グラファイトデザイン「TOUR AD HD」:重要ポイント
・グラファイトデザイン「Tour AD HD」は、「Tour AD MT」の改良モデル。
・プロファイルは、中打ち出し/低スピン特性。
・価格は379ドルで販売中。
グラファイトデザイン「Tour AD HD」は、2020年プレミアム「Tour AD」ラインナップから拡大したシャフト。参考までに、HDは『Hyper Drive』の略で、これから説明する“スピードストーリー”を表している。
新作の「Tour AD HD」は、「Tour AD MT」の後継というより、「現代版に進化させたモデル」と言っていい。
私がこれまで述べてきたように、同社は後継モデルを作るより、ラインを増やすことを好む。
彼らは、新しいシャフトの普及に数年かかることを熟知しているため、特定のデザインに慣れてきたフィッターのためにカタログラインナップを長期に渡って継続する。
また、「Tour AD HD」のプロファイルは「Tour AD MT」に似ているが、両者の違いを十分に感じられるゴルファーも勿論いて、古いモデルの性能を気に入っている人がいるのも事実だ。
「TOUR AD HD」の新機能
「Tour AD HD」の新機能は、シャフトの中央部分とティップ(先端)部分に「TORAYCA M40X」 グラファイトプリプレグを搭載し、特性を微調整させることに成功したこと。
これに尽きる。グラファイトデザインは、昨シーズンの「Tour AD XC」で最初にこの素材を使用した。これは、グラファイトデザインシャフトの定番になるだろう。
素材に関して掘り下げることは避けるが、「M40X」の特徴を簡単に説明すると「高引張弾性率」と「高引張強度」の両方を提供する。
より詳しい技術的なポイントはさておき、この材料を使用することで重量を増やすことなく剛性をより良く調整することができるという。一方、ゴルファーにとっての利点は、シャフトの負荷が増し、最終的にはインパクト時のスピードが上がることだ。
それと併せて、ティップ(先端)部に「T1100G」を搭載することにより打感を損なうことなく安定性が得られるという。
もちろん、実際の飛距離はシャフトがスイングにどれだけフィットするかによるのだが。
グラファイトデザイン「TOUR AD HD」オプション
他のADシャフトと同様に、「Tour AD HD」は日本で設計および製造される。同社の分類では、「Tour AD HD」は中打ち出し、低スピンの特性を持つという。
同社では一般的な40グラム台のR2(シニアフレックス)から80グラム台のTX(Tour XS)まで、ウェイトとフレックスが幅広く揃う。
「TOUR AD HD」のルックス
シャフトの外観はパフォーマンスには影響しない。ところが、それが重要でないと言うのはまったく別の話だ。ゴルファーなら好き嫌いがあるのが当然で、好みでシャフトを選ぶこともある。
そうは言っても、今回の新しい配色は「Tour AD」ラインアップの中でも好きな方だ(「Tour AD VR」もお気に入りだったが)。蛍光グリーンの「キャロウェイエピック」と合わせようとしない限り、グラフィック的に嫌いになる理由は見つからない。
配色は、白地にアクア(青緑にも見える)の組み合わせだが、私にはつや消しマットに見える。同社は、「マットクリアコート」と呼んでいるが、実際にぎらぎらしているわけでもなく、目立たない感じでもない。
「COOL CLUBS S3」による「TOUR AD HD」データ
ゴルフ業界をリードするカスタムフィッティング会社の1つである「Cool Clubs」と提携し 、「シャフトシミュレーションシステム(S3)」によるシャフトレビューをお届けしよう。
「S3」は、対象のシャフトに対して標準化、定量化したデータを提供するだけでなく、これらデータを使って市場で販売される同様のスペックの製品とどう比較できるかといった点にも言及できる。
シャフトには「業界基準」というものがないため、「S3」による分類がメーカースペックと異なることは珍しくない。そこで、メーカー同士平等に比較ができるのが「S3」というわけだ。
新「Tour AD HD」が昨シーズンの「TOUR AD XC」や、同社ベストセラーシャフトである「TOUR AD IZ」と比較してどのように異なるか確認したいと思う。対象シャフトは、60グラム台のSフレックスモデルだ。
「TOUR AD HD」打ち出し特性
青の線は、60〜70グラム台の重量範囲にあるSフレックスシャフトにおけるS3データベース内平均を表している。薄いグレーの線はニュートラルな特性を表しており、実質的には中打ち出しが特徴のシャフトの基準になる。
S3データベースの中でも「Tour AD HD」の打ち出しはニュートラルライン近くに位置するため、打ち出し角は「MID(中)」に分類されることが分かる。
EI(剛性)ゾーン
次のグラフは、「Tour AD HD」の手元、ミドル、ティップ(先端)の剛性を、S3データベース内の60〜70グラム範囲のSフレックスシャフトの平均と比較したもの。
ゾーンチャートが示すように、同社シャフト間の特性は互いに似ている。パフォーマンスは、主に手元とティップ(先端)部分の微妙な違いによって決まる。
「Tour AD HD」は、手元部分が「AD IZ」や「AD XC」よりもわずかに硬く、「AD XC」よりもわずかにティップ部分が柔らかいのが特徴。そして、中央部分の剛性はどれも似ている。
バランスポイント
次のグラフは、「Tour AD IZ」のバランスポイントを、60〜70グラム台のSフレックスシャフトのS3データベース平均と比較したものだ。
「Tour AD HD」は、平均よりバランスポイントが低い(ティップ寄り・先端寄り)。これは、カウンターバランスシャフトには分類できない。
実際、「Golf Geeks Story」や「Shaft Performance」でも言われていたとおり、バランスポイントが高い(バット寄り・手元寄り)ほどスイングウェイトに大きな影響を与えることなく、ヘッドウェイトを増やすことができる。
飛距離を求めるゴルファーにとって(時に精度を犠牲にしても)、このようなシャフトを選べばドライバーの飛距離が期待できる。
逆に言えば、カウンターバランスではないシャフトの方がより一般的と言える。
「TOUR AD HD」推奨ヘッドスピード
下のグラフは、「Tour AD HD」ラインナップ全体の推奨ヘッドスピードを示している。
注意事項として、上記の推奨グラフはCool Clubで扱う全ての商品がベースとなっていて、ティップ径や長さがシャフトの「柔らかい」とか「硬い」というフィーリングに影響を与える可能性があることを先に述べておく。
もう少し分かりやすく、ヘッドスピード範囲を狭めたいと思うかもしれない。フィッティングの観点から見たスイートスポットは、ヘッドスピード範囲の遅い方から25パーセントのところで始まる。
原則として、特に切り返し時のテンポが速いプレーヤーはSフレックスが適し、滑らかなスイングが特徴の人は柔らかいフレックスがフィットしやすい。
類似シャフト
最後に、「S3」の主要項目(プロファイル、重量、トルクなど)から同様のスペックのシャフトを探した。当然のことながら、最も類似したシャフトは「Tour AD BB」や「Tour AD GT」、「Tour AD XC」が挙がる。
これは特に驚くべきことではなく、「Tour AD」ラインアップ同士の違いはわずかなのは明らかなのだが、これを繰り返し発売することに価値がある。
グラファイトデザイン「TOUR AD HD」販売予定と価格
「Tour AD HD」シャフトは、フィッターやリセール業者から手に入る。定価は500ドルだが、実際の販売価格は380ドル未満になるはずだ。
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