テーラーメイド 「SIM2 MAX」および「SIM2 MAX OS」アイアン主な注目点
・新キャップバックデザインによりフェースの反発力がアップ
・ポリマー素材をバックフェースに採用した中空構造
・ECHO®ダンピングシステムにより前作に比べて打感が向上
・スチールシャフトは799ドル、カーボンは899ドルで2月19日より販売開始
2021年のテーラーメイド「SIM2 MAX」アイアンは、同社の中級者向けアイアンをわずか1年でどれだけ進化させられたのかという興味深いケーススタディ(事例研究)となるだろう。
テーラーメイドが「SIM2 MAX」のプロジェクトを開始したのは、2020年度の「SIM」で『鉛筆を置いた』翌日というわけではない。研究開発の仕組みはそういうものではない。
しかし、かなりの変更、アップグレードや強化が施された「SIM2 MAX」アイアンならば、次の「Most Wanted」の時期に取り上げられる可能性がある。
テーラーメイドの中級者向けアイアンは、2018年に「M4」が「Most Wanted」で3位になったのを最後に、“凡庸またはそれ以下”であるとの烙印を押されてきた。
しかしその評価は販売成績には全く影響せず、「SIM MAX」と、その兄弟アイアンとなる「MAX OS」は、去年の夏の売上でキャロウェイの「マーベリック」に次ぐ2位の座に輝いた。皮肉なことに「マーベリック」は昨年の「Most Wanted」では「SIM」の次、ビリから2番目で終わっていた。
なんでそうなるのか。
それでも、テーラーメイドは「SIM2 MAX」にいくつかの「かなり重要なアップグレード」を施している。それが果たして「Most Wanted」のリーダーボードに載せられるほどの出来なのか見てみよう。まずはそれぞれについて検証していく。
テーラーメイド 「SIM2 MAX」:キャップバックデザイン
テーラーメイドのオリジナル「SIM」は、矛盾した側面を持つよう設計されていた:ボールが“えげつなく飛ぶ”のに「鍛造アイアン」のような「打感」の中級者向けアイアン。その最初の部分を達成するのに採用されたのが「キャップバックデザイン」と呼ばれるものだ。
「キャップバック」は、昨年の「SIM」と同様に「M5/M6」時代の「スピードブリッジ」と「スルースロットスピードポケット」技術をベースにしている。長ったらしい名前の「スルースロットスピードポケット」は、リーディングエッジをソールから切り離すことで、「フェースの反発力」を上げるものだ。
一方、「スピードブリッジ」は、バックフェースとトップラインをつなぐことで、「ヘッド剛性」を上げている。飛び込み台をどのようにプールデッキとつなげているか考えればわかるだろう。
「スピードブリッジ」では接続箇所は比較的小さかったが、「キャップバック」はサポート部分を次のレベルに引き上げている。
「研究開発における論理的な議題は、もしヒールからトウまで、トップライン全体を支えたらどうなるかということだった」と、テーラーメイドのシニア・アイアン・ディレクター、マット・ボビー氏は言う。「その答えが、ヒールからトウにわたりトップラインを完全にサポートする軽量ポリマー素材のキャップ、キャップバックデザインだった」。
フェース上部の「剛性」を高め、フェース下部の「柔軟性」を高めるという考え方だ。もう一度飛び込み台で喩えてみよう。4本の重いボルトで飛び込み台を固定するのは、レンガを置いて固定するよりもはるかに優れた方法だ。
「トップラインは硬くなければならない」とボビー氏は言う。「フェースが完全にたわむためには、上部の外周を硬くする必要がある。それがなければフェースの反発性が制限されてしまう」。
中空か中空じゃないか
「ポリマーバッジ」、つまり「キャップバック」の「キャップ」によって、「SIM2 MAX」は本質的には中空ボディアイアンとなっている。
まあどちらかと言えば。
バッジは振動を抑える接着剤でヘッドに接着されている。そしてそれは基本的にトップラインを支えながらキャビティを塞いでいる。「P790」の中空のような中空ではないが、「バッジとクラブフェース間のスペース」が重要だとボビー氏は言う。
