テーラーメイド「STEALTH」アイアン – 注目ポイント
・「STEALTH」アイアンは、「SIM2 MAX」および「MAX OS」アイアンの後継モデル
・コアとなる技術によりトゥ側の重量を10g除去し、低重心化を実現
・スチールシャフトのセット価格は999ドル、カーボンは1,099ドル
・現在予約受付中。発売は4月1日から
テーラーメイド「STEALTH」アイアンは確実に売れるだろう。
とはいえ、大量に積み上げられた初・中級者向けアイアン市場の中で、どう健闘するかは未知数。過去4年間の『MOST WANTEDテスト』を振り返ってみると、テーラーメイドの初・中級者向けアイアンのラインナップは控えめに言っても期待外れだった。
2018年に「M4」が総合3位となって以来、「SIM」「SIM MAX」「SIM MAX OS」「SIM2 MAX」「SIM2 MAX OS」のどれも表彰台に立つことはなかった。
去年の『MOST WANTEDテスト』で「SIM2 MAX」は惜しいところまでいったが、トップに立ったわけでも最も飛んだわけでもなかった。性能の評価もテストした14モデルのちょうど真ん中に位置していただけで、テーラーメイドのような「性能」と「飛距離」を誇るブランドが、まるで無名ブランドのようだった。
にもかかわらず、テーラーメイドが人気ブランドであるという証拠に、「SIM2 MAX」シリーズは大ヒット商品となった。現実的に考えれば、テーラーメイドは2022年もそれ相応のものを創り出すだろうし、それもまたヒット商品となるだろう。
しかし、同社の名誉のために言うと、テーラーメイド「STEALTH」アイアンへのアップグレードにより、「SIM2 MAX」の欠点はきっちり補われている。
テーラーメイド「STEALTH」アイアン:より高く、速く、遠く、低く?
「SIM2 MAX」は『中級者向けアイアンテスト』において、14モデル中7位に終わった。全体的にみて、まあまあのアイアンだった。
“まあまあ”ということはつまり“凡庸”ということ。
「SIM2 MAX」は、テスターから「見た目」や「打感」では高評価を受けていたが、最も高く飛んだわけでも最もスティープ(急角度)な着地を果たしたわけでもなかった。
実際、ミドルアイアンの落下角度(グリーンにールを止める力において重要な指標)においては、トップのスリクソンの「ZX5」よりも2度近くもシャロー(浅い角度)だった。ロングアイアンとミドルアイアンは「キャリー」で上位半数に入ったものの、ショートアイアンは「ストロークス・ゲインド」において最下位に近かった。
明らかに、軌道修正が必要というわけだ。
「弾道の高さ(頂点)」をどうにかしたいなら、「低重心」にする必要がある。(グリーンで)止める力を増やすために落下角度を急角度にしたいなら、弾道の高さ(頂点)を上げる必要がある。ではどうすればいいのか?重心を低くするのだ。
ミドルアイアンとロングアイアンの「キャリー」を伸ばしたいなら、やはり「弾道の高さ(頂点)」を上げる必要がある。じゃあどうやったら弾道の高さ(頂点)を上げられるのか?答えはもうわかるよね。
テーラーメイドが「SIM」シリーズを発表して以来、テクノロジーに関しては重心を下げることより弾きの良いフェースを作ることに終始してきた。「SIM」ではテーラーメイド独自の『スピードブリッジ』や『貫通型スピードポケット』を搭載。
「SIM2」では『キャップバックデザイン(つまり中空構造)』を採用した。そして、新しい「STEALTH」ではそれらに『トゥラップテクノロジー』が加わる。
どれもマーケティング用のたわ言のように聞こえる。しかし、そのたわ言を使っているからといって、そのテクノロジーが本物じゃないということにはならない。
そして「STEALTH」アイアンに関しては、「低重心化」が全てだ。
進化した『キャップバックデザイン(中空構造)』
テーラーメイドによれば、アイアンショットの72%はフェースの中央かそれより下でヒットしているという。
「我々は初・中級者ゴルファーが必要とするアイアンの性能をもたらしたい」とテーラーメイドのアイアンチーフ、マット・ボーヴィー氏。「つまり、重心のある場所にスイートスポットも位置するので、フェースの重心を下げる必要があるということ」。
