キャロウェイはまさにゴルフ界のニューイングランド・ペイトリオッツ(アメフトの強豪チーム)だ。他のどのメーカーよりも、常に結果を出し続けている。
同社の2018年決算書が発表されたが、投資家を喜ばせるために仕込まれた粉飾が見つかった。それが精査された後でも、唯一の結論はやはりこれだ。
キャロウェイ、最強。
12億4,300万ドルの売上を叩き出している。
これはもう、別次元の話だ。
「マネー」ゴーラウンド
売上12億4,300万ドルは、2017年より19%増加(ほぼ2億ドル)している。それよりも重要なのは、営業利益(税引前)の1億2,800万ドルだ。これは2017年の7,900万ドルから実に62%もの増加だ。
CEOチップ・ブリューワーは、「この結果は、キャロウェイの2018年製品の人気や持続的なブランドの勢い、好調な業界、マクロ経済の状況によるものだけではなく、企業買収による成長戦略の恩恵もある」と述べている。
キャロウェイは2017年にトラビスマシューとオジオの2社を買収しているが、これが成長と高い収益性に拍車をかけた。トラビスマシューだけで、約6,000万ドルの売上を叩き出している。
キャロウェイの2018年の税引後利益は1億500万ドル弱で、利益率は約8%だ。
2018年のカテゴリー別の売上を2017年と比較すると、詳細が見えてくる。
ウッド:1.1%減
アイアン:26%増
パター:14%増
ボール:20%増
ギア/アクセサリー/その他:36%増
この数字は売上金額ベースであり、市場シェアの増減を表しているわけではない。とはいえ、いくつかの結論は導き出せる。
Rogueのウッドの販売は初代Epicの人気にあやかることができなかったようで、2017年と比較すると売上は大幅ではないが明らかに減少している。
しかし、Rogueアイアンは素晴らしい成果を見せた。売上は上々で、プラス成長に貢献している。また、ボールの20%上昇もあなどれない。
しかし、何よりも重要なのは、「ギア/アクセサリー/その他」の36%アップだ。明らかに、トラビスマシューとオジオを製品構成に加えたことが奏功した。
2018年、キャロウェイは7億1,700万ドルを超える額のクラブを販売した。これは、税引前利益で1億400万ドル強、税引前利益率は14%になる。
ボールの売上は1億9,600万ドルで、税引前利益は2,800万ドル弱、利益率は同じく14%だ。
ギア/アクセサリー/その他は約3億3,000万ドルの売上で、税引前利益は5,700万ドル弱、利益率は17%。
これらの数字が示すのは、キャロウェイがゴルフクラブメーカーであり続ける限り、トラビスマシューとオジオが金を掘り当ててくれるということだ。ギア/アクセサリーの売上はクラブの半分以下だったが、利益はクラブを上回った。ここに成長のチャンスがある。
それを物語るのが、ジャックウルフスキンの買収だ。
「ジャック」は金の卵
ジャックウルフスキンを4億7,600万ドルで買収する取引は、11月に発表され1月4日に合意した。
ジャックウルフスキンは本社がドイツで、アウトドアのアパレルや靴、用具を取り扱う高級ブランドだ。
ハイキングやサイクリング、スキー、キャンプ、登山を楽しむ人たちにライフスタイルを提案する。ウェブサイトをみると、ゴルフ関連用品がないことにすぐ気がつく。
ジャックウルフスキンは、2018年度の純売上高が3億8,000万ドル、純利益は1,060万ドルで、利益率は3%弱だ。
儲けがかなり少なく見えるが、ジャックウルフスキンは欧州とアジアで非常に人気がある。それがなぜ重要なのか?
