すべてはゲームのために
流行りとなった「上級者向けの飛び系アイアン」だが、今では定番になった。このカテゴリーのアイアンは、多くのゴルファーが求めるイケてる見た目をしており、パワーに若干の寛容性を備えるという魅力的なマッチングも実現しているのが特徴だ。まさにいいとこ取り。しかし、こうしたアイアンは、使ってみたくもなるが誰にでも合うというわけではない。
2020年のベスト「上級者向け飛び系アイアン」は、従来の「上級者向けアイアン」よりもやさしくて、クラブに見た目、打感、そしてパフォーマンスも追求しているゴルファーにとっては究極のギアといえる。
各メーカーは、年々テクノロジーの限界に近づいている。各社は、USGAとR&Aが管理する用品ルールで確立された限界に挑んでおり、彼らの革新により、ゴルフクラブは、よりボールスピードを上げ、より打ち出し角を高く、より真っ直ぐに飛ばせるように変革し続け、そして打感と打音も改良されているようだ。
今回、我々がテストした上級者向け飛び系アイアンはそのうちの13本だ。何度も試打しデータを集め、そして分析した。では結果をご紹介しよう。
第1位:ウィルソン スタッフ 「D7 FORGED」
パフォーマンス評価
下記は、2020年のベスト「上級者向け飛び系アイアン」のパフォーマンス評価をアイアンの「長さ別」に分類したものだ。各アイアンが獲得した数値は、それぞれのアイアンが、テスト全体において各テスターのベストパフォーマンスアイアンとなった頻度を表している。この結果が導き出された詳細については、テスト方法のページをチェックして欲しい。
MYGOLFSPY版の「ストロークス・ゲインド」について
ストロークス ゲインド:元々は2011年からPGAツアーで導入されたプレーヤー指標。コースの難易度により大きく変動する「平均パット数」や「パーオン率」等では比較できない、選手の「本当の実力」を比較するために生まれた指標。同じコースでの全選手の平均ストローク数、あるいは同程度の難易度のコースや状況における平均ストローク数と自分のストローク数との「差」で示される。
「スコアを何で稼いでいるか」という観点で、「ドライバーショット」「アイアンショット」「アプローチショット」「パッティング」それぞれのショットが、平均値より何打“少ないか(ゲイン)“を数値化している。
MYGOLFSPYの「MOST WANTED」における製品テストでは、この「ストロークス・ゲインド」の考え方をベースとして、プレーヤーではなく“商品そのものの実力”を見るため、「ドライバー」「アイアン」「パター」等、各カテゴリーの「商品の実力」を比較する指標として用いている。
アイアン購入で検討すべきこと
新しいアイアンを買う時は、パフォーマンスを一番に考えるだろう。しかし、購入を決める前に考慮した方がよい点が他にもある。
クラブセッティング
クラブセッティングに気を配ることは当然だ。ゴルフ用品業界の多くのことがそうであるように、クラブセッティングにも普遍性はなく、その組み合わせはほぼ無限ではあるが、適切にモデルとモデルをミックスしてマッチさせることもできるので悪いことではないはずだ。
実際のところ、「上級者向け飛び系アイアン」において4番アイアンはあることが当然ではあるが、ギャップウェッジとなると話は別である。みなさんも、クラブセッティングに必要な番手をそのアイアンセットで埋め合わせることができるのか、必要以上にクラブを買い足す羽目にならないかをチェックした方が良いだろう。
シャフト選択
アイアンシャフトの選択肢が拡大していることから、異なるモデル、重量、硬さを見極めて個々に合うシャフトを見つけることは難しい。ベストパフォーマンスをもたらすシャフトとは何かという問いに対する答えは、カーボンとスチールシャフトの違いという域を遥かに超えているのだ。
だからこそ専門のフィッティングを受けて欲しい。できないと言うならミズノの「シャフト・オプティマイザー」で始めることも悪くないだろう。オプティマイザーは、ジャイロスコープとストレインゲージにより「クラブスピード」「テンポ」「インパクト時のシャフトの撓み具合」などを測定し、あなたのスイングにおすすめのシャフトを教えてくれる他、推奨ライ角も知らせてくれる。
飛距離vs寛容性
