スイングは千差万別だ。にも関わらず、なぜ、スイングの異なる二人のゴルファーがクラブに求めるものが「同じ」であるという前提が成り立っているのか(またはそのように思い込まされているのか)?
私たちの使命は、ゴルファー個々の最適な用具を理解することだ。2020年のベストドライバーテストにおいて、35人のテスターと15,540ショット以上を費やしたのは、より多くのデータを集めたいからに他ならない。37本のドライバーそれぞれの性能を知れば知るほど、それだけ皆さんの選択肢も絞られてくるだろ。
PGAツアーを見ていると、プロにとって最適なドライバーは自分にとっても良いに違いないと思いたくなるものだが、このデータはそうではないことを示している。
2020年のランキングでもデータを区分化し、個々のゴルファーにとってより意味のある情報を提供するようつとめた。3つの異なるヘッドスピードのカテゴリーに分類したドライバーのテスト結果から、ここでは、高ヘッドスピード(47m/s)についてフォーカスする。
既製品を好んで購入する人でも、常にギアをいじっている人も、知識豊富なフィッターに時間をかけてフィッティングしてもらうゴルファーでも、あらゆるゴルファーにこの情報を役立ててもらいたい。
高ヘッドスピード向けドライバー1位:「タイトリスト TS2」
専門コンサルタント - ルー・スタグナー氏
ルーは、数十億ドル規模の非上場企業でアナリティクス担当ディレクターを務め、金融、製造、エネルギーなど様々な業界において、アナリティクス、データアーキテクチャ、機械学習の分野で20年以上の経験を持つ。最近では、DECADEシステムの開発者であるスコット・フォーセットとパートナーを組み、統計とアナリティクスを使ってプロやアマチュアゴルファーのゲーム向上に貢献している。
ドライバー購入で検討すること
新しいドライバーを買う時は、「パフォーマンス」を一番に考えるだろう。しかし、購入を決める前に考慮した方がよい点が他にもある。
調節機能
多くのクラブメーカーが採用している『アジャスタブル機能』を活用することで、良いドライバーを更に素晴らしいドライバーに変貌させることが可能だ。市場にあるほとんどのドライバーは、可変スリーブを採用しておおり『ロフト』と『フェース角』を調整することができる。数例を挙げるとピンの「G410 PLUS」やタイトリストの「TS3」、ミズノの「ST200G」のようなドライバーなら、『ドロー』や『フェード』のオプションがあるし、コブラの「KING SPEEDZONE」、本間ゴルフの「TR20 460」、キャロウェイの「MAVRIK SUB ZERO」のように前後の可変ウェイトつきドライバーなら、『打ち出し角』や『スピン量』、『MOI(慣性モーメント)』も調整可能だ。可変スリーブによるドローフェード『調整』と可変ウェイト両方の調整機能が欲しいなら、ミズノの「ST200G」や「PXG 0811 X GEN2」という選択肢もある。
シャフトの選択
シャフトの果たす役割は極めて重要だ。既製品を求める場合もカスタマイズする場合も、重量帯と打ち出し角(最低でも低、中、高)に応じた豊富な種類のシャフトから選ぶことができれば、自分に合うドライバー、合わないドライバーをはっきりと見極めることができる。
飛距離・やさしさ・弾道打ち分けの優先順位
クラブメーカーはどこも「飛距離性能」と「寛容性(やさしさ)」の両方を謳うが、そのほとんどがブランドイメージに応じた落としどころを模索している。現実には、ボール初速を求めれば慣性モーメントが犠牲になり、やさしさの追求は飛距離微減やスピン量の微増に繋がる。求める飛距離と必要なやさしさ、そのバランスはプレーヤー自身が選択しなければならない。
またドローバイアス(スライス軽減)にするには重量をヒール側に配置する必要がある。つまり、そうするためにはクラブ後方の重量を削減することになるので、ドローバイアスのモデルは同じラインナップの標準モデルよりも寛容ではなくなる(MOIが低くなる)のだ。
価格
