テーラーメイドから発売される新モデル「SIM DHY」と「UDI」ユーティリティーアイアンは、同社にとって大きな飛躍となるか。いずれにせよ、前作「GAPR(ギャッパー)」の経験を大きく活かした傑作だ。

ユーティリティーアイアンに興味がある人は、ぜひ私の話にお付き合いいただきたい。確かに、アイアンは“セクシー”で、ウェッジは“クール”、パターは“楽しい”ものだが、ユーティリティーアイアンはまるで野菜のケールのように、健康に良いことは分かっていてもジューシーなピザのような魅力を感じない、躊躇されがちなものだ。

「DHY」と「UDI」ユーティリティーアイアンに興味が湧くかは別として、「GAPR」の後継という意味では、非常に興味深いクラブだと思う。そしてプレー次第では、クラブ同士のギャップを埋めるのに最適なクラブになるかもしれない。

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「GAPR」の役割

2年前、テーラーメイドは『ドライビングアイアン』と『ユーティリティー』の間にある未開拓のカテゴリーに挑戦した。

「GAPR 」LO、MID、HIモデルの登場によって、これまで不可能と信じられていた“ギャップ”が埋められるようになった。素晴らしい性能、ルックスも良く、時間をかけて愛着が湧くようなクラブだった。

ところで、ユーティリティーでもなく、アイアンとメタルウッドの間に3つものオプションが必要だったのか?「GAPR」がなくなり、その後継である新モデルを“ユーティリティーアイアン”と呼ぶことから、明らかに必要なかった。

「『GAPR』で得られた経験は、新たなクラブ開発、新たなアイディアへの布石になった。」とテーラーメイド商品開発担当シニアディレクターであるトモ・ビステット氏は述べる。「今私達は、経験から得られたデータを精査し、ツアー現場やフィッターから聞いたことを学び生かすチャンスを得た。」

「GAPR」には問題が2つあった。1つ目は、シーフォームグリーン(薄い黄緑色)をアクセントにしたベーシックブラックが、テーラーメイドのどのラインナップにも似つかわしくなかった。

「GAPR」への乗り換えは、「Mシリーズフェアウェイウッド」から「P790アイアン」への移行のようにスムーズではなかったのだ。しかし、新作「SIM DHY」と「UDI」ユーティリティーアイアンへのモデルチェンジは、間違いなく円滑にいくはずだ。

2つ目の問題は、「シンプルさ」や「精度」に欠けていたこと。「GAPR」にはオプションが3つあったが、3つは多すぎた。

タイトリストの「T-MB」モデルに類似していることはさておき、「SIM DHY」と「UDI」ユーティリティーアイアンは確かにテーラーメイドの他のモデルに見事に溶け込み、さらにその選択肢をシンプルにした。

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大幅に改良された「SIM DHY」

テーラーメイドが「Adams Golf(アダムスゴルフ)」を買収したのは、8年以上も前だったように思う。アダムスがオリジナルのDHy(Driving Hybrid)をリリースしたとき、テーラーメイドの傘下にいた。

新「SIM DHY」はその名前からDHyの親戚と考えるのが自然だが、むしろ「GAPR MID」をスリム化して、ルックスを改良したクラブと考えるべきだ。

「SIM DHYの特徴は、非常になめらかなルックス。そして、ラインナップをもっと簡素化した。」

「SIM DHY」は、2モデルの中でもやさしく、ソールが広く、低めのフェース高さが特徴で、重心が可能な限り低く設定されている。「GAPR MID」よりリーディングエッジが多用途に設計されているのも、「SIM DHY」の特徴だ。

「これにより、バンカーやラフなどライの悪い場所で、多様に対応できるようになった。今回、クラブと芝のコンタクトを改善することは、重要な課題のひとつだった。」

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さらに、同社フィッターやツアースタッフの要望に応える形で実現させたホーゼルは固定式に変更し(GAPRは調整可能ホーゼル)、全体の軽量化、スリム化に成功した。

「柔軟に対応できる、固定しても曲がるホーゼルを使用した。ロフト角に影響を与えずにライ角を変更でき、その逆もまた可能だ。」(ビステット氏)

ロフトとライ角は、+/-2度で調整できる。

忘れてはいけないのが、『SpeedFoam™』だ。「SIM DHY」は、低密度の『SpeedFoam™』(UDIで使用されているものより約35%密度が低い)を搭載し、結果として全体の重量を抑え、重心(CG)を限りなく低く配置することに成功した。

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小さくはあるが確かに改良された「SIM UDI」

「DHY」は「GAPR MID」をもっとスリムで格好良くした感じだが、「SIM UDI(Ultimate Driving Iron)」は「GAPR LO」のルックスにさらに磨きがかかった感じだ。

「どちらもアドレス時のクリーンで洗練したルックスが魅力。特別なことは何もない。」(ビステット氏)

前途のとおり、「SIM DHY」はやさしいクラブのためオフセットが特徴だが、「UDI」は比較的少ない。また、「UDI」は「DHY」よりも、従来のハイトウ形状を引き継いでいて、重く密度の高い『SpeedFoam™』により、低重心を実現。

