・PXGが「0211」メタルウッドシリーズの新作を発売
・製品の品質を落とすことなく低価格を実現
・価格はドライバーが299ドル(発売時は219ドル)。フェアウェイウッドとハイブリッドは249ドル(発売時はそれぞれ169ドルと149ドル)
初心者(または初級者)向けドライバーの価格が300ドル(約45,000円)するようになったのはそんな昔の話じゃない。
PXGの2022年「0211」ドライバーのように、当時の初心者向けクラブは“主力”ドライバーにあるオプション機能はなく、『アジャスタブルホーゼル(ロフト角・ライ角を調整する可変スリーブ) 』もなかったはず。当然、『可変式ウエイト』もなかったが、性能には優れていた。
歴代の初心者向けドライバーといえば、テーラーメイドの「Burner(バーナー)」や「RocketBallz(ロケットボールズ)」そして、キャロウェイの「X HOT」などがあるが…。
今や価格が300ドルから400ドルになり、いつの間にか(大型量販限定のクラブやヘッドスピードの遅いゴルファー向けにデザインされたものを除き)マス(大衆)向けのボチボチ手頃な価格のクラブは無くなってしまった。
みなさんが認識しているかはさて置き、ゴルフ業界の多くの企業が「プレミアムブランド」、言わば「最高級ブランドとして本物志向の特別な商品やサービスを提供する」という方向性へと移り変わってから、最高級シリーズ以下のゴルフクラブを販売しなくなった。
事実上、ゴルフメーカーは中間に位置する層のクラブ作りを止めたということになる。
しかし、不幸にも、これは同時に高価格帯の商品と安価なB級品との格差が広がっていることを意味する。もちろん、中には廉価モデルが好きという人もいるだろから、最後の部分に対しては異論があるだろう。
その気持ちはわかる。でも、今度お店に行ったらお値打ち品をよく見てみてほしい。
大抵は見た目で判断できる。全体的に洗練さに欠けていることが分かるはずだ。ズサンとすら思うかも。中身について言えば、素材の選択や製造品質が廉価にさせる要因となっていることもあるのだ。
なぜ「0211」なのか?
2022年のPXG「0211」ドライバー(フェアウェイウッドとハイブリッドも同様)は、素材や製造の品質を落とすことなく十分なパフォーマンスを提供する手頃な価格のモデルで、高級モデルとお値打ち価格のモデルとの隙間を埋めることを意図したクラブだ。
これは、前作の「0211」シリーズでもある程度見られたことだが(現行の在庫処分品には多くあった)、PXGはどうにかして、この新作モデルで「0211」の市場における地位を確固たるものにしようとしているようだ。
2022年のPXG「0211」ドライバー、フェアウェイウッド、ハイブリッド(ユーティリティ)におけるパフォーマンスの目標はシンプルで、「簡単に打てて、すぐに好きになる」ようにデザインされている。
デザインそのものもシンプルで分かりやすい。チーフ・プロダクト・オフィサーのブラッド・シュワイガート氏は、PXG「0211」シリーズを“クリーンでクラシカル”と表現しており、こうした言葉はこのブランドから連想されるワードではないが、2022年の「0211」シリーズにおいては一理あるということなのかも知れない。
「秘すれば花」とでも言っておこうか。「0211」ドライバー、フェアウェイウッド、ハイブリッドには、どれも『アジャスタブル(調整)ウエイト』が搭載されておらず、PXGのギアの中で全くウエイトがないシリーズとなっている。
また、ドライバーにはPXGの主力モデル「0311」シリーズと同じ『アジャスタブルホーゼル(ロフト角・ライ角を調整する可変スリーブ)』が採用されているが、フェアウェイウッドとハイブリッドのホーゼル(ネック形状)は固定式だ。
そして、PXGは今回、様々な部品を削減(それに伴い、コストも)しているが、素材や製造工程の基準は手を抜いていない。
これは、ゴルファーが「0211」を購入し、そして気に入ってくれたら、いずれは「0311」にアップグレードしてくれるかもしれない。理想的にはキャディーバッグの中身をPXGのクラブでいっぱいにしてくれるのでは、と期待しているからだ。
これでもまだ、PXGの価格設定に納得いかないって?ならば俯瞰して見て欲しい。そこには、適正に利幅が取れて、その次に顧客を(できれば繰り返し)満足させる価値があるということがわかる。
つまり特筆すべきは、PXGの全シリーズが、市場平均を大きく下回る価格ではないってこと。そして、PXGが従来のように小売店に対してマージンの一部を渡す必要がないことも重要だ。
