないからだ。

 

フラッシュフェースの原点

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ほとんどのドライバーと同じく、フラッシュフェースの開発の原点はボールスピードの追求だった。キャロウェイはジェイルブレイクの利点をフェース設計に応用しようと考えた。

「我々は、規制に準拠しながらさらにボールスピードを上げるために、ジェイルブレイクの効果を高められるか確かめたかった」(アラン・ホックネル博士)

そのためには、それまでキャロウェイがあまり成功していなかったフェースを見直す必要があった。キャロウェイの過去モデルのフェーステクノロジーを振り返ってみると、すべて未知の技術を特徴としていた。

しかし、フェース厚を部分によって変える技術は、業界では一般的だ。通常、ドラーバーのフェースは中心部分が最も厚く、周囲にいくにつれて徐々に薄くなっている。厚みを変えるパターンに多少の違いはあるものの、基本的な考え方はすべて同じだ。

「我々は、独自の開発技術の知識を使って問題への取り組みを続けている」とアラン・ホックネル博士は言う。

フェース技術に関して言えば、これまでキャロウェイは「奇行」を繰り返してきたかもしれない。そして皮肉なことに、彼らはそのサイクルを打破するために、今回は少し「クレイジー」なことを試したようだ。

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AIと機械学習

人工知能と機械学習が進歩する中、キャロウェイのエンジニアはコンピューターがドライバーのフェース設計を学習できるのだろうかと思った。もし可能だとしても、果たして機械に人間よりも優れた設計ができるのだろうか、と。

コンピューターは、人間よりも早く学び、より速く反復し、そして開発で起こりやすい「堂々巡り」を避けることができるだろうか。これらは調べる価値があった。

「FEA(有限要素解析)と衝突時に何が起こるかについての知識を与え、人工知能ソフトウェアを追加してコンピューターに判断させ、その判断を時間をかけて繰り返し改良していく。必要とする学習を得れば、AIは人間より優れたフェース設計ができるか?その答えはイエスだ」(アラン・ホックネル博士)

フラッシュフェースを実現する前に、キャロウェイはフェースに必要な優先事項のリストをコンピューターにインプットする必要があった。

・センターヒット時の最高ボールスピード

・USGA準拠のCT値

・フェース割れを避けるための適正なストレス値

・オフセンターヒット時でも、できるだけボールスピードを上げる

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ホックネル博士によると、彼のチームに確信はなかったが、ボールスピードの予測精度が従来の設計よりも高かったため、いくつか試作品を造ってみることにした。

新設計に意味があるようには見えなかったが、数値は正確であることが証明された。

「かなり変わった外観で、厚い部分と薄い部分がそれぞれたくさんあった。フェースの中心部分が最も薄く、厚い部分と薄い部分が隣接しており、こぶやくぼみがランダムに点在していた。初めて見たとき、それぞれの部分が全体的なパフォーマンスにどう役立つのか理解できなかったし、それをどう扱って改善すべきか見当もつかなかった」(アラン・ホックネル博士)

開発チームは追加で試作品をいくつか造った。それによって、フェースの機能がどのようにパフォーマンスに貢献しているのかを学ぶことができた。「そのプロセスにより、我々は新しい局面を切り開いたと確信した」とホックネル博士は語る。

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コンピューターが設計を検証し理解を深めるためには、研究から設計までのアイデアを学習させなければならず、キャロウェイは高速コンピューターが必要になった。

その高速コンピューターは、それまで4~5週間かかっていた検証を2~3日で終えるまでに短縮した。一般的なノートパソコンだと、1つの設計を検証するのに約34年間かかる。「どう考えても人間にできることではない」とホックネル博士は語る。

コンピューターは、フラッシュフェースの最終バージョンにたどり着くまでに、実に15,000回以上の検証を繰り返した。

これが栄光の舞台裏だが、実際フラッシュフェースにはどんな利点があるのだろう。キャロウェイは、「オフセンターヒットを除き、ボールスピードが平均0.67〜0.89m/s上がる。エピックフラッシュはあなたの最高のショットをさらに良くし、飛距離を伸ばす。」という。

ボールスピードを64.8m/sとして、平均的なコンディションを想定して試算してみたところ、追加のキャリーは4~5ヤードになる。往年の「プラス10ヤード」の神話には足りないが、毎年少しずつ伸びている飛距離としては十分だろう。

もしこれが本当なら、大変なことになる。

キャロウェイの契約プロの中には、ボールスピードが1.79m/s上がった人もいたという。

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独自設計

特筆すべきは、モデルごとにフェース設計を変えている点だ。エピックフラッシュとエピックフラッシュサブゼロは似てはいるが、違いもあるため設計を変える必要があった。

意図的ではないにしろ、これは競合によるリバースエンジニアリングをある防ぐことにもなる。あなたがエピックフラッシュからフェースを取って、別のドライバーに取り付けたとしても、うまく機能しないだろう。

コンピューターは、フェースとボディーがどのように連携し、その関係をどのように最適化するかについて、哀れな人間よりもはるかに深く理解しているのだ。

 

アップデートされたクラウン素材

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今回キャロウェイは、ほんの少し細かく編みこまれたTC2と呼ばれる新しい三重炭素素材を使用している。重量に敏感な人には朗報だ。

クラウンの重量を減らすことで、エピックフラッシュサブゼロのスライディングトラックや低い部分など、重要な部分に重量を寄せることができる。

 

USGAの規制は大丈夫?

