すべてはあなたのゴルフのために
2022年の『ベストユーティリティアイアンテスト』の結果が出揃った。
「ユーティリティアイアン」は誰もが得意とするクラブではない。しかし、このクラブがあなたのプレースタイルに合うのなら、非常にメリットを得られるギアとなるはずだ。
「ユーティリティアイアン」があなたのゴルフに役立つか、しっかりチェックして欲しい。
『MOST WANTED スコア』
我々は、2022年の『MOST WANTEDテスト』を100点満点での点数方式に改定した。この新システムにより、スコアアップできる可能性のあるクラブがさらに見分けやすくなるだろう。
『ユーティリティアイアンランキング』では、主要指標を「正確性」、「寛容性」、「飛距離」という3つのカテゴリーに分類。各カテゴリーは独自の手法で重み付けしている。
テストはフォーサイトの「GCクワッド」弾道測定器を使用し、ショットのバラつきを最小化するために、ボールはタイトリスト「Pro V1」に統一。異常値を省いた上でデータを集計した。
正確性
アイアンランキングで「正確性」は重要な指標だ。「正確性」のスコアは「ストロークス・ゲインド」により厳格に決められている。
寛容性(やさしさ)
クラブの「寛容性(やさしさ)」は安定性の尺度となる。そのため、我々の「寛容性」の測定基準は、最も安定した結果を残すクラブを見つけることを目的としている。注:“安定性”とは漠然と“安定して良い”というわけではない。我々が細分化した「寛容性」の測定基準は以下の通りだ。
・ボール初速の安定性
・スピンの安定性
・キャリーの安定性
・バラつきの範囲
飛距離
間違いなく、「飛距離」はほとんどのゴルファーにとってクラブ選びの決定打となっている。我々の「飛距離」の指標は下記の通りシンプルだ。
・キャリーの飛距離
・トータル飛距離
MYGOLFSPY版の「ストロークス・ゲインド」について
ストロークス ゲインド:元々は2011年からPGAツアーで導入されたプレーヤー指標。コースの難易度により大きく変動する「平均パット数」や「パーオン率」等では比較できない、選手の「本当の実力」を比較するために生まれた指標。同じコースでの全選手の平均ストローク数、あるいは同程度の難易度のコースや状況における平均ストローク数と自分のストローク数との「差」で示される。
「スコアを何で稼いでいるか」という観点で、「ドライバーショット」「アイアンショット」「アプローチショット」「パッティング」それぞれのショットが、平均値より何打“少ないか(ゲイン)“を数値化している。
MYGOLFSPYの「MOST WANTED」における製品テストでは、この「ストロークス・ゲインド」の考え方をベースとして、プレーヤーではなく“商品そのものの実力”を見るため、「ドライバー」「アイアン」「パター」等、各カテゴリーの「商品の実力」を比較する指標として用いている。
「ベストユーティリティアイアン」:総合
主要ポイント
・テーラーメイド「P790 UDI」が今年のテストを通じて印象的。「正確性」と「飛距離」において強烈なコンビネーションを誇った
・2位のスリクソン「ZX」は昨年の『Most Wanted』の覇者で、今年もその存在感を見せつけた
・3位はツアーエッジ「エキゾチックC722 Ti」ユーティリティ、何より安定感はピカイチだ
「ベストユーティリティアイアン」:飛距離
トップ3:テーラーメイド「P790 UDI」、タイトリスト「T200」、スリクソン「ZX」ユーティリティ
・「P790 UDI」は「飛距離」でトップ、2位に約3ヤード差をつけた
・タイトリスト「T200」が「飛距離」で2位となった
・3位はスリクソン「ZX」、「飛距離」を重要視するなら外せない選択肢の1つ
「ベストユーティリティアイアン」:寛容性
トップ3:ツアーエッジ「エキゾチックC722 Ti」ユーティリティ、プロトコンセプト「C01.5」、スリクソン「ZX」ユーティリティ
・安定性を重視するなら、ツアーエッジ「エキゾチック C722 Ti」ユーティリティが秀でていると言える
・今年のテストを通じてプロトコンセプトのギアは素晴らしい安定感を見せ、「C0 1.5」は「寛容性」部門で2位となった
・安定性を一番に考えるなら、スリクソン「ZX」ユーティリティがおすすめ
「ベストユーティリティアイアン」:正確性
トップ3:テーラーメイド「P790 UDI」、スリクソン「ZX」ユーティリティ、タイトリスト「T200」
・「正確性」があることで、より良い位置からショットできる可能性は広がる。「P790 UDI」は、その精度の高さが最大の魅力だ
・「飛距離」と「寛容性」で手堅くスコアをまとめた「ZX」ユーティリティが、「正確性」で2位となった