当然、PXGの戦略がうまくいく保証など全くないが、なぜ高価格帯クラブのイメージが強いPXGがドライバーを299ドルで売り、フェアウェイウッドとハイブリッド(ユーティリティ)を229ドルで発売しているのか不思議に思っているなら、同社が長期的な視点に立っているからというのが、シンプルな答えとなる。
では、お伝えすべき背景は伝えたと思うので、ここからはPXGの新製品を見ていこう。
PXG「0211」ドライバー
まずは構造から。2022年の「0211」は、「Ti-811」ボディに「Ti-412」フェースの構造になっている。
「0311」シリーズで採用したカーボンファイバークラウンはないが、今回のフェース素材は、業界標準よりもレスポンスが良く、ボール初速の向上に繋がるようだ(PXGのロボットテストでは、新作「0211」のヘッドスピードが44.7m/sの場合、初速が0.72m/sアップしたという)。
(明らかな嫌味はさておき、新しい「0211」ドライバーはもっと初速があるべきだ。現在119ドルで販売されているドライバーを超えるのは当たり前だ)
「0211」のヘッドは、PXGの高価格帯クラブと同様、ロボットによる研磨が施されている。
この工程を行うことで、正確性という点で非常に重要な「CT値(反発性能)」と「バルジ(水平方向・横方向の曲がり)&ロール(フェースの上下方向・縦方向の曲がり)」の径により高い一貫性をもたらすことが可能となる。またこれは、PXGが高価格帯のクラブで採用しているプロセスと同じでもある。
「0211」ドライバーの性能属性に関して言うと、同社ではこの「0211」を“最適化されたヘッドデザイン”のクラブとしている。つまり、シンプルに言うなら、最多層向けにバランス良くデザインされたモデルということだろう。
こうした点から、ウエイト特性も中間層向けにしていると考える方が妥当だ。「0211」を低スピン系と考えるべきではないし、PXG「0311 XF」のように「MOI(慣性モーメント)」を最大限まで押し上げるようなクラブでもないということ。
これは「寛容性」がないというわけではなく、MOIは5,000を超えており、これは偶然だが、市場にある多くのクラブが落ち着く数値でもある。
前作の「0211」と比べると、ボール初速がアップしたことに加え、打ち出し角もやや低く、スピン量も若干軽減されている。こうした全てが相まって、前作よりも5ヤード飛距離アップしているとのこと。また、飛距離増だけでなく、バラつきも多少抑えられているということだ。
PXG「0211」ドライバーの形状の魅力
「見た目」に関して言うと、形状はかなりクラシカルだ。クラウンは、ブラックの塗装が均一に施されている。「0311」のように目立つ感じではないが、クラウンのトレーリングエッジ(ソール後方とバックフェースの境界線)に沿った白いラインは、邪魔になることなく視覚的な興味を引く。
2021年モデルの「0211」ドライバーは、2021年の『Most Wantedテスト』でビックリするような結果を残したが、このお値打ち価格になっても、それ以上の成績になることを期待したいところだ。
2022年のPXG「0211」ドライバーのロフト角は9度、10.5度、12度がラインナップ。
追加料金がかかる場合もあるが、PXGのカタログにあるシャフトを装着することも可能だ。
人員整理のリスクがある中、2022年のPXG「0211」ドライバーの価格は発売当初219ドルだったが299ドルとなっている。
PXG「0211」フェアウェイウッド
2022年のPXG「0211」フェアウェウウッドとハイブリッド(ユーティリティ)もシンプルさに主眼が置かれている。上記でお伝えしたように、ホーゼルは固定式で、どちらもアジャスタブル(調整)ウエイトは搭載されていない。
となると、調整できること(あるいは調整について考えること)はわずかしかない。これが歓迎すべき簡素化なのか、お呼びでない機能のスリム化なのかは、気になる人には気になる点だろう。
一方、PXG側から見ると、可変式ウエイトなどの調整機能をなくし、それをサポートするために必要となる複雑な構造をやめることでコスト削減が可能となる。
今回のフェアウェイウッドとハイブリッドは、ともに「AM355」ステンレスボディに「HT1770」フェースという構造だ。
素材に関してはあんまり気にしないかもしれないが、PXGが素材に関して手抜きをしていないことには注目すべきだろう。「HT1770」は、「GEN5」のフェアウェイウッドとハイブリッド(またアイアン)でも採用されている。
