主な注目点
・スリクソンのツアーレベルボールが相対的に若干改良
・「Z-STAR」はカバーがやや厚くなりアプローチとグリーン周りのスピンが向上
・「Z-STAR XV」はインナー・ミドルコアを改良されボールスピードが向上
・2021年モデルは価格もやや上がり42.99ドル(ダース)
スリクソンのニューボール「Z-STAR」と「Z-STAR XV」は、「2年の『寿命』が終わる頃には、新しい“ストーリー”があった方がよい」というゴルフ業界の「お決まり」を体現している。
スリクソンでは、主力ボールの「Z-STAR」は“進化版”であると悪びれることもなく言っているようだが、とはいえストーリーがないというわけでもないようだ。
「我々がこれまでやってきたことや、これらのボールのデザイン目標から大きく逸脱しているわけではない」と話すのはスリクソンのR&Dバイスプレジデント、ジェフ・ブランスキー氏。「段階的に改良していきたいわけだが、これまでの全体のパフォーマンスを犠牲にすることはない」。
つまり、下手こけないってこと。
今回のスリクソン「Z-STAR」「Z-STAR XV」ボールの改良点は、前作と前々作に比べればわずかだ。シリーズから逸脱していることは全くなく、ちょこちょこ変えたという程度。キャロウェイとタイトリストの新作ボール合戦が再勃発していることを思えば、今年のスリクソンは“蚊帳の外”ってもんだ。
でも、それも悪くないかも知れない。
スリクソン「Z-STAR」:結局、薄い。
2019年の「Z-STAR」シリーズは、「ニューウレタンカバー」が特徴だった。0.5mmというのは業界最薄。そこにはわけがあった。
「薄いカバーだとコアを大きくできる」とブランスキー氏。「コアはボールのエンジンで、薄いカバーと大きなコアの組み合わせでボールスピードが上がり距離も稼げる」。
だから2019年の「Z-STAR」は飛距離が全てだった。まぁUSGAが許容する範囲内での飛距離だけど。そこで2021年、スリクソンは「Z-STAR」のカバーを少しだけ厚くしようとした。
そして、その「少し」というのは1mmの10分の1程度。
「ちょっとだけ厚みのあるカバーと我々の『スピンスキン』コーティングで、ちょっとずつ進化させた」とブランスキー氏。「アプローチとグリーン周りのスピンを少しだけアップさせている」。
しかし、カバーを厚くすると「ボールスピード」と「飛距離」は落ちるのではないだろうか?そもそも2019年の「Z-STAR」シリーズが薄いカバーだったのも、それが理由だったはず。
答えはいかに。
コアとコンプレッション(硬さ)
スリクソンでは、厚めのカバー(そしてそれによるコアの縮小)を補うため、ミッドとコア層にちょっとした改良を加えた。
ブランスキー氏によると「全体のコンプレッションは(「Z-STAR」の90と)変わっていないが、ここがキモ。カバーが厚くこの部分がソフトなのに、コンプレッション(硬さ)が90ということは、中間層とコアが硬くなっているということを意味する。これはフィーリングだけでなく、同時にボールスピードにも影響する」。
ブランスキー氏によれば、新作の「Z-STAR」のボールスピードは2019年モデルと近いようだが、アプローチとグリーン周りのショットでのスピンは多いとのこと。そして、厚いカバーだと耐久性が改善される可能性もある。理論上は。
「耐久性というのは、複雑なもの」とブランスキー氏。「カバーが厚いと耐久性がアップするが、耐久性は主にカバーの硬さに起因する。すでに我々には誇るべき最高品質の耐久性があるが、我々の『スピンスキン』コーティングでそれがさらに確実なものになる」。
では、スリクソン「Z-STAR」のポイントは何なのか?ブランスキー氏曰く、それはボールスピードを犠牲にすることなくパフォーマンスが向上する、具体的にはよりスピンがかかるように微調整が加えられたということらしい。
「Z-STAR XV」 - コアを改良
スリクソン「Z-STAR」が、スリクソンのツアーボールの中では「ソフトフィーリングで高スピン」なボールなら、「Z-STAR XV」は「飛び系」。ハイコンプレッションと低スピンで、キャメロン・チャンプ、グレーソン・マレー、ライアン・ブレームという飛ばし屋が使っている。
