クリーブランド「ランチャー XL Halo」アイアン – 主な注目点
・クリーブランドの主力、初級者向けハイブリッドアイアンの2021年モデル
・『メインフレーム・フェース』と重心・MOI(慣性モーメント)の最適化はAIがデザイン
・カーボンシャフトモデル(899.99ドル)は8月20日、スチールモデル(799.99)は9月17日発売
クリーブランドゴルフの新「ランチャー XL Halo」アイアンを完全に理解するには、辞書をチェックするのが一番だろう。
辞書で「Halo=後光」を調べてみると…。
「メリアム・ウェブスター辞典」では、「Halo=後光」を「太陽や月を囲むように見える光の輪」、「中心にある部分や物体を囲む差別化された部分」、あるいは「理想的な人や物を囲む栄光や尊敬の念、または感情という独特の雰囲気」と定義している。
思うに、クリーブランドが好むのはこれだろう。
実際のところ「Halo」は頭文字を取った言葉だ。クリーブランドによれば、「High Angle Lift Off(高打ち出し)」の略語だという。
この言葉はまさに、今回の新作が実現していることなのだ。
クリーブランド「ランチャー XL Halo」アイアン – 期待通りの高打ち出し
クリーブランドは、少なくとも2007年から「初級者向けのハイブリッドアイアン」を発売してきたが、今回の「ランチャー XL Halo」アイアンもその流れを汲んでいる。大型ヘッドでワイドソール、易しさもピカイチだ。打ち出しも高く、ただ楽しみのためにゴルフをするエンジョイゴルファーのためにデザインされているとも言える。
毎度のごとく良くできた情報満載のクリーブランド製品マニュアルには、「コースに出てラウンドを存分に楽しむことこそが、ゴルフのあるべき姿だと考えている」とある。
「仲間の朝一のショットで大笑いしたり、ハザード(バンカーや池など)があってもおかまいなしにグリーンを狙ったり、思いがけずコースのど真ん中に打てたり。フェアウェイでのそんな一つ一つが僕たちにとって、とっても大切なことなんだ。」ともある。
もしあなたが、ロフトを立てることが罪だと考えていたり、レッスン動画やスイング動画にいちいちコメントするタイプならこの記事は読まなくて結構。今回の新作はあなた向けじゃないし、このクラブがあなたを喜ばせることもないからだ。
しかし、もしあなたがエンジョイゴルファーで、仲間の朝一のティーショットで笑い合ったり、たまにはフェアウェイのど真ん中に打ってみたいと思っているなら、きっとこのクリーブランド「ランチャー XL Halo」アイアンが良い“仲間”になってくれるだろう。
クリーブランドが、フルラインナップを揃えるクラブメーカーとして復活した時、2017年の「ランチャー HB」アイアンはそのラインナップの一つだった。この「ランチャー HB」は、MyGolfSpyの2018年『Most Wanted初級者向けアイアン』で競合を圧倒。
クリーブランドはその後継モデルの「ランチャー HB Turbo」で連覇を成し遂げ、2020年のテストでも総合2位となった。どちらのモデルも「ストロークス・ゲインド」「正確性」「寛容性」でトップかそれに近い成績。しかし、残念ながら両アイアンとも「飛距離」では最下位に近い結果となっていた。
「初級者向けアイアン」でロフト角30度の7番ならそうなる。
そして、クリーブランドの名誉のために言っておくと、飛距離の問題を「ストロングロフト化」することで改善しているのではないということだ。
「AI」と初級者向けアイアンが融合
『メインフレーム・テクノロジー』については、2020年11月にスリクソンの新作アイアン「ZX」を取り上げた時にもお伝えした。
今回クリーブランドは、「ランチャー XL Halo」アイアンでこれと同じスーパーコンピューターによるテクノロジーを、初級者向けカテゴリーに活用した。同社のAIシステムにより、「HT1770Mスリールフェース」の背部には溝と凹みが独自のパターンで施されており、柔軟性、ひいてはボール初速を効率化しているのだ。