今回テストしたドライバーの価格帯は199〜650ドル。但し、カスタムシャフトにアップグレードしたものは含まない。結果が良かったのは高価格帯のクラブというのが傾向ではあるが、ツアーエッジ「EXS 220」は349.99ドル。最近では500ドルあたりが相場とはいえ、1ヤードいくらと考えるとそれが妥当な金額かどうかは悩ましいところだ。
ピン「 G410 SFT」 – スライスキラー
ピンの「G410 SFT」は「寛容性」で6位となり、テストしたクラブの中でも方向性が安定したドライバーの一つだった。『ストロークス・ゲインド』のパフォーマンスを見ると誤解する可能性もあるが、この「SFT」は万人向けに設定されたドライバーではないが、コースの右サイドを気にする必要はないモデルだ。テストした中でも、一番、左サイドに打球が集中していたドライバーだったし、最もドロー系のスピンがかかっていたこともわかった。
つまりこの「G410 SFT」は、スライス気味のゴルファーでもゴルフが楽しめるようにデザインされているドライバーということだ。
MYGOLFSPY版の「ストロークス・ゲインド」について
ストロークス ゲインド:元々は2011年からPGAツアーで導入されたプレーヤー指標。コースの難易度により大きく変動する「平均パット数」や「パーオン率」等では比較できない、選手の「本当の実力」を比較するために生まれた指標。同じコースでの全選手の平均ストローク数、あるいは同程度の難易度のコースや状況における平均ストローク数と自分のストローク数との「差」で示される。
「スコアを何で稼いでいるか」という観点で、「ドライバーショット」「アイアンショット」「アプローチショット」「パッティング」それぞれのショットが、平均値より何打“少ないか(ゲイン)“を数値化している。
MYGOLFSPYの「MOST WANTED」における製品テストでは、この「ストロークス・ゲインド」の考え方をベースとして、プレーヤーではなく“商品そのものの実力”を見るため、「ドライバー」「アイアン」「パター」等、各カテゴリーの「商品の実力」を比較する指標として用いている。
2020年『MOST WANTED』(ランキング)ドライバーデータ
※総合・トータルヤードー・ボールスピードランキングのみ3位までを表示。
<総合 ランキング>
1位 Titleist TS2 2位 Lynx Black Cat 3位 PING G410 PLUS
<トータルヤード ランキング>
1位 TaylorMade SIM 2位 Callaway Mavrik Sub Zero 3位 Tour Edge EXS 220
<ボールスピード ランキング>
1位 Honma TR-20 460 2位 Callaway Mavrik Sub Zero 3位 Cobra SpeedZone
専門家のアドバイス-フラット設定
もしボールがフックしやすいなら、「フラットセッティング」付きのドライバーならフックを“ミニドロー”に変えることができる。たとえばピンは、「フラットセッティング」に変更できるチップを開発、標準モデルよりも3度近くフラットに調整できるという。
2020年、高ヘッドスピードゴルファーが知っておくべきこと(箇条書き)
ここまで読んでくれたあなたに、もっと詳しい情報をボーナスで差し上げよう。友達にもぜひシェアしてほしい。ヘッドスピードが47m/s以上の人は、以下のメモを考慮に入れてほしい。
・PXG「0811 XF」は、高MOI、調節可能なホーゼルとカスタマイズ可能なウェイト配分のおかげで、高ヘッドスピードグループにとって最も「やさしい」ドライバーとなった。2019年でも最もやさしいドライバーにランクインしたことを考えれば、当然のことだ。
・ホンマ「XP-1」は、高いスピン量と方向性の精度が高かったため、高ヘッドスピードにも耐えることができた。 「ゼクシオX」も同じ部類に入る。どちらもより高スピードを促進する軽量オプションであり、ボールスピードを潜在的に向上させるドライバーだ。