「バッジをバックフェースに接着すると、フェースの反発力が制限される。CORの観点から見ると、それでは“フェースの動きを鈍らせる”ことになる」とボビー氏。「そこでバッジをポリマーキャップに置き換え、内部に中空スペースを作った。すると“フェースが自由に動く”ようになった。その恩恵として『フェーススピード』と、最も重要である『寛容性』の両方の性能が向上した」。
ポリマーキャップは鉄の7.5倍軽い。おかげでテーラーメイドは、さらなる「低重心」を狙えるわけだ。
「それは高い打ち出し角を実現するという意味で中級者向けアイアンにとっては非常に重要なポイント」だとボビー氏。「ハイハンディキャップのプレーヤーは、できるだけ多くのナイスショットを繰り出すために、ボールを空中に上げるのに可能な限りの助けを必要としている」。
テーラーメイド 「SIM2 MAX」:ボール初速と打感のよさ
「より速く、より反発性の高いフェースにすることで、多かれ少なかれ打音や打感を損なうことになる」とボビー氏。
反発力の高さは初速を上げてはくれるが、多くの場合、中級者向けアイアンにはお馴染みのクラック音がついてくることになる。
オリジナルの「SIM MAX」では、テーラーメイドは「ECHO®ダンピングシステム」と呼ぶものを採用した。振動を吸収し、打音と打感を向上させるためにキャビティ内の低い位置に配置された、柔らかく反発性のある素材だ。ECHO®は「SIM」のバックキャビティではかなり目立っていたが、テーラーメイドはこの素材をさらに柔らかくしたいと考えていた。
それはちょうど少々曖昧なUSGAの規制が出始めた頃だった。
「USGAでは、ゴルファーが手、特に指の爪でクラブヘッドを触ることができる場合、その素材がどの程度柔らかくあるべきかという適合規制がある」とボビー氏。「しかし、完全にカプセル化されたことで、『ECHO®ダンピングシステム』をさらに柔らかくすることが可能になり、打音と打感のさらなる向上が実現した」。
昨年の「SIM MAX」のコマーシャルで、目隠しされたTMaGツアープロが「SIM」と鍛造アイアンの音の違いを識別できなかったことを覚えているだろう。
これは話半分に聞いておくべきだが、テスターたちはテーラーメイド「SIM2 MAX」アイアンは実際に昨年のモデルよりも「打音」も「打感」も良くなったと評価しているとボビー氏は言う。
美味しい部分は低く
ブレードというカテゴリーを離れると、アイアンは、「距離」と「打音/打感」、そして「寛容性」の三本柱の上に構築されている。つまり、どの程度のミスショットならば、自分が狙っていた場所のかなり近くまでボールを運ぶことができるのかということだ。
フェースの反発性が高ければ高いほど、アイアンの寛容性は増す。中級者向けの世界では、それはスイートスポットを拡大することと同義だ。テーラーメイドによると、10万ショットを超える「SIM」と「SIM2」の比較テストで、「SIM2」のスイートスポットは30%近く多くのショットを捉えていた。
「より多くのショットを(スイートスポットで)捉えられるようになったのは、スイートスポットが大きくなったからというだけではない」とボビー氏。「より多くのショットを捉えたのは、スイートスポットをより理にかなった位置、つまりフェースの下方にずらしたからだ」。
テーラーメイドのテストでは、アイアンショットの4分の3近くがフェースの中央またはそれより下に当たっているため、スイートスポットは、低くするほど良いとボビー氏は言う。
「中級者向けアイアンにおいて最も重要なのは“再現性”だ」と彼は言う。「もちろんボール初速の速さは重要だ。そして打ち出し角の高さも重要。しかし、我々の製品ではなによりも再現性が増している。当社の実打テストにおけるショットの分散は、2020年の『SIM』と比較してより狭い範囲にあつまるようになった。そのおかげでゴルファーにショットを成功させるチャンスをより多く与えることになった」。
降下角とインバーテッドコーン
もちろん、より薄く、より反発性の高いフェースはボール初速を高める。しかし、中級者向けアイアンが距離を稼げるのは、ストロングロフトによるところが大きい。
