毎年恒例の『Most Wantedテスト』は、客観的かつデータに基づく性能評価には欠かせない絶対基準になりつつある。とはいえ、新しいギアを購入する際にはもっと多くの検討要素があり、それらが“主観”に基づくものであることも確かだ。

決して悪いことではない。

毎年発表する『エディターズチョイスアワード』は、MyGolfSpyスタッフの意見やゴルファーのフィードバック、またはその製品がこの先のゴルフ業界にどのような影響を与えるかといった予想に基づき、ゴルフ用品や、テクノロジー、メーカー企業などの各カテゴリーからひとつずつ選出する。一言でいうと、データを超えて、今年気に入った商品を“共有する場”である。

ゴルフ業界の進歩や革新と言ってもノーベル賞級のモノが出ることは滅多になく、目標に向けて一歩一歩進むのがせいぜいといったところだ。だが、それでも常にチャレンジャーは存在する。今シーズン、多くの優れた製品が登場したが、紹介する機会を逃した製品もあった。もちろん我々の注意をひかなかったカテゴリーもあった。

それでは、今シーズンの「アワード」を紹介しよう。


今年注目のストーリー:「コロナ」

コロナ,コブラ,テーラーメイド,タイトリスト,キャロウェイ,ミズノ,ODYSSEY,アディダス,アンダーアーマー,PXG,ゴルフ

『COVID(コロナ)』は、ゴルフ業界においても2020年の話題の全てであり、そして2021年もその話題の中心であり続けている。この影響でゴルフ場は満員になり、ゴルフクラブの製造や流通にまで問題を引き起こし、商品の発売時期も大幅にずれ込んだ。ラウンド予約が取れたとて、その注文した新しいギアでプレイするには数ヶ月かかることも多くあった。

少し前までは、早くて3日以内にカスタムオーダーを出荷するメーカーもあったが、現在は6〜8週間が標準だ。一部のメーカーでは、クリスマスや年末の繁忙期が来る前に注文することを勧めている。物流価格が上昇し、原材料の供給がますます不足しているため、コロナの影響は2022年まで続く可能性が十分考えられる。


今年の注目テクノロジー:コブラ「3Dプリントパター」

コロナ,コブラ,テーラーメイド,タイトリスト,キャロウェイ,ミズノ,ODYSSEY,アディダス,アンダーアーマー,PXG,ゴルフ

2020年後半、コブラはHP(ヒューレット・パッカード社)の『MetalJet(メタルジェット)』テクノロジーを駆使した3Dプリントパター「KING SuperSport -35」を発売した。このパターの登場により、「3Dプリント」の多彩な用途が世に知れ渡った。

そして今年、同社は10年ぶりにパターシリーズを発表。小売ラインナップでは、サポート構造のみに「3Dプリント」を採用したが、おそらく今後も「3Dプリンター技術」がゴルフクラブ生産の場で積極的に取り入れられることだろう。

完全な「3Dプリントヘッド」はしばらくお目にかかれないかもしれないが、クラブのパーツに採用されるようになる日は近いかもしれない。


今年注目のドライバー:テーラーメイド「SIM2」

コロナ,コブラ,テーラーメイド,タイトリスト,キャロウェイ,ミズノ,ODYSSEY,アディダス,アンダーアーマー,PXG,ゴルフ

2021年はドライバーにとって収穫の多い年だったが、その中でもテーラーメイド「SIM2」のラインナップは際立っており、ほとんどのゴルファーのキャディバッグで見かけるほどだった。

「SIMシリーズ第2弾(おそらく最終回)」で同社はチャンスをつかみ、特徴的だった「可変ウェイト」を捨てて、洗練された形状と革新的ながらもリスクの高いアルミニウム製バックピースを採用。それが私達の心を掴んだ。私達だけでなく世界のゴルファーもだ。

新しい素材を取り入れれば失敗する可能性もあるが、同社はあらゆるゴルファーに合うように3種類のモデルを揃え、「No.1ドライバーブランド」としての地位を確固たるものにした。


今年注目のフェアウェイウッド:該当なし

コロナ,コブラ,テーラーメイド,タイトリスト,キャロウェイ,ミズノ,ODYSSEY,アディダス,アンダーアーマー,PXG,ゴルフ

フェアウェイウッドは、最も買い替え頻度の低いクラブだ。それを考えると、メーカーが影響を与えるのが難しいクラブだということがわかる。それを踏まえて、このカテゴリーには「アワード」を授与しなかった。

Mygolfspyスタッフにも確かにお気に入りのモデルはある。タイトリスト「TSi」シリーズの人気は確かだし、『Most Wantedテスト』ではスリクソン「ZX」がテスターから高評価を得た。キャロウェイの飛距離にも定評がある。