技術革新が進み、マーケティング活動が増え、選択肢も増幅していることから、アイアンにおける飛距離と寛容性を分析することが重要になっている。両方でベストのパフォーマンスをもたらすアイアンを手にすることは夢だが、それを実現することはとても困難だ。
飛距離と寛容性は、よいクラブを目指す上で常にどちらかを妥協する関係にある。飛距離を最大化したいなら、コブラの「KING FORGED TEC」、トミーアーマーの「845 FORGED」あるいはキャロウェイの「APEX 19」を検討すべき。寛容性に重きを置くなら、本間ゴルフの「T//World X」、タイトリストの「T200」、またはPINGの「i500」をチェックして欲しい。
また飛距離とバックスピンには相関関係があることを覚えておくことも大切だ。同じ距離を飛ばしても、パフォーマンスが常に同じというわけではない。飛ばすことはできてもスピン量が十分でなかったり、ボールの落下角がシャローすぎると、グリーンで止めることはできない。パーオンできないなら、飛ばす意味などないのだ。
価格
アイアンセットは投資といえる。2020年の「上級者向け飛び系アイアン」の多くは最低でも1000ドルは掛かるが、ありがたいことに掘り出し物もある。SUB 70の「699 PRO BLACK」は7本セットで623ドル(シャフトのアップグレードは除く)だ。
寛容性で1位-本間ゴルフ T//WORLD X
2020年上級者向け飛び系カテゴリーのベストアイアンは、本間ゴルフの「T//World X」だ。バラツキを抑えてパーオンしたいなら、このアイアンをお見逃しなく。決して飛ぶとは言えないが、最高の打感をもたらす前評判の高いデザインが、あなたが求める一貫性を実現してくれるだろう。
記録
テストでは、メーカーが年々パフォーマンスを向上させるためにどのような改善をしているのか、また市場全体がどこに向かっているのか、それらの傾向を探っている。
また、テスターからフィードバックも受け、良かった点、悪かった点、さらにその理由も理解するようにしている。一方、フィードバックを受けているものの、テスターの主観が順位に影響したり、その決定要素になることはない。
トレンドと改善点
・今回のテストを通じて着目したこのカテゴリーのアイアンの方向性とトレンドは、フェース全体のボールスピードアップにある。各メーカーとも、この目的を実現するためのヘッドデザインをアイアンの特徴としており、革新的なフェーステクノロジーがメインとなっている。ウィルソン スタッフ「D7 FORGED」や本間ゴルフの「T//World X」、コブラの「KING FORGED TEC」は、ボールスピードをアップさせるために設計された独自のフォージドフェースデザインを採用している。
・今回のテストでも多くのメーカーが、「中空ボディ」か「充填ボディ」を採用している。PINGの「i500」や本間ゴルフの「T//World X」は中空ボディ、一方、テーラーメイドの「P790」、PXGの「0311P Gen3」、そして「SUB 70」の「699 PRO BLACK」は充填ボディの代表格。こうしたクラブは、フェースのたわみをアップさせ、ボールスピードを生み出す薄肉フェースが特徴となっている。
・「上級者向け飛び系アイアン」の多くは、複合素材構造を採用している。スチールにタングステンを搭載しているものが一般的だ。PXG(インパクト・リアクター・テクノロジー)、テーラーメイド(SpeedFoam)、そしてタイトリスト(マックスインパクト)はポリマーに加え、他の独自素材を使うことで薄肉デザインながらもフェースの強度アップも実現している。
・キャロウェイの「MAVLIK PRO」は、各番手にボールスピードをアップさせるために人工知能(AI)を活用した「フラッシュ・フェースカップ・テクノロジー」を搭載し、革新のレベルを限界まで高めている。
・「上級者向け飛び系アイアン」には「中級者向けアイアン」と同様か、それ以上のテクノロジーが搭載されているが、コンパクトで上級者好みの「顔」が特徴となっている。キャロウェイの「APEX 19」のようにブレードが短めでソールが薄いアイアンは、見た目にも美しく、上級者向けキャビティバックアイアンよりも易しくて、操作性も兼ね備えていると言える。
飛距離で1位-コブラ 「KING FORGED TEC」
