ピン「G425」ドライバー主な注目点
・「G425」シリーズのドライバーがついに北米と欧州で登場
・「MAX」「SFT」「LST」の3モデルはそれぞれ、「超高MOI」「スライス矯正」「低スピン性能」が特徴
・小売価格は500ドルあたりだと予想される
ここ数年の「Most Wanted」テストでピンのドライバーが常に優れたパフォーマンスを発揮していることを考えると、当然「G425」シリーズへの期待は、今年米国市場に出回るどのモデルよりも高いものになるだろう。
それでも、ピン「G425」ドライバーが豪州およびPGAツアーではすでに数ヶ月前から使われているというがっかりな現実を見過ごすわけにはいかない。
それに加えて、ピンが決して声高でも派手でもないという事実を鑑みると、ピン「G425」ドライバーは、他の場所でどれほど印象的なデビューを飾ろうと、春のリリースサイクルの混沌とした慌ただしさの中で“迷子”になってしまう可能性がある。
とはいえ、新しいカラーリングは比較的地味だし、大袈裟な開発秘話もないが、それでもピンに勝算はある、とわたしは思っている。
過去数年間の「Most Wanted」テストにおいて、「PLUS」「スタンダード」は安定した最高レベルの性能であることが証明されている。「SFT」は「究極のスライスキラー」として個性が際立ち、「LST」はその2つのテストでそれぞれ「トップ」の栄誉を獲得している。
ピンのドライバーなら間違いがない。そこは議論の余地がない。余地があるのは「ピン『G425』は良いものなのか」ではない。「ピンは一体どうやってこの3モデルのドライバーをより良くすることができたか」だ。
寛容性重視の設計
ピンの設計哲学は、「MOI (慣性モーメント)」に基づいている。つまり、寛容性が犠牲になることは絶対にない。妥協のない取り組み方、あるいはピンが言うところの「トレードオフ曲線から脱却する」ことは、反復と進化へのピンのアプローチにおけるあらゆる側面に息づいている。
設計の側面を改善することと、その「改善を他の性能を損なうことなく達成する」のは別の話だ。
もちろん誰もがそうしたいと願っているだろうが、必ずしもうまくいくとは限らない。メーカーが製品設計のある部分の性能を向上させる一方で、どこか他の性能を犠牲にしている例は最近でも数え切れないほどある。
しかしピンはそういうやり方はしない。その設計が(ゴルフ界の限られた制約の中で)革命的であろうが反復的であろうが、ピンの新作が常に優れているのは、ピカピカの新製品を発売する上で、ほとんど何も引き換えにしていないからなのだ。
ピンの進化への取り組み方は、ときにゆっくりとした歩みに見えるかもしれない。しかしそれは、「ストーリーが工学技術を生み出すのではなく、工学技術こそがストーリーの原動力だ」とする企業精神の証なのだ。
そう考えると、前作の「G410」および「G400」シリーズからのテクノロジーの多くが、「G425」ドライバー3モデル全てに受け継がれていることは、まったく驚くべきことではないはずだ。
まずはピンの新しい「G425」ドライバー3モデル全てに共通するものを紹介しよう。
Ti9s+フェース
フェースやフェース素材のストーリーが大流行の昨今だが、とりあえず今回特筆すべきことはない。ピンがしばらく前から採用している「Ti9s+フェース」の性能は申し分ない。より寛容性と反発性能が高く初速の出るフェースがまだ見つかっていないだけのことだ。
より良いものを見つけたらそちらを採用するだろうが、ピンが使い続けている「Ti9s+フェース」がきっちり仕事をしているということに異議はない。
ドラゴンフライ・クラウン
どのメーカーもクラウンを薄くすることで生まれた余剰重量を他の場所に再配分する手段を持っている。ピンでは格子状の「ドラゴンフライ(とんぼ)」構造がそれだ。
前作ではこの構造がクラウン上ではっきりと目視できた。「G425」ドライバーのような最近の設計では内側に隠れているものの、構造自体は引き継がれている。
業界の多くがカーボンファイバーに移行している中で、ピンが「オールチタン構造」を使い続けることができる理由の一つは、その「軽量化構造」にある。
