タイトリスト「PRO V1/V1X」 重要ポイント
・タイトリストのベストセラーボール「ProV1」および「ProV1X」に新バージョンが登場
・初代発売以来、初のカバーからコアに及ぶ「大規模改良」を実施
・価格は49.99ドルで、前作より2ドル高い
タイトリストの新世代ボール「PRO V1/V1X」の発売は、ゴルフボール市場の現在の姿をしっかりと映し出している。
前回の「ProV1」発売以降、ボール市場は少し変わったと言える。「ソフトボール」「パターンボール(絵やデザインが施されたボール)」「カラーボール」「直販ボール」などこれまでになく多くのオプションが普及しており、これらがタイトリストボールの優位性に影響を及ぼしているのは確かである。
しかし、同社も認めるように、市場の流れが変化しても彼らのスタンスは全く変わらない。かつてほどシェアを独占しているわけではないが、彼らは今でも「売上げNo.1」を維持しているし、更に、PGAツアーでのタイトリスト「使用率は約74%」にも及び、さらに優位性を高めている。
ここで多くの読者が、ツアー支給品のほとんどは「メーカー持ち」なのではないか?と考えるだろう。しかし他のメーカーのボールでも同様だ。事実として重要なことは、未契約のプロの間でもタイトリストのシェアは業界をリードしているということだ。
タイトリストのゴルフボールマーケティング担当副社長であるジェレミー・ストーン氏は、「契約の縛りがなくなったプレーヤーからも多く問い合わせがある。」と述べている。
もちろん、何もアクションを起こしていなければ、長く「No.1の座」を守ることはできない。2年ごとの新商品サイクルはユーザーとの“契り”である。話の筋から逸れているかもしれないが、このようなタイトリストの一貫した姿勢が同社の実績の大部分を支えている。
タイトリスト「PRO V1/V1 X」-史上最大級の改良
ある年の「PRO V1」モデルが、他の年に比べて劇的に改良されたということはあった。では、2021年のボールはどうなのかと問われれば、初代発売以来、「Pro V1シリーズ」“最大の改良”を図ったと関係者は一様に語る。
同社もカバーからコアに至るまで大幅に改善したと正式に発表している。あらゆる箇所が改良されれば、すべての性能が向上する。それで十分ではないか?
初代「Pro V1」が発売された時のように、「革新的な性能の進化」を期待する人はもはや誰もいない。
USGAの規定下では、ゴルフボールの設計はせいぜい“同じ技術の繰り返し”だといわれてもしかたがない。イノベーションの余地が非常に小さいため、10年前の機能が今日も使われているのが現実だ。知的財産(特許)を持たない直販ブランドが競争できるのはそのためだ。
つまり、現代のボール設計においては「革命的な進化」でさえ「わずかな改良」に見えてしまうのだ。
「PRO V1」に当てはまることは「PRO V1 X」にも当てはまる
詳細を掘り下げる前に、比較の観点から、すべてが変更されたわけではないことを述べておこう。
「Pro V1X」は、従来通り「Pro V1」よりも「高弾道」「低スピン」が特徴だ。「Pro V1」の「ソフトな打感」や「中弾道」「中スピン特性」も変わらない。つまり、大多数のゴルファーに機能するのが「Pro V1」だと同社は謳っている。また、「Pro V1」が3ピースという点も変わらないし、「Pro V1X」が4ピースである点も変更ない。
この2つのモデルを“差別化する”という点は何ら変わりがなく、「改善」という観点で見る限り、「Pro V1」に当てはまることは「Pro V1 X」にも当てはまるということになる。
特に、アイアンとグリーン周りでのスピン性能には期待が持てそうだ。どちらのモデルも前モデルよりもさらに高弾道(「Pro V1X」はさらに高く飛ぶ)。些細なことかもしれないが、打感が少し柔らかくなったことにも気付くかもしれない。
では、「新Pro V1」の詳細をみていこう。
「新ZGプロセス」による柔らかいコアと打感
同社は、ボールの「内側から外側」にかけて改善に取り組むことで、「柔らかいコア」を作ることに成功した。
「ZGプロセス」とは「Zero Gradient(「均一性100%。タイトリストが目指すコア均一性に対するフラッグシップフィロソフィー(社是)」の略で、「いつ製造されたか」「どの機械で製造されたか」に関係なく、すべての「Pro V1(X)」の「コア」が確実に“同質”に製造できるようにするプロセスの総称だ。
つまり、「ZGプロセス」とは、「ボールの一貫性を高いレベルで保つ」ために取り入れたプロセスというわけだ。
「高フレックス・ケーシングレイヤー」
「コア」を柔らかくするだけでもボール初速に影響を与えるが、もちろん目的は初速や飛距離が劣るボールを作ることではない。
低コンプレッションコアを相殺するためにタイトリストが採用したのが、「高フレックスケーシングレイヤー(柔軟性の高い高速ケース層)」と呼ぶもので、これを利用して効果的にニュートラルなコンプレッションを実現している。