その結果、スピン量が減少し、グリーンをキープするのが困難になる可能性が増す。これが、各メーカーが低重心を好む理由だ。重心が低ければ低いほど、打ち出し角は高くなるのだから。
そして、打ち出し角が高ければ高いほど、降下角はスティープ(急角度)になる。
「ボールの最高到達点が高いので、多少のスピン量減少は問題にならない」とボビー氏。「典型的なスピン量の7番アイアンで40度を超えていれば、グリーンをキープすることができるだろう。『SIM2 MAX』の7番アイアンならばその数字は40度から42度の範囲にある」。
そして、2週間前のピン「G425」アイアンに関する記事で述べたように、中級者向けアイアンが実際に「右バイアス傾向」にあるのは珍しいことではない。そこで、テーラーメイドの「プログレッシブインバーテッドコーンテクノロジー」が役立つことになる。
「中級者向けアイアンでは反発性の高いフェースを採用しているため、どうしても右に打ち出す傾向が強くなる」とボビー氏。「(このカテゴリーのアイアンの)フェース面はヒール側よりトウ側の方が大きいので、側面(トゥ側)がより屈曲する。それはどうすることもできない。物理学だから」。
なるほどそれでボールが右に押し出されるわけだ。もともとスライスボールに悩まされているゴルファーにとっては由々しき問題だ。だから何年も前から存在する『プログレッシブインバーテッドコーンテクノロジー』によって、その傾向をなんとかしようとしている。
「重心位置が変わったというよりも、フェースの形状が変わったというだけ」とボビー氏。「フェースの最も厚いポイントはトウに向かっている。それによりフェース全体のフレックス特性を変化させ、ボールにドロースピンを発生させている」。
テーラーメイド「SIM2 MAX OS」
昨年同様、テーラーメイドはよりオーバーサイズでさらにストロングロフトの「SIM」、その名も「SIM2 MAX OS」を出してきた。
しかし今年は、昨年モデルよりもソール幅を広く、オフセットを増やし、よりオーバーサイズの「OS」モデルとなった。
「それは(SIM2 MAX OS)市場からのフィードバックに基づいている」とボビー氏。「トップラインを太くすることなく、少し大きく見えるよう特大サイズの機能を追加した」。
具体的には、テーラーメイド「SIM2 MAX OS」はスタンダードモデルに比べ、約1.5mmオフセットしており、よりワイドで寛容性の高いソールを配したことで低重心化を実現した。
「OS」はまた、フェースサイズが異なる設計、すなわち「OS」のロングアイアンは、スタンダードモデルのロングアイアンよりもフェース長が短い。これは、ハンディキャップの高いプレーヤーがロングアイアンでボールを空中高くに放てるよう、さらなる低重心化をもたらすためだ。
ショートアイアンほどロフト角が作用し、「SIM2 MAX」モデルよりもフェースが高くなる。
「進歩的なクラブとグリーンを狙うクラブ、2つの選択肢がある」とボビー氏。「距離を最重要視するプレーヤーにとっては『SIM2 MAX OS』が答えとなり得るだろう」。
スペック、価格およびシャフト選択肢
テーラーメイドの新作、「SIM2 MAX」および「SIM2 MAX OS」はいずれもKBSスチールシャフトとKBS MAX MT85カーボンシャフトのRとSフレックスが純正となる。
「MTはマイクロテーパーを意味する」とボビー氏。「高い打ち出し角とスピン量により、ショットの再現性を高めている。これはテーラーメイドオリジナルのシャフトになる」
カーボンシャフトはフジクラ「VENTUS BLUE」、女性用には両モデルともアルディラ「NV LADIES」が純正。グリップはラムキン「CROSSLINE 360 REMINDER」と女性用セットにはラムキン「LADIES SONAR」が用意されている。
標準7本セット(4番アイアンからピッチングウェッジまで)の小売価格はスチールシャフトで799ドル、カーボンで899ドル。オプションでギャップウェッジ、サンドウェッジ、ロブウェッジも選択可能。
「SIM2 MAX」シリーズ全体の前売りは今日から、小売店には2月19日に並ぶ。
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