・PING「G410 LST」は2020年Most Wantedドライバーテストの優勝者であることから、ヘッドスピードが速いゴルファーに特にメリットがあるのは当然だ。低スピンヘッドと調整可能ホーゼルおよびウェイトポートにより、各自のスイングに合わせてスペックを微調整できるのが特徴だ。
・おそらく「やさしさ」が改善のキーポイントになるはずだ。あなたに限った話ではないと思う。そこで、コブラ「SpeedZone Xtreme」を試打してほしい。「SpeedZone Xtreme」は、“すべて”のヘッドスピードカテゴリーのテストの中で、最も「やさしい」ドライバーの 1つとして今年もカムバックした。
・注目に値するのは、テーラーメイド「SIM MAX D」が高ヘッドスピードカテゴリーで総合3位になったこと。見た目が独特なソールデザイン(テーラーメイドは「イナーシャ・ジェネレーター」と呼ぶ)は、空気力学を取り入れているため、クラブのヘッドスピードを向上させる。
「LYNX BLACK CAT」-嬉しいサプライズ
「Lynx Black Cat」は、ストロークス・ゲインドで2位を獲得。このモデルには、交換可能なフロント・バックウェイトが装備され、スピンをカスタマイズすることができる。テスターは、マットブラック仕上げなのにクラブヘッドが小さいことに難点を示したが、それはルックスがパフォーマンスに影響を与えないことを証明したに過ぎない。
購入のためのその他ヒント
・つねにシャフトの長さを注意すること。より“長い”クラブを使えば、ナイスショットをしたときには飛距離を稼げるかもしれないが、「正確性」と「安定性」を犠牲にすることになる。実はクラブの計測法には業界基準がない。あるメーカーの言う“45.5インチ”が実際には“46インチ”に近い場合もある。したがって試打するときは、クラブの“実際の長さ”を確かめる必要がある。クラブ性能のおかげではなく、ただ単にシャフトの長さの違いで飛距離が伸びる場合もあるのだ。試打するシャフトを全部並べて、自分の目で長さを確認すれば、飛距離アップがクラブ性能のおかげなのか、それともシャフトの長さのなせる技なのか見極めることができるだろう。
・「ロフト角」を調整すると、同時に「フェース角」も変わる。ロフトをねかせれば(増やせば)フェースは閉じ、ロフトを立てれば(減らせば)開く。可変スリーブは、打ち出し角やスピン量の微調整が可能なだけでなく、打ち出しの方向を変えて正確性を向上させることもできる。知っていて損はないだろう。
・年齢と同様、ドライバーに刻印されている「ロフト角」は単なる数字にすぎず、意味がない時もある。どのドライバーにも、クラブに記されている「表示ロフト」、「クラブメーカーの設定ロフト」、そして「リアルロフト(実測ロフト)」の3つのロフトが存在する。結局のところ、3つのロフトがまったく別物だとすると、「重心位置」や「ダイナミックロフト(インパクトロフト)」はどうなってしまうのだろうか。あるメーカーの9.5度が別のメーカーで10.5度というようなことはあまりないが、とあるメーカーのモデルの9.5度を使っているからと言って、他のドライバーの9.5度を使えば良いということはない。
・「調整可能なウェイトシステム」といっても全てが同じように作られているわけではない。“調整機能”を最大限に活用した人は、クラブヘッドのより広いエリアに移動ができるシステムであり、かつ、よりクラブヘッドの外側に配置されたドライバーを探すとよいだろう。
2020年高ヘッドスピード向けベストドライバー -FAQ-
新しいドライバーの購入にあたり
Q:どのくらいの頻度でドライバーを買い替えるべきか?
A:まれに技術革新が続くこともあるが、通常メーカーがクラブの性能を向上させるには3~5年かかる。特にUSGAが規制を厳しくしたことから、今後の技術革新にはより時間がかかる可能性がある。おすすめするのは、今使っているユーティリティーよりも、明らかに性能が優れたクラブが見つかったときに買い替えることだ。もちろん、単に新しいドライバーが欲しいという理由で買ってもそれはそれで問題はない。
Q:巷には新たなフェーステクノロジーがあふれているが、明らかにボールスピードが違うドライバーは存在するのか?