テーラーメイドは、昨年の「SIM2」シリーズで『キャップバックデザイン(中空構造)』から「低重心化」に取り組んできた。本質的には中空構造だが、中空ボディをスチールの“キャップ”で閉じる代わりに、スチールより8倍軽量な「低密度ポリマーキャップ」を開発した。この軽量化によって「SIM2」の重心は初代「SIM」に比べて低くなった。
『トゥラップテクノロジー』によって、また別のエリアから余剰重量を取り除くことが可能になる。テーラーメイドはトゥ上部に配置されていた10gのスチールを取り去り、そこで生まれた空隙までポリマーキャップを拡張し、重量の代わりとした。結果として、1mm近く重心を下げることに成功。
それほど多いように感じないかもしれないが、特にストロングロフトの初・中級者向けアイアンにおいて、違いをもたらすのには十分な数字だ。
「大量の重量を削り取った」とボーヴィー氏。「フェース上部からソール下部にその重量を再配置した…これは初・中級者向けアイアンに必須の「高打ち出し角」と「寛容性」をもたらすために極めて重要なことだ」。
オトナ向けになった外観
オフセット、ブレード長、トップライン幅は「SIM2」と同じだが、テーラーメイド「STEALTH」アイアンは明らかにオトナっぽいルックスになっている。まず、「SIM2」のトレーリングエッジが面取りされていたのに対し、「STEALTH」はよりスクエアなバックサイドを備えている。
些細なことだが、これによりソールにさらに数グラム追加して重心を下げられるだけでなく、見た目も良くなっている。
「初・中級者向けアイアンは大きさのバランスを絶妙に保つのが難しい」とボーヴィー氏。「小さく創りすぎれば難しく見えるし、ともすれば大きすぎるものを創りがちだ」。
もうひとつ大きな違いは、バックサイドに「色」がないことだ。「STEALTH」の文字との組み合わせで、まるで黄色の「スウォッシュ(米Nikeブランドのロゴマーク)」のないナイキ「VAPOR SPEED(ヴェイパー スピード)」を彷彿とさせるアイアンとなった。外観的に「STEALTH」アイアンは「P-700」シリーズの論理的延長線上に位置するモデルのようにも見える。
「あらゆるレベルのプレーヤーが、クリーンなアイアンデザインの真価を認めている」とボーヴィー氏。「『ツアーサテン仕上げ』はアドレス時に落ち着きをもたらし、そしてクロームのアクセントにより陳列時にはひときわ目立つ」。
これはどこよりもテーラーメイドが得意とすることかもしれない。視覚的なアピールは小売店の棚から始まる。クラブは群れの中で目を引く存在として「選んで!自分を選んで!」と叫ばなければならないのだ。
テーラーメイド「STEALTH」アイアン – 継承される技術
全ての新機軸がトゥ上部に集中しているように見えるが、テーラーメイドは馴染みのテクノロジーも継承している。「STEALTH」アイアンは『キャップバック』の他、超薄型で柔軟な『450ステンレススチール』のフェースに、長年にわたり番手別のスイートスポットの位置を最適化してきた『インバーテッドコーンテクノロジー』が搭載されている。
これにより、ロングアイアンはミドルアイアンより、ミドルアイアンはショートアイアンよりもドローバイアスが強くかかる。
また前述した『貫通型スピードポケット』は、リーディングエッジをソールから切り離す効果があり、特にフェース下部でのしなりを生み出している。前二作の「SIM」モデルでは、ヘッド補強のためにソール背面をトップラインと繋げる『スピードブリッジテクノロジー』が採用されていた。
これは「SIM」シリーズにおいて最も顕著な設計上の特徴だったが、必ずしも美しいとは言えないものだった。見た目の美しさと引き換えにするほどの効果が得られなかったのか、今回は採用されなかった。
誰も残念とは思わないだろうが。
前述したように、我々のテストで「SIM2」は「打音」と「打感」いずれも高評価を得ている。打音や打感は性能に関わる部分ではないが、ゴルファーを楽しませるための重要な要素でもある。良いフィーリングを維持するために「STEALTH」では、テーラーメイド独自の『エコーダンピングシステム』を搭載している。