コブラの「KING FORGED TEC」は2020年モデルでテスターに大人気だった。テストした中で一番飛距離が出たアイアンで、まさに飛距離の王様(KING)。セットを通じて最もバランスの取れたパフォーマンスを実現していることは間違いなく、みなさんの試打リストに加えるべきアイアンと言えるだろう。
テスターからのフィードバック
下記に20人で構成するテスターによる主観的なフィードバックを掲載した。フィードバックを集めることはどのテストにおいても重要だ。みなさんも、このテストに参加したテスターと同じユーザーであり、私たちもユーザーの製品に対する好き嫌いの指標として彼らのフィードバックを活用している。とはいえ、フィードバックは明らかな主観的なものであって、順位付けの要素にはしていない。
・打感がとにかく素晴らしい。今回のテストにおいてテスターは、ほとんどのアイアンの打感を絶賛。特にPXG 「0311 P Gen3」、タイトリスト「T200」、キャロウェイ「APEX19」、ウィルソン スタッフ「STAFF D7」フォージドでは打感に関する評価が高かった。
・見た目も外すことができない要素。テーラーメイドの「P790」、本間ゴルフの「TR20 P」、そしてピンの「i500」はデザインと見た目で突出しており、テスターの間でも、これらのアイアンで人気があることが証明された。
・トミーアーマーの「845 Forged」は、総合結果にも関わらずテスターたちに人気があった。打感と見た目はテスターに好印象。一方、多くのテスターに一番不評だったことは、カチッとした音で表現されるインパクト時の打音だった。
・2020年の「上級者向け飛び系アイアン」でトップのウィルソン スタッフ「D7フォージド」は、テスターから瞬時に注目を浴びた。中にはテスト後に購入するかもとコメントするテスターも。このテスターは、打感、見た目、打音、そしてパフォーマンスがお気に入りのようだった。
2020年上級者向け飛び系アイアンランキングのデータ
スイングスピードや特徴が異なる20人のゴルファーによる平均的なパフォーマンスを比較することは興味深いことだし価値あることでもあるが、これでパフォーマンスの全てが分かるわけではないということには注意しなくてはならないだろう。
そのため、私たちはパフォーマンスをテスター個々に確認。(記事の上部にある)総合順位には、各クラブがテスターごとの「トップパフォーマンスグループ」に入った「率」が反映されている。
専門家の意見:シャフト重量
重めのスチールシャフトは、スピン量が少なくて打ち出し角が低くなる傾向がある。一方、軽めのシャフト(スチールまたはカーボン)は、打ち出し角が高くなりスピンもかかりやすい。あなたのスイングにマッチするシャフトを選べば、希望通りの打ち出しと弾道を実現することができるだろう。次にフィッティングを受ける時は、先入観を持たずに、パフォーマンスにおけるシャフトの影響ついてしっかり着目して欲しい。
テスト方法
我々のミッションは、みなさんのゴルフにとってベストな「上級者向け飛び系アイアン」を見つける手助けをすることにある。
完全に独立した公平な立場で「顧客優先」を掲げている。
テスターについて
我々のテストグループは、プラスハンディからハンディ10台中盤くらいまでの20名のゴルファーで構成され、グループとしてスイングの特徴は多岐にわたっている。
複数のセッションで構成されるテストは、各ゴルファーがPW、7番、5番を試打。アイアンのグループ分けと試打順はテスターごとにランダムに変わる。
バラツキの制限と信頼性あるデータの収集
バラツキを最小限にするため、全テスターが、バージニア州ヨークタウンにあるLab Xテストセンター内でブリヂストンの「TOUR B-X」ボールを使い試打した。
最終結果には影響しないが、見た目、打感、アライメントにおける主観的フィードバックもモデルごとにそれぞれのテスターから集めた。
集計について
ベスト「上級者向け飛び系アイアン」を決める上で、各テスターの平均ストロークに対するストロークス・ゲインドの値を番手(PW、7番、5番)ごとに算出。これらの値を集計し、テスター全体で最高の平均ストロークス・ゲインドとなったアイアンをトップのアイアンとする。
商品スペック
2020年上級者向け(飛び系)アイアン – FAQ
新しいアイアンの購入にあたり
Q:アイアンを買い替える頻度はどのくらいか?
