・テーラーメイドの「STEALTH」ドライバーは『60xカーボンフェース』が特徴
・モデルは「スタンダード」、「Plus」、「HD」の3モデル
・価格は579.99ドルから
テーラーメイドは、「STEALTH(ステルス)」ドライバーを投入し、ゴルファーへ“カーボンウッド時代の幕開け”を告げる。
「STEALTH」ドライバーは、ある意味、テーラーメイドが“20年の旅”と表現した長きにわたる研究開発の集大成であり、ある意味では、『カーボンフェース・テクノロジー』の出発点と言える。
イノベーションという言葉を借りれば、テーラーメイドは「STEALTH」を新しい“S字カーブの始点”と捉えている。別の言葉で言い換えると、テーラーメイドは「STEALTH」ドライバーで既に抜け出し、競合他社たちは「チタンフェース」といういわば“予選レース”で辛抱強く潰しあっているという、そんな新次元の競争の始まりを宣言したのだ。
要するに、テーラーメイドは「STEALTH」という「カーボンウッド」を投入することで、競合他社と同じレース場にいるのではなく、全く違うレースをしていると考えている。これは、メーカーの「誇大広告」と「実際には小さいメリット」に慣れているゴルファーにとっては、ちょっと無理があるように聞こえるかも知れないが、我々は、以前から“本当の進化は常に新素材かメーカーの新製造技術の結果から生まれる”と言ってきた。このテーラーメイド「STEALTH」ドライバーには、この両方がふんだんに盛り込まれている。
さて、大風呂敷を広げたところで、みなさんの疑問に答えてみたいと思う。
「カーボンウッド」とは?
簡単に言うと、「カーボンウッド」は『カーボンフェース』を搭載したドライバーのことだ。
テーラーメイドにとって「カーボンウッド」はメタルウッドの進化形だ。従来の『チタンフェース』ドライバーは、“時代遅れ”であるというテーラーメイドの意志を表している。確かに「STEALTH」ドライバーの中にもたくさんの「チタン」が使われているが、他社のドライバーと違うのは、この『カーボンフェース』だろう。
テーラーメイドは「カーボンウッド」にこだわり、これ以上、『チタンフェース』ドライバーを製造しないと言っている。実際かなり本気のようで、組織体制も変更されているほどだ。以前「メタルウッド」という名前がついていたスタッフの役職は「カーボンウッド」に変わっているのだ。
まぁ、役職の変更などどうでもいいが。テーラーメイドによる、現在と未来の『カーボンフェース』ドライバーに向けた責任と自信を表しているのだろう。
初の「カーボンウッド」ではない
誤解のないように言うと、テーラーメイドはこれが“初”の『カーボンフェース』ドライバーと主張しているわけではない。初だったのはキャロウェイの「C4」。キャロウェイにとっては大失敗だったが、少なくともテーラーメイドにこの分野に進出するためのインスピレーションを与えたように思う。
そもそも「STEALTH」もテーラーメイド初の『カーボンフェース』ドライバーではない。日本市場では2013年に「グローレリザーブ」ドライバーがあった。
つまりある意味で、『カーボンフェース』は経験済みだということ。だが「グローレ リザーブ」は、“ゲームの流れを一気に変える”ものではなかった。しかし、今回テーラーメイドは、『カーボンフェース』ドライバーがゴルフ市場で成功するというだけでなく、パフォーマンスの点でも圧倒できるというところまでテクノロジーが進化したと考えている。
もちろん、実態はまだ分からないが、「STEALTH」ドライバーは間違いなく2022年に発売されるクラブの中で最も注目を集めるものとなるだろう。
なぜ、「STEALTH(ステルス)」というのか?
