ゴルフはゲームだ。そして、ゲームは楽しくなければならない。

一桁台前半のハンディキャッパーにとってのFUN(楽しい)は、典型的な週末プレーヤーが楽しいと捉えるのと少し違う。たくましいゴルファーは、トップラインを削ったように薄くしなやかで柔らかい鍛造に楽しさを感じる。

週末プレーヤーは、単にボールを空中に真っ直ぐグリーン方向に飛ばし、仲間より少し遠くにボールが飛べば満足だ。そして打った球について、お互いあれこれ言うのを楽しみのひとつにもしている。

4人の中であなたが一番打者だったら、少しプレッシャーになるかもしれないが、二番目の打順でもいいと思っているゴルファーなら、ピンが新G400アイアンに興味が湧くかもしれない。

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ファンファクター

60年代のKarsten Solheimや初代ピンのKarsten Iアイアンに戻って、キャビティバックや、周辺ウェイト、超やさしい初級プレーヤー向けクラブの全体像を追ってみよう。新G400は、Eye2やZingなどのクラブが持つ伝統的なDNAを受け継ぎ、ピンのファンがゲームエイジョイメントクラブ(ゲームを楽しめるクラブ)と呼ぶラインでの最新クラブとなる。しかし、DNAの観点では、ピンが謳うように高く、遠く、直線的な弾道を実現するだけの十分新しい技術がG400に搭載されている。この技術の一つ一つをピンはファンファクター(Fun Factor)と呼んでいる。

“新G400の設計には、沢山の”はじめて”が詰まっている。私達ピンは、技術においてはその限界を押し広げている。ただ弾道という慣れない面があるだけで、ゴルファーは更なる飛距離を伸ばす事ができる。例えば、7番アイアンを使って6番アイアンの飛距離が実現でき、8番アイアンの弾道を出すことを考えてみてほしい。“と、ピンのシニアデザイン設計者であるRyan Stokkeは言う。

1日でいいからピンの商品設計者と一緒に過ごしてみてほしい。他が単にChutes and Ladders(ボードゲームの名称)で遊んでいるように見える中、ピンのR&Dはまるで3-Dチェスを打っているような印象を受ける。彼らは、測定方法や各アイアンの仕上げにおける相対摩擦の評価など、まるで詩を語るように話す。そして、タングステンやエラストマー、金属学に関しても、ロミオがジュリエットに語るように議論するのだ。前回のGシリーズから18か月ぶりに新G400が発売されたけれども、シェイクスピアの支持者がソネットを愛したほどの熱狂ぶりはないかもしれない。しかし、ピンは世間の注目を集めていると確かに認識した。明らかなのは、ピンはパールクローム仕上げだけではなく、新しいアルミとエラストマーフルキャビティバッジを採用していることにある。

 

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ピンが疎水性に取りつかれていることは十分話したが、要するにパールクローム仕上げによって、G400は美しい外観になっただけでなく、他のクラブと比較しても芝を滑りぬけるように、摩擦が少なくなる(ピンは実際にテストしている)。

COR-Eyeテクノロジーに関しても議論に上がったと思うが、それはボールスピードを上げ、飛距離を伸ばす目的のため、フェースを薄く、より軟らかいフェイスを造りだす取り組みである。フェースを薄くするということは、打感と音を犠牲にする可能性が高い。そこでピンは、サントプレーンと呼ばれるエラストマーとアルミニウムバッジを加えることにより、この問題を解決に導いた。

“サントプレーンは、とても素晴らしい振動を高める特性がある。この素材はバッジの中、特にヒール・トゥの上部、すなわちCOR-Eyeの部分に設計されていて、これが打感を生み出す。サントプレーンは、通常自動車業界で振動減衰装置として使用されることが多く、エネルギーリターンの利点をクラブにも生かすことができる。”とStokkeは言う。

“エネルギーを食うだけのものとは違い、確実に打感を高め、エネルギーを中立化する。だから、速いボールスピードと打感を同時に実現できるのだ。”

 