ソフトポリマーの衝撃吸収剤はフェース全体に配置され、番手別の『インバーテッドコーンテクノロジー』と最も一般的なインパクトエリアの両方に対応する独自に設計された「ダンパー(振動エネルギーを消散させて衝撃や振動を軽減する装置)」を有する。
また、テーラーメイドの『フルーテッドホーゼル』を採用、このちょっとした仕掛けによりホーゼルから数グラムの軽量化を実現している。さらにライ角とロフト角が上手く噛み合うよう、ピンのような『ホーゼルノッチ(ネックにある凹み)』も施されている。
消えた「STEALTH MAX」「MAX OS」
ここでちょっと悲しいお知らせを:「STEALTH」アイアンのモデルは1種類のみ。
これまでと違い、スタンダードモデルも「MAX」も「MAX OS」もない。キャロウェイの現行4モデルのアイアンの飛びに比べると、単一の「STEALTH」ではちょっと弱いように感じる。これが意味するところはいくつかありそうだ。
おそらくテーラーメイドは初・中級者向けモデルとしては「STEALTH」ひとつで事足りると感じているのだろう。あるいは「OS」かそれとは全く別次元の初級者向けラインナップの開発が進行中なのかもしれない。
高品質かつ軽量な初級者向け市場の成長を考えれば、開発が進行中という読みには賭ける価値ありだろう。
さらにテーラーメイドは「SIM」や「SIM2」に比べて「STEALTH」ではかなり多くのフィッティングオプションを用意している。テーラーメイド曰く、初・中級者向けアイアンの60%がカスタム部門を通じで注文されているため、「STEALTH」におけるロフトの選択肢は「SIM」の4倍になるという。
「ロフト角を考慮せずにしっくりきたドライバーが過去にあっただろうか?」とボーヴィー氏。「ロフト角は各個人のスイングタイプとインパクトでヘッドをどのように動かすかに応じて選ぶべき重要な要素だ」。
「STEALTH」のロフトフィッティング用ヘッドなら、フィッターはその場でロフト角を1〜2度立てたり寝かしたりの調整ができる。テーラーメイドはまた、『Any Shaft, Any Head(どのシャフトでも、どのヘッドでも)』プログラムにより、「シャフト」と「ヘッド」の組み合わせの自由度をどんどん拡大している。
フィッターはもう「テーパーチップ」と「パラレルチップ」に頭を悩ませる必要はない。彼らはただそのゴルファーに最適なシャフトを選び出すことに専念すればいいだけだ。このプログラムにはアイアンだけでなくユーティリティアイアンやウェッジも含まれる。
テーラーメイド「STEALTH」アイアンのスペック、価格および純正シャフト・グリップ
「STEALTH」アイアンは初・中級者向けモデルなので、当然ながら「ストロングロフト設計」になっている。ストロングロフトには「高打ち出し角」が必要で、それが最重要だからこそ「低重心化」への闘いが白熱するのだ。
標準セットは4番アイアンからピッチングウェッジまで、オプションでギャップウェッジ、サンドウェッジ、ロブウェッジも用意されている。
純正シャフトはKBSの「Max MT 85」でフレックスはSおよびR。「Max MT 85」はKBSの公式サイトには記載されていないが、KBSによると標準の「MAX」は中〜高ハンディキャップのプレーヤー向け、高打ち出し高スピン、先調子のモデルだという。
カーボンの純正シャフトはフジクラの「Ventus Red(ヴェンタスレッド)」。フジクラの公式サイトにアイアンシャフトとしての記載はないので、テーラーメイド専用(向け)だと思われる。フレックスはAとR、S。
男性用の純正グリップは48.5gのラムキン「Crossline 360(クロスライン360)」。
女性用はアルディラ「Ascent Ladies(アセントレディース)」シャフト、38gのラムキン「Ladies Sonar(レディースソナー)」グリップが純正となる。
テーラーメイド「STEALTH」アイアンのスチールシャフトセット価格は999ドル、カーボンが1,099ドルで、いずれも昨年の「SIM2」モデルより200ドル高くなっている。
現在予約受付中。発売は4月1日から。
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