真っ赤なフェースのドライバーは、目立たないわけがないし誰にでもバレバレなだけに、そういう意味では「STEALTH」というネーミングはちょっとおかしく感じる。
このネーミングは、ドライバー自体ではなく、このドライバーが何を“象徴”しているのかということを意味しているようだ。「STEALTH」は、テーラーメイドにはゴルフ用品の世界で長い歴史を持ちながらも、今でも驚きの革新を起こせるという事実を伝えるためにつけられている。確かに、新ドライバーを「ジェットスピード II」と名付ける以上のサプライズはないが(ローマ数字もさらに驚き)、「STEALTH」は悪くないだろう。
「STEALTH」ドライバーに『カーボンフェース』を搭載したワケは?
お察しの通り、テーラーメイドは、カーボンファイバーはチタンよりも強く、軽く、速いと言っている。また、よりカスタマイズしやすく、今のところテーラーメイドしか発売していないものだ。
ではまず、後半の部分から見ていこう。
テーラーメイドが20年間に及び投資していたにも関わらず「カーボンウッド」のプロジェクトをほぼ中止するなど、チタンは何年にも渡って改良されてきたが、同社では業界主力のこのフェース素材はイノベーション曲線の成熟段階に達したと感じている。「チタン」は今後もなくなることはないだろうが、テーラーメイドでは、さらなる進化が必要な分野において、「チタン」は頭打ちだと考えているのだ。
逆にテーラーメイドでは、『カーボンフェース』においては一歩リードしていると考えている。上だけを目指せばよいのだ。
そう考えると、『チタンフェース』と『カーボンフェース』の技術の差は今のところ大きくないと言えるが、テーラーメイドはその差は急速に広がると考えている。20年以上にわたる研究開発に基づき最大の素材変更を行い先陣を切って抜け出したメーカーとして、競合他社に対してかなりの技術的なアドバンテージがあるのだ。
繰り返すが、『カーボンフェース』のパフォーマンスの実態はまだ分からない。だが、これは魅力的なことだし、それを伝えることができるのは「テーラーメイド」だけ。
というわけで、ここからはテーラーメイド「STEALTH」ドライバーの『カーボンフェース』に関するパフォーマンスの進化を分析する。
「カーボン」は軽い
数字で見ると、「STEALTH」の『カーボンフェース』は「チタン」に比べ40%も軽量。基本的には、こうした「軽量化」により、重量が低部、深部、そして高部に再配置され、高打ち出しや寛容性の向上、その他あれこれを実現できるわけだ。
ところがだ。今回は違った考えをする必要がある。
実際のところ、今回のモデルはテーラーメイドが『カーボンフェース』の世界に突入する「修正版その1」か、おそらく「修正版1.b」。(グローレリザーブをカウントすれば)忘れてはならないのは、これはカーボンウッド時代の“序章”に過ぎず、テーラーメイドは、まだ『カーボンフェース』を支える構造の「最適化」と「軽量化」については引き続き研究段階だということだ。
全てを整えるためには過剰な技術開発と改善を繰り返していると考えるのが妥当であり、フェースを支えるボディ構造と全てを固定する接着剤(グルー)を織り込むと、「実際の軽量化」は差し引きして4gというのが現実だ。
確かに、カールスバッド(あるいはフェニックス地区)にいるR&D部門の中に「4gの余剰重量」で喜ぶ人間がいないわけではないが、「40%」という数字が示すほどの成果でもない。
つまり、「カーボンファイバー」が可能にする様々な“イノベーションの序章”に過ぎないとテーラーメイドが考えているということがポイントなのだ。今後数年間で、「カーボン」と「チタン」の差はさらに広がっていくというわけだ。
では、「軽量化」だけが目的でないのなら、何がゴールなのだろう?