・3位はタイトリスト「T200」
「ベストユーティリティアイアン」の購入で検討すべきこと
新しいユーティリティアイアンを買う際はパフォーマンスを一番に考えるべきだが、購入を決める前に考慮した方がよい点が他にもある。
ユーティリティアイアン VS ロングアイアン
「ロングアイアン」は、ゴルフ界で不変のもの。しかしながら、3番、4番、5番アイアンで安定したショットを打つことに苦戦しているか?と聞かれたら、多くのゴルファーは「YES」と答えるだろう。
「ユーティリティアイアン」は、ロングアイアンよりも「寛容性」がある。ワイドソールで重心も低く深いので、より「最適な弾道」を実現できる。しかし注意点もある。
「弾道」が最適ということは、「キャリーの飛距離が伸びる」可能性があるということ。つまり、番手間の効率的な「飛距離差」を実現できるロフトセッティングに注意を払うことが肝心。
ユーティリティアイアン VS ハイブリッド
「ハイブリッド」は、長い間、「ロングアイアン」の代わりとして使われてきた。しかし、従来の「ロングアイアン」の見た目を好むゴルファーがまだいるのも事実。そうしたゴルファーは、「ユーティリティアイアン」に切り替えることがベストな選択肢かも知れない。
多くの「ハイブリッド」は、「ドローバイアス」になっているので、フックを嫌うゴルファーは「ユーティリティアイアン」がベター。また、入射角がスティープ(鋭角)なタイプのゴルファーも、「ユーティリティアイアン」の方がマッチするはず。
「ユーティリティアイアン」は、低弾道でより直進性のある弾道が出る傾向がある。相対的に「ハイブリッド」は「ユーティリティアイアン」よりも高弾道でキャリーも出ることから、「番手間の飛距離差」には細心の注意を払った方が良いだろう。
ユーティリティアイアン VS フェアウェイウッド
間違いなく、ほとんどのゴルファーは「フェアウェイウッド」が苦手だ。「フェアウェイウッド」は、ゴルフクラブの中でも打つことが難しいクラブの一つであり、「ユーティリティアイアン」が頼みの綱となる。欠点は、多くのユーティリティアイアンの最低ロフトが「16度」であること。
そのため、3番ウッドの代わりになることは難しい。しかし、5番ウッドの代わりにはなるだろう。また入射角がスティープ(鋭角)なゴルファーは、ユーティリティアイアンを使うとメリットを得られるはずだ。
ユーティリティアイアンには、「洗練された形状」で、「操作性」もあり、5番ウッドよりも「寛容性」が高いモデルがある。一般的に、ユーティリティアイアンは5番ウッドよりも弾道が低く距離も出ないので、「ウッド」から「ユーティリティアイアン」に替える時はその辺りも留意して欲しい。
ロフト角
ユーティリティアイアンでは、ロフト選択に注意した方がよい。複数のロフトオプションをラインナップしているメーカーもあれば、1、2個のロフトオプションしかないメーカーもある。大切なのは、現在のクラブセッティングに合うロフトを選ぶこと。今年のテストでは、16.5度〜25度までのロフトがラインナップしていた。
シャフト選択
シャフト選択はいつだって重要だ。ほとんどのユーティリティ/ドライビングアイアンにはカーボンシャフトが装着されているが、中にはスチールシャフト装着モデルをラインナップしているメーカーもある。
どのシャフトもパフォーマンスは違うし打ち出し状況も異なるので、自分が望んだ弾道に一番フィットする適正なシャフトを選択するようにして欲しい。
調整機能
近年、調整機能付きのユーティリティアイアンを目にしているが、今年は状況が異なる。しかし、調整機能があるなら活用した方が良い。調整することで、自分のゴルフにあった理想的なロフトセッティングにすることが可能だからだ。
記録
テストでは、ゴルフクラブのトレンドを探り、パフォーマンスを向上させるためにメーカーがどのような改善を行っているのかを分析。テスト中は、テスターからフィードバックも受けている。
テスターが何を気に入り、何が気に入らず、そしてその理由も理解するようにしている。しかし、こうした主観的なフィードバックを集めてはいるものの、その主観が順位に影響したり、その決定要素になることはない。
傾向と改善点
・ユーティリティアイアンにおいて、「中空ボディ構造」は共通テーマだ。メーカーは様々な方法でこれを実現している
・「ミズノプロ Fli-Hi」は、マルチマテリアル構造と“グレインフロー・フォージド・クロモリフェース”を組み合わせた「ハイドロマッスルバック」が特徴
・ヘイウッド「SDI」、ツアーエッジ「エキゾチックC722 Ti」ユーティリティ、プロトコンセプト「C01.5」、そしてスリクソン「ZX」ユーティリティは全て中空ボディ構造だ
