PINGは新しい「S159」ウェッジで、PGAツアーでの成功を販売店への成功につなげたいと考えている。そのため、新作ウェッジがこれまでのPINGのどのデザインよりも、ツアーからのインスピレーションとフィードバックに重きを置いているのは当然のことと言える。
PINGはこれまでウェッジを複数のシリーズに分けて展開してきたが、「S159」ウェッジではそれをひとつに統合した。その結果、今までで最も充実したラインナップとなっている。
だとしても、“ウェッジと言われて最初に思い浮かぶブランド” はPINGではないだろう。しかしトップブランドから引き離されているわけでもない。ウェッジ分野において豊富な経験(例「Eye 2」など)を積んでいるとはいえ、「寛容性」の高いイメージで知られるPINGにとって、この分野で周りをざわつかせるのはちょっとした挑戦でもある。
もちろん寛容性が低いというわけではないが、今回PINGは他のシリーズの時とは少々異なるやり方を用いている。多くの工夫が凝らされているわけだが、あらゆるタイプのゴルファーにとって完璧なウェッジを作るために、まず考えるべきはグラインドだ。
グラインド(ソール形状)
PINGは常にウェッジを提供してきたが、豊富なバリエーションを備えたブランドへと急速に進化した。「S159」ウェッジには25種類のロフト角とグラインドの組合せがあり、もちろんこの中には万人向けとされているものもある。
組合せの多さによるメリットは、自分に最適なウェッジが確実に存在するということ。そしてデメリットは、この多様性が逆に混乱を引き起こす可能性があるということだ。この数ある中から自分に最適なグラインドを見つけることが面倒だと感じる人も多いだろう。そんなゴルファーのために、各グラインドについて何を目的に設計されているか、どのようなタイプのゴルファーに適しているのか、また、PINGがこれまでとは異なり劇的に改善したという点も含めて、これから順を追って説明していこうと思う。では始めよう!
Hグラインド(ハーフムーンソール)
「S159」ラインナップには2つの新グラインドが追加されている。その1つが「H(ハーフムーンソール)グラインド」(もう1つは「Bグラインド」)だ。サンドウェッジとロブウェッジ用(54~60度)の「Hグラインド」は、PINGの「カスタムWRXプログラム」を通じて注文されたなかで最も人気がある。それほど人気が高いものなら当然このラインナップに含まれて然るべきといったところだろう。
8度のバウンス角を備えた「Hグラインド」は、やわらかい地面でも多用性を発揮する。つまり、少し濡れた地面でも刺さらないよう十分なバウンスを備え、なおかつ抜けの良いモデルだ。クラブを上から入れたいプレーヤーや、ショットごとに球を操りたいゴルファーに向け。
Bグラインド
もう一つの新グラインドであるロブウェッジ用(58度・60度)の「Bグラインド」は、ローバウンスとワイドソールの組合せだ。スクエアに構えて打つ、入射角が緩やかなプレーヤー向けに設計されている。そしてレベルブロー、硬い地面に適する。
Sグラインド
「Sグラインド」は、PINGで言うところのオールラウンダー。これがピッチングウェッジからロブウェッジ(46〜60度)まで幅広いロフト角で提供される理由だ。「S」はコンディションや打ち方を選ばない。中央部にはスクエアに構えて打つのに適した十分なバウンスがあり、グリーン周りでの多用性をもたらすべくヒールとトレーリングエッジがある程度、削られている。
「S159」のラインナップには新たに48度のオプションも加わった。アイアンのストロングロフト化により、短いクラブとの(ロフト角)差が開いてきたためだ。48度のオプションは、PINGの「Gシリーズ」アイアンをプレーするゴルファーや、ストロングロフト(42~44度)のPWを使用するゴルファーにとって検討材料になるだろう。
48度の「Sグラインド」は、比較的ウィーク(寝ている)ロフトの(「昔ながらの」と言っておこう)ピッチングウェッジを探しているゴルファーのためのオプションでもある。
Tグラインド
PING の「Tグラインド」はロブウェッジのオプションで、58度から62度までの布陣だ。PINGラインナップの中で最も汎用性の高いグラインドとなる。グリーン周りでフェースを開いたときにウェッジが地面にしっかりと座るように、ヒールとトレーリングエッジがしっかり削られていることが特徴だ。
「T」は普通〜硬いコンディションではうまく機能するが、やわらかいライでは、よりハイバウンスのモデル(「Hグラインド」など)で補ってやるのがいいだろう。
Wグラインド
サンドウェッジとロブウェッジ用(54〜60度)である「Wグラインド」は、PINGで最も「寛容性」の高いと称されている。一種のアンチ「Tグラインド」ともいえるワイドソールは、寛容性の肝となるクラブが刺さらない設計だ。