「カーボン」で初速アップ
フェース自体が軽くなっている(そして素材特性が基本的に異なる)ため、フェースはよりたわむ。結局、「カーボン」を導入したことで、フェースとボディの関係性は変化し、インパクト時にフェースがよりたわむ、一方でそれを支える「チタン構造」はそれほどたわまないということになる。テーラーメイドは、ボディの相対的な硬さにより、より多くのエネルギーがボールに伝わると説明する。
用品の規則において、「初速」に関する話題は常に難癖がつくだけに、USGAの初速規制に関して心得ておきたい2つのことがある。
1つ目は、反発係数「COR値(旧基準)」と「CT値(新基準)」には厳密な相関がないということ。せいぜい、緩い相関関係というところだろうか。要するに、ある「CT値(スピード)」において、「COR値(反発係数)」が高いドライバーと低いドライバーがあるということ。その点で、「CT値」の上限はボール初速の絶対的な上限ではなく、もっと大雑把な概念ということだ。
「CT値の規制」は上限の初速を上げるために制定されたわけではない。「CT値」は、「コースでの」適合テストを繰り返し可能にするために、「COR値」に取って代わった。「COR値」に必要な「キャノンテスト」は、一貫した条件設定が難しく、特に簡易的な測定装置としては持ち運びに優れていない。
2つ目は、「CT値」に関するUSGAの「ペンデュラムテスト」はチタンフェースのドライバーを想定して設計されているということ。「素材」が変わったことで、「CT値」と「COR値」のギャップを更に活用できる可能性が出てくる。これは、テーラーメイドが初速を上げるために、やりたい放題をしてくるという事が言いたいのではなく、同社がタイガー・ウッズのような正確さで(初速アップに関する)発言を行うだろうということ。
同社は、「STEALTH」ドライバーで見られる初速アップに歓喜しているものの、「CT値」と「COR値」の間で適合範囲内におさまっていると主張している。
このことから「STEALTH」ドライバーは「適合クラブ」であり、またテーラーメイドは今年のドライバー市場におけるどのモデルよりも「初速」があると信じている。
そのため、テーラーメイドは「ボール初速」をアピールしている。テーラーメイドの法務部門によると、「SIM2」よりも0.49m/s速いというのが公開できる数字だという。ただこれはヘッドスピードが46.9 m/s のゴルファーに対しての話で、距離にすると2.5ヤードから3ヤード程度の飛距離アップとなる。
多くのゴルファーにとって「3ヤード」は驚く数字ではないと思うし、“大股一歩分”に600ドルの価値があるのかは全く別の話だが、大切なことは、「SIM2」から「STEALTH」における初速アップは、「M5」から初代「SIM」の13倍にも及ぶということだ。
改めてとなるが0.49m/s は、テーラーメイドの法務部門が公表OKとした数字。安全という面を考慮すると、数字はいつだって小さくなる。
ついでに言うと、テーラーメイドは何の保証もしていないが、1.34〜2.23m/s以上の初速アップを果たしたプレーヤーがいるようで、特にPGAの契約プロだとどうなるか楽しみなようだ。
トッププロの世界だと、これは“大股で5歩分”くらいに当たる。
「宣伝」と「現実」にどの程度の解離があるのかはまだ分からないが、もしこの「初速アップ」が事実なら、『Most Wantedテスト』でもそれは明らかになるはず。またもう少し詳しくお話しするが、何人かに聞いたところによると、他にも何かありそうだ。
「カーボン」は硬い
「カーボン」が、本来「硬い素材」であることは誰もが知っている。何年も前からドライバーの様々な箇所で使用されており、航空機や宇宙船もこの素材が使われている。
とはいえ、多くの人は「カーボン」が“衝撃を与えるような素材”だとは考えていないだろう。我々はゴルファーとして、「カーボンシャフト」がスピードに乗って何かに直接ぶつかると良からぬことが起こると言うことを理解してきている。
私は、既にテーラーメイド「STEALTH」ドライバーを体験した。テーラーメイドのスタッフが詳しく教えてくれたものの、いまだに「カーボン製」のドライバーが、「チタン製」と同じくらいの「耐久性」があるということを理解できずにいる。