とは言え、業界を覆すような画期的なフェアウェイウッドが見つからなかったため、「該当なし」とした。





今年注目のユーティリティー:ビッグユーティリティー

コロナ,コブラ,テーラーメイド,タイトリスト,キャロウェイ,ミズノ,ODYSSEY,アディダス,アンダーアーマー,PXG,ゴルフ

特定のモデルは見当たらないが、コブラとキャロウェイがそれぞれ「KING Tec(キング テック)」と「Epic Super(エピックスーパー)」ユーティリティーを発売したことで、大幅に遅れをとっているこのカテゴリーを活性化させたと感じている。

より大きくなったデザインが、ユーティリティー特有の小さな投影面積ゆえの技術的な制約をうまく解決しながら、より大きな飛距離と高いMOIを実現することになった。

大型サイズで飛距離を重視した設計のユーティリティーは、飛距離がコントロールできるコンパクトデザインのフェアウェイウッドと差があるわけではない。ゴルファーは飛距離にこだわるため、強気な価格設定をするための新たなカテゴリーと捉えられがちだが、それが「性能」につながるなら何ら問題ないだろう。


今年注目の「上級者向け」アイアン:キャロウェイ「APEX PRO(エイペックスプロ)」

コロナ,コブラ,テーラーメイド,タイトリスト,キャロウェイ,ミズノ,ODYSSEY,アディダス,アンダーアーマー,PXG,ゴルフ

性能差が出にくいこのカテゴリーで、2021年『Most Wanted上級者向けアイアンランキング』の圧倒的な勝者はキャロウェイ「Apex Pro」だった。「Apex」シリーズは非常に人気があり、最も売れているモデルでもある。また「Apex Pro」は、実際のコースでのフィーリングも素晴らしいと絶賛されている。

確かに、「上級者向けアイアン」のほとんどが同じような見た目や、機能を備えているため、カテゴリー内で目立つということはあまりない。だが、「Apex Pro」はそれを覆した。


今年注目の上級者向け飛び系アイアン:該当なし

コロナ,コブラ,テーラーメイド,タイトリスト,キャロウェイ,ミズノ,ODYSSEY,アディダス,アンダーアーマー,PXG,ゴルフ

タイトリスト「T100S」 とテーラーメイド新作「P790」は発売されたばかりである一方、スタッフお気に入りのミズノ「MP-20 HMB」はサイクルの終わりに差しかかる。

「上級者向け飛び系アイアン」のカテゴリーでは、常に「性能」と「見た目の美しさ」を両立し続けている必要があるが、今年は発売サイクルからずれていたため特定のブランドを選ばず、「該当なし」とした。


今年注目の中級者向けアイアン:ミズノ「JPX921 HOT METAL(JPX921ホットメタル)」

コロナ,コブラ,テーラーメイド,タイトリスト,キャロウェイ,ミズノ,ODYSSEY,アディダス,アンダーアーマー,PXG,ゴルフ

ミズノ「JPX 921 Hot Metal」は、決して「中級者向けアイアン」アイアンの見た目ではない。派手さはなく、テクノロジーを大袈裟にひけらかすデザインでもなく、いわゆる“ミズノらしい”すっきりとしたデザインを採用しているミズノの主力商品ほどコンパクトなヘッドではないが、「Hot Metal」はより上手いプレーヤーをも魅了する。

また、「JPX Hot Metal」の優れた点は、「飛距離」、「やさしさ」、そして総合的な「性能のバランス」がほぼ完璧に保たれていることだ。『Most Wantedテスト』で繰り返し選ばれる「JPX Hot Metal」は、「中級者向けアイアン」のお薦めのトップに常に君臨するモデルだ。


今年注目の「初級者向け」アイアン:コブラ「FMAX AIRSPEED(エフマックス エアスピード)」

コロナ,コブラ,テーラーメイド,タイトリスト,キャロウェイ,ミズノ,ODYSSEY,アディダス,アンダーアーマー,PXG,ゴルフ

「初級者向け」アイアンが「中級者向け」アイアンと同じくらいに飛ぶようになった今、より操作性が高いアイアンが求められるようになった。そこで登場したのが、コブラ「FMAX Airspeed」だ。

「FMAX」は、このカテゴリーの他のモデルよりも「高い打ち出し」と「スピン量」が特徴。「飛距離」に関しては最高とまでは言わないが、ボールを高く打ち出して、安定したショットを打ちたいゴルファーにとって(かつては「初級者向けカテゴリー」の目標だった)、「FMAX Airspeed」は突出している。


今年注目のウェッジ:該当なし

コロナ,コブラ,テーラーメイド,タイトリスト,キャロウェイ,ミズノ,ODYSSEY,アディダス,アンダーアーマー,PXG,ゴルフ

ウェッジは、2021年『Most Wantedウェッジランキング』のテスト結果を待って今年は「該当なし」とした。決して注目に値するウェッジがないということではない。

