すべてはゲームのために
ずばり言うと、グリーン周りではミスが付きものだ。安心してほしい。世界のプロでもミスをする。
ラウンドでウェッジを使う場面は多くあるが、ほとんどは100ヤード以内のショットだろう。だからこそ、最大に機能する自分に合ったウェッジ選びが欠かせない。
パーセーブできるかどうかは、ウェッジにかかっていると言っても過言ではない。
ゴルフクラブは、バッグに入れる1本1本に目的がある。ウェッジもまさに同じだ。プレーを完成させ、スコアメイクに貢献するウェッジが、“正しい”ウェッジといえる。
では、どのように自分に合ったウェッジを選ぶのか?
実際ロフト角や、バウンス角、ソールグラインド、シャフトといった要素が、コース上のさまざまなコンディションでプレーに影響する。最善の方法は、「フィッティング」を行うことだ。
2019 Most Wantedウェッジテストをガイドとしプレーに役立ててほしい。
MOST WANTED: ホンマ TW-W4
2019 MOST WANTED ウェッジ性能チャート
Most Wantedテストでは、その都度手法とデータ表示法を改善してきた。
今年のウェッジテストでは、15ヤードショットを排除し、「ウェット・ドライコンディション」という項目を加えた。また、新たに100ポイント制を採用し、結果を簡潔に表示することでより分かりやすさを目指した。
下のデータは、フルショット・40ヤードショット・ドライ/ウェットコンディションの3つのパターンでテストした際の各モデルの性能を示す。
スコアは傾斜配点という方式を採用し、フルショットと40ヤードショットに40%ずつ配分、残りの20%は「Spin Retention (スピン量の保持)」のスコアだ。
テスト記録
・2019年Most Wantedウェッジ勝者、ホンマTW-W4ウェッジはどのテストパターンでも1位にランクしなかったが、全体的に非常に優れた性能を見せた。
・キャロウェイ MD5 Jawsとテーラーメイド Milled Grind 2ウェッジは、発売前だったため今年のテストには含まない。
・今回テストに使用したのは、前作Milled Grindモデル。
・唯一のノーメッキモデルは、ウィルソン FG Tour PMP。
ウェッジの購入にあたり
ウェッジを購入する際、最も考慮すべきは「性能」だが、重要なポイントは他にもある。
ロフト角
フルショットやハーフショットなどの100ヤード以内のコントロールショットでは、飛距離コントロールはマストだ。ウェッジを持った瞬間、思い通りのショットが打てると自信が湧き出てこなければならない。
飛距離コントロールだけでなく、弾道のコントロールに欠けていたり、コース状況に合ったショットが打てないのは致命的である。そう考えると、まず必要なのは「正しいギャップ」だ。
ほとんどの人がウェッジ3本(ピッチ、ギャップ、サンド)か、そこにロブウェッジを加えるだけだ。正しいロフト選びは、一番短いアイアンのロフト選びから始まる。
ウェッジギャップに業界基準は存在しないのだが、4度~5度が一般的だ。つまり、アイアンをストロングロフトにしたら、それに従いウェッジのロフトも調整する必要がある。
少し前までは、52度、56度、60度がギャップウェッジ、SW、ロブウェッジの最も一般的なロフトだったが、最近は50度、54度、58度にシフトしている。ギャップさえ整えれば、あとは自分にあったものを選ぶだけだ。
バウンス角
ウェッジのバウンス角とは、リーディングエッジとソールの一番低い部分(トレーリングエッジ)の間に作られる。
インパクトの瞬間、最初に芝にあたるソール部分のことだ。バウンス角の大きいウェッジは、アドレス時に芝から離れたところにリーディングエッジがくる。反対に、バウンス角の小さいウェッジはリーディングエッジが芝に近くなる。
ウェッジのバウンス角を、コースで直面する芝のコンディション(軟らかい・硬い)と、インパクト時のクラブ軌道に合わせることにより、最適なボールコンタクトやコントロール、スピンが生まれる。
バウンスが小さいウェッジ(4度~6度)は、入射角の浅い人に適し、ウェッジは硬くドライな状態で有効であることが多い。バウンスの大きいウェッジ(10度以上)は入射角の深いゴルファーに向く傾向があり、バンカーを含む軟らかい状態にも最適だ。
どちらのバウンス角を選ぶべきか分からない場合は、もちろんフィッティングがベストだがミドルバウンスが安全策かもしれない。
1種類のバウンス角ですべてのアプローチをカバーするウェッジは、ミドルバウンスを採用する場合がほとんどだ。
ミドルバウンスも問題はないのだが、バウンス角はゴルファーの強力な味方だということ、多くの人が理想より小さめのバウンスを選んでいるという事実を知ってもらいたい。
グラインド
ウェッジには「グラインド」も重要だ。グラインドとは、全体的なソールの形を意味する。