「ProV1」と「ProV1/ ProV1X」両者のコンプレッションは前モデルと同じだが、ゴルファーによっては少し柔らかく感じるかもしれない。
「ケーシングレイヤー(ケース層)」は、タイトリストの高コンプレッションモデル「Pro V1X Left Dash(レフトダッシュ)」の経験を基に生まれ、ロングショットでのスピンを軽減させながら、スピードを維持するという画期的技術だ。
「新ディンプルパターン」によるソフトなカバー
2021年版「ProV1(X)」を全くの新カテゴリーと言うこともできるが、最も大幅な改良は「カバー」だと言える。
キャストウレタンカバー素材はさらに柔らかくなり、両モデルに「新しいディンプルパターン」が搭載された。「Pro V1」には388個のディンプル、「Pro V1X」には348個のディンプルがある。共通するのが、「ソフトな打感」とグリーン周りでの「豊富なスピン」だ。
同社によると、この新ディンプルデザインにより更なる「飛距離」と、「一貫したボールの飛び」が実現するという。
このような謳い文句はボール発売時の“常套句”だが、実際に強風や横風の中でも、一貫した安定した飛びが得られる。最終的な結果として、厳しい条件下でも「より正確な方向性」が手に入るというわけだ。
「Pro V1シリーズ」を細部まで理解してもらうため、「ボール設計」と「性能」に関わる“隠れたヒーロー”「ディンプル」をさらに深く掘り下げたいと思う。
多くの企業がラインナップのすべて、またはモデルの一部に「同一のディンプルパターン」を使用する中、タイトリストは「モデル間でディンプルパターンを変える」。
ゴルファーがいちいち気にすることではないかもしれないが、(ボールを)直進性を維持して空中に保つということだけでなく、「ディンプル」はボールデザインの他の特性と連携して「飛びの最適化」に一役買っている。
簡潔な説明だが、このように考えると分かりやすい。ボールのスピードは「コア」から生まれる。材料の違いによる誤差はあるとして、スピードは「コンプレッション(ゴルフボールの硬さ)」と関係する。「ソフト」が「低スピード」と言われるのはそのためだ。
硬いレイヤー上に柔らかいレイヤー(=スピン量)
スピンは、レイヤー(層)間の「硬さの差」から生まれる。硬いレイヤー上に柔らかいレイヤーをかぶせると「高スピン」が生まれ、柔らかいレイヤー上の硬いレイヤーは「低スピン」を生成する。これが、低コンプレッションボール、特に2ピースモデルが基本的に低スピンになる理由だ。
実際のボール設計に関しては、柔らかいコアにマントル層を被せたり、硬い素材で覆うことにより、ドライバーやアイアンのスピン性能を低くすることができる。反対に、硬いレイヤーをソフトカバーで覆えば、コアを使わないグリーン周りのショットなどでよりスピンを効かせることができる。
弾道につながる「ボールスピード(コア)」と「スピン(レイヤー間の違い)」の関係についてお分かりいただけただろうか。さて、次の説明に移ろう。
ディンプルに関する“小ネタ”
「ディンプル」は、ゴルフボールの「打ち出し角」に大きく関わる。また、ボールの「高さ」や、ボールの空中での「挙動」、最終的にはボールの「着地」にまで影響する。
このように、ボール設計におけるディンプルの役割を説明するワードは2つ。「揚力」と「抗力」だ。
例えばクラブのフィッティングに置き換えると、すべてのボールに同じディンプルパターンを採用することは、「打ち出し角」や、「頂点の高さ」「降下角」の性能が同質なドライバーをフィッティングするのと似ている。
「初速」「打ち出し角」「スピン量」が連携して最適なボールフライトを生み出すのだ。3つのうち2つだけを調整しても、パフォーマンスは完成されない。
この「1つのディンプルパターンがすべてを支配する」やり方は、大企業でもまったく珍しいことではないが、ディンプルパターンの製造が制限されることが多い直販ブランドではとりわけ一般的なことだ。
このようにディンプルが単一のパターンでも機能しなくはないが、ディンプルがモデルごとに最適化されている場合ほどには性能に期待はできないだろう。
「ディンプルの最適化」が重要な理由
元に戻り、モデルによってディンプルパターンを最適化することがなぜ重要なのか、理解していただけたと思う。
「ProV1」が「ProV1X」のように348個ではなく388個のディンプルを備える理由は、「頂点の高さ」が「低い」という「Pro V1」の特性において、388個の方がより優れたパフォーマンスを発揮するためだ。
これは全体的な話であり、新作をリリースする度にディンプルパターンが大幅に変更されるという意味ではない。彼らの基本的なやり方は、すでに持ち合わせているものに微調整を加える。つまり、他の箇所の改良と併せてディンプルの深さを微調整するのだ。
2021年の「ProV1」と「ProV1X」は、2011年以来初の「新ディンプルデザイン」となっている。軽視しがちな点だが、決して「見逃せない大きな改良」である。
「PRO V1 X LEFT DASH(レフトダッシュ)」は?
