テーラーメイド「MG3(MG=ミルドグラインド)」ウェッジは、MyGolfSpyの『Most Wantedウェッジテスト』で唯一連覇を達成したモデルだ。2021年と2022年に渡って他モデルから逃げ切り、「正確性」と「スピン」でトップのスコアを記録した他、「濡れた状況」におけるテストでも素晴らしいパフォーマンスを発揮した。

さらに、「デザイン」と「打感」もテスターから高評価を受けている。

要するに「MG3」は、ホンモノだということ。

「MG3」について「ユーザーとツアープロの間でも話題のウェッジになった」と語るのは、テーラーメイドのウェッジデザイナー、グレッグ・セザリオ氏。「これまでのテーラーメイドのウェッジと違う仕上がりで、当社史上初めてウェッジの市場シェアを14%〜15%にしてくれた」。

では、どうやってこれ以上のものにするのだろうか?

ポイントは注意深く、慎重に、だ。


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テーラーメイド「MG4」ウェッジは何が変わったのか?

最高のパフォーマンスを発揮するウェッジに2年連続で輝けば、すでにうまくいっているものを台無しにすることなく、さらなる向上を目標とする。だが、それには慎重を期さねばならない。

「スピン」や「打感」、ヘッド形状を向上させ、さらにバウンス角のオプションも増やせるなら、なおさら良い。

「ウェッジは『スピン』が全てだ。乾いた状況でも濡れた状況でも、ユニークで改良された“スピン・ストーリー“を持つことができれば、市場の注目を浴びることができる」というのはセザリオ氏の言葉だ。


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具体的に言うと、テーラーメイドは「MG3」の濡れた状況でのパフォーマンス(2022年は総合5位)を向上させようとした一方で、3つある新たなバウンスによりフィッティングの選択肢を広くした他、「見た目」と「打感」を改善している。

マーケティング部ではこれを「ツアーインスパイア」と言っているが、セザリオ氏曰く、ツアープロのフィードバックが違いを生んでいるようだ。

「ロリー・マキロイやコリン・モリカワのようなツアープロがウェッジに求めていることは、繊細でちょっとしたことだが、そのうちのいくつかは、『MG3』を使ってくれていた2年間で見えてきたものだ」。(セザリオ氏)


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輪をかけたスピン性能

テーラーメイド「MG」ウェッジの歴史は2017年に遡る。当時は濡れた状況でのパフォーマンスなんて誰も気にしていなかった。

「濡れた状況でのパフォーマンスについて話をしていた人は皆無」と振り返るのはセザリオ氏。「課題だったけど避けていたんだ。ツアープロもそうした状況で高めの無回転ボールになっていたことは理解していたが、トッププロであっても、どれだけ上手く打っても水分の影響を変えることはできない。スピンがなくなってしまうんだ」。

MyGolfSpyのウェッジテストでは、“ユニコーン“としてお馴染みのPING「Glide」を除き、濡れた状況ではどのウェッジもスピンを失う結果となったが、この6年はほぼ全ての本格的ウェッジメーカーが、様々な処理をフェースに施すことでスピンロスを軽減できるようになってきている。

ミズノが2019年に『ハイドロフロー・マイクログルーブ』を採用する中、クリーブランドは昨年、同社の「RTX6」ウェッジに『HydraZip(ハイドラジップ)』を発表。PINGも独自の『ハイドロパールフィニッシュ』を秘策としている。

そして、テーラーメイド「MG4」ウェッジでは、『スピン・トレッド・テクノロジー』が特徴だ。


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「これは、高性能レーザー処理技術のことだ」とセザリオ氏。「指でウェッジのフェースを拭くようにすると、ギザギザ感があり、処理の強烈さがわかるはず」という。

USGAについてディスる前に理解しておくべきなのは、今回のモデルはルールに適合しているってこと。テーラーメイドは溝と溝の間に45度の深い溝を施しており、これが水分を排出する新たな経路となっているのだ。


深い溝は役に立っているの?