ヘッドやトゥから素材を削り落とすとバウンスが小さくなり(MグラインドとCグラインドに匹敵)、リーディングエッジは芝に近い形となる。そうすると、オープンフェースショットなどの多様なショットに対応できる。
どのメーカーも各グラインドのロフト角は限定的で、バウンス角(及びソール幅)によってその選択肢はさまざまだ。グラインドはウェッジのフィッティングで見過ごされやすい要素だが、忘れてはいけない。
シャフト
ドライバーやアイアンのシャフトは重視されるが、ウェッジも同じだ。
新品のウェッジを購入したことのある人なら、ウェッジと書かれたシャフトラベルを見たことがあるだろう。ウェッジシャフトのフレックスはSで、重量は115-130gとアイアンシャフトと同じか、重い場合もある。
ウェッジシャフトの選択肢は膨大で、ウェッジ専用のシャフトを展開するメーカーもあり、オリジナルシャフトをそろえるブランドもある。
ウェッジ用のシャフトをアイアンに利用する人もいるくらいだ。軽量で軟らかいシャフトもあれば(よりスピンがかかる)、重く硬いシャフトもある(弾道が低くなる)。
当然ながら、完全に正しい答えはないが、コース上で試打してみることをお勧めする。
安定したスピン
アベレージゴルファーにとって、プロのようなバックスピンに憧れるのは分かる。
プロ並みのスピンを目指すのも悪くないが、プロのような弾道やスピンをもつ人は稀だ。自分のプレーに合ったウェッジを選ぶ際、スピンを最優先にしないことだ。
その代わり、安定したインパクトと弾道コントロールを目指そう。インパクトを安定させれば、より確実なショットが打てる。スコアメイクには、スピンより安定したショットの方が重要だ。
コブラ KING ONE BLACK~検討したい1本~
従来のウェッジより長いクラブには魅力を感じないかもしれないが、コブラ KING ONE Blackは注目に値する。総合4位だったKING ONEはすべてのショットパターンで非常に優れた性能を見せた。ONE Lengthの背景にある考えは、すべて7番アイアンと同じ長さに設計すること。
そうすることで、全クラブ一貫したセットアップやスイングが可能になるという考えだ。長さや、打感、弾道に慣れるのにしばらくかかるだろうが、数字は嘘をつかない。ONE Lengthこそ、試してほしい1本だ。
記録
テストでは、マーケット全体がどこに向かっているのか、前モデルから何が変わり改善したのかを探るため、トレンドも追っている。
また、テスターからフィードバックを提供してもらい、良かった点、悪かった点を理由とともに共有してもらう。
ただし、これらの主観的なフィードバックが、Most Wantedのランキングに直接影響することはない。
トレンドと改良
<グルーブテクノロジー>
どのウェッジメーカーも独自のグルーブテクノロジーを展開するが、スピンに対するアプローチはブランドで異なる。
今年のウェッジテストでトップにランクした、ピン Glide 3.0はハイドロパール仕上げが特徴だ。これは水を防ぎ、フェースから水分をはじくのを助ける。
ミズノは、「ハイドロフロー・マイクログルーブ」と呼ばれる特有の技術を取り入れた。水分をフェースから取り除きながら、摩擦を加える垂直のミーリングパターンが特徴のグルーブだ。
テストパターンのひとつ、ドライ vs ウェットコンディションテストでは、ミズノとピンの独自の技術が非常に有効であることが証明された。
<プログレッシブCG>
中には「プログレッシブCG(重心位置)」と呼ばれる技術を利用したモデルもある。一般にスウィートスポットとばれる部分は、ウェッジのロフト角によって変わる。また、ソールグラインドによって変わる場合もある。
この段階的なデザインがどれ程素晴らしいのかは判断しかねるが、ロフトが立つほど(低く、より貫通性のある弾道)重心位置が上に配置されることもあれば、ロフト角に伴い低く設定される場合もある。
どちらの場合も、最適な弾道と性能を実現させることが目的だ。
<ノーメッキ仕上げ>
ノーメッキは決して新トレンドではないが、実際はノーメッキに近い特殊加工を施した場合でもノーメッキとして売り出すブランドもある。
ノーメッキは落ち着いた質感がうけてツアーで人気だが、一般ゴルファーの間では“錆び”がスピンを生むという認識が広がっており、それにより選ぶ人が多い。それは間違った認識だ。
実際、”錆び”させるのではなく、コーティングがされていないだけだ。コーティングを施すと、通常グルーブは浅くなり、エッジ半径も和らいでしまう。
そこに水分が加わるとさらに性能の低下を招く。そのため、ボーケイのようなブランドは、コーティングに合わせてグルーブの削り方を変えるといった策をとる。
ウィルソン FG Tour PMP Rawは、特に濡れた状態でも非常に優れた性能を示した。これは錆びのせいではなく、メッキコーティングが少ないためである。
