フォーティーンの新作アイアン、TC340の情報がちょうど入ってきた。日本のゴルフメーカーはまだ北米を完全に攻略できていないと言われているが、近い将来TC340がそれに終止符を打つかもしれない。
この初級者向けアイアンは3月21日に日本でリリースされたが、北米での販売に関しては何も言及がなかった。いずれフォーティーンゴルフの最高執行責任者であるマーシー・カモダ氏が、需要次第で北米への導入を決めるのだろう。
日本メーカーが市場別にクラブを設計することはよくあるが、日本国内を見ると北米の大手メーカーがアジア市場に商品を投入し続けていることで、市場はより飽和状態に陥っている。
今回のモデルはフォーティーンの主力商品ではないが、フォーティーンは日本市場でチャンスが残っているのは初級者・中級者向けカテゴリーだと判断したのだろう。
テクノロジー
TC340に複雑なテクノロジーは何もない。TC340は軟鉄鍛造一体成型で、重心位置はフォーティーンのアイアンの中で最も低く、深い。タングステンウェイトはなく、企業秘密の液体ポリマーを充填し複合素材を使ったキャビティーを持ち、S35Cフォージドカーボンスチールの単一素材構造だ。
フォーティーンは、TC340を「非常にやさしい」アイアンとしているが、鍛造特有の打感も残している。
日本メーカーのクラブ造りで話題になるのは伝統的な職人技やその歴史、鍛造施設などだが、フォーティーンが中国でクラブを製造していることはあまり知られていない。
それにはいくつか理由がある。一つはコストだ。TC340には7段階にも及ぶ鍛造工程が必要であり、遠藤製作所(過去にフォーティーンのクラブを製造していた会社)のようサードパーティーに発注すると、小ロットなので価格が跳ね上がってしまう可能性がある。
その他の理由としては、フォーティーンはもともとデザインメーカーであり、鍛造は本業ではないことだ。よって「日本国内で鍛造」をアピールする必要がないのだろう。
詳細:
北米とヨーロッパ市場では、中級者向けの特徴が詰まったアイアンがトレンドだ。上級アイアンのルックス(薄いトップライン、最小限のオフセット、全体的に小さい形状)を保ちながら、中級者向けとは気付かれないように設計するのが流行っている。
TC340は、このような流行の設計とは全く正反対のアイアンだ。
TC340はオフセットの効いた厚めのアイアンで、アドレス時にはっきり分かるほどの深いアンダーカットキャビティーが特徴だ。短い番手ではそれほどでもないが、高めの重心位置がより伝統的なアイアンの形状(比較的大きめではあるが)を作り出している。
ロングアイアン(5~7番)はブレードの位置が低く、非常に幅広いソールを特徴としている。特にラフからのショットではユーティリティーのような球が出るので、やさしさを感じられる。
つまりTC340は、「高い」あるいは「さらに高い」弾道を生み出す、「途方もなくやさしいアイアン」ということだ。
一般的に、初級者向けアイアンを使用するということは、やさしさと引き換えにこもったメタリックな心地よい打感を諦めることを意味する。
TC340は単一鍛造であるため、CB/MBフォージドアイアンには及ばない(密度が数段違う)ものの、芯に当たればまずまずの打感を得られる。
最近の消費者は、クラブの構成要素(シャフト、フレックス、グリップ、ボールとの相性、打音調整技術など)がいかにクラブの打感に影響するかを理解するようになってきたが、フォーティーンはTC 340の素材として(S25Cよりわずかに硬い)S35Cカーボンスチールを使用することに迷いはなかったはずだ。
7回に及ぶ鍛造工程は、鋳造に比べてコストが相当高い。特に過去15年で精密鋳造技術は進歩しているのに、なぜフォーティーンはそれを選択しなかったのか、という疑問が残る。
カモダ氏は、鋳造が低コストであることは当然理解している。しかし、日本の消費者はフォージドアイアンに価値を見出し、それに見合う対価を支払う。安いほど売れるという欧米市場の概念は、日本では通用しない。また素材の面では、「全ての製品は鍛造工程によって重心位置が安定し、CADデザインに忠実な美しいクラブに仕上がる」とカモダ氏は説明している。
スペック・価格・販売状況
TC340が、北米市場に入ってくるかどうかは未定だ。現時点では右利き用しかなく、22度の5番アイアンから46度のP/Aウェッジまでが販売される。これは、事実上4番からPWに相当する。シャフトは、日本シャフトの Zelos 6(220ドル)とNS 950(200ドル)が標準で用意されている。
TC340のターゲットは、ヘッドスピードが落ちてしまったがフォージドアイアン(実は非常にやさしくて球が上がる)をまだバッグに入れておきたい(少なくとも「入れている」と言いたい)フォーティーンのロイヤルカスタマーだろう。
TC340は北米市場で受け入れられるだろうか?
それとも競合メーカーがすでにこのカテゴリーを独占してしまっているだろうか?
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