新商品リリース時、フェアウェイウッドとハイブリッドは適当に扱われがちで、それにはそうなってしまう理由がいくつかあるというのが正直なところだろう。
まず、フェアウェイウッドとハイブリッドのテクノロジーの話は、同時に発表されるドライバーに採用される素材と設計の大部分が踏襲されているため、冗長に感じられることがあるから。
次に、ドライバーこそがウッドの変革を感じさせることができるクラブであるというメーカーの認識が常識になっているからだ。
案の定、今回のテーラーメイドのSIMフェアウェイウッドとSIMハイブリッドも、(シェープ)形状の話こそやや異なるがSIMドライバーと同じ見た目の美しさと基本的な構造を踏襲している。
構えてみると、白いトップラインと輪郭、クロームカーボンの模様、そして青いアクセントはドライバーと同じだ(あえて言えば、テーラーメイドにとって田舎のカジュアルな雰囲気など関係ないようだ)。
ドライバーの構造で見られる重心位置やMOI、そして最適な空力効果という工学部分のトレードオフはフェアウェイウッドとハイブリッドにも存在するが、それほどではない。
フェアウェイウッドとハイブリッドは投影面積がドライバーよりも小さいため、価格と性能の点から見ても、体積が460ccのドライバーで最大40%あるテクノロジーを詰め込むことはあまり効率的ではないからだ。
ソールが要
SIMドライバーでは、Shape In Motionの頭字語の 「S」の話が全てで、形状こそが最終的には他の設計要素や素材の決定の肝になるという議論もあった。
一方、SIMフェアウェイウッドとSIMハイブリッドは、シンプルさと簡潔さの流れを汲み形状がテクノロジーの話の中心ではあるが、今回はVソールが注目される。
ドライバーにおける空力とは、やや不格好な幾何学デザインを考えても気流への課題に対応することがメインとなっている。
フェアウェイウッドとハイブリッドにおいては、そもそもの形状がすでに空力的であり、結局のところ、多くのゴルファーにとって気になるポイントはどのようなインパクトになるのかということだろう。
そのため、フェアウェイウッドとハイブリッドの設計は、スイング中の空力効果よりもソールの抜けの良さにフォーカスされる傾向にある。
ともかく、テーラーメイドを象徴するVスチールのソールデザインが復活したということだ。
約20年前、テーラーメイドのVスチール・フェアウェイウッドは、そのソールデザインにより一般アマチュアとツアープロから絶大な支持を集めた。
ロフトとライ角が調整できるホーゼルを採用した特別な「ツアー限定」モデルを思い起こす人もいるだろう。
概念上、Vシェープ(多用途)デザインは、ウェッジにおけるヒール・トゥ・リリーフのような働きをする。
今なら他の選択肢がないわけではない、ということが前提だ(コブラのバフラーを見て欲しい)。
ソールの高くなっている部分は、機能上、ソールのトゥ・ヒール部分が地面と触れる部分を制限。
リーディングエッジが丸みをおびていることでクラブが滑りやすくなり、これによりソリッドなコンタクトもさらに安定するというわけだ。
今回、テーラーメイドでは、Vスチールソールと現代の設計の掛け合わせにより、フェアウェイウッドを牽引する完璧なパフォーマンスが実現できると考えているようだ。
モデルは3つ
ドライバー同様、今回のSIMフェアウェイウッドは3モデルがラインナップ、ハイブリッドは1モデルとなっている。
加えて、各モデルはそれぞれ異なるパフォーマンスを実現できるように十分に違ったものとなっているが、隣同士に並べるとそのパフォーマンスを区別することが難しくなるほど良く似ている。
3モデル(SIM MAXハイブリッドを入れると4モデル)とも、Vスチールソール、ツイストフェースのバルジ(フェースの水平方向の湾曲)/ロール(垂直方向の湾曲)、フェース下部でヒットしたときの寛容性が増すスピードポケット・テクノロジーが特徴だ。
SIMチタン
フェアウェイウッド3モデルの中で、SIMチタンが、フェースにZATECH(ゼイテック)チタンをゴルフクラブ史上初めて採用したという点だけでも、一番魅力的なモデルと言える。
テーラーメイドによれば、ZATECH(ゼイテック)は海外のサプライヤー1社からのみ、少量だけしか手に入らないとのこと。
現在のところ、この素材を使用しているメーカーはテーラーメイドだけとなっている。
以前もお伝えしたが、(一般的に使用される異なる等級がある)チタンはスチールよりも軽くて強い。
また高額なため、高価格で軽量化が著しくフェースが大きなドライバーに採用されることが殆どとなっている。
vSIMチタンは、クラウンがカーボンコンポジットでフェースはZATECHチタン、ソールには80gにも及ぶソールプレートを採用した複合素材の構造。M5チタンフェアウェイウッドのスライドウェイトでなく、今回はVスチールプレートを搭載し重心を低・後方部に配置することで、3モデルの中で一番の高弾道/低スピンを実現している。