ウィルソンは長年自信を持って独自のグルーブテクノロジー(特に100ヤード以内のウェッジ性能)を開発してきた。是非、今ウィルソンに注目してほしい。
テスターからのフィードバック
・ルックス・打感・アライメントにおいて高得点を獲得したのは、コブラ KING MIMウェッジだ。MIM(Metal Injection Molding)という技術により、製造における精密さはほぼ完璧だという。最後の仕上げは最小限に留まり、手作業による研磨はない。ウェッジの形や非常に軟らかい打感にテスターの評価が集まった。
・打感の最高評価はブリヂストン Tour B XW-1ウェッジだった。Tour B XW-1は、フォージングに使用される素材の中で最も軟らかいといわれる1020カーボンスチールによるフォージドだ。打感の評価が高いのは、そのためだ。
・ピンGlide 3.0とタイトリストSM7ウェッジの打感も、高評価だった。Glide 3.0の打感は、大きめのエラストマーカスタムチューニングポート搭載により前作より明らかに良くなっている。絶え間ない人気を誇るタイトリストボーケイウェッジは、毎年テストで高評価を得る。
・ピン Glide 3.0、クリーブランド RTX4、ミウラ Milled Tourウェッジがルックスでトップを獲得。
・今年の注目のヘッドシェイプは、テーラーメイド Hi-Toe、ピンGlide3.0 Eye2、キャロウェイ PM Grindの3モデルだ。
・もちろん、ネガティブな意見は避けられない。今年は、トミーアーマー Over N’Out 2.0とコブラKING ONEウェッジのルックス・打感・アライメントの評価は低かった。KING ONEモデルの場合、長めのシャフトが原因だろう。
ウェットコンディション1位-ピン GLIDE 3.0ウェッジ
実際のプレーでは、さまざまなコンディションに遭遇する。午後の大雨やラフ、水はゴルフコースにつきものだ。今回のウェッジテストでは、グルーブに水が付着すると性能に差がでることが明らかになったが、どのウェッジも同等に影響を受けるわけではない。
ピンがGlide 3.0に採用したハイドロパールコーティングは、グルーブやフェースから水をはじく作用がある。素晴らしいのは、宣伝通りの効果があることだ。今回のテストによると、濡れた状況下での性能が著しくないウェッジは、ドライ時より60%近くスピンが落ちるが、ピンのGlide 3.0の差は10%に留まる。まるで3フィートと13フィートパットくらいの違いだ。
2019 MOST WANTEDウェッジデータ
2019 MOST WANTEDウェッジデータ (40ヤード)
モデル名 | ボール スピード (m/s) | 打ち出し 角度 (度) | スピン量 (RPM) | キャリー (ヤード) | トータル (ヤード) | 最大高さ (ヤード) | 落下角度 (度) | ショット範囲 (平方ヤード) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Bettinardi H2 303 SS | 19.9 | 31.93 | 5,299 | 37.38 | 41.74 | 6.88 | 38.31 | 50 |
Bridgestone Tour B XW-1 | 19.6 | 32.22 | 5,339 | 36.37 | 40.79 | 6.73 | 38.47 | 44 |
Cleveland CBX-2 | 19.9 | 32.45 | 5,511 | 37.52 | 41.32 | 7.06 | 38.96 | 45 |
Cobra KING Black | 19.6 | 32.35 | 5,710 | 36.31 | 39.73 | 6.79 | 38.73 | 44 |
Cobra KING MIM | 20.0 | 32.37 | 5,425 | 37.77 | 41.74 | 7.13 | 38.89 | 67 |
Cobra KING ONE Black | 19.5 | 32.52 | 5,505 | 36.29 | 40.54 | 6.83 | 38.84 | 52 |
PING Glide 3.0 | 19.6 | 32.98 | 5,580 | 36.70 | 40.29 | 7.08 | 39.42 | 53 |
PING Glide 3.0 Eye2 | 20.0 | 32.64 | 5,522 | 38.05 | 42.04 | 7.28 | 39.24 | 50 |
Honma TW-W4 | 19.8 | 31.76 | 5,652 | 36.91 | 40.79 | 6.75 | 38.17 | 52 |