A:テストしたドライバーの中で、絶対的にボールスピードを向上させるドライバーは存在しない。 確かに、一部のドライバーが他モデルよりも特定のゴルファーに機能したのは事実だが、これまでのところ、ある特定ブランドが競合ブランドに比べてボールスピードが大幅に勝ることを示す証拠はない。
Q:シャフトは重要か?
A:もちろんシャフトは重要だ。スピンや打ち出しの変化はそれほど大きくないが、シャフト交換によってショットの精度やボールのばらつき、総合的な安定性の向上が期待できる。
Q:ドライバーを試打する際は、何に注目すべきか?
A:飛距離だけにこだわらないでほしい。あと数ヤード伸ばしたいのはわかるが、方向性や安定性を示す細かい数値を見逃してはいけない(弾道測定モニターには平均値の下に小さく標準偏差が表示される)。よく見逃がされがちだが、これらの標準偏差が安定性に深く関連する。
Q:調節機能に「マイナス面」はあるか?
A:マイナス面はある。多くのデザインでは、調整可能ホーゼルは固定式よりもかなり重いため、必要ないエリアからウェイトを除くなど、ホーゼル部分のウェイトと相殺する策を見つける必要がある。さらに、可動式ウェイトシステムは、自由裁量のウェイト配分を消費する複雑な物理構造を必要とし、音と打感に影響を与えることがある。そうは言っても、フィッティングに多様性があるのは、そういった短所を相殺するだけのメリットがある。フィッターを利用しないゴルファーには特にメリットが大きい。
ロフト調節が打ち出し角やスピン量に及ぼす影響
ドライバーのロフトを1度調整すると、打ち出し角が約8度変わり、またスピン量が+/- 300RPM変わることをご存じだろうか?
『MOST WANTED』
Q:テスターはどのようにドライバーを選ぶのか?
A:オリジナルスペックから選ぶ方法をとっている。アップグレードオプションはなく、オリジナルのみ使用。ロフトは、表示ロフトが9度か10.5度を使い、メーカーラインナップの中で利用できるフィティング機能はすべて使う。つまり、ロフト角やライ角、フェースアングル調節機能(ホーゼル)、可動式ウェイト、シャフトオプションなどの機能は最大限利用する。
Q:どのようにMost Wantedドライバーを決定するのか?
A:Most Wantedドライバーを決定するにあたり、フォーサイトスポーツ「GC Quad(GCクワッド)」弾道解析機から集めたデータをもとに、あらゆるパフォーマンス測定項目を検証する。各テスターに対して、「ストロークス・ゲインド」を計算。テスター全体の平均ストロークス・ゲインドと比較して、最も高いストロークス・ゲインドを獲得したドライバーをMost Wantedテストの優勝者とする。
Q:ヘッドスピード別にどのようにテストを区別するのか?
A:特定のヘッドスピードで一番のパフォーマンスを発揮するドライバーを決めるため、テスターの平均ヘッドスピードに基づいて、データを複数グループに分類した。高ヘッドスピードグループでは、11人のテスターが【47m/s以上】を超えるヘッドスピードでドライバーテストに臨んだ。
Q:「最も飛ぶドライバー」はどのように決定するのか?
A:最も飛ぶドライバーを決定するにあたり、テスト全体の平均トータル飛距離とそのデータの統計的信頼性を考慮する。また、各クラブつき、それぞれのテスターが一番飛距離を出したショットに絞って検証した。
Q:「最もやさしいドライバー」はどのように選ぶのか?
A:「最もやさしい」ドライバーを選ぶには、ショットエリア(方向性)や、精度、ボールスピードとキャリーの平均標準偏差に注目する。
Q:ルックスや、打音、打感などの主観的なフィードバック要素はどれくらいランキングに影響するか?
A:まったく反映されない。MyGolfSpyのランキングは、弾道計測モニター上のデータとパフォーマンス測定項目のみで決まる
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