話の中身は「Ti9s+」の時とあまり変わらない。ピンが複合素材を使うほうがより良いドライバーを作れると考えない限りはそうだ。それまではチタンを使い続けるだろう。
タービュレーター
ピンの空力強化タービュレーター(突起)のあるクラウンもまた本作に引き継がれた。同社では、現状ではそれが最適なものだと考えているが、そのうえでいくつか設計上のマイナーチェンジがみられる。
よく見ると、外観が少し変わっていることに気づくだろうが、ピンは空力的な改善については何も言っていない。これは、性能を低下させることなく「G425」ドライバーの見た目をリフレッシュするものだ。
免責事項もいまだ健在だ:スイングスピードが遅めのプレーヤーは、速いプレーヤーよりも空気抵抗低減による恩恵は少ない。
ピン「G425」ドライバー:その他の特色
その他、「G425」ドライバーの設計に見られる先進技術は、スピン量を200rpm程度低減する「ラフフェーステクスチャ(the rough face texture)」だ。
これはピンの深重心位置に起因するダイナミックロフトの増加をいくらか緩和するのに役立つが、設計上の高打ち出し特性により、低めの静的ロフト角では、ボール初速を多少加速させることにもなる。
クラウン後部付近にあるシワのような構造はちょっと微妙だ。個人的にはそれがなくても全く困らない。
ピンのロフト/ライ角調整機能も健在だ。上下どちらにも1.5度のロフト調整が可能。前モデルと同様、ライ角はフラットセッティングもあるので、上級者(そして私のようなしぶといフッカー)でも安心だ。
ピン「G425」ドライバー:3つのモデル
「G425」ドライバーシリーズ3モデルのスペックを掘り下げていくと、共通のテーマは、ピンが「スレート&ブラック」または「スレート&ステルス」と呼ぶ新しい仕上げと、調整可能範囲の広がったウエイト(「MAX」と「LST」)、さらなる深重心、より高いMOI、そしてモデル間の十分な差別化などが挙げられる。
ピン「G425 MAX」ドライバー
「G425 MAX」ドライバーは「G400 MAX」と「G410 PLUS」のいいとこ取りをした、というのが一番わかりやすい説明だろう。「高MOI」を前者から、「調整機能」を後者から受け継いだ。
肝心なのは、「G425 MAX」はピン「G425」シリーズの中で最も寛容性の高いドライバーというだけでなく、同社が「これまでに製造した中で」最も寛容性が高いドライバーだということなのだ。
ここ数年、多かれ少なかれMOI(慣性モーメント)で業界をリードしてきた企業として、クラブ全体のMOI値が10,000 g-cm2を超えていながら、ヘッド左右のMOIをUSGAの定める上限ギリギリにおさめるというのは、とんでもない快挙だ。
ドライバー市場で最も需要の高いカテゴリー向けに設計された、オーソドックスな形状のドライバーでそれをやってのけるとは、まったくもって訳がわからない。
大量のタングステン
性能面において「G425 MAX」の最も注目すべき特徴は、クラブ後方に配置された26gの可変式タングステンウェイトだ。参考までに、これはヘッド重量の10%以上を金属の塊が占めていることになる。
ピンの可変式ウェイトシステムはわかりやすく操作も簡単だが、これだけの可変式ウェイトをクラブ後方の小さなエリアに凝縮させることは容易ではない。インパクト時にこの重量を維持するには、工学技術にかなりの工夫が必要になる。
クラブヘッドがゴルフボールと衝突し、42.5~49.2 m/s(スイングスピードがどうであれ)から26.8~31.3 m/sまで500分の1秒で減速したときに、「設計の限界(と品質)」が試される。「インパクト時に、ヘッドはそれ自体がつぶれて、ウエイトは飛び出しヘッドに亀裂を入れようとする」とピンの研究開発部門の統括責任者ポール・ウッド氏は言う。
となると、理想的ではないような?
「G400 MAX」の大きな固定ウエイトから得た教訓と、「G410 PLUS(399ドル)」の可変式ウェイトの設計で得た知識を組み合わせることで、ピンは「G425」ドライバーの後方に26gのウエイトを搭載しただけでなく、インパクト以降もその効果を維持することができるようになった。
ちょっとしたことだが重要なことだろう?