今回のスリクソン「Z-STAR XV」の改良点はこれまでと変わらないが、「Z-STAR」とはわずかに異なる。まず、こちらの方のカバーの厚さは変わっていない。0.5mmのままだ。その代わり、ボールスピードをアップさせるため、インナーコアのコンプレッションを改良している。
「インナーコアの素材はより弾力性がある」とブランスキー氏。「高CORタイプの素材で、このおかげでボールスピードと飛距離が少しずつ向上している」という。
ここで注目して欲しいのが、ブランスキー氏が強調する「少し」だ。
具体的に言うと、新しい「ファストレイヤー」インナーコアは中心部こそソフトだが、外側に向かって硬くなっている。中間層も若干、硬くなっているが全体のコンプレッションは102で変わらないという。
ディンプルを刷新
今回のスリクソン「Z-STAR」はともにディンプルパターンがアップデートされている。ディンプル数は前回同様338個のままだが、やや深くなっているのだ。
「弾道を安定させるためだった」とブランスキー氏。「おかげで弾道がやや低くなっているが、これはツアーからのフィードバックを参考にしており、より風があるコンディションで安定した弾道になる」という。
確かに、スリクソンのボールは風の中でも良いパフォーマンスを実現すると評判だ。
「スリクソンのプレーヤーがリーダーボードのトップにいると、毎回メールが届くんだ」とブランスキー氏。「メールには『風が吹いているけど、我々のプロたちは調子良いよ』と書かれてあるわけだが、これはほぼ毎年のことだ」。
昨秋のMyGolfSpyのボールテストで良い結果だった「Z-STAR」は日本製だが、ブランスキー氏曰く、「XV」は日本とインドネシアで生産されているという(スリクソンの「Q-STAR」はインドネシアの工場で生産されているが、我々のテスト結果はイマイチだった)。
そして、同氏は、ボールビジネスで一般的な「3ピースボールを作るより、4ピースボールを製造する方が圧倒的に難しい」ということにも賛同してくれた。
「数字で表すことはできないが、間違いなく難しい」と同氏。「我々は、MyGolfSpyの最近の調査による結果に誰よりもショックを受けた。でも、X線や破壊テストを見ると、我々がそのクラスで最高の品質にコミットしていることは分かるはず。(日本、インドネシア)どちらの工場でも、製造工程と品質は同じだよ」。
また、スリクソン「Z-STAR」シリーズは、「スピンスキン」コーティングもアップデートされている。「スライドリング・マテリアル」または「SeRM」と呼ばれる交差結合した分子構造を持つウレタン製の一番外にある極薄層で、耐久性がアップする他、チップショットやピッチショットでの抵抗を増やす要素となっている。
スペック・価格・発売時期
上記の通り、3ピースのスリクソン「Z-STAR」はソフトなモデルでコンプレッションは90。スリクソンでは、「Z-STAR」をグリーン周りのスピンが最大になり、ドライバーでは「低スピンを実現する中弾道ボール」としている。
一方、4ピースのスリクソン「Z-STAR XV」はコンプレッション102で2モデルの中では硬い方。同社では「中・高弾道ボール」としており、「Z-STAR」ほどグリーン周りでスピンはかからないが、ドライバーではロースピンになるという。
もう一つ、今回のモデルでアップデートされたのは、パフォーマンス面とは関係ないことだが、新パッケージになったことだ。新しいボックスはよりスッキリしていて、お店に並んだ時に目立つだろう。
お店といえば、今回の新スリクソン「Z-STAR」シリーズはちょっと値上がりしている。スリクソンは何年にも渡って「Z-STAR」シリーズを(ツアーボールとしては)ダースで39.99ドルというお値打ち価格で提供してきた。
今年は、ダースで42.99ドルに値上げ。あれこれディスるのは自由だが、これでもブリヂストンやテーラーメイド、キャロウェイ、そしてタイトリストのツアーボールより安い。
両ボールはピュアホワイトとツアーイエローの2色がラインナップしており、発売日は2月26日となっている。
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