アシックスは、全世界のスポーツシューズ業界においてまずまずの巨大企業だ。
世界全体の売上高36億ドル(約3,936億円)は巨額に聞こえるが、それが「まずまず」という言葉の所以となる。
何せ、ナイキは280億ドル(約3兆614億円)を売り上げ、アディダスは240億ドル(約2兆6,240億円)の売上高を誇る一方で、アシックスの規模は小さく、利益ベースでみると2014年以降、誤った方向に進んでいるのだ。
株価を見ると2015年は一株あたり30ドルだったが、今夏に10 ドル程度にまで落ち込み現在は16ドル程度まで持ち直している。
様々なことが起きているアシックスだが、新たなパートナーを見つけており、新市場に参入することはビジネスの回復戦略上、良いことだろう。
それだけに、アシックスが、北米のゴルフシューズ市場に参入するために、同じく日本の資本が入ったスリクソン/クリーブランド/ゼクシオと提携することに驚きは全くない。
ニーズとチャンスがマッチ
アシックスは1955年からゴルフシューズを製造しているが、北米市場へは進出してこなかった。
財務レポートによると、近年のスリクソンブランドはソフトグッズ部門で存在感はないが、北米で予想以上の売上高を記録。両者にとってチャンスというわけだ。
「日本でのアシックスさんとの長年の関係がまたとない契機となっている」とMyGolfSpyに話すのはスリクソンの北米マーケティング・マネージャーのライアン・ポランコ氏。
「アシックスのクオリティと理念は、我々のブランドと企業哲学に密接に結びついている」。
具体的に伝えると、今回スリクソンはアシックスのゴルフシューズ2モデルを北米で展開。
紐式スパイクレスのゲルコースとスパイクタイプのゲルコース Duo BOAで、こちらは名前の通りBOAレーシングシステムを採用している。
スリクソンでは、クロストレーニングでアシックスを履いている層に対して、今回のシューズを訴求したいようだ。
「アシックスのブランド愛好者は最高の品質とパフォーマンスを求めている」とポランコ氏。
「アシックスには多大な信頼を置いているし、今回のシューズはスポーツ愛好家とゴルファーにとって魅力的なだけに、成功するだろう」。
ゲルコース
日本でのアシックスの歴史は1949年に遡る。それから数十年に渡り、バスケットボール、ランニング、陸上、山登り、バレーボール、サッカー、さらにはスキーのジャンプ用まで、考えらえるだけのスポーツシューズを生み出してきた。
我々の知るアシックスは、1977年に3社が合併して誕生し今に至っている。
そして、アシックス(ASICS)の名前は、ラテン語で「健全な身体に健全な精神があれかしと祈る(べきだ)」を意味するAnima Sana In Corpore Sanoの頭文字が由来していることをお伝えしておこう。
「アシックスは巨大な世界的スポーツブランドで、パフォーマンスフットウェア分野のトップとして広く知られている」とポランコ氏。
「我々のゴルフ企業としての展開と製品開発は、アシックスの品質、パフォーマンス、イノベーションの歴史に完璧にマッチしている」。
今回発表されたアシックスのゴルフシューズは、同社の他スポーツと同様にネーミングとなっているゲルが特徴。
ゲルとは、幅広い研究と開発活動を担うアシックスのスポーツ工学研究所で開発された衝撃吸収システムで、同社ランニングシューズを代表する特徴となっている。
マラソンで走るよりも18ホールを歩く方が衝撃は少ないだろうが、インソールのFlyteFoamのクッショニングと同じように、ゲルにより踵部分のクッションと心地良さが得られる。
両モデルとも、アシックスのランニングシューズに非常に似ているが、同社によればバランスと安定性を確保するつま先と側部のラップを含めた、ゴルフに特化した機能があるとのこと。
成形されたヒールフレームにより、スイング中のサポートも向上するようだ。
スパイクモデルもスパイクレスもかなりの軽量化に成功しており、使い慣らしも不要。
つま先部分は足が幅広なゴルファーにもフィットするように広くなっており、実際のところ圧迫感もない。そして両モデルとも、安定性をアップさせるFGトラクション・ソールパターンが採用されている。
価格と発売時期
スパイクモデルのゲルコース Duo BOAは定価が179.99ドルでサイズは6〜13までがラインナップ。
カラーはブラック/ガンメタル、ホワイト/ピーコート、ピーコート/ピュアシルバーの3色展開となっている。
ゲルコースグライド・スパイクレスモデルは129.99ドルで、サイズはメンズ、レディースモデルともに6〜12まで。
カラーはメンズがブラック/シルバー、ホワイト/ポラーシェード、ポラーシェード/ブラック、アシックスブルー/ホワイトの4色展開。
レディースモデルは、メトロポリス/ホワイト、オーチャード/ホワイトの2色となっている。
またこれはスリクソンによる初の試みでもあるだけに、同社としては成果が出るには時間がかかるとしている。
「製品ラインも簡単なところからスタートし、この先の2、3年で拡張する予定だ」とポランコ氏。
「弊社各ブランドの取引先であるコース内外の店舗、主要アカウントの理解もあり、棚にもスペースはある。当初は小型店から拡充していきたい」と話した。
スリクソンのゴルフシューズの噂は一年くらい前から広まっていたが、今回の提携はスリクソンのブランドがついた製品よりも理にかなっているだろう。
アシックスは、北米でもスポーツブランドとして確立されているし、アジアにおいてはスリクソンとの長きに渡るパートナーシップがあるからだ。
これでアシックスにとっては世界最大のゴルフ市場への販路を得たことになるが、マーケットがさらなるゴルフシューズを求めているかは議論の余地がある、ということは間違いないだろう。
スリクソン/クリーブランド/ゼクシオにとってマイナス面は最小限であり、これによって店舗の販売スペースも多少増やすことも可能だろう。
また、アシックスはスポーツアパレルも展開しているが、スリクソンが飛躍を遂げるかは未知数だ。
シューズの発売日は本日からで、特約ゴルフ店や専門店、そしてスリクソンのホームページで購入できる。
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