ドライバーは、どこにいっても注目を集める。
ミュージカルに例えるなら、マドンナや、ブリトニー・スピアーズ、マライヤ・キャリーのような存在だ。
商品のお披露目ではドライバーが常に中心的存在で、ドライバーが気に入らないと、アイアンやウェッジ、パターまでフィッティングのチャンスは回ってこない。
言い換えれば、ドライバーへの注目度はフィッティングへの関心の高さを表す。
良し悪しは別にして、ドライバーフィッティングの90%はシャフトにかかっていて、ヘッドはとりあえず付随してくるものだと信じる人がいるほどだ。
それくらい、400ドルのカスタムシャフトには多くの魅力が詰まっている。
プレー性能を上げたいなら、最適な“ドライバーヘッド”と“シャフト”選択はマストだが、アイアンにも同じことが言える。
過去にもシャフトメーカーを取り上げたことがあるが、今回は60年の歴史を誇り、ツアーモデルから軽量スチールモデルまで幅広く扱う日本のシャフトメーカーに注目したいと思う。
スピンと弾道
ドライバーとは非常にシンプルなクラブだ。
「強く、真っ直ぐ打つだけだ。」とはアメリカでトップ100に入るフィッターの言葉だが、アイアンの場合、ロフトが変わり方向性が安定しないだけでスコアに影響がでるため、ボールの飛びやショットの精度に関わるすべてを考慮したシャフトが必要だという。
それだけ自分に適したアイアンシャフトを見つけるのは至難の業である。
そこでもっと高弾道のボールを打ちたいなら、それが可能なシャフトがあるし、またその逆もある。スピンが悩みなら、それを解決するシャフトも存在する。
実際どのメーカーも軽量からツアーモデルまで幅広くシャフトモデルをそろえ、硬さやスピンなどあらゆる状況に対応している。
スチールシャフト中心だったメーカーは、アイアン用の軽量グラファイトシャフトを発売するなどして裾野を広げている。
例えば、KBSは2年間でTGIやMAXラインを増やし、今年の夏にはTrue TemperがグラファイトシャフトメーカーACCRAを獲得し拡大を図っている。
日本を代表するシャフトメーカー「日本シャフト」もアイアン向けグラファイトシャフトを販売するが、彼らが推すのは“スチール”だ。
「私達の理念として、ゴルファーには一生スチールを使ってもらいたいと考えている。あらゆるプレーヤーやスキルに応じた商品を取りそろえているが、例えばZelosラインはヘッドスピードが遅い人向けに作った軽量プレミアムグラファイトシャフトだ。高ヘッドスピード向けにはModusシリーズを用意している。」(日本シャフト セールス・マーケティング部長 福田氏)
軽量かつパワフル
日本シャフトは、1959年設立以来駒ヶ根工場を拠点としてゴルフ用シャフトを製造しており、1965年にはグローバル展開を開始した。
日本シャフトがアメリカ市場に進出したのは、N.S Pro 950GHが発売された1999年より以前の話だ。
「アメリカ市場の最先端に躍り出るきっかけとなったのは、やはりN.S Pro 950GHだ。これは100g以下一定重量を可能にした初のスチールシャフトとして認知され、時を同じくして世界女子ツアーのサポートを開始、プロと共にブランドを盛り上げていった。」(日本シャフト 福田氏)
また、軽量スチールシャフトだけでは市場の要望を満たせないと判断し、2009年には男子ツアープロと上級プレーヤー向けに重めのラインナップModusを発売した。
「総合シャフト企業として認識してもらうにあたり、日本だけでなくアメリカのクラブメーカーにも重めのシャフトの需要があることが分かった。そのため、特にアメリカ市場拡大を見越し、ツアー使用の多い100gから110g以上の重量カテゴリーに着手した。」
日本シャフト初のPGAツアーは2009年ジョンディア・クラシックだ。
Modusは今年だけで43回、通算200回近くの勝利を導いてきた。
ロイヤル ポートラッシュのオープンツアーでは48人のプロが日本シャフトのクラブで戦った。私達一般人とは別世界だが、ツアーの影響は計り知れないものだ。
スプリングの応用
日本シャフトは、連結60億ドル(約6800億円)の売上を誇り80年続く老舗スプリング企業、日本発条(NHKニッパツ)の子会社だ。
「ゴルフシャフトは本質的にはバネ(スプリング)と同じで、シャフトに使用する素材は、車の品質と同等のスプリングスチールを使用する。」(福田氏)
NHKニッパツは日本シャフトと長きに渡りパートナーシップを築いてきたが、その関係が軽量シャフト開発に生かされ、950GHやその後に続く軽量ウェイトモデルが生まれるに至った。
