・タイトリスト「Tour Speed(ツアースピード)」と「Tour Soft(ツアーソフト)」の新バージョンが登場
・「Tour Speed」は新配合、「Tour Soft」は新世代
・価格は「Tour Speed」 が40ドル、「Tour Soft」が 35ドル
・発売中
初代「Tour Speed」が発売されたのは、2020年8月。リリースのタイミングを考えると、5月下旬の2代目発売は、タイミング的にやや早い気がする。実際のところ、この「Tour Speed」は2世代目ではない。
つまり、実質的には一新されたわけではないという。1.5世代というべきか、「新配合バージョン」なのだ。しかし、なぜわざわざ早めに市場に出すのか?実情は生産問題が絡んでいるようだ。
新「Tour Speed」の詳細の前に、このボールの歴史を簡単に振り返ろう。
タイトリスト「TOUR SPEED」の歴史
「Tour Speed」は、タイトリストが初めて「ツアー用」ではないウレタンボールとして市場に参入したボールだ。例外はあるが、週末ゴルファーや中ヘッドスピード向けのボールとして認識されている。「Chrome Soft(クロムソフト)」、「Tour Response(ツアーレスポンス)」、「ブリヂストンRX」シリーズなど競合が多いのも特徴。
「Tour Speed」は市場のニッチな部分を埋めるだけでなく、『TPU(熱可塑性ウレタン)カバー』を使用した初の(そして唯一の)ボールとして注目された。一方「ProV1」や「ProV1x」、「AVX」は、『キャストウレタンカバー』を採用している。
「キャスト」vs「TPUカバー」のトピックは別の機会に触れるとして、「TPU(タイトリストパフォーマンスウレタンと呼ばれることもある)」は優れているが、「キャストウレタン」の方が更に優れたカバーとされている。これが、「Tour Speed」とタイトリストの「他のウレタンボール」にコスト差がある正当な理由だ。
パフォーマンスの観点では、「Tour Speed」は低スピン傾向。これは、同カテゴリーではよく見られる傾向だ。またコンプレッション値78というのはこのカテゴリーでは低い方ではないが、タイトリストのウレタンの中では「ソフトボール」の位置付けになる。
(ソフトボールの部類の中では)比較的コンプレッション(硬度)が高いことに加え、346個の四辺形双角錐ディンプルデザインにより驚くほどの飛距離が生まれ、「Tour Speed」は2021年『ボールテスト』で最大の注目の的となった。
タイトリスト「Tour Speed」市場
言うまでもなく、「Tour Speed」はタイトリストのラインナップで最も売れているボールではない。その数は「AVX」に近く、絶対的な力を持った商品ではないが、他の競合他社の主力商品に並ぶ実力はある。同社の成長は言うまでもないが、彼らの強みは「Pro V1」から「Tour Speed」に移行しているわけではなく、アイオノマーボールや競合他社の商品からシフトしている点だ。
なぜか?「Tour Speed」を気に入るゴルファーがいるからだ。
同社が「Tour Speed」ユーザーを調査したところ、75%が製品に満足していることがわかった。同じ割合の人が、「Tour Speed」しか使わない、もしくは定期的に使う2、3モデルの1つと回答している。
「Tour Speed」を存続させる十分な理由だ。
しかし需要とは相反して、現実はあらゆる問題に直面している。
サプライチェーンの変化
ご存知のように、グローバルサプライチェーンは依然として混乱状態にある。住んでいる場所や、お使いのゴルフボールによって、アイオノマー不足の影響を感じている人もいるかもしれない。
「アイオノマー」は、2ピースボールに最適なカバー素材だ。また、3、4、5層ボールのケーシング/マントル層でも使用される。要するに、業界内でサプライヤーが重複する上に、アイオノマーなしでゴルフボールを作ることは非常に難しいということだ。
ボールメーカーはさまざまな方法で原料不足に対処している。単に生産数を減らす会社や、最も売れている主力商品に集中するメーカーもいる。一部の地域では、商品が店の棚から姿を消すという事態も起こっており、DTC(自社直販)ブランドでは海外の工場が材料の大部分を彼らの「顧客」に割り当てるため自社ブランドの生産が危機に直面している。