これにより、低弾道ショットが可能だという。一方、「SIM DHY」搭載の軽めの『SpeedFoam™』は、重心を低深部に保ち、ボールを高く打ち出すのに役立つ。

「UDI」は「GAPR LO」よりソールが狭く、トップラインが薄いのが特徴。また、固定式ホーゼルに変わったため、クラブ背後からホーゼルまで滑らかな作りになっている。

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全体的に、「SIM UDI」と「SIM DHY」は同じテクノロジーを共有している。「GAPR」は『鋳造C300スチール』フェースだったが、新モデルには『鍛造C300スチール』を採用。「SIM Max」フェアウェイウッドとユーティリティーと同じ素材だ。

「フェースは厚さを均等に精密に削っている。それがソールまで突き出し包み込むため非常に薄く、フェース全体に柔軟性を与える。」(ビステット氏)

どちらのモデルも、テーラーメイドの名テクノロジー『Thru Slot Speed Pocket™』を採用。以前の「SIM」アイアンの記事でも触れたが、『Thru Slot Speed Pocket™』はフェースのたわみを増やし、フェース下部のミスショットでもボールスピードとやさしさを維持すると、テーラーメイドは説明する。

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ロフトチェンジ

さらに改良されたのが、標準「GAPR」より大きくなったロフトだ。ついでに言えば、シャフトも短くなった。

「これらは『P790』の長さに合わせるため。アイアンセットと円滑に合わせるための改良だ。」(ビステット氏)

シャフトが短く、ロフトが寝ていると短いクラブだと勘違いしがちだが、それは違うという。

ビステット氏によると、社内のプレーヤーテストでは、「SIM DHY」19度モデルが18度の「GAPR MID」よりボールスピードがわずかに速かったという。

さらに、スピン量が少なく、高めの打ち出し、高い弾道を示したことも注目だ。結果、キャリーで2.5ヤード、トータルの飛距離が4ヤード弱伸びたという。

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18度の「SIM UDI」と17度の「GAPR LO」のボールスピードは同じだったが、「SIM UDI」の方が、打ち出しが高く、低スピン、3ヤード以上のキャリーと4ヤード以上の飛距離の伸びがみられた。

シャフトを見れば、「GAPR」から世代交代したことは明らかだ。「GAPR」には全て同じ「KBSハイブリッドシャフト」が装備されたが、新作SIMは、ターゲット層に合わせたシャフトに切り替えている。

「『DHY』のシャフト先端は少し柔らかく、高い打ち出しを可能にする。一方の『UDI』は、操作性を持たせるためにやや重く硬いシャフトを装備し、低い弾道をもたらす。」

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どちらのアイアンにも三菱「Diamana」シャフトを採用。「SIM DHY」には「Limited Hybrid」、「SIM UDI」の「Thump Hybrid」が用意される。

どちらも三菱のウェブサイトに掲載されるが、テーラーメイドはこれら新モデルのための独自シャフトをデザインしたと述べている。特注と既製品の間とも言えるが、どちらかというと特注に近いのではないか。

いずれにせよ、両モデルとも非常にプレー性に優れたユーティリティーアイアンだ。「UDI」はハンデ0から15を、「DHY」はハンデ30までのゴルファーをターゲットとしている。


価格と販売予定、最後の「GAPR」

テーラーメイド「SIM DHY」と「UDI」ユーティリティーアイアンは、このカテゴリーでは高額の249ドルで販売される。

キャロウェイ「X-Forged」も同額の 249ドルで、タイトリスト「U-series」は250ドルだ。ウィルソン「Staff Model」とピン「Crossover」は229ドル(ピンは後継品が出るため、189ドルに割引されている)。スリクソンとコブラのユーティリティーは199ドルで販売されている。

前述のとおり、「SIM DHY」のオリジナルシャフトは三菱「Diamana Limited Hybrid」を装着。55グラムのA、65グラムのR、75グラムのSの3種類のフレックスから選べる。

オリジナルグリップは、ラムキン「Crossline 360」。「DHY」のロフトは4種類(17、19、22、25度)が揃う。

より上級者向けの「SIM UDI」は、さらに硬い「Diamana Thump」シャフトを装着。フレックスは、R(80グラム)、S(90グラム)、X(100グラム)の3種類。ラムキン「Crossline」がオリジナルグリップとして装着され、ロフト角は18度と20度の2種のみだ。

どちらのモデルも、ロフトとライ角が+/-2度で調整可能だ。

発売は9月4日。

テーラーメイドは最後まで「GAPR」を活かし続けた。これまでの世間の反応は、実用的な“ユーティリティーアイアン”でもなく“ユーティリティー”でもないクラブの必要性を認識していなかったし、興味もなかった。

しかし、今回の新SIMは偽りない“ユーティリティーアイアン”だという。

それに、ツアーの影響はあまり関係ないという声もあるが、「GAPR」がテーラーメイドのプロスタッフからあまり愛されなかったのは事実だ。彼らは、今回発売の「SIM」がそれを変えることを望んでいる。

「『GAPR』より、ツアー使用が増えることを期待している。実際にツアープレーヤーからフィードバックを受け、すべての意見を新作クラブに取りいれた期待のクラブだ。」(ビステット氏)