・タングステンウエイトも主要な部品となっている
・PXG、タイトリスト、テーラーメイド、ツアーエッジ「エキゾチック」には全て「タングステンウエイト」が搭載されている
テスターからのフィードバック
下記は、20人のテスターによる主観的なフィードバックだ。フィードバックを集めることはどのテストにおいても重要だ。私たちはユーザーの製品に対する好き嫌いの指標として彼らのフィードバックを活用している。その意見は個人の感想であるため、順位付けの要素にはしていない。
・PXG「0311 X GEN 5」とミズノ「Pro Fli-Hi」は、ヘイウッド「SDI」同様に、「打感」に関して最も賞賛されたクラブとなった
・テーラーメイド「P790 UDI」、タイトリスト「T200」、PXG「0311 X GEN 5」は外観とデザインで高い評価を受けた
・「ミズノプロ Fli-Hi」のダーク仕上げには賛否両論が集まった
・スリクソン「ZX」ユーティリティとツアーエッジ「エキゾチ C722 Ti」ユーティリティはともに、カチッとしたかたい打音がテスターから嫌われた
2022年「ユーティリティアイアン」結果
2022年「ユーティリティアイアン」データ
下記の表には2022年の『ユーティリティアイアンテスト』で収集したデータが含まれている。ここには、フォーサイトの「GCクワッド」弾道計測機により取得した最も参照される指標を掲載した。
このテストは単純明快であり、以下で各モデルのデータをチェックすることができる。
2022年「ユーティリティアイアン」データ
モデル名 | ボール初速 (m/s) | 打ち出し角 (度) | スピン量 (RPM) | 高さ (m) | 落下角度 (度) | キャリー (ヤード) | トータル飛距離 (ヤード) | ショット範囲 (平方ヤード) | ストロークス ・ゲインド |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Haywood Signature Driving Iron | 60.39 | 9.69 | 3,200 | 6.53 | 33.63 | 207.96 | 222.71 | 2,846 | -0.013 |
Mizuno FliHi | 60.21 | 11.11 | 3,377 | 7.59 | 36.57 | 210.26 | 222.43 | 2,942 | -0.008 |
Proto Concept C01.5 | 59.29 | 10.98 | 3,573 | 7.32 | 36.97 | 202.83 | 215.39 | 2,561 | -0.023 |
PXG 0311X Gen5 | 60.30 | 9.50 | 3,017 | 6.37 | 32.41 | 207.39 | 223.58 | 3,264 | -0.005 |
Srixon ZX Utility | 60.79 | 10.45 | 3,149 | 7.03 | 35.30 | 210.93 | 225.70 | 2,707 | 0.013 |
TaylorMade UDI | 61.21 | 10.06 | 2,912 | 6.68 | 33.16 | 213.46 | 230.30 | 3,001 | 0.020 |
Titleist T200 | 60.64 | 10.24 | 2,872 | 6.66 | 32.51 | 211.18 | 227.86 | 3,532 | 0.011 |
Tour Edge Exotics C722 TI | 60.03 | 10.53 | 3,251 | 6.91 | 35.17 | 206.38 | 220.65 | 3,029 | -0.004 |
FAQ
新しいユーティリティアイアンの購入にあたり
Q:ユーティリティアイアンを買い替える頻度はどのくらいか?
A:多くのカテゴリーにおいて、一般的に、メーカーがクラブの性能を向上させるには3〜5年かかる。特にパフォーマンスが飛躍的には伸びにくいユーティリティカテゴリーはそうだろう。変化の多くは「形状」や「見た目」に起因するもので、それによって前作よりもパフォーマンスが変わることはあっても、革新的なテクノロジーがこのカテゴリーに採用されることはあまりない。我々がおすすめする買い替え時期は、今使っているユーティリティアイアンよりも明らかに性能が優れたユーティリティアイアンが見つかったときに買い代えることだ。もちろん、単に新作ユーティリティアイアンが出たから欲しいというなら、それも問題はないだろう。
Q:どうやったら自分のプレースタイルに合うユーティリティアイアンが分かるのか?