現在日本はキャロウェイの市場で第2位だが、他のアジア諸国には成長の可能性が大いにある。日本におけるキャロウェイの中核事業は2018年に12%超上昇したが、日本以外のアジア諸国における売上増加率は20%だった。
ただし、売上総額では9,300万ドルに満たない。つまり、今後間違いなく成長する可能性があるということだ。
なお、キャロウェイの米国事業は2018年に25%伸びたが、欧州ではわずか6%の成長にとどまっている。
ジャックウルフスキンの買収と2018年の決算内容を発表した際、キャロウェイはEBITDAをアピールした。
EBITDAは、企業価値と将来の収益性を表す指標の一つだ。
「Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation, and Amortization」(金利支払い前・税金支払い前・有形固定資産の減価償却費および無形固定資産の償却費控除前の利益)の略だが、財界にはこれを揶揄する人たちがいる。
EBITDAは、後から利益・税金・減価償却が加算される純利益であり、GAAP(Generally Accepted Accounting Principles、一般に公正妥当と認められた会計原則)と呼ばれる原則の範疇には含まれないのだ。
とはいえ、EBITDAを強調すること自体は、ごまかしとはいえない。
キャロウェイはこれまでも年次報告書でEBITDAを発表してきたが、この数字を決算書のプレスリリースの見出しにもってきたのは少なくとも過去6年で2018年度がはじめてだ。
EBITDAを批判する人たちは、「EBITDAを強調しはじめる企業は、たいてい純利益が芳しくない、借入が多い、もしくは過剰資本と開発費上昇に陥っている」という。
売上高3億8,000万ドルに対して純利益がわずか3%であることを考えると、キャロウェイのジャックウルフスキン買収は少しばかり解せない。
しかし、この数字から利益・税金・減価償却が引かれると、ジャックウルフスキンのEBIDTAは4,000万ドル以上になる。この数字をどれだけ深く分析できるかによるが、この買収が金の卵である可能性は決して低くない。
パーブル・ヘイズ
キャロウェイのプレスリリースで、ある言葉が目を引いた。トラビスマシューに加えて、「価格設定の継続的な機会も利益に貢献した」とある。
「価格設定の継続的な機会」の意味が、消費者に対する販売価格の上昇なのか、コスト削減による販売価格の低下なのか尋ねてみたいところだ。「その両方」という答えが返ってくるだろうが。
ゴルフ用品に今より高い金額を好んで支払う人はいないことは間違いないが、売上12億ドル以上で純利益が8%というのは儲けすぎなのだろうか?
もしあなたがキャロウェイの株主だったら、おそらくあなたの答えは「No」だろう。キャロウェイに投資するのはお金を増やしたいからだし、利益を出している健全なキャロウェイにはそれができるはずだ。
「会社が儲けている」ことに腹が立つなら、他にも選択肢はある。しかし、キャロウェイが儲けることは、ゴルフ業界にとって良いことだと考えることもできる。
「膨大な広告費やダメになったツアー選手、常軌を逸した利益が、ゴルフ用品をごく普通のゴルファーが手を出せない価格し、ゴルフ離れを引き起こしている」という話をよく耳にするが、キャロウェイが売上12億ドルでこの世の春を謳歌しているという事実の説明にはならない。
皮肉屋ならおそらく、「同じくらいの売上を達成したことのある企業といえば、テーラーメイドだ。その後あの会社がどうなったのか知っているだろう?」と言うだろう。
注意しなければならないのは、この2つの企業は、まったく違う方法でその数字にたどり着いたという点だ。
テーラーメイド帝国は、その大部分が砂上の楼閣だった。
大幅に値引した商品を市場に、大量に送り込んだのだ。確かにそうすれば、売上もマーケットシェアも上昇する。しかし、利益のないマーケットシェアの先に待っているのは失墜だけだ。
キャロウェイのアプローチはもっとスマートで、管理もしっかりしている。そう、クラブはうなるほどあるが、在庫は管理されている。
クラブの発売サイクルは、カテゴリー別に最低でも1年(2年の場合もよくある)。また、キャロウェイは昨年7億1,700万ドル相当のクラブを販売したが、その他の商品も5億2,600万ドル以上売っており、売上全体の約42%を占めている。
はっきりしているのは、トラビスマシューとオジオ、ジャックウルフスキンの買収がキャロウェイの収益性を高めるだけでなく、テーラーメイド(アディダスの独立部門)が持っていなかったもの、つまり信頼性の高い商品で事業を行う手段をキャロウェイに提供しているということだ。
ゴルフ用品は依然としてキャロウェイの主力商品だが、今後予想外のことが起こってゴルフ用品部門が不振になっても、別ジャンルの商品をうまく加えていけば、ちょっとした問題なら対応できる。
「キャロウェイは今後も買収を続ける」というのが、その筋に詳しい投資家の見方だ。
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