テーラーメイドの「ミルドグラインド3(MG3)」は、テーラーメイドがウェッジ部門の王者だと証明してくれたし、ピンの「Glide Forged Pro(グライド フォージドプロ」の「ハイドロパール 2.0」仕上げは、「濡れた状態」での「スピン性能」が他のモデルより遥かに優秀だった。

さらにボーケイの多彩なバウンス角とグラインドオプションがフィッティングに多様性を与えてくれ、まさか注目を集めるとは思わなかったミズノ新「T22」の存在感も圧倒的だった。このように好きなウェッジはたくさんがあるが、ウェッジカテゴリー内で確実に目立つ商品は見当たらなかった。


今年注目のブレードパター:該当なし

コロナ,コブラ,テーラーメイド,タイトリスト,キャロウェイ,ミズノ,ODYSSEY,アディダス,アンダーアーマー,PXG,ゴルフ

ブレード(またはブレードっぽい)パターでは、同じようなデザインが揃う。ある程度、大手メーカーが同じようなデザインを作るため、群を抜いて目立つモデルはない。他のカテゴリー同様、好みのモデル、ワクワクするパターはあるが、性能や価格の観点から該当するものはないと判断した。


今年注目のマレットパター:オデッセイ「TEN」

コロナ,コブラ,テーラーメイド,タイトリスト,キャロウェイ,ミズノ,ODYSSEY,アディダス,アンダーアーマー,PXG,ゴルフ

オデッセイゴルフは、2021年に発売されたマレットパター「TEN」で、複数の素材を用いた高い技術を発揮した。「Team Toulon(チーム トゥーロン)」は、元祖「Stroke Lab TEN」のヘッド形状をエッジが利いた箱型で穴のない、高MOI設計に微調整した。その結果、『Most Wantedテスト』で卓越した性能が見られ、多くのゴルファーを満足させた。

オデッセイ「TEN」マレットシリーズは、数あるパターの中でも最も多彩な「アライメントオプション」を特徴としている。

シンプルがお気に入りなら1本のラインの「Single Line」を、また好みによって「2Ball」 やラインの入った「2Ballトリプルトラック」、もしくは「2-Ball Tour Lined(2-Ballツアーライン)」を選ぶことも可能だ。「アームロック」やシャフトオプションを追加すれば、「TEN」はすべてのプレースタイルに対応してくれる。


今年注目のゴルフボール:タイトリスト「PRO V1/PRO V1X」

コロナ,コブラ,テーラーメイド,タイトリスト,キャロウェイ,ミズノ,ODYSSEY,アディダス,アンダーアーマー,PXG,ゴルフ

ゴルフボール業界で、どのメーカーも需要に追いつくのに苦労している中、タイトリストは私たちの期待していた通りに、「No.1ゴルフボール」の後継モデルを発売した。

新「Pro V1」と「Pro V1 x」は、2021年『Ball Lab(市場に出回るゴルフボールの「品質」と「一貫性」を調査するテスト)』の中でも「品質の一貫性」に優れた数少ないボールで、両モデル共に素晴らしい結果を残した。性能のニーズはさまざまだが、「品質」と「一貫性」に関しては「ProV1シリーズ」に勝るものはほぼない。


今年注目のゴルフシャフト:三菱「MMT」アイアン用シャフト

コロナ,コブラ,テーラーメイド,タイトリスト,キャロウェイ,ミズノ,ODYSSEY,アディダス,アンダーアーマー,PXG,ゴルフ

2021年の新製品ではないが、今シーズン三菱の「MMT」アイアンシャフトが高性能アイアン用カーボンシャフトの誰もが認めるリーダーに浮上した。

フィッターの間では「MMT」の人気が高まっているが、これが十分な証拠ではないと思うならアブラハム・アンセルが「MMT」でPGAツアー「WGC-フェデックスセントジュードインビテーショナル」で優勝したといえば説得力があるだろうか。また、リッキー・ファウラーも「MMT」を使い出してから上々のようだ。

スチールシャフトから完全に入れ替わるには時間がかかるが、PGAツアーでも試合で3~6名の選手が使っており、少なくとも10人以上が選択肢のひとつとして「MMT」シャフトが刺さったアイアンを所有している事実から、三菱のカーボンシャフトが上級者を惹きつけていることは明らかだろう。


今年注目のトレーニング器具:「STACK(スタック)」

コロナ,コブラ,テーラーメイド,タイトリスト,キャロウェイ,ミズノ,ODYSSEY,アディダス,アンダーアーマー,PXG,ゴルフ

「パットを制する者はゲームを制する」とよく言われてきたが、それでもドライバーの飛距離がスコアに大きく関係するといった証拠が増えている。そのために、ヘッドスピード向上に役立つツールを見かけることが多くなった。

