・PXGが「SUGAR DADDY II」ウェッジの新ラインナップを発表
・グラインドは「BP」と「C」の2タイプ
・ハドソン・スワフォードが「ザ・アメリカンエキスプレス」優勝時に「SUGAR DADDY II」2本を使用
・価格はそれぞれ499ドル
PXGがわかりにくいと思っているなら、「SUGAR DADDY II」ウェッジのローンチで、そのややこしさが解消されるということはないだろう。PXGは、35ドルの犬の首輪、500ドルの冬物のジャケット、そして220ドルのドライバーを発売するようなメーカーだ。
もちろん犬は最高だし、(ぶっちゃけ)PXGのロゴが入ったダウンジャケットも使い倒しそうだが(ここは寒いんだ)、PXG創設者のボブ・パーソンズのブランドに対するマスタープランを理解することは難しい。
悪口を言う連中は、低価格は企業が潰れる前兆だと思っているが、PXGの内部関係者は、パンデミックの間でも成長していると言っている。
同社の不可避な失策として多くが目にしている価格破壊は、実際のところ、新型コロナウイルスによりもたらされた機会に対応する上での軌道修正だった。良くも悪くも、これは小売店舗の満足度に依存しないビジネスモデルだからこそ可能な機動力と言えるだろう。
故に、2019年初頭に世界の景気が悪くなると、PXGはゴルフに注力した。独自に価格を下げ、サプライヤーから間違いなく過剰になっていた在庫を買い取ったのだ。
どんな結果になったかって?同社のゴルフ用品の価格が、現在のゴルフ用品業界にとって最もゴルファー寄りのものになっただけでなく、PXGは業界全体で見ても納期が一番速くなった。
そしてこれは、自社パーツに加えて、PXGが在庫として必要な全てのシャフトかグリップを確保していたということも、少なからず関わっている。
お財布に優しくて効率的。これは、ちょっと前まで一番高額なクラブを売っていたゴルフブランドとしては、想定外の展開だろう。
「SUGAR DADDY II」ウェッジのリリースにより、PXGが高額という本質に回帰するという者もいるはずだ。450ドルはウェッジ1本としては安くないし…ウェッジ2本だってそうだろう。多くの人がこの価格で3本も手にしたことも忘れてはいない。
ここで言えるのは、現行の「SUGAR DADDY」ウェッジよりも150ドルも安いバージョン2は、まぁまぁお買い得かも知れないということ。
はいはい、言い過ぎってことは分かってる。
お伝えしたように、PXGの全てがゴルフ用品業界のスタンダードな手順に沿っているわけではない。彼らはそんなものだし、今回発表されたのはPXGのミルドウェッジの第2弾だということ。
もしツアーでの評価が気になるなら、ハドソン・スワフォードが「ザ・アメリカンエキスプレス」でPXGのアイアンと「SUGAR DADDY II」ウェッジ2本を使い勝ったばかりということを言っておきたい。
PGAツアーでのことなど気にならず、このウェッジを知りたいというなら、以下を参考にして欲しい。
PXG「SUGAR DADDY II」ウェッジ - 特徴 -
100%ミルド
初代の「SUGAR DADDY」ウェッジは、鉄の塊を完全に削り出したウェッジコレクションの一部だった。ミーリング(切削加工)は工程に時間がかかり、650ドルという価格であることを正当化するのには役立ったと思う。
しかし「SUGAR DADDY II」においては、PXGの戦略は少々異なる。鉄の塊を完全に削り出す代わりに、「8620スチール」のビレットをトリプル鍛造し、ほぼ最終的な形状にしているのだ。
そして、そこから最終的なサイズになるようにミーリングしている。この工程でも公差は非常に小さく、打感もよくなる。余談だが、最終の鍛造された形状は同じ金型から2種類のグラインドができるほど、十分な余地を保った状態となっている。各ロフト別に個別の金型は必要なのだが。
微妙にハイトゥなヘッド形状
ハイトゥのデザインは一般的になってきているが、使いやすさを実現するのと、異形に見えてしまうのかは紙一重だ。そのため、「SUGAR DADDY II」は、ハイトゥをより抑えたデザインになっていると言える。
グリーン周りでフェースを開いて使うためにハイトゥ部分に余分に素材が使われているが、よりハイトゥ度がきついウェッジよりも、アドレスで嫌な感じがしない。
精密ミーリングされたフルフェース溝
確かに、精密でなく適当にミーリングされた(あるいはプレス加工された)溝がプロモーションされることはないだろうから、これから伝えることは、まさにみなさんの予想通りのこととなる。
PXGでは「SUGAR DADDY II」に関して、非常に厳しい公差でミーリング加工しており、どのヘッドでも安定したスピンが得られる。