A:専門フィッターによる適正なクラブフィッティングが、あなた独自のプレースタイルに合うユーティリティアイアンを決める上で役立つ。しかし、そのためにはユーティリティアイアンで「どのようなショットを打つ必要があるのか?」、自分のニーズを把握しておく必要がある。ユーティリティを主に「ティーショット」で使うのか、それとも「芝」から打つのか?ティーショットで多用するなら、打ち出しが低く、スピンも少ないモデルを使えばフェアウェイを転がすことができるだろう。逆にロフトが寝ている、ワイドソールで後ろ重心のユーティリティアイアンは、ボールを上げやすいし、ソフトにボールを落とすことができる。あなたのユーティリティアイアンへのニーズをフィッターに理解してもらうためにも、フィッティングを受ける前に自分のプレースタイルをしっかり把握しておこう。
Q:シャフトは重要か?
A:無論重要だ。スピン量や打ち出し角の差はそれほど大きくないが、シャフトを変えることでショットの精度や、バラつき、そして全体的な安定性の向上が実現するだろう。我々は常に資格のあるフィッターにフィッティングを受けるように勧めている。もし、それができないなら、様々なシャフトの特性を理解し、それぞれのシャフト性能があなたのゴルフにとってメリットがあるのか、あるいは別の影響を与えるのかを理解することに時間を費やして欲しい。
Q:ユーティリティアイアンを試打する時は、何に注目すべきだろうか?
A:ゴルファーは飛距離以外のほとんどに目を向けない傾向があると思うが、「(ローンチモニターの)細かい数字」や、「丸で囲まれた数字」にも注目すべきだろう。「飛距離」と「ボールスピード」などの数値を比べる際も、必ず「標準偏差(ローンチモニターのスクリーン上では、これらの数値は大きな数字の下に表示される)」をチェックすること。数字が小さいほど「安定性」に優れているが、これはコース上だと1~2ヤード飛距離が伸びることでもある。同様に(丸で囲まれた)バラつきも確認して欲しい。ユーティリティアイアンでは、「安定性」を過小評価してはいけないのだ。
『Most Wanted』-2022 ベストアイアンを決めるにあたり
Q:『Most Wanted』とは何なのか?
A:我々は『Most Wanted』をベストパフォーマンスクラブと位置付けている。「ストロークス・ゲインド」に基づき、テストモデルの中から最も高い割合でトップパフォーマンスグループに入ったクラブを指す。詳細は、テスト方法のページをチェックして欲しい。
Q:どのように『Most Wantedユーティリティアイアン』を決めるのか?
A:『ベストユーティリティアイアン』を決定するにあたっては、フォーサイトの「GCクワッド」弾道計測機を使ってパフォーマンスデータを収集している。そして、総合ランキングを決めるためには、平均値だけを重視しているわけではない。代わりに独自の手法を用いて、「正確性」、「寛容性」、「飛距離」という3つの主要指標を元に決定している。
Q:「最も飛ぶ」ユーティリティアイアンはどのように決めるのか?
A:「最も飛ぶ」ユーティリティアイアンは、単に平均データを見るのではなく、テスター全体を通じた平均のトータル飛距離とそのデータの統計的信頼性を考慮して決める。
Q:「最もやさしい」ユーティリティアイアンはどのように決めるのか?
A:「最もやさしい」ユーティリティアイアンは、以下の指標に注目して決定している。
・初速の安定性
・スピン量の安定性
・キャリーの安定性
・バラつき度合い
Q:どのようにテストモデルとなっているユーティリティアイアンを各テスターにフィットさせるのか?
A:テストでは「フィット・フロム・ストック」というフィッティングプロセスを活用する。使用するユーティリティアイアンは、カスタムフィットされた製品ではなく、メーカー在庫(ストック)にあるプロパー商品で、ロフト角は17度から19.5度までだ。このカテゴリーには多くないが、昨今は「アジャスタブル機能(調整機能)」が流行っている。「可変ウェイト」や「調整可能ホーゼル」が搭載されたクラブをテストするときは、それぞれのクラブが各テスターに可能な限り最適化するようにしている。弾道を改善できるように異なる標準シャフトが装着された複数のセットを送ってくれたメーカーがいたことも付け加えておく。
Q:見た目、打音、打感などの主観的なフィードバックはどれくらい順位に影響するのか?
A:全く反映されない。この順位はローンチモニターのデータと測定できるパフォーマンスの数値のみで決定される。
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