オリンピックは閉会したが、ブリヂストンはステルスマーケティングにおいては、金メダルに値するかもしれない。
ブリヂストンの宣伝広告は、昨日のツイッターを読まない限り完全に見逃してしまうほど目立たないものだった。ほとんどのメーカーは、たとえどんなに些細な情報でもDMを送ったり、広告を出したりするものだ。しかしブリヂストンは、新しいドライビングアイアンをひっそりと市場に送り込もうとしているようだ。
ブリヂストンは、ユーティリティアイアンを「ドライビングアイアン」と呼んでいる。
ユーティリティーではなく、ドライビングアイアン
ブリヂストンのTour B X-HIは、小売店では販売されない。この新しいドライビングアイアンは非常に限定されたリリースで、ブリヂストンのウェブサイトのみで購入できる。完売後は手に入らなくなるかもしれない。
「Tour B X‐HIは日本では既に発売されているが、アメリカでの反応を見るために数量限定で販売する。もし売れ行きが好調であれば、近いうちにフルラインでリリースする予定だ。」とブリヂストンゴルフ、プロダクトマネージャーのザック・クパーブッシュ氏は述べている。
クパーブッシュ氏によれば、J33エアマッスルは今でも顧客からの問い合わせが多いが、そのニッチカテゴリーにおいて今回のリリースはJ33エアマッスル以来だという。
「シャフトメーカーと共同で市場調査をした結果、ドライビングアイアンのカテゴリーは人気が復活すると予想される。私たちは、どれくらい市場に受け入れられるかを見たいと思っている。」
今回のテスト販売は、2012年以来多くの注目を集めてきた商品のようになるかはわからないが、もし購入を考えているなら急いだほうがいいだろう。
アグレッシブな価格設定
今回発売されるTour B X-HIは20°のモデルのみで、Golf Pride MCCグリップとKBSツアーハイブリッドプロトタイプシャフトが基本となっているが、追加料金なしで豊富なオプションが用意されている。価格は189.99ドルで、このカテゴリーのテスト販売価格としては悪くない。
「最初の在庫がどれくらい早く売れるかを知るため、かなりアグレッシブな価格設定にした。売れ行きが好調であれば、フルラインでリリースしたいと思っている。」とクパーブッシュ氏は語った。
日本国内では18°、20°、22°の3モデルが販売されている。ブリヂストンは、技術的な詳細を公表していない。分かっていることは、通常のドライビングアイアン(つまりユーティリティーアイアン)と同様に、厚みのあるワイドソールが特徴の「中空ボディー構造」だということだ。
リスクを抑えたアプローチ
ブリヂストンのビジネスは、とても興味深くなってきている。数週間前、ボールカテゴリーで過去最高の販売数を記録したと発表されたが、その後も北米市場での赤字経営のうわさが絶えない。Tour B XSのマーケティング戦略にタイガー・ウッズを起用しており、タイガーのパフォーマンスとホンダクラシックでのCBSの好意的な報道には満足していることだろう。
さらにブリヂストンゴルフのCEOであるエンジェル・イラガン氏は、PGAツアーで使用するボールの標準化を支持しており、USGAもこれに向けて動き出しそうな勢いだ。現在のトレンドと逆行する「ボールの標準化」を提唱するボールメーカーは、それを懐疑的に見ている人たちにとっては格好の話のネタになる。
ブリヂストンの事業全体でシェアの少ないクラブカテゴリーでは、フィッターのネットワークのみでの展開から1年後、ようやくプレミアムTour Bのウッドとアイアンの販売をオンラインで開始した。また、JGRのウッドとアイアンの見直しを検討しているといううわさもある。
J15のリリース以降低迷が続いていたことを考えれば、ドライビングアイアンのようなニッチな商品を限定的なテスト販売にしたことは容易に理解できる。2017年はブリヂストンにとって多忙な年だったが、2018年も忙しくなりそうだ。ボール市場のシェアは第3位を維持しており、他の分野でも堅調な実績を残しているが、クラブに関しては競争力に欠ける。
ボール販売は収益の中心だ。ブリヂストンは現在のマーケットポジションを維持するために、クリエイティブな戦略が必須だ。
ブリヂストンは、クラブに関してはとても控えめでリスクを抑えたアプローチをとっているようだ。過去の経験を踏まえれば、賢明な動きだろう。
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