ドライバーや、パター、ウェッジを選ぶ時のように、ゴルフシューズにも同じだけの熱意やエネルギーが向けられることはあるのか?
そもそもクラブとシューズでは重視する点が全く異なり、限定商品でない限りアパレルを選ぶ動機は基本「性能」ではなく「好み」である。
ゴルフシューズメーカーは、新発売の度に伝えたい多くの性能や特徴をメッセージに込める。それらのメッセージには意図があるのだが、多くの場合消費者に伝わっていない。
なぜなら、ゴルフシューズに至っては「格好いい」とか「ダサい」などの見た目重視の判断が行われるからだ。
たとえ優れた性能を持っていたとしても消費者にうまく伝える手段がなく、主に機能ばかりが重視されてきた。
見た目以外の判断材料がないため、ゴルフシューズはまるでルーレットを回すかのように購入されるのだ。
そのゴルフシューズ界に革命が起きようとしている。ゴルフのパフォーマンスを最大限高めたい人には必読だ。
ゴルフシューズの改良
BOAを知らなくても、アディダスやフットジョイ、ナイキ、エコーが靴紐の代わりに「ダイヤル式」シューズを展開しているのはご存じだろう。
プーマからも独自のダイヤル式が販売されているが、機能的には標準の靴より少々劣る。
今では「BOA」というダイヤルシステムが、商品のトレードマークとして一般に定着しつつある。
他のオプションも揃えるが、他のブランドに対して圧倒的な差別化を図ることができる。もちろん、他の商品より優れている必要はある。
BOAレースシステムの理論は明確だ。ゴルフスイングは体の動きによって成り立つため、より効果的なエネルギー移行を可能にする道具やテクニックの影響を受けやすい。
ゴルフシューズの場合、地面にかかる力と、これらの力を最大に生かす靴の構造が大きく関わる。
巷ではBOA機能の効果はよく耳にする。それでも、生体力学と科学的に立証されるかどうかは別の話であることが多い。
例えば100mダッシュをサンダルよりトラック用スパイクシューズで走る方がいいのは当たり前だ。
しかし、その靴からどれほどの効果や恩恵を得られるのか、数値化することは全く別次元の話だ。ゴルフシューズのような20~30ドル高い買い物をする場合はなおさらだと思う。
この点を考えると、アディダス Tour 360XT Twin BOAシューズは、単にアメリカ国内でのテスト販売に留まらず、実際の効果を数値化した「真の技術」が搭載されたゴルフシューズといえる。
その詳細はまたの機会に触れるとして、今回はゴルフシューズ界の最新トレンド、ツインダイヤル式シューズが生まれた背景から触れたいと思う。
ツイン ダイヤル
シングルダイアルで効果があるなら、2つ(ツイン)ならさらに機能性が上がるのか?
個人的には、1つより2つだと思うのだが、Tour 360XT Twin BOAが開発された背景も同じだろう。
BOAデザインの特徴は、ペアになったダイヤルがナイロン加工されたステンレススチール製の紐49本を調整する仕組みになっていて足元を支える。
一方のダイヤルがかかとと足首を固定させ、もう一方は足先を調整する仕組みだ。昨年の夏の発売がこのデザインが進化するきっかけになったのだろう。
「BOAレースシステムは非常に画期的な技術だが、ダイヤルが一つでは足を完全に固定できず、安定に欠けていた。ジョン・ラムのようなプロゴルファーや消費者とのやりとりの中で、BOAの使い方を改良すれば足先とかかとの両方を固定させることが可能だと発見した。」(アディダス グローバルフットウェア部門長 Masun Denison氏)
BOAレースシステムの本当の価値は、備わった機能それぞれを強化できる所にある。BOAは単にゴルフシューズの構成要素ではなく、ゴルフシューズをより優れたものにした。
「BOAを採用するにあたり、常にBOAと従来の靴紐を比較して最大の効果を出すことを目標としている。独自のルックスはもちろん、足がしっかりと固定され、緩まないこと、精密な造りであることなどを含めてBOAシステムの効果が確実に発揮されることを目指している。」
Tour 360シューズラインの主な機能として、足を固定し支える「360度ラップ」や、クッション性に優れ疲れにくい「Boost™ミドルソール」などがある。