さらに、飛距離も。
「初級者向けアイアンとスリクソンのアイアンはヘッド形状が違うので、解決策は同じではない」と話すのはクリーブランドのR&Dバイスプレジデントのジェフ・ブランスキー氏。「それぞれのアイアンにおけるインパクトゾーンは異なるので、ターゲットゴルファーのインパクトパターンに合うようにしている」。
では、クリーブランドはターゲットとなる初級者がフェースのどこでボールをヒットしているかを知ることができたのか?そこには、クリーブランドの「ローンチスクアッド」と呼ばれる「弾道測定器」の存在がある。
ブランスキー氏は次のように語る。「弾道測定器でデータを取得できるようになってから、地元の数千人のプレーヤーに協力していただいている。我々が保有するデータは膨大で、ハンディキャップ15のプレーヤーが8番アイアンのどこでインパクトする傾向があるのかも分かっている。だから、それに合わせた設計も可能なのだ」。
AIは、多くの開発者が設計の実現に10年掛かるところを、たったの1日で創りあげることが可能だ。さらにクリーブランドは、自社のAIを新しくてより満足できる目的に向けても活用した。
「我々は、重心とMOIのどのような組み合わせが最大のボール初速と最高の寛容性を実現するのかを把握するためにも、AIを活用している」とブランスキー氏。「そのために、文字通り何度も反復学習を繰り返し、どこに重量を配置すべきかを見つけなければならない」。
「これら全ての組み合わせを検討し、何度もボールを打ってクラブのパフォーマンスを確認するというプロセスを踏める開発者などいないのだ」。
クリーブランド「ランチャー XL Halo」アイアン – 詳細
クリーブランドでは、今回の「ランチャー XL」シリーズのローンチで「MOI(慣性モーメント)」を強調しているが、この「Halo」アイアンも同様だ。
具体的に言えば、クリーブランドによると7番アイアンのMOIは2,908 g・cm2で、これは前作の「HB Turbo」より17%向上しているという。またこのMOIは、クリーブランドのハイブリッドタイプのアイアンでは最も高い数値だ。
わかりやすく言うと、「ランチャー XL」くらいの大型アイアンになれば、そのサイズゆえセンターから離れたところに重量が配分されている。重量がセンターから離れるほど、インパクト時のクラブフェースの開閉はしづらくなる。
これはトゥやヒール側に当てることが多いゴルファーにとっては好都合。開閉がしづらければ、理論上は飛距離をそれほど損なうことなく、そしてあくまでセオリー上はより真っ直ぐ飛ぶはずだ。
“必ずしも真っ直ぐ”ではなく、“より真っ直ぐ”ってことだけど。
ハイブリッドアイアンのその他のメリットは、“ダフりにくい“ということだ。心弾む土曜日のゴルファーを一瞬にして別人に変えてしまうのは、慢性的な「ダフリ病」だ。まるで”ドレスを着たノーマン・ベイツ“のように。(ノーマン・ベイツは映画「サイコ」の二重人格の登場人物。
「ドレスを着た...」は本来の姿ではない別の人格の例え)そうならないために、この「ランチャー XL Halo」アイアンは、「ノーマン(ダフる自分)」を寄せ付けない『プログレッシブ・ソール・テクノロジー』が特徴となっており、ロングアイアンでの「グライドレール」、ミドルアイアンでの「V Sole」、そしてショートアイアンではクリーブランドの「スマートソール」ウェッジと同様「3段ソール」がそれに当たる。
「今回のモデルのクラブヘッドは、我々が製造したどの世代のものよりも大きい」とブランスキー氏。「我々が実現したいのは、プレーヤーが望む“芝の抜け”を実現すること。確かに大型ヘッドだが、ツアープロのような素晴らしい芝の抜け感を可能にしている」。
ロフト別の「溝」も興味深い点だ。4番から7番アイアンまではワイドでフラットな溝になっており、スピン量を軽減し飛距離が出るようになっている。一方、8番アイアン以下は、間隔が狭く、深いスピン量の多いウェッジ用の溝が採用されているのだ。
ロフト:立てるべきか?立てないべきか?
