ドライバー選ぶを際は重心位置を気にするべきだ。
低重心の浅重心、低重心の深重心、なにがなんでも深重心など、重心位置の違いがパフォーマンスに及ぼす影響を知ることはゴルファーにとっての武器になる。
基本はシンプルだ。重心深度が浅ければ、ボールのスピードが速くなり、、低打ち出し角、低スピンの傾向になる。逆に深いと、高弾道、スピン増、慣性モーメント増(=寛容性UP)が望める。
重心位置が、高重心クラブは、常にフェース上部にボールが当たってしまうゴルファーにとっては恩恵がある。対して、低重心クラブはスピン量が多いプレーヤーやボールがフェースの下側に当たる人に向いている。
完璧なドライバーを見つけることは容易ではない。
何を選んでも必ず代償はある。浅重心は寛容性を犠牲にし、慣性モーメントが高すぎればヘッドスピードもボール初速も落ちる可能性が高くなる。
ちょうど真ん中あたりでバランスを取ることもできるが、それではそれなりのパフォーマンスしか望めない。
これらを踏まえて言えることは、あなたが求める機能を持つドライバーが必ずしもあなたのスイングに合うものではないということ。
つまり、欲しいものが、あなたが必要としているものとは限らないのだ。
この手のデータに疎いゴルファーにとって答えを探すのは容易ではないだろう。
しかし、クラブの特性や自分の傾向を知れば知るほど、自分に合うドライバーと合わないドライバーの違いについて理解できるようになり、次にどんなドライバーを選ぶべきか候補を絞ることができる。
注意事項
まず、ドライバーヘッドはUSGAの規定に基づいて計測されているが、計測上および製造上の公差があることを理解してもらいたい。
チャートを見る際に念頭に置いてほしいことを以下にいくつか記しておく。
・我々の計測における公差がおよそ0.7mmであることを踏まえ、チャートでは小さな点ではなく大きめのドットで重心を表している。
・ドライバーの重心位置を公表しているメーカーのほとんどが、CADデザイン上での測定値を基準にしている。製造、組み立て、溶接、研磨を経た完成品の数値が、CADの予想値と完全に一致するとは限らない。またある程度の個体差もあるだろう。
・チャート上のドットが他のドットと接していたり近くに位置している場合、それらのヘッドは似たような質量特性を持っていることになる。
・サンプルのほとんどは標準モデルだが、PXGの0811X GEN2はカスタムなので標準モデルよりも重い。あくまでも概算値であることを考慮願いたい。
・タイトリストのTS1とTS4についてはまだ測定できていない。後日追加する予定だ。
・最後に、わかりやすくするためチャートを大きくしたが、実際の重心位置は14mmx12mmという小さな範囲内(SDカード大)におさまっていることを記しておく。
チャートの読みかた
モバイル端末でも見やすいようにチャートを作ったつもりだが、できれば大きなスクリーンで見ることを推奨する。それぞれのチャートにおいて、デフォルトでは2019年の新ドライバーを表示している。各チャート下部にある『YEAR』のドロップダウンメニューで過年度のデータを見ることができるが、所見は2019年モデルについてのみ述べている。
年式、メーカー、モデルを好きに組み合わせてフィルターをかけることで、クラブを選んで見ることができる。前年モデルとの比較も可能だ。
・チャート上部にあるモデル名をクリックして選択することで、好きなクラブだけを表示することもできる。
・コントロールキーを押しながらクリックすれば何本かのクラブだけを選択できる。
・ドットの上に矢印を持ってくれば、重心位置設定や測定値などの詳細が表示される。
ではいよいよ2019年ドライバーの重心位置および慣性モーメントのデータを見ていこう。
フェースの中心から見た重心位置
下のチャートはそれぞれフェースの中心から測定した重心位置を表している(縦軸:高→低/横軸:浅→深)。
このチャートはドライバーの断面図で〜左側がフェース部で右側は後方部〜だと思えばわかりやすくなるはずだ。
測定時にニュートラル軸との関係性やロフト角は考慮していない。チャートが表しているのは各ドライバーで測定した実際の重心位置である。