Miura Milled Tour | 19.8 | 32.32 | 5,478 | 37.10 | 41.14 | 6.95 | 38.74 | 45 |
Mizuno T20 | 19.7 | 31.69 | 5,676 | 36.85 | 40.96 | 6.72 | 38.11 | 48 |
Callaway PM Grind | 20.0 | 32.26 | 5,422 | 37.75 | 41.83 | 7.07 | 38.77 | 58 |
Cleveland RTX-4 | 19.8 | 32.64 | 5,582 | 37.09 | 40.88 | 7.06 | 39.14 | 45 |
Titleist Vokey SM7 | 19.8 | 31.98 | 5,627 | 36.95 | 40.93 | 6.82 | 38.40 | 49 |
Sub70 Forged Black | 19.8 | 31.78 | 5,874 | 36.94 | 40.51 | 6.78 | 38.27 | 44 |
Tommy Armour Over N' Out 2.0 | 19.8 | 32.44 | 5,961 | 37.01 | 40.40 | 7.02 | 39.02 | 45 |
Tommy Armour VCG | 19.5 | 32.23 | 5,738 | 36.17 | 40.10 | 6.75 | 38.58 | 44 |
TaylorMade Hi Toe | 20.0 | 31.47 | 5,476 | 37.55 | 41.86 | 6.81 | 37.91 | 54 |
TaylorMade Milled Grind '18 | 19.6 | 32.29 | 5,503 | 36.26 | 40.71 | 6.78 | 38.57 | 42 |
Wilson FG Tour PMP Raw | 19.9 | 32.11 | 5,523 | 37.23 | 41.32 | 6.95 | 38.56 | 47 |
2019 MOST WANTEDウェッジデータ (フルショット)
モデル名 | ボール スピード (m/s) | 打ち出し 角度 (度) | スピン量 (RPM) | キャリー (ヤード) | トータル (ヤード) | 最大高さ (ヤード) | 落下角度 (度) | ショット範囲 (平方ヤード) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Bettinardi H2 303 SS | 33.2 | 32.00 | 8,358 | 85.30 | 86.86 | 21.67 | 49.04 | 248 |
Bridgestone Tour B XW-1 | 32.9 | 32.35 | 8,542 | 84.12 | 85.52 | 21.53 | 49.33 | 163 |
Cleveland CBX-2 | 32.6 | 32.46 | 8,664 | 83.08 | 84.23 | 21.28 | 49.35 | 156 |
Cobra KING Black | 32.0 | 33.55 | 8,324 | 80.48 | 82.11 | 21.18 | 49.67 | 178 |
Cobra KING MIM | 33.0 | 32.27 | 8,394 | 84.31 | 85.69 | 21.50 | 49.19 | 213 |
Cobra KING ONE Black | 32.8 | 33.48 | 8,460 | 83.51 | 84.69 | 22.31 | 50.27 | 192 |
PING Glide 3.0 | 32.6 | 33.04 | 8,830 | 82.36 | 83.41 | 21.74 | 49.90 | 164 |
PING Glide 3.0 Eye2 | 32.7 | 32.71 | 8,528 | 83.10 | 84.49 | 21.55 | 49.48 | 163 |
Honma TW-W4 | 32.6 | 31.95 | 8,838 | 82.81 | 83.89 | 20.79 | 48.86 | 159 |
Miura Milled Tour | 32.6 | 32.43 | 8,490 | 83.15 | 84.52 | 21.23 | 49.19 | 181 |
Mizuno T20 | 32.7 | 32.13 | 8,683 | 83.44 | 84.79 | 21.22 | 49.06 | 192 |
Callaway PM Grind | 32.3 | 32.50 | 8,270 | 82.33 | 83.84 | 20.90 | 48.91 | 184 |
Cleveland RTX-4 | 32.7 | 32.42 | 8,477 | 83.60 | 84.99 | 21.38 | 49.23 | 186 |