「カーボン」は使い勝手が良いが、「STEALTH」ドライバーでゴルフボールを打つ時に起こるようなインパクトの状況に対応するために、「カーボン」には何かしらしなければならない。
これについは「60x」の話のところで伝えるが、結論としては、テーラーメイド「STEALTH」ドライバーの『カーボンフェース』が、他のモデルと同じように「耐久性」がないと考える理由はない。なぜなら、数百球の試打でフェースが壊れるドライバーを市場に出すほど、テーラーメイドは愚かではない。
タイガー・ウッズは、この「STEALTH」を「PNCチャンピオンシップ」で既に使用していたが、タイガーよりもハードにスイングするテーラーメイドの契約プロがこのクラブを使うのは時間の問題。このことだけで、もう皆さんには分かってもらえると思う。
『カーボンフェース』には一貫性がある
テーラーメイドによると、フェースの製造過程において、個体ごとのバラつきは「チタン」よりも少ないという。『ツイストフェース』や『インバーテッドコーン』といったテーラーメイドのテクノロジーに加え、「バルジ&ロール」の成型にも「カーボン」を積み重ねる工程が組み込まれている。そして、フェースとボディは接着されており、研磨が必要な「溶接部分」はない。
※フェースの上下方向(縦方向)の曲がりを「ロール」、水平方向(横方向)の曲がりを「バルジ」という。
コブラの『CNCミルドフェース』ドライバーでも話をしたが、研磨の工程は「バルジ&ロール」、さらには「CT値(スピード)」のバラつきにつながる場合もあるのだ。
また、テーラーメイドによると「一貫性」において、「カーボン」は経年劣化による変形が少ないとのこと。つまりテーラーメイド「STEALTH」ドライバーのフェースは、『チタンフェース』のようにフラットにならないということだ。さらに『カーボンフェース』の製造工程により、「CT値」がより均一化し、経年での「CTクリープ(フェース摩耗により初速が徐々に増えてしまうこと)」も少ないという。
こうした一貫性により、テーラーメイドの『スピードインジェクション』工程は不要となり、ツアープレーヤーの手間も減る。そして全体的なメリットとしては、製品の公差を小さくしながらも「CT値」のターゲットを少し高くすることが可能となる点。
現状では、テーラーメイドは、たとえ「MOI(慣性モーメント)」を引き上げなくても、独自の『カーボンフェース』によりフェース全体で一貫してボール初速が向上することで、ドライバー市場のどの競合モデルとも対抗できると考えているようだ。
『カーボンフェース』はよりカスタマイズできる
最後に、「イノベーション」とは、厳密にはパフォーマンスのことではないということに留意して欲しい。テーラーメイドは、(「STEALTH」ドライバーを含めた)「カーボンウッド」のパフォーマンス上の利点は大きいとしているが、それが可能にする「カスタマイズ」にも同様にワクワク感がある。
「MyStealth(マイステルス)」プログラムの話をする際に詳細をお伝えする予定だが、究極のドライバーをカスタマイズしたいゴルファーのために、テーラーメイド「STEALTH」ドライバーの「フェースカラー」をカスタムできるということは伝えておきたい。これは「チタン」ではできないことだ。
今年、採用されてはいないがフェースのハニカムパターンは実は単なるシール。このドライバーをさらにカスタムするという点で、これを取り替えられないなんてことはあってはいけない。
フェースの製造方法からして、将来的にはゴルファー個々のパフォーマンスやニーズに合わせたカスタムオプションができる可能性はゼロではないはずだ。例えば、『インバーテッドコーン』をややトゥ側にシフトさせる、なんてことができるようになるかもしれない。実現するとは言い切れないが、「チタン」より「カーボン」の方が、ずっと可能性はあるだろう。
それでは、テーラーメイド「STEALTH」ドライバーのいくつかの細かい部分について見ていこう。
テーラーメイド「STEALTH」ドライバーのフェースには、なぜ「60X CARBON FIBER」と書かれているのか?