我々の『Most Wanted』のテストにおいて、クリーブランドの前世代ハイブリッド系アイアンは「寛容性」「正確性」そして「ストロークス・ゲインド」で素晴らしい記録を残した。しかし前述の通り「飛距離」では下位に沈んでおり、ロフト角がその要因となっている。
「初級者向けアイアン」のカテゴリーは、各モデル7番アイアンで26度と27度ばかりだが、クリーブランドのロフト角は「30度」のままなのだ。これでは“一番飛ぶ”ということはないだろう。
「市場に遅れることなくゴルファーに最大の飛距離を提供することは大変なことだ」とブランスキー氏。「しかし、我々としてはプレーヤーに飛ばしてもらいたい。どのメーカーも飛距離競争に挑んでいるが、我々にはこの大型ヘッドというアドバンテージがあり、ストロングロフトに対抗しうる低・深重心を実現するための技術力もある」。
また、「ランチャー XL Halo」アイアンは、ドライバー、フェアウェイウッド、そしてハイブリッドと同様、『Action Mass CB(アクションマスCB)』カウンターウェイトを採用。シャフトのバット部(グリップの端の内側)に8gのウェイトを搭載している。
ブランスキー氏は「キャスト(ダウンスイングの際にクラブの角度が保たれなくなる現象)する傾向のあるゴルファーにとっては若干のメリットがあるだろう。この『カウンターウェイト』により、トップ・オブ・スイングでより良い位置に入るのを助け、さらにより効率よくスイングことが可能になる」。
さらにクリーブランドでは『アキュラシー・ビルドオプション(一貫性を高めるために意図的にヘッドスピードを少しだけ遅くするためのオプション)』をこのモデルに採用しており、各番手とも1/2インチ短くすることが可能。
飛びはそこまで期待できないが、「安定性」を求めるゴルファーにはメリットがあるだろう。クリーブランドのフィッティングカートにはこの『アキュラシー・ビルド』シャフトが採用されるだろうが、クラブはカスタムオーダーすることになるだろう。
ゆったり大きく飛ばせ
アーニー・エルスが使っていないとはいえ、今回のモデルは彼のニックネームのように「ビッグ・イージー」なクラブと言えるだろう。
クリーブランドによれば、このクラブは「ハンディキャップ15以上のゴルファー向け」だという。とはいえハンディキャップの数に関わらず、一度も打ったことがなければ、試してみてはどうだろう。もしかしたら、病みつきになるかも知れない。
ブランスキー氏は次のように話す。「ボールを上げることは『飛距離』にとって重要であり、さらに『寛容性』により打ちたい場所にボールを運ぶことができるが、これらのクラブは『飛距離』で苦労している人のためだけにあるわけではない。これについては誤解があるかもしれないが、本作は最大限の『寛容性』を備えており、さまざまなヘッドスピードに対応できるはずだ」。
「ランチャー XL」ドライバーの時と同じように、私の友人のブレッドを例に出そう。彼はおそらく年間のラウンド数が10〜15程度だが、コースでもよく喋り、あなたが会ってみたいと感じられるほどフレンドリーなヤツだ。でもゴルフを教えたりしないように(笑)。彼はエンジョイゴルファーだ。
そんな彼が「ランチャー XL Halos」の5番、7番、PWを試打して言った。「私が死んだ時、もしくは地獄が凍りついた時、その時はクラブを返す」と言った(つまり返さないということ)。その時彼が比較していたのは、彼に合っていない20年前のタイトリストのクラブだったが、ブレッドは「ランチャー XL Halos」でより高く、より遠く、そしてより安定して飛ばしていたのだ。
私には、“楽しむための秘訣”のように聞こえる。
クリーブランド「ランチャー XL Halo」アイアン:スペック・価格・発売時期
クリーブランド「ランチャー XL Halo」アイアンは4番からSW(サンドウェッジ)がラインナップ。
しかし、標準のセッティングは4番からPW(ピッチングウエッジ)、または5番からDW(デュアル・ウェッジの「D」はクリーブランドでは「GW」ギャップウェッジを指す)の7本セットになっている。4番からDWのメンズモデルは左右とも用意されており、オプションのSWは右打ち用のみだ。
一方、右利き用のみとなるが、同じセッティングでレディースモデルもラインナップ。左利き用はカスタムオーダーで購入可能だ。
なおクリーブランドヘッドカバーは別売だ。マジで。
クリーブランドではカーボンシャフトモデルを今週リリースする(8月の第3週)一方、スチールシャフトは9月17日の発売。このズレが、新型コロナウイルス感染症に関連したシャフトの在庫の都合によるものなのか、クリーブランドがターゲットゴルファーに敬意を表したのかは不明だ。
いずれにしても純正カーボンシャフトは「Project X Cypher(プロジェクトXサイファー)」のS、R、Aフレックス。47gの「Cypher」レディースシャフトはレディース用モデルの純正シャフトだ。
後日発売の純正スチールシャフトは98gのトゥルーテンパー「XP90」でフレックスはSとR。
グリップはメンズモデルがゴルフプライド「Tour Velvet 360(ツアーベルベット360)」で、レディースモデルは軽量(35g)のWinn(ウィン)「Dri-Tack(ドライタック)」が装着されている。
7本セットのクリーブランド「ランチャー XL Halo」はカーボンシャフトモデルが899.99ドル、スチールシャフトは799.99ドル。
Leave a Comment