またドライバー同様、「0211」フェアウェイウッドとハイブリッドもロボット研磨が施されており公差は小さい。
さらに「0211」フェアウェイウッドは、「GEN5」フェアウェイウッド同様、新たなフェース形状も展開(PXG的に言うならば軍事的な言葉で“配備”と言って欲しいだろうけど…)している。
正面から見ると、今回の形状は、従来のモデルよりもかなり四角く見える。このデザインを採用することで、サイドがより真っ直ぐ(曲線が小さくなる)になり、ウエイトをヒールとトゥにさらに配置することが可能になるのだ。
これはMOI(寛容性の指標)において基本的なこと。また、ワイドソールにもなっているので、高打ち出しを可能にする、つまり簡単にボールを上げるために、低重心にできるメリットもある。
さらに、固定されたホーゼル(ネック形状)により、一般的には好ましくないヘッド上部のウエイトも若干軽減している。
PXGによると「0211」は、素晴らしい「打音」と「打感」に加え、スピン量も“イイ感じ”になっているはずとのこと。繰り返しになるが、PXGは市場の中間に位置する層が満足することを追求しているということだ。
「0211」フェアウェイウッドのパフォーマンス
PXGのデータによると、「ボール初速」と「打ち出し角」は前モデルとほぼ同じで「スピン量」は若干少なく、「トータル飛距離」はアップしているとのこと。
PXGのテストにおいて、明らかに安定していることが分かった2022年モデルの「0211」フェアウェイウッドのバラつきが、前作とは大きく異なることに気づくだろう。特にこれは、一番飛んだ時と飛ばなかった時の差で現れているという。
スペックとフィッティング
2022年の「0211」フェアウェイウッドは、PXGクラブのフィッティングを行っている店舗にて購入できる。小売店で発売されるヘッドはシャフトに固定されているが、フィッティング用のヘッドは調整可能なので、様々なシャフトを簡単に試すことができる。
「0211」フェアウェイウッドの全体的な形状は、アドレス時にやや丸みを帯びている(業界が好む“クラシカルな洋梨形状”とは反対)ように見え、その点では「0311」と似ている。これが特に不快に感じるということはないが、全てのゴルファーが求めている形状というわけではないだろう。
個人的には、特に5番ウッドがややアップライトに思える。本当にそうなっていようが、自分の目の錯覚だろうが、できるだけ多くのゴルファーが扱いやすくなるようにデザインされているクラブというなら、確かにアップライトの方が良いだろう。
2022年のPXG「0211」フェアウェイウッドは、3番(15度)、5番(18度)、そして7番(21度)がラインナップ。
価格は、発売当初169ドルだったが249ドルとなっている。
PXG「0211」ハイブリッド
新作「0211」シリーズの他のモデル同様、「0211」ハイブリッドの特徴は、フェアウェイウッドをかなり反映したものとなっている。同じ構造、ロボット研磨、そしてスクエアフェースデザインであることが分かるはずだ。
これにより、「寛容性」とともにコントロールされたスピン、秀逸な「打音」と「打感」がもたらされる。「打音」と「打感」は主観的なことではあるが、数字で表せられることで言うなら、PXGのロボットテストにおいて、新しい「0211」は高打ち出し、低スピンで約0.447m/s初速がアップしていることが分かったという。
これは約6ヤードの飛距離アップに値するので、これならロングアイアンを使わなくなる理由として十分なはずだ。
全体的に見て、2022年のPXG「0211」ハイブリッドはミッドサイズに分類できる。大型ハイブリッドと同類でないことは確かだし、他よりも目立って小ぶりというわけでもない。
小ぶりの顔が好きな私にとってはちょっと大きく感じるが、易しく打てるハイブリッドを求めるゴルファーにとっては、おそらくドンピシャだろう。
スペックとフィッティング
他の全ての「0211」ラインナップ同様、ハイブリッドもPXGのフィッティング可能店で購入でき、フェアウェイウッドのように調整可能なヘッドなら異なるシャフトで試打することができる。
2022年のPXG「0211」ハイブリッドは3番から7番までラインナップ。興味がある人向けに伝えておくと、ロフト角は19度、22度、25度、29度、31度となっている。
価格は、発売当初149ドルだったが249ドル。
2022年のPXG「0211」メタルウッドは現在発売中。
Leave a Comment