フェースに表示させることはゴルフマーケティングの基本のキ。もしテクノロジーを表現したければ、それが微妙なものでも、クラブ本体のどこかにしっかり記録する必要がある。多くのアイアンに『TUNGSTEN(タングステン)』や『FORGED(フォージド)』と刻印されたり、キャロウェイのドライバーに『AI』と『JAILBREAK(ジェイルブレイク)』と表示するのも、それが理由だ。
もしテクノロジーそのものが目に見えないなら、なおさら注目されるべきだろう。だから、すでに赤くなっているフェースに『60X CARBON FIBER(60Xカーボンファイバー)』とプリントされているのだ。
『60Xカーボンファイバー』は、テーラーメイド「STEALTH」ドライバーのフェースが『60層のカーボンファイバー』で構成されていることにちなんでいる。個々の層の向きを変えてあることで、「素材の強度」が増し「パフォーマンスを最適化」させている。この構造の強度を実現する層に加えて、“雪の結晶”のようなレイヤーが採用されており、同社独自のスイートエリアを拡大させる『インバーテッドコーン・テクノロジー』が確実に強化されている。
「STEALTH」ドライバーの『カーボンフェース』と『チタンフェース』の比較。
『60Xカーボンフェース』は『チタンフェース』よりも明らかに分厚い。厚いことは一般的には好ましいことではないが、これだけの層が重なっていても、「STEALTH」の『60Xカーボンフェース』はかなり「軽量化」されており、テーラーメイド曰く、より反応も良いという。これら全てがより高い強度と初速をもたらすというわけだ。
この「カーボンの層」は、(テーラーメイドがカラーをカスタマイズできる)グラフィックパターンを含む「スクリム(幕)層」で覆われている。何といっても最後に、やはり一番重要な部分はナノレベルの精巧な「ポリマーコーティング(PU)」を施した『ナノテクスチャーPUカバー』が、フェース全面に採用されていることだろう。
このコーティングがなければ、テーラーメイド「STEALTH」ドライバーと『60Xカーボンフェース』は存在し得ない。
テーラーメイド「STEALTH」ドライバー - ナノレベルの「ポリマーコーティング(PU)」
テーラーメイド「STEALTH」のフェースは、やや粘着性がある感じがするが、これはナノレベルの「ポリマーコーティング(PU)』によりものだ。その目的は、下層にあるカーボンを保護し、あらゆる環境でもスピン量を一貫させることにある。
保護する箇所はシンプルだ。「ポリマーコーティング(PU)」は、ボールが複合素材と直接当たることを防いでいる。インパクトによるひずみをいくらか軽減することで、「STEALTH」ドライバーは、他のドライバーと同じくらい数千回のショットに耐えることが可能だ。また、『ナノテクスチャーPUカバー』には、溝とあらゆる状況でのスピン性能をキープするテクスチャー(生地)も含まれている。
テーラーメイドは、初期の『カーボンフェース』のデザイン工程(2003年の話)において、「コンポジット」が「フェース素材」として有効であるためにはそれを保護するカバーが必要になることを認識しており、当時はチタンの薄い層を採用していた。
この型破りの発想をどう思うだろうか?
チタンは、フェースを保護するが、その分、チタンよりも初速が遅くなってしまう。
なんとも微妙。理想的ではないだろう。
またここに至るまでに、テーラーメイドは『カーボンフェース』に何も施さない状態の場合、状況が変化すると安定した初速を発揮できないということも突き止めていた。
数字で言うなら、未処理の『カーボンフェース』が濡れた状態だと、スピン量は約2,000rpmも減少。スピン量を減らしたい人にとっても、これは決して好ましいことではない。また、これはUSGAが難色を示すパフォーマンスのバラつきでもある。
つまり、最終的に「STEALTH」ドライバーに至るテーラーメイドの20年間の旅路の中には、「フェースを保護」しその「スピン性能をキープする素材」と「溝のデザイン」を見つけるための3年間の旅というものがあった。
良いアイデアが次々と失敗した後で、テーラーメイドはナノレベルの精巧な「ポリマーコーティング(PU)」と成形された「溝のデザイン」を生み出した。そして、それが『ナノテクスチャーPUカバー』となったのだ。
テーラーメイドの『ナノテクスチャーPUカバー』を製造するには、フェースと結合する前に、「ポリウレタン(PU)」を型に注入して溝を形成し、ノコギリの歯のようなテクスチャー(グルーブ・イン・グルーブのウェッジデザインにやや近い)を作ることになる。まとめると、コーティングは極薄で、『カーボンフェース』ももちろん良い感じだが、『ナノテクスチャー』はそれを機能させる大きな要因になっているのだ。