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トップレールについて

Gシリーズと同じくG400は、素晴らしい強度だが、同時に延性のあるハイパー17-4ステンレススチールというユニークな素材から造られている。この素材を使うことで、フェースがもっと柔軟になり、結果ボールスピードが生まれる。ピンは、トップレールから調節可能なウェイトを埋め込み、フェースから弾性を生み出す方法を見つけた。トップレールアンダーカットにより、Gシリーズに比べ18%深くフェースがしなり、勢いよく放たれる効果を増すのだ。

“この技術があれば、インパクト時にフェース中心がたわみ、跳ね返る。ピンはフェースの弾性に拘っているが、それこそがボールスピードを上げ、高い弾道をもたらすのだ。”とStokkeは言う。

“弾道の最高到達点が4%高く、5ヤード飛距離が伸びるとは一体どういうことだろう?それは、ミドルアイアンからロングアイアンを意味する。ショートアイアンとウェッジは飛距離が変わらないことが多いからだ。またG400は真っ直ぐにボールを飛ばし、MOIを4%上昇させる。ポイントは、トップレールから取外し式ウェイトを外し、周辺ウェイトの知識を使いもっと最適な位置にもってくることができることだ。”とピンのRyan Stokkeは言う。

アドレス時のG400を見てみると、何か気づかないか?中級向けアイアンのようには見えないはずだ。

“まずトップレールの見た目と打感が違うのに気がつくだろう。それはGシリーズと同じ幅になるように、トップラインの後方から角を削り、見た目控えめに、例えるならiBladeやi200アイアンに似たルックスだ。

ピンは、ヘッドの形に磨きをかけて、ホーゼルを変えることにより、上級プレーヤー向けアイアンと同等のルックスを再現しつつも、少しオフセット気味にG400を設計したという。ここで、G400とSrixon Z765のアドレス時の顔を比較してみた。

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“私達は、オフセットの必要性を認識しているが、見た目の美しさを追求してデザインしてきた。パールクロームという仕上げやホーゼルの形状、フェース周りの鋭い半径は、これまでの上級向けアイアンに見られ、尚且つ中級向けアイアンにもあるような要素を含んでいる。

 

スペックとシャフト

G400のロフト角は中級プレーヤー向けカテゴリーでは標準で、7番アイアンは、キャロウェイのスチールヘッドやコブラのF7同様の30°である(テーラーメイドM1の7番は30.5°、タイトリストAP1は31°)。ピンのPower-Specオプション、すなわちアイアンセット全てにおいて1.5から2°ロフト角を強くすることがG400には可能である。しかしピンによると、これは主に引退を前にして少し先端をいきたい年配ゴルファー向けであるそうだ。

 

ピンのAWT2.0はG400に合わせるスチールシャフトである。AWTは、Ascending Weight Technology (ウェイトテクノロジーの進化)を表しており、アイアンが長ければ長いほど、シャフトはより軽くスウィングしやすく、ボールが高く打ち上がることを意味する。AWT2.0は、最初のGラインと共に発売されているが、ピンはウェイトテクノロジーをカーボンシャフト、Alta CBにも採用し始めた。

“シャフトはロフト角によって各番手に合わせて個別に設計された個々のSKU(販売単位)だ。基本的に、全カーボンセットを揃えており、一つ一つのシャフトを自身のウェイトに合わせ組み立てられるプレミアムデザインになっている。シャフトをカットしたりするようなことはない。各ロフト角に合ったデザインを造ることが可能になる。”とRyan Stokkeは述べている。

ストックグリップのゴルフプライド Tour Velvet以外に、ダイナミックゴールド、True Temper XP95、Project X、Nippon Pro Modus3 105やKBS Tourなどの追加料金なしのシャフトオプションもある。Tour Velvet 360も追加料金なしのオプションだ。

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Crossoverのための作り変え

G400アイアンが俗に言う革新的変化をいうならば、G400Crossoverは、オリジナルクラブを全面的に見直されたクラブだと考える事ができる。

ピンがG Crossoverを紹介した時、断固として、これはドライビングアイアンではないと主張した。確かにドライビングアイアンではないが、新Crossoverは昔のそれとは違う。

このクラブはアイアンからユーティリティやフェアウェイウッドへシフトさせるためのクラブとして造られた。アイアンでもなく、ユーティリティでもなく、両方を少しずつとったものだ。オリジナルクラブはもっとユーティリティっぽく見えるが、アイアンが持つ芝に対する機能があり、中心からずれたショットでは、ユーティリティに備わる曲げのショットを持ち合わせている。つまり、ショットがよく曲がるのだ。