ミーリングに関する小話として、PXGは多くの競合他社と異なり、全てのロフト角で単一のスペックを採用しいる。同社では、このデザインがうまく機能しており、単一スペックというシンプルさがより厳しい公差を可能にしている。
ハイトゥ形状とフルフェース溝は相性が良いので、PXGが「SUGAR DADDY II」ウェッジにフルフェース溝を採用したことは特に驚くことでもない。
大体がフルショットになるロフト角が立っているものでは、この溝は見た目だけということになるが、グリーン周りでフェースを開いた時は、この余分な溝により、トゥ側にインパクトがずれた際、スピンと安定性をキープすることができる。
中心にある重心
私がこれを持ち出すのは、「重心位置」はブランド哲学であり、全てのゴルファーに向けて100%正しい答えというものはない。ボーケイ「SM9」の時に述べたように、ボーケイでは重心がややヒール寄りにあることを良しとしている。
一方、PXGを含めた他社は、EDEL GOLF(イーデルゴルフ)が重心をヒール側からセンター、そしてトゥ側にシフトさせるツールを提供している一方で、「センター重心」が最善であるとしている。
ほぼ全てのゴルフ用品同様、これの正解はゴルファーに依存するので、何が自分に合っているか、そして自分のウェッジでどんなタイプのショットを打っているのかを見つける実験をすると良いだろう。
精密ウエイト
この分野において、PXGは必ずしも十分に評価されていない。確かに、初期のウエイト戦略のいくつかはちょっと大袈裟だったように思うが、機能がなかったということでもない。
PXGでは、個々のゴルファーのバランスを調整するための選択肢をフィッターにもたらすため、「GEN4」アイアンの大きなウエイトデザインを「SUGAR DADDY II」に活用した。これはフィッティングの武器としては重要なものとなる。
フィッティングの工程の一部として、ゴルファーは、純正ウエイトの他、重めと軽めのウエイトを装着したヘッドを試打している。これは最適に機能するバランスを見つけるためであり、純正以外のウエイトをゴルファーに合わせることは珍しいことではないのだ。
2つのグラインド
「SUGAR DADDY II」には(少なくとも初期段階で)グラインドが2つある。
「BPグラインド」は、ワイドソール、ハイバウンスのオプションだ。このネーミングの由来がすぐに分からないようなら、社長になれば何にでもネーミングができるし、もっと分かりやすく言えば、商品に自分の名前をつけられるとでも言えば十分だろう。
「BPグラインド」の公表バウンスは13度だが、あまりこだわる必要はないだろう。グラインドは、あなたにとって機能するのかしないのか、ということなのだから。
「BPグラインド」のより明確な特徴は、ヒールとトゥ部分がやや削られているワイドソールにある。多くのハイバウンスウェッジ同様、PXGは「SUGAR DADDY II」の「BPグラインド」が、芝が多かったり、バンカーが柔らかかったり入射角が鋭角な場合に最も適しているとしている。
数値化するのはやや難しいかも知れないが、ワイドソールになっている分、ミスに対する許容範囲も大きくなっているように思う。その点で「BPグラインド」は2タイプの中で寛容性が高い方であると考えられる。
「Cグラインド(三日月ソール)」は、“Cグラインド”界隈ではそれなりに標準的と言える。特徴的なのは、トレーリングウェッジが削られており、かなりテーパー(先に向かうほど細くなる)されていること。その点で「SUGAR DADDY」の中でより多様性に富んでいる。
「SUGAR DADDY」の「Cグラインド」は、堅いコンディションや入射角や鈍角のタイプに最もフィットし、ある程度の上級者に合うだろう。
PXGは、「Cグラインド」ローバウンスモデルとしているが、それはこのモデルの中での話。「BPグラインド」よりはローバウンスではあるが、市場全体で見れば、明らかにミッドバウンスのグラインドだろう。
本当の意味でのローバウンスモデルを求めているのなら、PXGはツアーバンの中にお宝がある。ローバウンスの「SUGAR DADDY II」ウェッジの小売市場はそんなに大きくないだろうが、お披露目されることを楽しみにしたいと思う。
スペックと価格
PXG「SUGAR DADDY II」ウェッジは、50度から62度まで2度刻みでラインナップ。どのロフト角でも「Cグラインド」と「BPグラインド」があり、仕上げも「クローム」と「エクストリームダーク」がある。また、どのコンビネーションにしても、右利き用、左利き用が用意されている。
PXG「SUGAR DADDY II」ウェッジの価格は499ドル。エクストリームダーク仕上げにすると100ドル追加の599ドルで、現在発売中。
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