「STEALTH」ドライバー 3モデル
テーラーメイド「STEALTH」ドライバーは3モデルあり、全てに『ナノテクスチャーPUカバー』が採用された『60X CARBON FIBERフェース』を搭載している。それに加えて、フェースが20%大きくなったことにも注目したい。ゴルファーによっては安心感が生まれ、大型フェースは一般的にオフセンターヒット時のボール初速キープに役立つ。
基本的にフェースが大きくなると空気抵抗にとってはマイナスになる。現実問題として上記のようなプレーヤーなら特に関係ないし、ヘッドスピードが44.7m/s以上でなければ、あまり気にする必要もないだろう。
ここで重要なポイントとなるのは、フェースが大きいにも関わらず、「形状」が変わったことでテーラーメイド「STEALTH」ドライバーは「SIM2」よりも空気抵抗が減っているということだ。
メリットだけでなくデメリットも伝えておくと、(寛容性の従来の数値である)「MOI(慣性モーメント)」は、「SIM2」に比べて低い(初代の「SIM」に近い)。それよりも重要なことは、テーラーメイドはUSGAの「MOI上限」を超えたことはなく、そうすることにも取り組んだことがないということ。
近年、同社は「MOI」においては可もなく不可もないと考えており、それで問題ないのなら、いずれにしても数百程度の「MOI値」に躍起になる必要もないのだろう。
「STEALTH PLUS +(ステルスプラス)」ドライバー
「STEALTH PLUS +」ドライバーは「STEALTH」シリーズの主力モデルだ。「SIM2」で見られた『アルミニウムリング』はなく、形状が若干変更されたことで10gの『可変式ウェイト』を搭載することが可能になっている。
これにより、テーターメイドが『可変式ウェイト』をしばらくラインナップから外すつもりはないということが分かっただろう。
「STEALTH PLUS」は3つの「STEALTH」モデルの中で、一番「低スピン」の設定になっている。これまで見てきた市場の中で最も低スピンということはないだろうが、特にロフト角8度のモデルは間違いなく「低スピンドライバー」となるだろう。
「STEALTH(ステルス)」
スタンダードモデルらしく、市場のど真ん中を意識してデザインされている。「STEALTH PLUS」の『可変式ウェイト』は魅力的な一方で、このスタンダードモデルはより多くのゴルファーにフィットするだろう。
スタンダードのテーラーメイド「STEALTH」は、「STEALTH PLUS+」よりも打ち出し角が高いことが想定され、スピン量も200から300rpmほど多いはずだ。また「寛容性」も高いだろうが、お伝えした通り、極端に「易しい」という幻想を抱くべきではない。
テーラーメイドでは、何よりも「STEALTH」の使い易さに重きを置いているが、市場にある「MAX」タイプのドライバーと「MOI(易しさ)」で肩を並べる方向で設計されてはいないということは、理解して欲しい。
「高MOI」と「ボール初速」は必ず二律背反するものだが、テーラーメイドでは常に後者(ボール初速)を重要視している。
「STEALTH HD(ステルスハイドロー)」
「STEALTH HD」の「HD」は“ハイドロー”を意味し、これで設計意図の全てを物語っている。とはいえ念の為、説明させて欲しい。
このモデルはテーラーメイド「STEALTH」ドライバーシリーズの中で「ドローバイアス」モデルとなっており、「中スピン」で「高打ち出し」と謳われている。スタンダードの「STEALTH」よりはややスピンがかかるだろうし、もちろん、右サイドにあまり飛ばしたくないゴルファー向けに「ドローバイアス」が組み込まれている。
「STEALTH HD」は「ドローバイアス」にも関わらず、今回の3モデルの中で最も「MOI」が大きいという点で従来の慣習を打ち破っている。テーラーメイドでも常にクラブに微調整とチューニングを欠かしていないが、このドローバイアスモデルは、ピンの「SFT」のようなモデルほど極端な重量配分はしてはいない。
一般的に、こういった設計方針の場合「ドローバイアス」ながらも、より従来の見た目(そして扱い易さ)をしたクラブとなっていることを意味する。
大切なことは、極端なドローバイアスになっていない「寛容性」があるクラブを求めているのなら、このテーラーメイド「STEALTH HD」は一見の価値があるだろう。
テーラーメイド「STEALTH」 - 本当に知っておきたいこと
ここまでの内容で、ずいぶんと理解が深まったと思うので、ここからはテーラーメイド「STEALTH」ドライバーに関して必ず聞かれるであろう質問に答えてみたいと思う。
テーラーメイド「STEALTH」ドライバーの音は?