Titleist Vokey SM7 | 32.6 | 32.31 | 8,481 | 83.11 | 84.53 | 21.05 | 49.03 | 170 |
Sub70 Forged Black | 32.5 | 32.15 | 9,058 | 82.22 | 83.45 | 20.93 | 49.14 | 185 |
Tommy Armour Over N' Out 2.0 | 32.1 | 32.44 | 9,038 | 80.67 | 82.13 | 20.53 | 49.10 | 194 |
Tommy Armour VCG | 32.5 | 32.08 | 8,942 | 82.21 | 83.43 | 20.83 | 48.96 | 181 |
TaylorMade Hi Toe | 33.0 | 31.87 | 8,329 | 85.06 | 86.50 | 21.33 | 48.85 | 173 |
TaylorMade Milled Grind '18 | 32.8 | 32.19 | 8,653 | 83.67 | 84.97 | 21.31 | 49.14 | 200 |
Wilson FG Tour PMP Raw | 32.8 | 32.32 | 8,221 | 84.32 | 85.69 | 21.35 | 49.11 | 174 |
ニッチ向けハイトゥデザイン
キャロウェイ PM Grindや、テーラーメイド Hi-Toeなどのデザインは、ニッチ向けといっていいだろう。カテゴリーとして存在するものの、決して万人向けではない。大抵の場合、欠点が利点を上回ってしまう。利点としては、ハイトゥデザインは他のウェッジでは難しいショットを可能にする。まさに、マジックに他ならない。
その代わりに、アベレージゴルファーには練習しても使いこなすのが難しい。トゥサイドが上がっている特徴的デザインは重心も上部に配置され、そのためうまく打つのが難しい上に他のウェッジとは根本的に異なる打感に直面する。
反対はしないが、十分な練習をなくしてはリスクが伴う。リスクを理解した上で、トライしてほしい。
2019 MOST WANTED ウェットウェッジテスト
MyGolfSPyではテストは改善のチャンスだと考えているが、可能な限りテスト方法を改良する。
2019 ボールテストバイヤーズガイドでは、濡れた状態でのスピン量と打ち出し角に驚くべき変化が現れることが分かった。
これを受けて、今年は前代未聞の「ウェット・ドライウェッジテスト」を実施することにした。このテストでは、10名のテスターに60ヤードから乾いた状態と濡れた状態の両方でボールを打ってもらった。
リアルな状態に近づけるため、地面(芝)をずぶ濡れにしてウェッジのフェースとボールの両方に水でスプレーした。
その結果、圧倒的な性能差が見られた。
まとめ
<ウェットコンディション=スピンが落ちる>
ゴルフほど変化の激しいスポーツはない。晴天の中ティーオフしても、バックナインに差し掛かる頃には傘をさしてプレーをすることもある。
どんな状況に直面してもボールコントロールに優れていれば、いいスコアを出すことは可能だ。
しかし、水に濡れた状態ではスピンは明らかに落ちる。雨や露、深い芝によりクラブやボールが水にさらされるのは避けられないことであり、その度にスピンがかかりにくくなる。
今年は、乾いた状態と濡れた状態の両方から60ヤードショットをテストした。データの詳細は以下に掲載した。
乾いた状態と比べて平均35%スピンが落ちるという結果がでたが、最悪の場合60%もスピン量が減少した。
一方では、ウェットコンディションに対応した高性能ウェッジのスピン量はたった10%しか落ちないという嬉しい結果もでた。
特に濡れた状況を意識してフィッティングする人は稀だと思うが、すべてのコンディションを考慮したウェッジ選びを考えてみてもいいだろう。
<ウェットコンディション=打ち出しは増す>
スピン量と同じく、打ち出し角も変わる。水滴がボールのディンプルやウェッジのグルーブに入り込むと、摩擦が失われ、ボールはすべり、それに伴い打ち出し角も増すという構図だ。
テスター間では、最大9度、平均5.4度の打ち出し角の変化がみられた。
フェアウェイでもラフでも、低いボールを打ちたい場面はある。つまり、あらゆるコンディションで安定したボールが打てるウェッジを使えば、スコアには影響しないということだ。
<本物のテクノロジー>
スピンや打ち出し角の驚くべき変化があっても、悪いニュースばかりではない。ピンやミズノなどのメーカーから、ウェットコンディションでも安定した性能を維持するウェッジが発売されている。
ピンは、ハイドロパール仕上げという車のタイヤのようにグルーブから水をはじくコーティングを採用。