「MG3」は我々のウェッジテストでも堅実なパフォーマンスを見せていたが、『スピン・トレッド・テクノロジー』でさらに改善するのだろうか?驚くことはないけど、テーラーメイド独自のテストならその実力がはっきり出ている。


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テーラーメイドによると、ロフト角56度のウェッジを基準にした場合、乾いた状況での「MG2」と「MG3」(ともにローフェイス)は、スピン量が10,800rpm程度、打ち出し角は28度だったという。これが濡れた状況だと、スピン量が約28%減少し一方で打ち出し角は32度まで跳ね上がったそうだ。

一方、『スピン・トレッド・テクノロジー』を採用した新しい「MG4」は、打ち出しとスピン特性が乾いた状況で前作モデルと同等。ところが、濡れた状況だとスピンロスが14%に留まったという。

確かに新品のスピン量の保持力は素晴らしいものがあるが、いずれウェッジは摩耗する。そこでテーラーメイドは、同社曰く約40ラウンドに匹敵するというフェアウェイとラフからのショット200回とバンカーショット80回で「MG4」と「MG2」「MG3」を比較。中古の「MG2」は新品のそれに比べて濡れた状況で1,300rpm近くスピン量が少なくなり、「MG3」は300rpm減ったらしい。

ところが、新しい「MG4」のスピン量減は92rpmだけだったようだ。


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もちろん、これは“テーラーメイド独自のテスト”ってことはお忘れなく。

そんな中、セザリオ氏はこう語っている。「USGAは溝とフェースの粗さを規制しているが、スピンコントロールに対する溝の影響は70〜80%ほど。ところが、濡れた状況ではその溝の助けが必要になるのだ」。


テーラーメイド「MG4」ウェッジの「見た目」と「打感」

確かに「見た目」と「打感」は完全に主観的なことだし、実際のパフォーマンスにはあまり大切とは言えないが頭の中では重要な要素だ。それだけに「ウェッジにはどんなフィーリングが必要か?」と考えたって何の問題もない。

「ウェッジにはソリッドな『打感』が必要」と言うのはセザリオ氏。「ソフトな『打感』であるべきだし、フェース全体で一貫したものである必要がある。ロリーが好んで言っているが、振動しないけど頭の奥に響く感じが必要だ」。


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では、鉄の塊ひとつでどうやって実現させるのだろうか?

セザリオ氏によるとこうだ。「ボールの後方と低い部分にかなりのウエイトを再配置し、打ち出しとスピンに影響することなく、やや低重心にしたのだ」。

そしてテーラーメイドが「MG」ウェッジシリーズで我々を釘付けにしているものがあるとすれば、それは「ルックス」だ。誰が見たってイケてる。

「『ルックス』は、ウェッジデザインで非常に大切な要素だが、多くのデザイナーが見落としがちな部分だと思う」と語るのはセザリオ氏。「設計陣に見る目がないのか、形状でプレーヤーのパフォーマンスが微妙に変わるということを理解していないのかどちらかなのだろう」。


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具体的に言うと、「MG4」は眩しさを最小限に抑えるため少しダークな「クロームサテン仕上げ」を採用。またリーディングエッジにやや丸みがついているのでフェースを開いた時の座りも良い。さらにホーゼルからトップライン、トゥに至る流れも調整されている。

「『MG3』に比べ、若干ヘッドが大きくなったと思うかも知れない」とセザリオ氏。「丸いルックスになったことは間違いないが、全体的にはあまりそれが目立たないし、良い進化を遂げている」。


新しい3つのグラインドオプション

ウェッジは、他のクラブよりさまざまな異なるライで多様なスイングタイプに対応する必要がある。そんな中、今回テーラーメイドでは、スタンダードの「LB(ローバウンス)」、「SB(スタンダードバウンス)」、「HB(ハイバウンス)」のグラインドに“サブバウンス”を3つ追加しシリーズを拡張した。