所見
・またしてもテーラーメイド(今回はM5)が、重心位置の移動距離6.6mmと最も優れた調整性能を打ち出した。
・PXGの過去モデルと比較して、0811X GEN2は重心位置の移動距離を大きく広げた(約5.5mm)。
・その他競合の調整機能付きドライバーはあまり変化はないなが、コブラは移動距離を4mmに広げた。
・コブラのF9 Speedback(ロフト9度)は2019年ドライバーの中で最も低重心。僅差でPXGの0811X GEN2が続いた。
・2019年ドライバーの中で最も高重心なのはSub70 839D。驚くべきことにテーラーメイドのM5(フェード設定)がそれに続いた。Sub70が高重心の浅重心であるのに対し、テーラーメイドはより寛容性の高い高重心の深重心であることは特筆に値する。
・重心が最も前方にあったSub70 839Dに比べ、ピンのG410 Plusのそれは最も後方に位置する。
・昨年に引き続き、どのモデルも重心の高さについては大きな変化はない
ニュートラル軸および慣性モーメントから見た重心位置
上のイラストにあるように、ニュートラル軸はロフトのついたドライバーのフェース中心から垂直に伸びる仮想上の線を表す。
重心がニュートラル軸に近づくほど、捻れが減少し、クラブからボールへのエネルギー伝達がより効率的になる。
重心からニュートラル軸までの距離はミリメートル単位で測定されるが、このミリメートルは重心における他の事項と同じく重要なのだ。
多くのゴルフメーカーがスピードや寛容性について宣伝しているが、それはつまり、重心とニュートラル軸の関係性に他ならない。
フェース中央でボールを当てると仮定して、初速を上げ、インパクト時の捻れを減らし、飛ばしの効率を最大限に上げるためには、重心はニュートラル軸の近くになければならないのだ。
また、寛容であるためには、高い慣性モーメントも必要になる。巷で言われているのと違い、実はスピードと寛容性の両立は最も達成が難しいことなのだ。
注:データも尺度も根本的に異なるため、このチャートは上記のチャートと単純に比較することはできない。
重心位置からニュートラル軸までの距離および慣性モーメントのチャート
所見
・2016年、2017年と、重心をニュートラル軸の下に持って来たメーカーはいくつかあった。昨年はひとつだけ。今年はひとつもなかった。
PXG 0811X GEN2およびコブラのKING F9 Speedback(ロフト9度)の重心が最も低い位置、ニュートラル軸から1mm上にあった。
・2019年モデルの中で、PXG 0811X GEN2が最も慣性モーメントが高かった。次点は僅差でピンのG400 MAX。
・ご想像通り、最も寛容性が高かったのはピンのG410 Plus。続いてトミーアーマーのAtomic(予想外)とタイトリストのTS2(これも予想外)。
・ニュートラル軸に対し最も重心位置が高かったのは、Sub70の839D。次点はテーラーメイドのM5だが、M5の重心をより前方ポジションにすると、ニュートラル軸に対する重心位置が中央に寄る点は注目すべき特徴だ。
・ドローバイアス(スライス抑止)のかかったドライバーは標準モデルに比べると慣性モーメントが低くなる傾向は変わっていない。たとえばピンのG410 SFTとテーラーメイドのM6 D-TypeをそれぞれG410 Plusと標準のM6と比べればわかる。また、キャロウェイのエピックフラッシュ/エピックフラッシュ サブゼロ、ウィルソンのCortex、ミズノST190は、ドローポジションにしたときにニュートラルやフェード設定に比べて慣性モーメントが下がることがわかった。
ヒール/トゥから見た重心位置
このチャートには注意すべき点がある。ヒール/トゥからの距離は単純な指標ではない。
たとえば、似たようなヒール/トゥからの距離を持つドライバーがあったとしても、フェースの高さや形状、クラウンの曲率、バルジ、回転半径などが全く違う場合、ヒール/トゥからの距離よりも、こうした他の要因のほうが性能に及ぼす影響は強い。