「カーボンウッド(ドライバー)」の過去の経験上、特に独特なデザインのものは毎回、お世辞にも素晴らしいとは言えなかった。そう考えると、我々がテーラーメイド「STEALTH」ドライバーの「打音」の合格基準を最初に設定したと言っても過言ではない。
それは、全くひどくないのなら問題ないというものだ。
我々スタッフ全員は、最初のスイングで何か難癖をつけようと考えていたと思う。多少は変なところがあったし、そうあって欲しいと思っただけなのかも知れない。そしてもう数回スイングすると、我々は『カーボンフェース』にも関わらず、このテーラーメイド「STEALTH」からは「心地よい打感」が得られた。
額面通りなら、これは予想を裏切ることになるが論理的に考えると、この「STEALTH」には多くの「チタン」が使われている。「打音」と「打感」という観点で我々が体験したかなりの部分は、ドライバーのボディによるものであり、故に「STEALTH」のシャーシは「チタン」であることから、他のチタンボディのドライバーと「打音」がそんなに変わらないということは特に驚くことでもない。
これは私見にもなるが、テーラーメイドのテストでは「STEALTH」の打音と打感は「SIM」と「SIM2」よりも良かったし、ここまでツアープロたちから何の反対意見もないとのこと。これは注目すべきことだろう。
テーラーメイド「STEALTH」ドライバーの「打音」は意外の良いのか?と聞かれれば、答えはイエスだが、そこまで驚くようなことでもないだろう。
テーラーメイド「STEALTH」ドライバーのパフォーマンスは?
私の『Most Wantedドライバーテスト(各モデルの性能テスト)』に参加しているゴルファーは、「STEALTH」がどのモデルに匹敵するかが分かるだろう。「トラックマン」とテーラーメイド「TP5」ボールを使用した練習場での試打で、早速「STEALTH」の突出した結果を得ることができた。
最近の私のボール初速は70.6m/s程度。それが「STEALTH PLUS」だと72.4 m/s ちょっと(自己最高)を何度も記録した。(強烈ではないが)明らかなミスヒットだと70.6m/くらいには落ちるが、ミスショット全体でも平均67.0 m/s はキープした。
MyGolfSpyスタッフのハリー・ノドウェルはプロとしてもプレーしており、彼のボール初速は通常79.6m/s 程度だが、自己ベストの81.1m/s を含む80.5 m/s 台を何度もコンスタントに更新していた。
「STEALTH」には実力があるということだろう。
細かいことを言うと、テーラーメイドの純正シャフトは、私が使ったものよりも4分の1インチ長く、ハリーのものよりも若干長い(我々はどちらもテーラーメイドの純正シャフトは使用しなかった)。教科書通り「人による」し、これがファイナルアンサーではないが、我々の全スタッフの印象には強烈に残ったし、『60X』や『ナノテクスチャー』のコーティング、『カーボンフェース』への疑念はすぐに消え去った。
今後どうなって行くのか?