さらに、ヘッド体積は180ccと3モデルの中で(僅かではあるが)一番小さく、2度のアジャスタブルロフトスリーブを唯一、搭載している。
ラインナップはロケット3(14度)、3(15度)、5(19度)。標準シャフトには三菱のDiamana FW Limited 75が装着されており、追加料金なしで様々なシャフトを選ぶこともできる。
価格は399ドルだ。
SIM MAX/MAX·D
価格がよりお買い得の299ドルとなっている残りの2モデルは、パフォーマンスという点で多くのゴルファーに向けられたウッドといえる。
100ドルという価格差の最大の理由はフェースにZATECHチタンではなく、C300マレージングスチールを採用したこと。また、2度のアジャスタブルロフトスリーブを搭載していないこともある。
C300はPINGのi500シリーズアイアンでも使用されているものであり、素材のクオリティとしては高価で優れた素材であるZATECHを妥協したようなものではない。
SIM MAXのヘッド体積は185ccで、MAXチタンと比べると弾道は変わらずスピンはやや多めとなっている。
MAX•D(ドローバイアス)は190ccで重心がヒール寄りに設定されており、スライスに悩むゴルファーに向いている他、インパクトでフェースがスクエアになりやすくなっている。
SIM Maxのラインナップはロケット3(14度)、3(15度)、5(18度)、7(21度)、そして9(24度)。シャフトは、フジクラのVentus* Blue FW 5(フレックスはRとA)とVentus* Blue FW 6(フレックスはSとX)だ。
SIM MAX•Dは、3(16度)、5(19度)、7(22度)がラインナップ。標準シャフトはUST Mamiya Heliumだ。
また追加料金なしで様々なシャフトから選択できる。
SIMチタン、SIM MAX、SIM MAX•D(写真左から)
Ventusシャフトの両方に星印が付いていることが気になるはずだ。ドライバー同様、SIMフェアウェイウッドには専用シャフトがある。
SIM MAXのVentusは、小さなVeloCoreのシルクスクリーンロゴを除けばアフターマーケット版と非常に似ているが、その理由は標準シャフトにはVeloCoreテクノロジーを搭載していないから。
記号の意味はどう考えてもらっても良いが、VeloCoreがないVentusシャフトとは一体どのようなものなのだろう。
結論としては、この記号は(つけた理由に関わらず)偽物に見えるし、混乱させるし、同じではないが似ているシャフトが合うかも知れないということに関して欠かせない議論の余地を制限してしまう。
SIM MAXレスキュー
(レスキューやユーティリティとして知られる)ハイブリッドの最も一般的な悪評は、ゴルファーが望む以上にドローバイアスのショットになりやすい傾向があるということだ。
逆に、主なセールスポイントとこのカテゴリーが存在している理由が、ハイブリッドが実現できる多用性にある。
その点を考慮して、テーラーメイドは、幅広いゴルファーがより操作しやすくなるようVスチールテクノロジーを取り入れ、デザインを若干見直した。
具体的に言えば、フェースアングルを微調整しVスチールソールにつながるリーディングエッジを改良。アドレスでやや違った見た目になるようトゥ部分はやや丸みを帯びている。
C300マレージングスチールのフェースによりハイブリッドに特化したツイストフェース・テクノロジーを実現し、改良されたスピードポケットはオフセンターヒット時のショットをサポートするという。
一般的に、プロが使うクラブは我々素人が選ぶものとあまり関連性がないが、テーラーメイドと契約を結ぶダスティン・ジョンソンが、22度のMaxレスキューを先週カパルアで開催されたセントリートーナメント・オブ・チャンピオンズで使用していたことは注目すべきことだろう。
ドライバーのヘッドスピードが53.6m/s以上もあるようなプレーヤーが、特に風があるコンディションの中でロングアイアンを選択しなかったということは、SIMレスキューがロフトのついたフェアウェイウッドではなくロングアイアンに代わるクラブとしてデザインされていると考えた方が合理的だろう。
SIM MAXレスキューは、3(19度)、4(22度)、5(25度)、6(28度)、そして7(31度)がラインナップ。標準シャフトとしてフジクラのVentus* Blueが装着されている。
価格は249.99ドルだ。
SIMのウッドシリーズは2020年2月7日に発売予定。
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