「W」は、普通〜ソフトなコンディションや、打ち込むタイプのプレーヤー、かなりハンドファーストなプレーヤー、あるいは基本的にダフらないためにありとあらゆる助けを借りたいプレーヤーに適している。E〜Eye2〜グラインド
PINGの「E」または「Eye 2」グラインドは、他のラインナップで見られるハイトウデザインにインスピレーションを与えている。
PINGは「Eグラインド」を究極のバンカー用クラブと表現している。スクエアからわずかにオープンに構えると比較的ローバウンスになるが、フェースを開くとウェッジのトレーリング部分が噛み合い、ワイドソールウェッジのようにプレーできる。そして「Eグラインド」の細いホーゼルは、砂の抵抗軽減に役立つ。「E」はバンカーショット専用ではないが、バンカーでいつも苦戦しているなら検討すべき1本だ。
自分に合うグラインドの見つけ方
難しい話はさておき、PINGがどのようにして適切なウェッジを簡単に見つけられるようにしているかを詳しく見ていこう。
しかしその前に、驚くべき統計について触れておく。PINGの調査によると、ウェッジを購入する人の75%は試打することなく屋内で購入しているそうだ。
みなさん、試打することはそんなに難しいことじゃない。
これは明らかに由々しき問題だ。
「これだけの数のグラインドがあると混乱するかもしれない」とPINGのジェイコブ・クラーク氏は言う。「しかし、我々がさまざまなソールグラインドとさまざまなデザインをラインナップしているのは、ゴルファーのためにフェース面の垂直方向のインパクト位置を制御するためにある」。
フェースの向きやソール幅、クラブの使い方などの微妙なニュアンスはちょっと置いといて、単純な質問を自分自身に問いかけてみてほしい。「グラインドによって理想的なインパクトが得られるのに、ウェッジを打たずして適切なグラインドをどうやって見つければいいというのか?」と。
過去にウェッジフィッティングの選択肢が限られていることについて話をしたが、「S159」ウェッジのリリースに合わせて、PINGはいくつかの面でこの問題に取り組んでいる。まず、ゴルファーがクラブを試打する場所に、より多くのウェッジを設置できるよう、フィッティングパッケージを拡大している。
もうひとつ、おそらくよりインパクトがありそうなのは、適切なウェッジを見つけられるよう設計された消費者向け「ウェブフィッティングアプリ」だ。いくつかの(それほど多くはない)質問に答えるだけで、アプリがロフト角とグラインドをオススメしてくれる。
このアプリは、シンプルなビジュアルでアプリが求める各入力項目が重要である理由を説明しつつ、すべてのステップをガイドしてくれるものだ。
答え終わると、モデル間のデータ項目別比較や、番手間のギャップ他いくつかのオススメ、そしてさらに深掘りしたい人のためには、ウェッジの性能に寄与する要因を詳しく説明する「Wedge IQ」セクションが表示される。※「Wedge IQ」は海外のみ。
購入前にショットを打つつもりがなかったとしても、PINGのフィッティングアプリを使用することで理想のウェッジを手に入れられる可能性は爆上がりする。
購入前にウェッジを試すつもりだった人にも、このアプリは優れた出発点となるだろう。オススメのオプションを試打して、何が最も効果的かを確認するべきだ。フィッティングアプリは使いやすく、人を選ばない。「S159」ウェッジにあるQRコードをスキャンするだけで準備完了だ。
※現在PING(日本)ホームページには、「ウェブフィッティングアプリ」の導入はされておらず、PING(US)ホームページの「FITTING」から特にダウンロードすることなく、このアプリが無料で利用できる。
その「ウェブフィッティングアプリ」はこちら! 日本語に翻訳し、それぞれの項目を進めていくことで「私のゲームに最適なグラインド」が表示されるようになっている。
また、あなたに最適なウェッジがいくつか表示された場合は、そのモデルを比較した内容が表示される。スピン
PINGは、さまざまな条件下で一貫して高いスピン性能を生み出すために、ウェッジフェースの設計テクノロジーの一覧を用意している。
仕上げ – 具体的には、PINGの疎水性「ハイドロパール2.0」仕上げで、湿気が存在する場合でも湿気をはじいてスピン量を維持する(場合によってはわずかに増加させる)。
絶対に雨天にプレーしないゴルファーだとしても、露の中やラフからプレーするとき、さらには思ったほど硬くないフェアウェイからプレーするときに、湿気は要因となる。結論:ゴルフコースには湿気がつきものである。フェースマーク – 短いショットでの摩擦を増加させるため、溝と溝の間に追加のテクスチャを生み出す加工。
溝の形状 – 溝の切り方、深さ、サイドウォールの半径などなど。