では、なぜ可動範囲を狭くしたのか?より小さなトラックにより多くのウエイトを置くことで、ピンは「G425 MAX」のそれぞれのウエイトポジションにおいてMOIを増加させることができたのだ。
数字でいうと、「G425 MAX」は、ニュートラルポジションで7%のMOI増、ドローとフェードポジションでは20%増を実現している。実に「G410」を平均で約14%上回るということだ。
ここから話はもっと面白くなってくる。
ウエイトをドローポジションに置くことは、ほとんどの場合MOIアップを諦めることだと述べてきた。しかしピン「G425 MAX」ドライバーには当てはまらない。ウエイトトラックの形状と配置の妙によって、ウエイトがドローポジションにあるときに、まさにMOIが最高になるのだ。
最も寛容性を必要とするゴルファーへのちょっとした助け船だといえよう。
ピン「G425 MAX」:弾道矯正
これは明らかに思いがけないボーナスだが、最高に素晴らしいのは、「G410」に比べて重量が大幅に増えたことで、ピンはウエイトが動く範囲を大幅に狭めながらも、ほぼ同じレベルの弾道矯正を達成したということだ。
もちろんほんのちょっとの妥協はある。ピン「G425 MAX」のドローとフェードポジションは、8〜9ヤードの弾道矯正をもたらすが、それは「G410 PLUS」に比べると約1ヤード狭くなっている。
MOIがUSGA上限の許容範囲内におさめることができた今、この1ヤードを取り戻すことはピンの次作への課題となるだろう。
ピン「G425」ドライバーのロフト角は9度、10.5度、12度の3種だ。
ピン「G425 SFT」ドライバー
前作の「SFT」モデルと同様に、ピン「G425 SFT」は、「G425」シリーズの中でも「ドローバイアスのかかった(スライス抑止)モデル」である。
我々のテストによれば、ゴルフ業界においてゴルフコースの「右サイドを消す」にかけてはこのモデルの「右に出る者はいない」(これは「右利き」のプレーヤーにとっての話で「左利き」は左サイド)。
とはいえ、スライサーはスライスするもの。そこでピンは「G425 SFT」の軌道をさらにゴルフコースの「左サイドへ」と持ってきた。
「G425 MAX」とは異なり、「SFT」は調整可能ではないが、独自かつ相当量の「タングステンウエイト」を採用している。「G425 SFT」の固定ウエイトは23グラム、「G425 MAX」と同じくヘッド総重量の10%以上を一点集中エリアで占めていることになる。
この追加の重量は、「G410 SFT(399ドル)」より「さらに左サイドに」向かうバイアスをかけ、飛距離10ヤード増をもたらす方程式の一部だ。
さらなる比較のために、「SFT」では、ドローポジションの「G425 MAX」よりも「15ヤード左サイドへ」、ニュートラルポジションの「G425 MAX」よりも「25ヤード左サイド」に飛ぶとされている。
どれほどの助けが必要か?
誰もがスライス抑止機能を求めているわけではないことは言うまでもないが、これは「G425シリーズ」における各モデルの明確な違いを物語っている。
「G425 SFT」は明らかに「スライスと闘うゴルファー用」だが、より具体的には、自分のドライバーを“永遠に”ドローモードに設定しておくことに全く抵抗がないスライサーのためのドライバーだ。
ボールをフェアウェイに置いて楽しむのが目的なら、スライス仲間たちよ、これがおすすめだ。
ピン「G425 SFT」:見た目を損なうことなく効果を発揮
「G425 SFT」に対するピンのアプローチで特に印象的なのは、ドローバイアスを隠すために多大な設計努力をしていることだ。
確かにフェースは少し閉じているし、よく見るとヒールのわずかな突起が気になるかもしれないが、それ以外では設計上の著しいドロー要素は目立たない。
目に見えてオフセットしているわけではなく、形状も特に奇抜でも不快でもない。基本的に見た目は他のほとんどのドライバーと変わらない。
長生きはするもんだ。
「何年にもわたって、我々はプレーヤーが試したがらないような、(しかし)素晴らしい選択肢を提案してきた」とポール・ウッド氏。
例えば、数年前の「Kシリーズ」。正直に言うと、娘が生まれた後のシーズン最後の1ヶ月間は、「Kシリーズ」のハイブリッドにまあまあ支えられた。そもそも私はあまり上手ではなかったし、ラウンド頻度も高くなかったので、得られる限りの助けが必要だったわけだ。