「最新モデルのZelosは、シャフト市場で最も軽いスチールシャフトだ。日新製鋼と新素材の開発に乗り出し、振り心地を保ちながらも耐久性と柔軟性に優れたシャフトを作り上げた。既成の素材ではなく、私達の独自素材だ。」(福田氏)
軽量シャフトは振り心地がよく感じるためゴルファーをぬか喜びさせるが、安定した方向性やコントロール性を併せ持つシャフト作りは難しく、決して誰もができることではない。
「張力に優れた高品質素材を必要とするだけではなく、熱処理も非常に重要だ。NHKニッパツはスプリング技術に長けており、彼らのノウハウをシャフト開発に応用して完成させた。」
シャフト品質
すべてのシャフトが完璧に真っ直ぐ作られているわけではない。
お持ちのアイアンセットの打感や性能が一貫していないように感じるなら、使う人に原因がある場合もあるが、シャフトもひとつの要因になる場合がある。
「私達のシャフトの製造プロセスは25~30段階を踏んで作られ、品質検査はその過程で約20回行われる。他社のシャフトを使ってアイアンセットを作る場合、シャフトの束から正しく選別しないと安定(一貫)したアイアンセットができないとフィッターがよく漏らすが、日本シャフトでは、製造時期に関わらずどのシャフトを選んでも完全に一貫した品質を保つ。」(福田氏)
あらゆる厚さのシャフトを作る事ができるのは、日本シャフト独自の素材や多段階式熱処理を駆使した結果だ。
例えば、Modusラインは種類やシャフトのパーツによってそれぞれ厚さが異なり、それが多様な“硬さ”を生み出す。
Tour105は最も軽量なシャフトで、手元と中央が比較的柔らかく、先端が硬い。Tour120も先端は硬いのだが、同ラインの他のシャフトと比べると中央部分が比較的軟らかめだ。
Tour125とModus Wedgeシャフトは、手元も先端も硬く、Tour130は中央部分が硬めなのが特徴だ。
「ツアープロが共通して言うのは、選択肢は必ずしも必要ではなく、ある程度の軟らかさと振り心地のいいシャフトが欲しいという。」(福田氏)
日本シャフトでは、ドライバーのヘッドスピードと6番アイアンの飛距離を基にシャフトを分類する。
例えば、超軽量で高打ち出し、高スピン向けのZelosライン(60g~80g台)は、ヘッドスピード27m/s~36m/s で6番アイアンの飛距離が100~135ヤードの人をターゲットとしている。
重量70~110g範囲のN.S Proラインは、ヘッドスピードが36m/s~45m/s 、6番アイアン飛距離が130~165ヤードの人向けに設定されている。
Modus Tourラインは、低~中スピン・弾道で、ヘッドスピードが45m/s ~54m/s 、6番アイアンを160~195ヤード飛ばせるプレーヤー向けだ。
また、Modusラインのしなり特性と調和するメタルウッド用グラファイトシャフトRegioシリーズも発売している。
「私達の考えでは、Modusラインの振り心地やクラブのリリース感が気に入ったら、それに合うドライバーやフェアウェイウッド用シャフトも用意している。アイアンからドライバーまで一貫した振り心地を体験することができるのが日本シャフトの強みでもある。」(福田氏)
KBSは、特注カラーや限定シャフトをいち早く展開している。
日本シャフトは、Modus Tour 105マットブラックなどの昔発売したシャフトを特別限定版として発売し、他のModusモデルにマットブラックを採用することも可能だという。
ほぼ全クラブメーカーにて、無料か追加料金を払えば日本シャフトのシャフトに交換してくれるが、唯一スリクソンがZシリーズアイアンにオリジナルとして日本シャフトを採用している。
最適なシャフト選択
どこのシャフトメーカーもゴルファーの特徴に合わせて多種多様なシャフトを用意しているが、必ずしも1社から最適な1本が見つかるわけではない。
KBS Tour 105と日本シャフトModus 105の重量は似ているが、人によってその効果は異なる。だからこそ、弾道測定器とフィッターをおおいに活用すべきなのだ。
ぜひ、読者の皆さんのフィッティング結果をシェアしてほしい。
好みのアイアンシャフトが見つかったか、どのシャフトが最適で何を選んだかなど。
もし軽量ウェイトを試したことがあるならその感想も教えてほしい。
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