MyGolfSpy の『Ball Lab(ボールラボ)』では、市場に出回るゴルフボールの品質と一貫性の調査、数値化を行っており、無駄のない最適なボール選びに役立てもらいたいと考えている。
今日取り上げるのはタイトリスト「Pro V1x LEFT DASH(レフトダッシュ)」だ。
ラボで使用する機器の概要はここに掲載した。また、テストプロセスや、「不良」ボールの定義、独自の「True Price」測定方法については、MyGolfSpy Ball Labのページにて確認できる。
まず初歩的なことから話そう。タイトリスト「Pro V1x Left Dash」は、『Ball Lab』で取り上げる9番目のボールとしては多少風変わりな選択かもしれない。
このボールの名前を聞いたことがない人も実際多いのではないか?同社の情報でもシェア10%未満と記されていることから、これは特に驚くことではない。そのため、タイトリスト自身もこのボールに関しては多く語ることがなかった。
このような商品に対してはメーカーの評価に従うのが筋だが、「Left Dash」のパフォーマンス特性がゴルファーの期待(グリーンの周りでのスピン性能や飛距離)とどの程度合致するのかといった点においては、もう少し説明があっても良いと思う。
それに、同社の戦略が主力商品「ProV1」ラインナップの売上げを侵害しないこと、というのも容易に想像がつく。
少なくとも、「Pro V1x Left Dash(レフトダッシュ)」は、特に“ヘッドスピードが速いゴルファー”が知っておくべきボールだ。今回のテストの結果にぜひ注目してもらいたい。
タイトリスト「PRO V1X LEFT DASH」について
タイトリストによると、「Left Dash」の特性は、高打ち出し、低スピン。打ち出しの特性は、標準「ProV1X」と似ている。
ただし、タイトリストのプレミアムボールの中で最低スピンを謳う「AVX」よりも、ややスピンがかかる仕様だ。
実際のパフォーマンスに当てはめると、多くの低コンプレッション(ソフト)ボールが特徴とする高打ち出し、低スピン特性を持ち合わせるものの、「Left Dash」のコンプレッションは非常に高い(硬い)ため(下記参照)、ティーショットからの距離に苦しむことはないだろう。実際はまったく逆なのだ。
「Pro V1x Left Dash」は、マサチューセッツ州ニューベッドフォードの「Ball Plant3」で製造されている。小売価格は47.99ドル。Fairway Golfなどの小売業者が在庫を持つが、特注品として扱っている。
タイトリスト「PRO V1X LEFT DASH」-コンプレッション
『Ball Lab』での計測の結果、「Pro V1x Left Dash」の平均コンプレッションは102だった。
テストしたボールの中で最も硬い。参考までに、「Cut Blue DC」とミズノ「RB Tour X」はどちらも平均コンプレッションが99、ブリヂストン「Tour BX」は平均で約98.5だ。『コンプレッション』と『スピード』の相関関係や「Left Dash」の高打ち出し、低スピン特性を考えると、ボール市場で“最も飛距離の出るウレタンボール”のひとつと言える。
タイトリスト「PRO V1X LEFT DASH(レフトダッシュ)」-重量と直径サイズ
・真円度の基準を満たさないボールはひとつもなかった。
・USGAの重量制限(1,620オンス)を超えたサンプルボールはひとつもない。
「Pro V1x Left Dash」の直径サイズは、ツアーボールカテゴリーでは平均的といえる。これは、1.68インチの基準に沿ったタイトリストボールにはほぼ当てはまり、抜け穴を通り抜けようとせず、ルールに忠実に従う同社の精神が表れている。
タイトリスト「PRO V1X LEFT DASH」-インスペクション(検査)
中心性と同心性
タイトリストにはボールを半分に割ったときの心配はあまりなく、消費者の期待を裏切らない。
その通り、サンプルボールでは、コアの中心性またはレイヤーの同心性に重大な欠陥が確認されたボールはなかった。唯一、マントルの同心性の問題が数個見られたが、非常にマイナーなものだった。
どれもパフォーマンスに影響を与えるとは思えない小さな欠陥に留まる。