だけど、「Kシリーズ」は妙な、というより嫌な見た目だった。所有していることを自慢に思えなかった。
しかし「G425 SFT」にはその心配はない。
そうは言っても、「まあ、ちょっとスライスするけど、絶対に乗り越えられる」というタイプなら、スライサー向けのフル装備ではないが、「G425 MAX」でも十分なスライス矯正効果がある。
ピンの「G425 SFT」はロフト角10.5度のみ。リアルロフトはもう少し多い。これも我々が選択するときに参考になるポイントだ。つまり、もしもっと少ないロフト角がお好みなら、「G425 MAX」のほうがしっくりくるだろうということだ。
ピン「G425 LST」
さて、皆さまお待ちかね、かな。「Most Wanted」で2回頂点に立っていることを考えると(私のバッグの中にも2回入りそうになったし)、わたしの目当ては間違いなくこれ。
とはいえ、だいぶネタバレもしていることだし、もう皆さんおわかりだろう。「G425 LST」ドライバーは、まさしく「PINGのLST」ドライバーであり、果たす役割に変化はない。
ピン「G425 LST」ドライバーは少しだけコンパクトになった。「G425 MAX」よりも少し小さいぐらいだ。数字の上では、レングスが短くなると、スイングスピードが引き換えになる傾向があるが、空力的には多少のプラスになる。
ピンの「G425」ドライバーの中では「最も低スピン」。「G425 MAX」ドライバーよりも600回転程度、先代「G410 LST(399ドル)」よりも200回転ほどのスピン量減だとされている。
ピン「G425 LST」:異なる方法でもたらされる低スピン量
ピンにおける低スピンモデルは、他のほとんどのメーカーのそれとは異なるものだ。「G425 LST」は、結局のところピンのドライバーであり、それが意味するところは、いくら低スピンを実現するためといっても「MOIが犠牲になることはない」ということだ。
MOIは5,100 g-cm2前後だろう。市場に出回っている標準的な製品のほとんどはそのあたりだ。これは、スピンレートを適度に低く、寛容性を比較的高く保つというピンの取り組みを物語っている。
「G425 LST」において、ピンはプレーに好影響を与える範囲で低スピンの状態を作り出すことを目指しているが、必ずしもスピンをなくしてゼロにしたいわけではない。
もし「可能な限りの低スピン」を求めるなら、テーラーメイドの「SIM2」またはタイトリストの「TSi4」あたりのほうがそこにはもっと果敢に挑戦するに違いない。
ピン「G425 LST」ドライバーの弾道調整ウエイトはわずか17グラム、ヘッド重量の約8%だ。これは、左/右の補正約7ヤードをもたらす。典型的な「LST」プレーヤーにとっては十分な数字だ。
ピンの「G425 LST」ドライバーのロフト角は9度と10.5度。
ピン「G425」純正シャフト
ピンは「G425」ドライバーのラインナップ全体で4種のシャフトを提供している。
「PING ALTA CB Slate」は、自社の「ALTA」の進化版。軽量で、カウンターバランスが強いため、最も高い打ち出し角(およびスピン量)を生み出すはずだ。
中程度の打ち出し角ならば三菱の「TENSEI Raw Orange」を。
「PING Tour」は、中〜低の打ち出し角の選択肢として存続している。もう一つの自社製品で、特性は「Aldila Tour Green」とさほど変わらない。
ピン「G425」ドライバー向けで最も低い打ち出し角およびスピン量のシャフトは「Aldila Rogue White」。硬めのチップが、打ち出し角もスピン量も抑えたいというプレーヤーの役に立つはずだ。
ピン「G425」ドライバーの価格と選択肢
ピン「G425」ドライバーのメーカー希望小売価格は540ドル。店頭価格はそれよりも安くなるだろう。フィッティングおよび先行販売は即刻開始される。発売予定日は2月4日。(アメリカ)※日本では既に発売されている
それまでは、お値打ち品ハンターなら、いまだ優れた「G410」シリーズのドライバーが399ドルまで値下がりしているので、検討してみてもいいだろう。
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