フェースブラスト – 摩擦をさらに高めるための仕上げ後のテクスチャーの付け足し。
「マクロレベルで溝を作り、ミクロレベルでミリング(削り出し)を行い、その後ナノレベルでブラストを施す」とPINGのエリック・ヘンリクソン氏は言う。「さらにウェットコンディションで性能を発揮させるには、仕上げとともにこれらすべてが連携する必要がある」。
ここで重要なのは、単に高いスピン量を追求することだけではない。重要なのは、どのような状況下においても(可能な限り)一貫したスピン量をもたらすこと。つまり、濡れているとき、ラフから打つとき、要はコースやライが完璧な状態とは言えないときに、スピンの大幅な低下を避けるということにある。
新たな形状
今年のウェッジ市場ではヘッド形状がトレンドとなっているため、PINGが「S159」ウェッジの形状を改良したのも不思議ではない。最も注目すべき点は、オフセットが大幅に減少していることだ。現実には、多くの上級者はオフセットを望んでいないし、良し悪しはさておき、多くのアベレージプレーヤーもオフセットを好まない。少なくとも今現在のウェッジでは。
「S159」のリーディングエッジも「Glide 4.0」に比べてよりストレートになっている。ウェッジをよりモダンな外観にし、アイアンからのスムーズな移行を実現するためだ。
PINGはホーゼルのネック形状も改善した。気付きづらいかもしれないが、全体的によりスッキリしている。
素材と打感
PING「S159」ウェッジは「8620スチール」から鋳造されている。ほぼすべての記事でこの話題が出てくるので、なぜPINGが、フィーリング(打感)が重要となるウェッジにおいて鋳造を選んだのかと疑問に思っている人もいるだろう。
まず、フィーリングは形状を形成するために使用される素材ではなく、主に形状によって決まるということを思い出してもらいたい。「8620スチール」は地球上で最もやわらかいスチールではないが、鋳造素材としてはかなりやわらかい部類だ。
多くののメーカーは、採用するスチールの耐久性が高いため、ウェッジを鋳造することを選択する。個人的にはそうではないと思っているが、ウェッジ(特にハイロフトのもの)がセットの中で最も頻繁に交換されるクラブであるため、溝をできるだけ長く持たせたいものだからだ。
PINGが「S159」ウェッジで主にスイングウエイト(バランス)調整の目的で使用している「エラストマーインサート」は、「少量でも有益」とされており、わずかながら打感の向上をもたらす。
これらすべてから私が得た結論は、世界最高のプレーヤーは、かなりの確率でキャストウェッジを使用しているということ。ウェッジ設計に関係する他のすべてのことを考慮するに、「鋳造」か「鍛造」かはそれほど重要な検討事項ではない。
仕上げのオプション
PING「S159」ウェッジは、「ハイドロパール2.0クローム」仕上げと「ミッドナイト」仕上げから選択可。ミッドナイトは「ブラックQPQ」仕上げで、「PVD」よりもはるかに耐久性が高い。PINGの既存のブラック仕上げとの最も顕著な違いは、仕上げ工程の後にフェースブラスト加工が施されることで、コントラストのあるフェースカラーが得られることだ。
すべて同一の条件下において、フルショットではミッドナイト仕上げのスピン量はクローム仕上げよりも少し低くなる(約200 rpm)。大きな違いではないが、仕上げを決める要因にはなり得るだろう。
「ミッドナイト」仕上げは「Sグラインド」のみ純正オプションとして選択可能。他のすべてのグラインドではカスタムオーダーとなる。
ツアーには「ノーメッキ」のオプションもあるが、昨今のウェッジの価格を考えると、自腹でウェッジを買わなくて済む場合にのみノーメッキを選ぶ意味があると思う。
そして読者諸兄はおそらく自腹で買う派であろう。仕上げ加工がされていないウェッジは摩耗が早く、つまりより頻繁に交換する必要がある。というか交換するに越したことはない。参考までに、多くのツアープレーヤーはハイロフトのウェッジを毎月交換している。価格と発売日、カスタマイズ
日本での価格は、スチールシャフト:¥27,500(税込)(※「DG EX TOUR ISSUE」以外の標準スチールシャフト)
「DG EX TOUR ISSUE」:¥29,700(税込)
カーボンシャフト:¥29,700(税込)
発売は2024年3月7日
各グラインドの詳細はPING のホームページより。
※下記はアメリカの情報
PING「S159」ウェッジの小売価格は179ドル。先行販売とフィッティングは2月22日から開始。
カスタムスタンピング、レーザー彫刻、ペイントのオプションは、PINGのカスタムWRXプログラムを通じてオーダーできる。
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