新G400Crossoverは、いまだにシフト用のクラブだが、知っての通り、よりアイアンらしいルックスであり、上から下までで約8分の1インチスリム化されている。しかし、ソールはオリジナルクラブより少し幅が狭めになっているにもかかわらず、よりユーティリティらしく設計されている。

 

ソールはヒールからトゥにかけてキャンバーソールになっている。そしてパールクローム仕上げと組み合わさると全体的にバウンスの高さが減り、芝を通してユーティリティのような滑りが感じられる。

新G400Crossoverは、今やアイアンのようなルックスだが、ユーティリティのような芝の滑りがある。オリジナルクラブは、全く反対だった。オリジナルの重心位置はユーティリティらしく後方で、よりボールを曲げる事ができた。

“私達ピンは、アイアンと同じ重心位置を目指している。重心位置を前方にすれば、ソール幅は自然にスリム化される。”とStokkeは言う。

最後の仕上げは、タングステントゥウェイトの形状にある。ピンへの期待通り、それは並大抵のことではない。

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ウォルフラムへの賞賛

ウィキペディアの功績により、今では中学3年生の化学はすぐにネットで調べることができる。タングステンは、全てのメタルの中で最も高い融解点を持ち、最も低い熱膨張である。そして約17の比重で、鉛の約2倍の密度がある。

タングステンは文字通りスウェーデン語で“重い石”を意味し、1781年スウェーデンの薬剤師であったCarl Wilhelmによって発見された。ヨーロッパのタングステンのほとんどが、Wolfram(ウォルフラム)の名で知られていて、周期表にWのシンボルで表記されている。

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“純タングステンは、非常に重くうまく扱えない。ゴルフ業界がタングステンのウェイトの話をする時、通常、ほんの少しのタングステンとほとんどのスチールを合わせた合金のことをいい、比重は約10になる。

ピンは、純粋タングステンでできたウェイトを造り上げる方法を発見したが、溶接可能にするため外側には十分な合金を使用している。実は、それが違いを生むのだ。

“私たちは、的確な位置に、比重17のタングステンを外側部分、すなわち複合素材を溶接することは可能だが、とても難しい作業だ。だいたいの場合、その位置にエポキシ―を使うか、スエージ加工する。外の世界では、たくさんの競合がタングステンウェイトをデザインの中に入れようとしているが、これだけでは効果的ではない。高密度タングステンを入れるメソッドを駆使することで、できるだけトゥの遠くにおき、位置による効果を最大限に生かす。”とPaul Woodは言う。

それはどういう意味なのか?トゥ近くの位置設定とタングステンウェイトの密度は、MOIを改善し、重心が適切な位置(前側)に確実にくるようになる。

“フェース近くに重心を持ってくると、前後運動が活発になる。よって、スピン生成が減少する。すなわち、ショットの曲りの観点では曲率レベルを減らす事になる。”とStokkeは加えた。

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数字的には、ピンはG400Crossoverのアイアンのようなルックスにギアを効かせた結果、オリジナルクラブよりも全体的に40%スピン量が上がり、ショットによる曲がりが45%下がり、20%も打ち出し角が高くなる、と述べている。高打ち出しとスピン量の関係性は、グリーンをとらえる力が30%増えることに値する。

新G400Crossoverは、どんな場面でも活躍する。アイアンライクでありながら、ユーティリティのように芝を滑るような感触がある。そして、アイアンに似た重心位置は、ユーティリティのボールスピードを生み出す(マレージングスティールフェイス効果)一方、アイアンの持つギア、スピン量、飛び、グリーンをとらえるパワーも同時に持ち合わせている。

お手の物だ。

データ比較

G400Crossoverは、19,22,25°の3つのロフト角を揃え、ライアングルも3°右に調整可能、自身のアイアンに合わせ1°フラットにもできる。

ストックシャフトはピンのカーボン製Alta CB 70とスチール製のAWT2.9の二種類ある。Tour 85カーボンは追加料金にて取り替えができる。加えて、G400Crossoverヘッドは、0.370パラレル型なので、他のシャフトに替えることも可能だ。