新技術で生まれたこのクラブがUSGAの規定に準拠している必要があるため、当然適合性の確認を依頼することになる。

これについてはつい先日もお伝えしているが、端的に言えば、多くの人が現行の規制が絶対だと信じているが、ドライバーの飛距離は限界には達していない。

キャロウェイの話が本当かどうかわからないが、私と話した研究開発部のほぼ全員が、新しい基準のCTと古い基準のCORの関係を切り離すことは可能だという。

CTがCORの代替として開発されたときからクラブ設計は進化している、というのが世間一般の見解だ。研究開発部員のほとんどが、CORの限界を超えつつCTを限界以下に抑えることは可能だと言っていた。

つまり、こういうことだ。ペンデュラム(振り子型の重り)をフェースに落とすCTテストと、44.7m/sを超えるスピードでボールと衝突したときのフェースの反応には大きな違いがあり、そこにルールの範囲に収めながらボールスピードを上げるチャンスがあるのだ。

USGAは測定方法をCORテストに戻すかもしれない。「ボールスピード戦争」が激しくなった場合はなおさらだ。しかし今のところは、周りが何と言おうとCTを239マイクロ秒近くに保つことに甘んじている。

ボールの性能が後退すれば、ドライバーによるボールスピードの向上は、あまり意味がなくなる。

 

2つのモデル

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今のところ、エピックフラッシュのモデルはスタンダードとサブゼロの2つだ。「スター」はアジア市場のみで発売される。今回は「ドローバージョン」はない。外周部の可動ウェイト(16g)が復活したため、スライス補正モデルは不要になったのだろう。

今回は、スタンダードとサブゼロの両方にウェイトトラックが設置されている。サブゼロのフロントウェイトポートはスイングウェイトの事情で残ったが、フロント/バック可動ウェイトシステムはなくなった。

キャロウェイによると、フロント/バックの調整機能はあまり活用されておらず、代わりにほとんどの人はホーゼルのロフト調整で打ち出し角とスピンを調整しているという。

同じロフト角で比較すると、2モデルのスピン量は約300 rpmの差がある。

アベレージゴルファーは弾道を補正するためにウェイトトラックを使うが、上級者(主にサブゼロを使うゴルファー)はウェイトでボールが最初に飛び出す方向を微調整し、好みに応じて弾道の最後の20%を調整してボールをフェアウェイの少し左または右に落とすという考えだ。

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重量特性

キャロウェイは、エピックフラッシュの重量特性(特にMOIや重心位置)について明らかにしていない。MOI値が低いことは認めているが、それでも8,000あたりだという。

これはトラディショナルな形状と、重心が少し前方にあることに起因する。ジェイルブレイクとフラッシュフェースを持つエピックフラッシュは、平均的なドライバーよりもフェースが重いこともその理由の1つだ。

キャロウェイは、エピックフラッシュの「やさしさ」について包括的な見方をしている。純粋にMOIに焦点を当てるのではなく、Rogueよりもフラッシュのほうが安定性に優れていることを指摘している。

これは、ボールスピードの安定性が増したことと、前重心化によりフェース全体で安定したスピンが生成されるようになったことによるものだ。

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真実か否か

フラッシュフェースの「ストーリー」は素晴らしい。しかしその進歩が真実であっても、それがAI主導のフェース設計によるものと断定するのは難しい。

ボールスピードは他の要因で速くなっているのかもしれない。例えば重心を前に移動すれば、ほとんどの場合スピン量が減ってボールスピードは速くなり、飛距離は伸びるはずだ。

残念ながら、私にはすべてを説明することはできない。エピックフラッシュのドライバーが約45.5インチ(初代エピックとRogueはどちらも45.5インチとされているが実際には46インチ)であることを考えれば、本当にキャロウェイはこれまでにない方法を見つけたのかもしれない。

結論を言えば、エピックフラッシュが本当にやさしく、より速いボールスピードを生み出すクラブだとしたら、キャロウェイがそれをどうやって実現したかはあまり重要ではない。

エピックフラッシュが新しい分野を切り開いていくかどうかは、時が経てばわかるだろう。

業界ではよくあることだが、もしそれが真実で正しく機能する技術なら、資金に余裕のある他のメーカーも大型コンピューター、人工知能、機械学習を駆使して後に続くはずだ。もし真実でなければ、これまでのやり方が続くことになる。

そして近いうちにキャロウェイは、再び「新しいストーリー」を仕立ててくるだろう。

機能しない技術は、持続しないものだ。

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価格、スペック、在庫

エピックフラッシュとエピックフラッシュサブゼロのドライバーは529.99ドルで、フルカスタムのUDesignモデルは600ドルだ。

エピックフラッシュのロフトは9°、10.5°、12°で、サブゼロは9°と10.5°だ。

標準シャフトは、グリーンの新Project X EvenFlow、Project X HZRDUS Smoke、Mitsubishi Tensei AVが用意されている。

新Project X EvenFlowは現在Project Xの Webサイトにはまだ掲載されていないことをお伝えしておこう。おそらくアフターマーケットやeBayでは購入できないだろう。あくまで私の勘だが、EvenFlow Max Carryに似ているのではないかと思う。

キャロウェイは他社がやらないことを好むが、ラインナップに「特別な専用シャフト」があったとしても、そこに529ドルの妥当性を見つけるのは難しい。あくまで私の意見だが。

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標準グリップはGolf PrideのMCC Plus 4 ALIGNのグリーン/ブラックバージョンだ。調整可能なドライバーにALIGN搭載グリップをつけるのは少し奇妙に思えるかもしれないが、キャロウェイのデュアルコグシステムはセッティングに関係なく、シャフトとグリップのアラインメントをキープしてくれる。

とはいえ、ゴルファーがALIGNグリップを望んでいるかどうかは、まったく別の問題だ(ちなみに私は熱望している)。

販売開始は、2019年2月1日だ。