A:たまに明確な技術革新が続く年もあるが、メーカーがクラブのパフォーマンスをかなり向上させるには通常3〜5年かかる。特にUSGAがメーカーに対してクラブ規制を厳しくしたことから、今後の技術革新にはより時間がかかる可能性があるだろう。我々がおすすめする買い替え時期は、今使っているクラブよりも明確に性能が良い新作アイアンが発表された時だ。もちろん、単に新作が出たから欲しいというなら、それも問題はないだろう。
Q:どのように自分に合うアイアンのカテゴリーを見つければ良いか?
A:アイアンには、「上級者向け(キャビティーバック)」「上級者向け飛び系」「中級者向け」「初級者向け」の4つのカテゴリーがある。カテゴリー同士が重なり合うこともあるが、カテゴリー探しは、あなたのスキルレベル(ハンディキャップ)やゴルフに求めることを率直に見つめてみることから始めてみよう。例外は当然あるが、ハンディ10以上で打点にバラツキがあるなら、「中級者向け」「初級者向け」のアイアンを検討して欲しい。より安定してボールを打つことができるなら、「上級者向け」か「上級者向け飛び系」を使うと一番メリットを得られるだろう。その中でも特に飛距離を求めるなら、「上級者向け飛び系」が理想的なアイアンとなるはずだ。
Q:シャフトは重要か?
A:当然だ。スピン量や打ち出しの差はそれほど大きくないが、シャフトを交換することで正確性、バラツキそして全体的な安定性の向上が実現するだろう。
Q:アイアンを試打する時は何に注目すべきだろうか?
A:ゴルファーは飛距離以外のほとんどの要素に目を向けない傾向があると思うが、「上級者向け飛び系」カテゴリーであっても「小さな数字」や「丸で囲まれた数字」にも注目すべきだろう。飛距離とボールスピードなどの数値を比較する際も、必ず標準偏差(ローンチモニターのスクリーン上では、これらの数値は大きな数字の下に表示される)をチェックすること。数字が小さいほど安定性に優れているが、これはコース上だと1~2ヤード飛距離が伸びることでもある。同様に(丸で囲まれた)バラツキも確認して欲しい。アイアンでは、「安定性」を過小評価してはいけないのだ。
ベストを決めるテスト
Q:どのようにアイアンを各テスターにフィットさせるのか?
A:テストでは「フィット・フロム・ストック」というフィッティングプロセスを活用する。各テスターは、アップチャージでカスタムフィットされた製品ではなく、メーカー在庫(ストック)にあるアイアンを使用し、各セットのショートアイアン、ミドルアイアン、ロングアイアンを一本ずつテスト。調整機能付きのアイアンは今回のテストにないが、テスターに合うアイアンを選ぶようにした。弾道を改善できるように異なる標準シャフトが装着された複数のセットを送ってくれたメーカーがいたことも付け加えておく。
Q:対象カテゴリーはどのように決めるのか?
A:開発者も認めるほどのアイアンテストをするために、ヘッド(形状、ソール幅など)に加えて長さやロフト角で分類。テスト群の中での「違い」を出来る限り最小化した。カテゴリーが重複するようなアイアンがある時は、メーカー発表のカテゴリーに沿うようにしている。
Q:どのように2020年のベスト「上級者向け飛び系アイアン」を決めたのか?
A:順位を決めるにあたっては、フォーサイトの「GCクワッド」弾道計測機を使って主要データを収集し、異常値を除いた後、独自の手法を用いて各テスターとモデルごとのストロークス・ゲインド値を計算。最高のストロークス・ゲインドとなったアイアンがベストアイアンとなる。
Q:「最も飛ぶアイアン」はどのように決めるのか?
A:最も飛ぶ「上級者向け飛び系アイアン」の決定方法は、総合順位の決め方と似ている。飛距離で重要なのは合計ヤードであり、平均と比較して「ロングアイアン」と「ミドルアイアン」で最も合計ヤードが大きかったアイアンをトップとした。
Q:「最もやさしいアイアン」はどのように決めるのか?
A:「やさしさ」は実用的な手法を用いた。ベストショットのストロークス・ゲインドが、一番悪かったショットのストロークス・ゲインドの数値に近い(平均に比べて)ものを一番やさしいアイアンとした。
Q:見た目、打音、打感などの主観的なフィードバックはどれくらい順位に影響するのか?
A:全く反映されない。この順位はローンチモニターのデータと測定できるパフォーマンスの数値のみで決定される。
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