コアのカラーに関しては、昨年カットしたボールと比べてばらつきがあったものの一貫して優れている。タイトリストは季節(温度と湿度)の変化に応じて一貫したパフォーマンスを約束するため、季節ごとに配合を調整するため、まったくの予想外というわけではない。
カバー
ディンプルに小さなペンキの塊があるボールを1個確認した。これは問題なく取り除くことができたため、マイナーと見なした。塗装工程からの小さなピン跡が残ったボールもいくつか発見した。
一般的な考察
他の「Pro V1」ファミリーと同様に、「Left Dash(レフトダッシュ)」にも薄いウレタンカバーを採用している。グリーン周りのスピン性能は、このカテゴリーに期待するレベルであるはずだ。
タイトリスト「PRO V1X LEFT DASH」-一貫性
このセクションでは、「Pro V1X Left Dash」の『一貫性』について詳しく説明する。これは、これまでにテストしたすべてのモデルと比較して、サンプル内のボールが互いにどの程度一貫しているか示す目安だ。
重量の一貫性
・「Pro V1x Left Dash」の(重量の)一貫性は全体的に平均以上を維持している。
・最大と最小重量の差は極めて小さい。
直径サイズの一貫性
・他のボールと比較しても、「Left Dash」の直径サイズは一貫性して良好(平均以上)。
コンプレッションの一貫性
簡単な部分から始めると、「Pro V1x Left Dash」のコンプレッションは、一貫して優れている(平均以上)。
・3方法あるコンプレッション測定のうち、すべて「優良(平均以上)」を獲得したのは「Left Dash」が唯一。
スリクソン「Q-Star Tour」の記事でも説明したように、『コンプレッションの一貫性』を導き出すために、二つの測定値を採用している。
サンプルボール全体での平均コンプレッション値を見ると、最も硬いボールと最も柔らかいボールのポイント差は7ポイントだと分かる。飛びぬけて良いわけではないが、しっかりと平均範囲内に収まっている。また、標準偏差だけをみれば、「高平均」範囲に位置づけられる。
さらに、各ボールで測定した3箇所のコンプレッションの差(IBCRと呼ぶ)は、平均でわずか1.07ポイントだった。これは、私達がもつ過去のデータ内で最高値だ。それだけでなく、「Pro V1x Left Dash」は優良ボールの中でも更に高い水準を誇り、このボールが水準を更に高く押し上げているといっても過言ではない(標準偏差は平均より2ポイント高い)。
TRUE PRICE-ボールの真の価格-
『True Price』は、ゴルフボールの品質を独自に数値化した指標だ。これは、「優良ボール1ダース(12個)を得るのに必要な金額」を表す。
『Ture Price』は常に「小売価格以上の金額」になる。「Ture Price」と「小売価格」の差が大きいほど、ボールの品質が懸念される。
タイトリスト「PRO V1X LEFT DASH」-まとめ
詳しいテストプロセスや「不良」ボールの定義方法、「True Price」の測定については、MyGolfSpy Ball Labページを参照ください。
良かった点
「コンプレッション」、「重量」、「直径」の一貫性が良好。「Pro V1x Left Dash」は、これまでのデータの中でも総合的に高評価を獲得した唯一のボールだ。
悪かった点
当たり前だが、「Left Dash」も完璧なボールではない。特にコアがわずかに中心から外れているといった小さな欠陥や、レイヤーの同心性の問題は、一般的とまでとは言わないが、まったく珍しいことでもない。また、硬い打感に違和感を覚える人もいるだろう。
また、「Left Dash」のシェアは小さく、他のタイトリストボールと生産量が異なることにも注目したい。数量が少ないほど、許容誤差に厳しい可能性があるからだ。
TRUE PRICE-ボールの真の価格-
タイトリスト「ProV1x Left Dash」の「TRUE PRICE(真の価格)」は47.99ドル。小売価格とぴったり一致しており、ゴルフボールの品質と一貫性を重視する人にとっては優れたオプションであることを示している。
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