また、「トルションX」は柔軟性に長け靴底のアーチを支え、「Xトラクションラグ」と8個の滑り止めが装備された 「TPU Puremotionアウトソール」はあらゆるコンディションで安定性とグリップ力をもたらす。
BOA搭載のシューズはどれも魅力だが、360XT Twin BOAは特にモダンで、すっきりしたデザインが他とは違う味を出している。
中には従来とは異なる甲の部分に違和感を覚える人もいるかもしれないが、コンセプトカーのような位置づけだと考えてもらいたい。
Tour360シリーズはBOAがなくても画期的なシューズとして認知され、過去のMyGolfSpyが行う厳格なテストで抜群の安定性をみせ、スパイク・スパイクレス共に1位に認められた商品だ。個人的な感想としては、Twin BOAバージョンはさらに足元全体の履き心地が進化していて、ダイヤルさえ正確に調節できればラウンドが終わるまで何もする必要がない。
この履き心地を証明することはできないが、1ミリ単位での微調整が関係するのは間違いない。
では、どれほどの効果があるのか?その答えはBOA Performance Fit Labが握っている。
このラボの目的はシンプルだが、彼らが行うプロセスは非常に複雑だ。
BOAの目的は、あらゆるスポーツやアクティビティーでBOAシステムの効果を追求し、数値化すること。スポーツによってパフォーマンス定義が異なるため、現在その研究が進められている。
完全なBOAレースシステムの効能について発表されるのは数年先になるだろう。
仮説から立証に至るまでは数えきれないステップを必要とし、断片的で曖昧になりやすいマーケティングとは異なり、証拠に基づく事実に辿り着くまで複雑で高度なプロセスが必要になるのだろう。
ゴルフに特化したラボには、トラックマンや、フォースプレート、3Dモーションキャプチャーが備わる。
レーダーを駆使したトラックマンは、クラブの性能を測る指標(ボールスピードや、打ち出し角、スピン量、飛距離など)を計測し、グランドフォースプレートでは、スイングを通して発生する力を量る。
3Dモーションキャプチャーは、スイング中の動きを捉え、フォースプレートからのデータと併せて、スイング中どこで、いつ、どのように力を発生させているのか明確にする装置だ。
簡単にいえば、BOAレースシステム開発チームの狙いは、ゴルフクラブを作る時と同じテクノロジーを使い、科学的に裏付けされたゴルフシューズを作ることだ。
Performance Fit Labの短期的な目的は、BOAレースシステムが“パフォーマンス”としていかに効果的に機能するのか、データや知識を積み上げることであり、利便性重視の機能を増やすことではない。
しかし長期的な計画は全く違うものだ。R&D(研究開発)施設としてだけでなく、結果的にこの技術がゴルフシューズのフィッティングの根幹に関わる要素になるかもしれない。
ゴルフシューズに?と思うかもしれないが、ゴルフパフォーマンス向上に貢献してくれる“道具”を手に入れることを想像してみてほしい。
もし、クラブフィッティングのように、個人のパフォーマンス基準に沿ったゴルフシューズを選べるとしたら?データを使って自分に最も合ったシューズを購入することができる。
クラブなどのゴルフ用品はもはや大化けすることはなく、徐々にしか進歩しないことは周知の事実だ。実際、あと数ヤードのために多くの人が必死になるのに、なぜラウンドで使うすべての道具に目を向けないのか?
アディダスゴルフシューズ Tour 360XT Twin BOAは、初回アメリカ限定販売では即完売となった(価格は250ドル)ため、2020年再びTwin BOAが登場することを期待している。
そう考えると、「It’s Gotta Be the Shoes!(靴が一番重要だ!)」というマーズ・ブラックモンの言葉は真実だったようだ。
ゴルフシューズをクラブと同じように扱う気になれただろうか?
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