市場を独占するタイトリストも例外ではなく、危機を感じている。
原料の割り当てが厳しくなっている中、「ProV1」の生産を削ることは得策ではない。だからといって、「Tour Speed」の生産を止めるのもまた同社の望むことではない。ボールの需要が高まる中、小売店から商品を消すことは絶対にできないのだ。難しい決断に直面して、同社は「Tour Speed」のコア配合を変更することで解決しようとした。
新コア配合の「Tour Speed」
新配合「Tour Speed」のストーリーはそれほど長くない。低い弾道、グリーン周りのスピンも特に変わらない。さらには、よりソフトになったというわけでもない。
コアとマントル配合が変更し、346個の四辺形ディンプル設計に改良されたとしても、新「Tour Speed」の性能は旧「Tour Speed」と同じであり進化したわけではないのだ。
新しい商品に「飛距離」への期待はつきものだ。さらにスピン性能を望んでしまうのも常だ。新開発されるボールは大抵ソフトな打感に改良されるため、「何も変わっていない」というのはセールス文句にならないと思う。では、同社の言い分はどうなのか。
元祖「Tour Speed」と同等のパフォーマンスを達成するには、新しい原料とサプライヤーを見つける必要がある。また、新しいサプライヤー(工場とその機械)を認定し、毎回同じ材料が使えることを確認しなければならなかったという。一方タイトリストとしては、全く新しい化学物質と配合を開発して、これまでと同等の性能を保証するという大仕事が待っていた。
設計には、時には壊すことも必要なのだ。
まったく異なる素材を使って同じ料理を作るのと似ている。
タイトリストが取った策も、これと全く同じである。
そのような背景があるため、今回の「Tour Speed」は性能が進化したわけではない。配合が異なるだけで、前作と同じ機能性を持つ。サプライチェーン問題によってイノベーションが一時的に犠牲になっている中、「Tour Speed」を販売し続けるにはそれしか方法がなかったのだろう。
価格と販売予定
新配合タイトリスト「Tour Speed」の価格は40ドル。5月20日から発売されている。アメリカでは6月21日まで白のみ、他の市場では黄色も発売される。
タイトリスト「Tour Soft」
新「Tour Soft」は、プレミアムアイオノマー市場における同社の3世代目だ。タイトリストのボールラインナップの中で最も柔らかいボールをお探しなら「True Feel(トゥルーフィール)」がベストだが、「Tour Soft」はもう少し初速とグリーン周りでのスピンを維持したい「打感」重視のゴルファー向けに設計されている。
「Tour Soft」のストーリーは「カバー」に尽きるが、そのほとんどが「コア」による影響だ。
「Tour Soft」のコアは1.6インチで、非常に大きい部類に入る。USGAの規定によると、ボールの直径は少なくとも1.680インチ必要で、メーカーはその限界にできるだけ近づけたいと考えている。通常、直径が小さいほど飛距離が期待できるため、カバーを薄くすることはもはや常識になっている。
今回は346個の四辺形双角錐ディンプルに加え、「4CEカバー」を使用。しかしこの346四辺形ディンプルデザインは、「Tour Speed」と同じではない。
タイトリストには7つの異なる346四辺形ディンプルデザインがあり、その中から「Tour Speed」と「Tour Soft」それぞれに最適なディンプルデザインを採用している。
性能の観点では、「Tour Soft」は「Tour Speed」よりも弾道が低い可能性がある。打感も柔らかく感じるかもしれないが、アイオノマーのためグリーン周りのスピン量は少ない。
価格と販売予定
タイトリスト新「Tour Soft」は35ドルで、5月20日から白と黄色が発売中。
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