濡れた状態でのスピン保持は非常に優れている。もうひとつの高性能ウェッジは、「ハイドロフロー・マイクログルーブ」採用のミズノ T20ウェッジだ。
これら2モデルは、ウェットウェッジの項目で1位、2位(ピン)、4位(ミズノ)を独占した。
<ノーメッキ仕上げのスピン保持効果>
今後の研究に活かしたいのが、ウィルソン FG Tour PMP Rawウェッジのテスト結果だ。
テストで唯一のノーメッキ仕上げであるこのモデルが、乾いた状態と比べて79%スピン量を保持した。それがノーメッキのおかげなのか、グルーブテクノロジーなのか、その両方の効果なのかははっきりしない。
ここで言えるのは、濡れた状態で、ウィルソンのウェッジはピン以外のどのモデルより優れたスピン保持効果を発揮したということだ。
2019 MOST WANTED ウェットウェッジ VS ドライウェッジ
2019 MOST WANTED ウェッジ ウェット VS ドライ データ
モデル名 | ドライ 打ち出し角度 (度) | ウェット 打ち出し角度 (度) | ドライ スピン量 (RPM) | ウェット スピン量 (RPM) |
---|---|---|---|---|
Bettinardi H2 303 SS | 32.15 | 39.01 | 6,575 | 3,681 |
Bridgestone Tour B XW-1 | 32.77 | 39.63 | 6,748 | 3,690 |
Cleveland CBX-2 | 32.92 | 40.91 | 6,650 | 2,983 |
Cobra KING Black | 32.84 | 38.27 | 6,969 | 4,492 |
Cobra KING MIM | 32.83 | 37.63 | 6,747 | 4,518 |
Cobra KING ONE Black | 32.49 | 37.54 | 7,233 | 4,798 |
PING Glide 3.0 | 33.30 | 37.31 | 6,582 | 4,525 |
PING Glide 3.0 Eye2 | 33.09 | 37.26 | 6,714 | 4,958 |
Honma TW-W4 | 33.11 | 37.57 | 6,876 | 4,924 |
Miura Milled Tour | 32.42 | 41.25 | 6,700 | 2,966 |
Mizuno T20 | 32.08 | 35.36 | 6,844 | 5,356 |
Callaway PM Grind | 33.18 | 34.90 | 6,908 | 6,079 |
Cleveland RTX-4 | 33.34 | 35.29 | 6,421 | 5,891 |
Titleist Vokey SM7 | 32.27 | 38.62 | 7,455 | 4,463 |
Sub70 Forged Black | 32.13 | 39.16 | 6,366 | 3,469 |
Tommy Armour Over N' Out 2.0 | 31.96 | 38.38 | 7,204 | 4,375 |
Tommy Armour VCG | 32.32 | 38.46 | 6,945 | 4,258 |
TaylorMade Hi Toe | 33.00 | 40.94 | 7,467 | 3,675 |
TaylorMade Milled Grind '18 | 32.98 | 41.78 | 7,125 | 2,780 |
Wilson FG Tour PMP Raw | 32.17 | 34.01 | 6,969 | 5,826 |
スペック
2019 MOST WANTEDウェッジ測定値
アドバイス-重要なグラインド
ソール素材の足し引きで作るソール形状を表す“ウェッジグラインド”は、ショートゲームの多様性や操作性の可能性を広げる。グラインドのフィッティングはウェッジフィッティングに欠かせないにもかかわらず、そのサービスが不足しているのが実情だ。
グラインドの種類が増える程フィッティングの機会が増えるが、同時にメーカーの負担も増える。それが多くのブランドがすべてのロフト角、もしくは各番手に対して1種類のグラインドしか用意しない理由である。
それはフィッティングとは言えなし、まるで運任せのようだ。グラインドがウェッジフィッティングに欠かせないという認識が深まれば、ショートゲーム性能は格段に上がるだろう。
限定的なバウンスオプションでも十分だが、ショートゲームの潜在的可能性に目覚めたゴルファーは、当然のことながらボーケイや、キャロウェイ、ピンのようなロフトごとに多様なバウンス・グラインドオプションをそろえるブランドに惹かれることだろう。
FAQ
ウェッジの購入にあたり
Q:ウェッジを買い替える頻度は?