「我々は、もはやウェッジ市場で本格的な強豪になっている」とセザリオ氏。「そこで、3つのグラインドにフィットするグラインドを追加した」。


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具体的に言うと、今回テーラーメイドが追加したのは「LBV」グラインドと「SBC」グラインド、そしてロフト角58度と60度のみ対応している「HBW」グラインドだ。

「LBV」はローバウンスの『Vソール』のことで、幅が狭いソールと低いリーディングエッジによりグリーン周りの多様性を実現しており、硬いライで使えるようにデザインされている。

「シェフラーやフリートウッドのようなプレーヤーに向いている」とセザリオ氏。「手先が器用でタイトなライでもボールを拾えて、非常に薄いディボットを取るプレーヤー向けだ」。

「SBC」はクラシカルな『Cグラインドソール』を採用した「SB(スタンダードバウンス)」のこと。バウンス角がついているのでより多用性に富んでいて、ソールの真ん中がキャンバー状になっているがトレーディングエッジはそれが緩やかだ。

セザリオ氏曰く「隠れた『Cグラインド』という感じ。このソールはフェースを開くためにある」。

そして「HBW」はワイドソールの「HB(ハイバウンス)」のことで、ライが柔らかいときに使いやすくバンカーからの脱出を簡単にしてくれる。

セザリオ氏によると「上級者でも、このハイバウンスモデルは美しい左右対称のキャンバーになっているので使いやすい。バンカー脱出には秀逸で、ソフトなライかも素晴らしい働きをする。非常に多様性に優れたクラブ」とのことだ。

また、「MG4」には「TW」グラインドもある。こちらはタイガー・ウッズのためにあるウェッジで誰でも使いこなせるものじゃない。

「タイガーはオフセットが嫌いだ」とセザリオ氏。「(「TWグラインド」は)リーディングエッジのバウンスが非常に小さくて幅も狭い。ザックリを克服してくれるわけはないが、タイガーにその機能はいらないからね」。


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まとめと価格・発売時期

2年連続で『Most Wanted』になったウェッジを全くの別物にするには勇気がいる。だがその違いは、誰もが気づくことでもなく、「MG3」で成功を収めているツアープロたちなら「もっと良くしてくれ、何も変えずに」と言うはずだ。

言い換えると「ヘタこくな」って言うはず。

テーラーメイドが新しい「MG4」ウェッジに施した微調整と改良は筋書きに沿っている。「ルックス」を大きく変えずに、グラインドを3つ登場させたことは歓迎すべきことだ。

今後、「乾いた状況」と「濡れた状況」でのテストを通じ実例を発表するが、「濡れた状況」でのスピンロスを50%削減する潜在性は興味をそそる。


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「MG4」ウェッジの標準ロフト角は46度から2度刻みで60度まで。46度から52度までは「SB」のみとなっている。「LB」は56度から60度で「HB」は54度から60度。新しい「LBV」、「SBC」、「HBW」グラインドは58度と60度のみとなっている。

一方でタイガー・グラインドは56度と60度の設定だ。


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またカスタムを希望する場合は、ブラック、カッパー、またローフィニッシュも対応しており、個別に刻印とペイントを入れることも可能だ。

純正のテーラーメイド「MG4」ウェッジシリーズの小売価格は179.99ドル。発売は9月8日からとなっている。

また「MyMG4」のカスタムモデルは229.99ドルでテーラーメイドのホームページでのみ購入可能だ。

日本での発売日は、同じく23年9月8日から。

シャフトは、Dynamic Gold EX TOUR ISSUE (S200)、N.S.PRO® MODUS3 TOUR 105 (S)、N.S.PRO® 950GH NEO (S)で、価格は各¥29,700 (税込)となっている。

『MILLED GRIND 4 WEDGE』の詳細は、テーラーメイドホームページから