従って、このチャートはドロー/フェードバイアスについてもちろん参考にはなるが、重心位置からニュートラル軸までの距離および慣性モーメントのチャートのほうがより有益なパフォーマンス比較ができる。
注:トゥ側は左側に描かれている。中央より左側にあるものはフェードバイアス、右側はドローバイアスを表している。
所見
・前年より前ははフェードバイアスのドライバーは少なかったが、今年はトゥ重心のモデルが著しく増えている。
・2019年、最もドローバイアスが強かったのはミズノのST190G。他にドローバイアスが顕著なのはスリクソンのZ585、ブリジストンのTour B JGR、ツアーエッジのExotics EXSとキャロウェイのエピックフラッシュだった。
・フェードバイアスのドライバーを探しているなら、ピンのG410 Plus(ウェイトはフェードポジション)、テーラーメイドのM5、同じくM6、ウィルソンのCortex(どのセッティングでも)、あるいはPXGの0811XF GEN2が検討対象となるだろう。
・最もニュートラルといえるドライバーはテーラーメイドのM5(皮肉にもドローポジションで)。また、PXGの0811X GEN2とコブラのF9 Speedbackもニュートラルに近い設計だ。
結局のところ重心位置はどこにあるのが最善なのか
すべてのゴルファーに最適な重心位置なんてものは存在しない。当然、正しい重心位置も間違った重心位置もない。
ただ、低重心の浅重心など、他に比べてニッチなものや、稀に高重心の浅重心など、ほとんどのゴルファーにとってよろしくない設定が存在するのは確かだ。
メーカーが違えば哲学も設計も生産能力も異なる。
これはつまり、そのおかげでより多くの選択肢があるということ。選択肢が多ければ自分に合ったものを探し出すチャンスも多くなるのだ。
チャートを見る際に単独のあるいは二つのメーカーだけを抽出して表示させるのも興味深い(全体像を見るときは同時にいくつも表示)。
たとえばピンやコブラなどのメーカーには一貫した設計哲学があり、それは過去5年間に発表したほぼ全てのドライバーに反映されている。
一方、タイトリストにとって突然の進路変更は驚くべきことではない。TSシリーズが今までのタイトリストのドライバーと全く異なるものであるのは議論の余地がない。
また、別のケースではチャートの端から別の端に移動したメーカーすら見受けられる。
つまり、よりよいドライバーを創るため、ただ一つの包括的な設計哲学によって導かれるよりも、シーズン毎に新しく、以前とは異なるドライバーを発表するメーカーも複数存在するのだ。
分布曲線の最も膨らんだ部分に位置するゴルファーが、比較的高い慣性モーメントを有する低重心から中重心のドライバーで最善の結果を得るのだろう。
ボールをなるべく空中に留めたい、ヘッドスピードが遅めのゴルファーなら、通常は高重心の深重心でよい結果が得られるはずだ。
とにかくスピン量を減らしたいというゴルファー(打ち込み型のスインガーが多い)は、それがたとえ寛容性を損なうことになろうとも、低重心の浅重心でよくなる場合が多い。
また、高慣性モーメントも万人に合うわけではない。常にボールをフェース上部で打つゴルファーには高重心ドライバーのほうがいいかもしれないし、逆にフェース下部で打つ人は低重心のクラブで救われる可能性大だ。
何度も繰り返すが、ゴルフにおいて『絶対』は存在しない。
正解は常に「人による」のだ。自分に合う重心位置を見つけ出すことができれば、数多くのクラブからパフォーマンスを上げてくれるものだけに絞り込むことが可能になる。
あなたへの宿題
我々が皆そうしたように、あなた自身で実験してみることだ。チャートを4つのグループに、もしやる気があるなら6つに分類してみよう。
実際にクラブを手に取り、いろいろな角度から比較して、類似点や相違点を解析してみるといい。
ウェイト位置を動かして感じた違いやヘッドスピードの変化をメモしておこう。いくつかのグループの中で他より自分に合っているものがあるかどうか探ってみよう。
自分にとってなにが一番いいのかを知っておけば、次回ドライバーを購入するときの選択が容易になる。
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