A:ゴルフコースでは、ウェッジ自身も驚くほどあらゆる状況に直面する。最後にウェッジを買い替えたのはいつか?タイトリストの調査によると、プレーに影響を及ぼすほどの消耗がみられるのは、約75ラウンドを超えたあたりだという。適切な頻度で買い替えているかは、自分のプレーを確認すれば分かる。トッププロなら、年に数回、それ以外の私達はそれほど頻繁ではない(年に一度が理想だが)。安定性を維持するための最も簡単な方法は、グルーブが消耗していないか確認することだ。
Q:自分に合ったウェッジを決めるには?
A:自分のプレーに合ったウェッジを選ぶ一番の方法は、フィッティングを行うこと。多くのショップは手段や方法を熟知している。フィッティングの機会がなければ、このウェッジテストを利用し試打したいクラブを絞り込み、そのウェッジであらゆる状況やショットを試せば、バンカーを含むさまざまなライに合う1本が見つかるだろう。
自分でフィッティングを行う場合は、自身のプレーを分析し、一貫したギャップになるよう注意すること。そこから、入射角や、ディボットの大きさ、プレーコンディションを理解した上で、適切なバウンス角やグラインドを選ぶ。繰り返しになるが、軟らかい状態では、バウンスが大きい方が有効だ。逆に、硬いコンディションではバウンス角は小さい方がいい。適切なバウンス角が分からない場合は、ミドルバウンスが安全策だろう。
Q:シャフトは重要か?
A:答えはイエスだ。スピンや打ち出し、スピン差はそれほど大きくないが、シャフトは精度や方向性、全体的な安定性に影響を及ぼす。
Q:ウェッジを試打する際は、何に気を付けるべきか?
A:スピンしか考慮しない人が多いが、弾道計測器に映る細かい数字に注目してほしい。スピン量が多いウェッジが、ベストウェッジとは限らない。打ち出し角や、スピン量を比較する時、標準偏差に着目してほしい(データスクリーン上の小さな数字)。数字が小さいほど「安定性」に優れていることを示すが、ショットが安定すればコース上で1~2ヤード伸びることもある。同様に、「ショットのばらつき」を示す丸印も見てほしい。ウェッジでは、「安定性」を過小評価してはならない。可能な限りテストに水分の項目を加えて、ドライ・ウェットコンディションの性能差を確認してほしい。
MOST WANTED
Q:テスターは、どのようにウェッジを選ぶのか?
A:アップグレードオプションはなく、標準スペックのみを使ってもらう。テストに使用したのは56度サンドウェッジ。調節機能搭載のウェッジはないため、フレックスのみテスターに合わせた。また、弾道の向上が期待できるため、複数のシャフトが利用できる場合は使用した。
Q:Most Wantedウェッジはどのように決定するのか?
A:フォーサイトスポーツGC Quad(GCクワッド)弾道計測機で集めたデータをもとに、あらゆるパフォーマンス測定項目を検証する。また、ストロークス・ゲインド値という統計的有意性を重視する独自手法を用いて、フルショットと40ヤードショットの総合ランキングを決定する。ウェットコンディションでのランキングを決定するためには、どれくらいのスピン量が保持されるかに着目した。総スコアの40%ずつをフルショットと40ヤードショットに割り当て、残りの20%をウェットコンディションのスコアとして集計した。
Q:「最もスピンがかかる」ウェッジはどのように決定したか?
A:最高スピンウェッジを決定するために、データの統計的信頼性に従いテスターの平均バックスピンを集計した。また、ウェットコンディションでのスピンの喪失量も測り、明らかに平均以下のウェッジは除外した。
Q:ルックスや打音、打感などの主観的な要素は、どのくらいランキングに反映されるか?
A:まったく反映されない。MyGolfSpyのランキングは、弾道計測モニター上のデータとパフォーマンス測定項目のみで決まる
Leave a Comment