既に発売されているTS2、TS3と、ほんの数ヶ月前に発表されたTS4。
この9ヶ月間、タイトリストによるチタンクラウンのラインナップを細かく見てきている人なら、「ところでTS1は?」と疑問に思っていることだろう。
ここにある。
忘れられたも同然だった「1」
TSが出る前はDシリーズがあった。DシリーズにおいてもD1はほぼ存在しなかった。唯一の例外は907 D1だが、近年のタイトリストのドライバーで、この907 D1と907 D2だ。
キャロウェイやナイキ、また大手以外もいくつかのブランドが四角いドライバーで市場を席巻していた十数年前に、タイトリストが出した解答が三角形の907 D1だった。
プロからの要望で生まれたわけではないこのおむすび型のD1は、明らかにタイトリストらしくなかった。今回新たに再浮上した『1』も、現在のタイトリストのラインアップにおいてはまた異質なドライバーだ。
それでもTS1が必要な理由
アベレージゴルファーの平均飛距離についてご存じだろうか。
2018年のUSGAレポートによると、平均はなんと208ヤード。それはあくまでアベレージの話であり、たとえばハンデが6から12のゴルファーだと平均212ヤードも飛ばしている。
その差4ヤード?それはさすがに予想していなかった。
彼らのキャディバッグの中身には、高確率でタイトリストのボーケウェッジやプロ V1ボール、スコッティキャメロンのパター、そしてアイアンが入っている。しかしタイトリストのドライバーはあまり見かけない。
それはもちろん、他ブランドのドライバー部門が強いせいもある。ドライバーに関しては十年以上前からテーラーメイドやキャロウェイに軍配が上がっているのは確かだ。
しかし、もうひとつ確かなのは、その層のゴルファーの多くがドライバーもタイトリストを選んでもおかしくないのに、彼らのためのドライバーがほぼ存在しなかったということだ。
ここでいう「彼ら」とは、「平均的なヘッドスピード」と呼ぶ層のゴルファーのこと。配慮も遠慮もなしにいえば、それはつまりヘッドスピードが遅いゴルファーのことだ。
シニア層の男性ゴルファーの多く、また女性やジュニアゴルファーのほとんどがヘッドスピード38m/s以下に該当する。
つまり、もしもこの層のゴルファーに合うドライバーがあれば、タイトリストのフィッターたちは、今まで逃していた多くのフィッティング機会をもたらすことになる。
TS1の設計理念
これまで取りこぼしていた層にアピールするドライバーを設計するにあたり、彼らは特別目新しい方法をとったわけではないが、タイトリストでなければ創れないものを創った。キーワードは軽量化だ。
ゴルフクラブをより軽くすることができれば、ほとんどのゴルファーはもっと速く振れるようになる。
そして打ち出し角やスピン量などの質量特性をターゲットゴルファーに見合ったものにできれば、この場合、より高い打ち出し角と多めのスピン量を獲得でき、飛距離は伸びる。
ここで浮かぶ疑問は、重量を落とすことは可能でも、求めるヘッドスピードを得るまで落としたときに、寛容性や操作性が犠牲にならないかということ。
軽量および超軽量ドライバーでよくあるのは、ヘッドの質量を減らした引き換えに慣性モーメントを損ない、長くて軽いシャフトのせいでコントロールしづらくなるケースだ。
確かに超軽量設計なら飛距離は稼げる。ただし、寛容性と直進性に関しては疑問符がつく。
数字で見てみよう。我々が以前計測した超軽量設計のドライバーにおいて、最も低い慣性モーメントは4250 kg m2、最も長いシャフトは46.25インチだった。
つまり問題は、平均的なヘッドスピードのゴルファーをもっと速く振れるようにするための選択肢はたくさんあるものの、そのすべてが良策ではないということだ。
TS1ドライバーのゴールは、質量特性を維持したまま軽量化を達成すること。より軽く、より速く、しかし寛容性も操作性もそのまま。それがタイトリストの求めるゴールだ。
ドライバーを軽くするにあたり、他と同じくタイトリストもまずヘッドから始めた。TS1のヘッドは他のTSシリーズと比べて約8g軽い。
8gの差はちょうどメインとなる市場における最も軽いものと重いものの差ぐらい。それが大事なところなのだ。軽いヘッドはすなわち寛容性のないヘッド。
そこでタイトリストが取り組んだのは軽くなりすぎないように軽量化する試みだった。
そうなると当然、純正の軽量シャフトもTS1の軽量化に大いに寄与しているということになる。フブキMVは45g(Lフレックスでは39g)、フジクラエアスピーダーに至っては40g(R3フレックスでは35g)しかない。
さらに、純正グリップ、ゴルフプライドのツアーベルベッド スーパーライトによっても軽量化が図られている。スタンダードモデルに比べて20gも軽い、わずか32g(女性用26g)だが、見た目も感覚もツアーベルベッドだ。
オーソドックスに組んだドライバーの総重量は320g台。軽量バージョンのTS1なら275gとかなり軽い。
通常なら、超軽量設計には長尺シャフトが必要不可欠だが、TS1の純正シャフトの長さは45.75インチ。より速いスピードをもたらすには十分な長さだが、操作性や正確性を著しく損なうほど長くはない。
その結果生まれた『極めてやさしいドライバー』
タイトリストいわく、ヘッドを8g軽くしてもTS1の慣性モーメントはTS3とほぼ同等だという。
我々の計測では、その数値は4550 kg m2、極めて平均的なものだ。D1のイメージに囚われている人には、D1と違ってTS1はツアープロが認めたルックスと打感を有しているといえばわかってもらえるだろう。
「初心者用ドライバーのように思って欲しくない」。タイトリストのゴルフクラブ部門マーケティング責任者、ジョシュ・タルジ氏は自信を持って言う。「これこそがタイトリストだ」。
タイトリストであるということは、機能に対して妥協しないということでもある。そのため、シュアフィットウエイトは新たにデザインされ、重心位置を犠牲にすることなく様々なスイングバランスに対応できるようになった。
またTS1は、軽量ドライバー市場において、可変スリーブを有する現時点で唯一の製品でもある。可変スリーブは通常、重量を抑える、あるいは予算を抑えるときには、真っ先に捨てられる機能であるにも拘わらずだ。
TS1はまた、タイトリストに久々に登場したドローバイアス(スライス抑止機能)のドライバーでもある。
多様なゴルファーに合う多様なクラブを
TS1の発表により、タイトリストにはあらゆるゴルファーに合うドライバーが揃ったことになる。多くのプレーヤーにとってTS2とTS3はいまだ盤石の選択肢で、TS4はそれよりも人を選ぶものの一定の顧客層をカバーしている。
そしてこれまでタイトリストがフォローできていなかったそれ以外のゴルファーにとって、TS1は新たな選択肢となるはずだ。特にヘッドスピードが38m/s以下ならば、試してみない手はない。
スペック、価格および選択肢
タイトリストTS1ドライバーのロフトは9.5°(右利き用のみ)、10.5°、12.5°(右利き用のみ)。TS1(とTS4)は6月27日発売開始(日本では7月5日)。価格は他のTSシリーズドライバーと同じく499ドル。
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