ピンのマーティ・ジェルトソン氏とピンの技術コンサルタントでもあり、ゴルフスイング研究の第一人者であるサショ・マッケンジー氏によって開発された「Stack(スタック)」システムは、ヘッドスピードを次のレベルに引き上げてくれるツールだ。

ユーティリティーほどの長さの「Stack(スタック)」には、精密加工された5つのウェイトが含まれている。素晴らしいのは、アプリと連動しゴルファーの進捗状況を追跡し、理想的なスイングになるようトレーニングスケジュールを組んでくれるところ。スイングと次のスイングに入るまでの秒数までも教えてくれる。(因みに私はスケジュールから遅れている…)

「Stack(スタック)」は、他のヘッドスピードアップを目的とした練習器具よりも価格は少し高いが、最先端のトレーニングプログラムだ。


今年注目のグローブ:PXG「PLAYERS GLOVE」

コロナ,コブラ,テーラーメイド,タイトリスト,キャロウェイ,ミズノ,ODYSSEY,アディダス,アンダーアーマー,PXG,ゴルフ

テストの新参者PXG「Players」グローブにはかなり感銘を受けた。2021年「ベストプレミアムグローブ」で最優秀グローブに選ばれた。

非常に快適で、まるでグローブを着けていないような着け心地だ。最高品質のカブレッタレザーを使用しているため、グリップ力は抜群でスイング中の着け心地も良く、間違いなく今年の「エディターズチョイス」に相応しい。


今年注目の距離計:プレシジョン「PRO R1 SMART」

コロナ,コブラ,テーラーメイド,タイトリスト,キャロウェイ,ミズノ,ODYSSEY,アディダス,アンダーアーマー,PXG,ゴルフ

プレシジョン「Pro R1 Smart」は、高価格な距離計に搭載する全てのオプションを備えているが、スロープ(勾配)機能や気圧情報を考慮し、個人の弾道データに基づいてどのクラブを使用すべきか提案してくれる「My Slope」機能が加わる。

また、「Pro R1」の画像は非常に鮮明で、読みやすいディスプレイが特徴。マグネットもついていてカートやクラブなどの金属にくっつけることが可能なのも嬉しい機能だ。

他のブランドより価格は抑えられ、「Precision Pro」は低価格ですべての機能を備えている。


今年注目のスパイクシューズ:アンダーアーマー「HOVR(ホバー)」

コロナ,コブラ,テーラーメイド,タイトリスト,キャロウェイ,ミズノ,ODYSSEY,アディダス,アンダーアーマー,PXG,ゴルフ

アンダーアーマー「HOVR(ホバー)」は、今年の『Most Wantedスパイクシューズランキング』で抜群の「安定性」、「トラクション(グリップ力)」、「快適性」を見せ1位に輝いた。ゴルフシューズと聞いて「アンダーアーマー」を思い浮かべる人は少ないだろうが、「HOVR」の登場でビッグネームの仲間入りを果たしたと言っても過言ではない。


今年注目のアディダス「TOUR 360 XT-SL TEX」

コロナ,コブラ,テーラーメイド,タイトリスト,キャロウェイ,ミズノ,ODYSSEY,アディダス,アンダーアーマー,PXG,ゴルフ

アディダス「ツアー360XT-SL TEX」は、超軽量な上に「安定性」「トラクション(グリップ力)」「快適性」を兼ね備え、2021年『Most Wantedスパイクレスシューズランキング』の勝者に選ばれた。

他のブランドがスタイルやデザインを重視する一方で、アディダスは高性能スパイクレスシューズが並ぶこのカテゴリーで群を抜いていた。


今年注目のゴルフ企業:テーラーメイド

コロナ,コブラ,テーラーメイド,タイトリスト,キャロウェイ,ミズノ,ODYSSEY,アディダス,アンダーアーマー,PXG,ゴルフ

ゴルフの販売実績を持つすべての企業を考えると、すべてのブランドが該当するのだが、私達の意見では「テーラーメイド」が最も賞に相応しいと考えた。

「SIM2」のラインナップについてはすでに述べたが、「Pシリーズ」アイアンも最高のルックスを誇ることは間違いない。(さらに性能に関する不満もあまり聞かない)ボールビジネスもまた成長しており、ウェッジに関しても同じことが言える。

テーラーメイドは、基本的な部分で共感できる上に、ビジネス的にも良い方向に進んでいる。今でも重点に置くのはPGAツアープロだが、一般ゴルファーをないがしろにはしない。良い部分を挙げたらキリがないが、一番は数年前に4億2500万ドルで売却された会社が2021年には16億ドルまで成長したことだ。

競合他社と異なり、ほぼクラブ一筋であることを考えると、これはあり得ない数字であり、この数字こそがテーラーメイドの価値を物語っているように思う。