これを読んでいる多くの人は、「Pro V1X」の別モデル「Left Dash(レフトダッシュ)」を私が支持していることはご存知だろう。「Left Dash」については、基本的に「Pro V1X」の低スピンバージョンである、ボール市場で「最長飛距離を誇るツアーボール」ということを耳にしたことがあるのではないか。
在庫として扱う業者はほとんどいないが、タイトリストのボールを販売している所ならどこでも注文できる。
タイトリストは現時点で「Pro V1X Left Dash」の新しいバージョンを発表していない。一方で、現バージョンは優れており私には合っている。でも、正直なところ新バージョンが欲しい!
きっと同じように思っている人もいるだろう。
多くのリクエストがあるだろうが、少なくとも近い未来に「新Left Dash」が出ることはないはずだ。今後のタイトリストの動きを待たなければならない。次の秋なのか、1月に「新AVX」か「Left Dash」が発売されるのか、常に謎に包まれている。
私も早く知りたいと思う。
モデル同士の比較
現在4種類あるタイトリストのキャストウレタン「プレミアムボール」の各モデルが、性能の観点からラインナップのどこに分類されるのか分からない人もいるだろう。
簡単な答えは、低弾道・低スピンモデルの「AVX」から高弾道・高スピンの「Pro V1X」まで“ほぼ直線関係”だ。「Left Dash」は他のボールとは異なる関係なので、もう少し複雑になる。以下のチャートが分かりやすく説明している。
配置やモデル間の距離にとらわれないでほしい。このチャートは、相対的なパフォーマンス特性を簡単に表現することを目的としている。コンプレッション値は、前世代の測定値に基づいているが、今回の新モデルと大きく異なることはない。
新「PRO V1」は適切なボールか?
同社によると、「Pro V1シリーズ」は、「性能を何よりも優先するゴルファー向け」だ。シリアスゴルファーほど「色」や「打感」、さらには「コスト」で選ばず、「ツアー向け」と言われるボールを使いたがる。
そのようなカテゴリーのボールにおいては、「フィッティング」が重要だ。したがって、「Pro V1」「Pro V1X」「Left Dash」もしくは「AVX」の中から適切なボールが見つかる可能性があるが、タイトリストが絶対的であるとは言えない。現実には、あらゆるタイプのゴルファーに合う独自性能を備えた優秀な商品が多数存在する。
「品質」のためのボールラボ基準
高性能ゴルフボールを提供しているのはタイトリストだけではないが、タイトリストが他に追随を許さないのは、「品質」と「一貫性」の分野だ。MyGolfSpyが行う『Ball Lab』のデータベースに多くのモデルが追加される度に、タイトリストの品質の素晴らしさが浮き彫りになる。
タイトリストには、非常にシンプルな哲学がある。あなたのベストショットは報われるはずだ。製品の「品質」に疑いがなければ、まずは心配ない。
タイトリスト「PRO V1/ V1X」価格と販売予定
2021年タイトリスト「ProV1」、「ProV1X」の価格は49.99ドル。前モデルから2ドル値上がりしたが、同時に2011年以来初めての値上げだ。
新モデルに道を譲るため、前世代のタイトリスト「Pro V1」と「Pro V1X」は、39.99ドルに値引きされた。
新作「PRO V1/PRO V1X」は現在発売中。
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