テーラーメイド「STEALTH」は2022年の売れ筋ドライバーになることは間違いないだろう。唯一の問題は、それがどのくらいかということだ。
同社は、アディダス傘下だったころに比べれば市場シェアにこだわっていないようだが、社内ではウッド市場で50%に届くと信じている者もいるようだ。そのような数字に迫ったのは初代の「ROCKETBALLZ(ロケットボールズ)」以来ない。市場の公平性を考えるとちょっと高いと思うが、確かなのは、テーラーメイドが「カーボンウッド市場」のシェアを100%獲得するということだ。
この独占状態がどこまで続くかは分からない。
これは単にテーラーメイドの話なのか、他社が『カーボンフェース』を開発するのか?
同社の優勢性が実証されれば、他社が市場参入するのは時間の問題。テーラーメイドは、2〜3年先を行っているように見えるが、それも純粋に推測に過ぎない。
また、「チタン」がこれまでのように存続している可能性もあるし、テーラーメイドが先を読み間違えたり、他社が信頼できる素材を使ってさらなる成果を挙げる可能性もある。
3つ目の選択肢は考えにくいが、もしも「STEALTH」カーボンウッドがキャロウェイの「C4」の結末(つまり失敗)と同じになったらどうなるのだろうか?
テーラーメイドは、その可能性は低いと考えているようだが、消費者が反応せず失敗が蔓延したりすると、状況は悪くなりテーラーメイドは「チタン」に逆戻りということになる。今後『チタンフェース』ドライバーを製造しないと宣言しているメーカーにとって、これは最悪のシナリオであり、同社があらゆる手を尽くしているのはそうならないためなのだ。
無難な予測は、シナリオ「1」と「2」の組み合わせ。誰かがテーラーメイドはキャロウェイを模倣したと言うのも間違いではないが、ゴルフは二番煎じの業界であり他社が『カーボンフェース』を出してくるのも当然だろう。他社のテクノロジーが自分たちの商品を良くするのか、検証する価値はあるのだから。
今のところテーラーメイドは、唯一の出場者ではあるものの“カーボンウッドレース”をリードしている存在となった。
スペック・価格・発売時期
テーラーメイド「STEALTH PLUS」ドライバーの定価は599.99ドルでロフトは8度、9度、10.5度がラインナップしている。
純正シャフトは、「Project X HZRDUS Smoke RDX Red 60(プロジェクトXハザーダススモークRDX レッド 60)」と三菱の「Kai’li White 60(カイリホワイト60)」。追加料金なしで、他のオプションもある。純正グリップはラムキンの「クロスライン」だ。
「STEALTH」と「STEALTH HD」ドライバーの定価は579.99ドルで、ロフトは9度、10.5度、12度。純正シャフトは、藤倉の「Ventus(ヴェンタス)*(Velocoreなし) Red 5)とアルディラの「Ascent 60(アセント60)」となっている。
「STEALTH HD」には藤倉の「Air Speeder」も装着可能。純正グリップはラムキンの「クロスライン」だ。
テーラーメイド「STEALTH」のレディースモデル(579.99ドル)はロフトが10.5度、12度で、純正シャフトはアルディラの「Ascent 45(アセント45」」、グリップはラムキン「Ladies Sonar(レディースソナー)」となっている。カスタムもシャフトとグリップを含め豊富にラインナップしている。
「MyStealth(マイステルス)」
テーラーメイドでは、「MyStealth」プログラムを通じてカスタマイズを提供している。この「MyStealth」では、ドライバーの様々な部分をカスタマイズできる。
・フェースカラー:レッド、グリーン、イエロー、ブルー、オレンジ、グレーの6色
・ボディカラー:ブラックとチャーク(右打ち用のみ)の2色
・クラウンの仕上げ:テーラーメイドロゴあり、なしでグロスまたはマット
・ソールのデカルカラー:ブルー、ブラック、レッド、オレンジ、グリーン、ゴールド、ペールブルー、ボルトの8色
・ヘッドカバー:モノカラーかカラー
「MyStealth」が対応しているのは「STEALTH PLUS」のみ。先行販売はTaylorMadeGolf.com、及び一部販売店で1月4日からから可能。
「MyStealth」ドライバーの定価は699.99ドル。
(「MyStealth」を含む)テーラーメイド「STEALTH」ドライバーシリーズの全モデルは2月4日から発売スタート。
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