・キャロウェイが、『トリプル・トラック』搭載の二世代目「ERC SOFT」ゴルフボールを発表

・同社によると、「柔らかな打感と飛距離」が特徴

・価格は、34.99ドル(1ダース)


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キャロウェイから二世代目「ERC SOFT」ゴルフボールが発売されるとなれば、何かしらのアップデートが期待できるはずだ。

決して『トリプル・トラック』の使い回しだと思わないでほしい。『トリプル・トラック』がお好みでないなら、キャロウェイにも他のボールオプションがあるが「ERC SOFT」は含まない。


キャロウェイ「ERC SOFT」:高エネルギーコア

キャロウェイは、「ERC SOFT」を「柔らかい打感、かつ最長飛距離を誇るボール」と謳う。それが「Chrome Soft」と、どう比較できるかは定かではないが、ここで深く掘り下げるつもりはない。

「ERC Soft」ゴルフボールは、ボールストーリーでは一般的な『高エネルギーコア』を備えている。

「高エネルギー」とは常に比較の観点に基づいて語られるが、簡単な結論から言うと、ゴルファーは柔らかい打感が好きなので、より「スピードの出る(高エネルギー)ソフト素材」を作ることが昨今のゴルフボール業界全体の目標になっている。

これは、「Chrome Soft X」や「Warbird」を除いて、低コンプレッションメインのキャロウェイに特に当てはまる。


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高スピードマントル

コアだけでも周りの素材と同じくらい「スピード重視の素材」であるため、「ERC SOFT」の特徴が「高スピードマントル層」なのはある意味納得がいく。商品名はそれぞれだが、多くの新作ボールがこれと同じようなストーリーを掲げている。

「マントル層」(高スピードボールであってもそうでなくても)は、「3ピースの低コンプレッションボール」では特に重要だ。「柔らかいコア素材」を「硬いマントル」で包むことにより、フルショットでスピードを生み出すと同時に、下層レイヤーの硬さがグリーン周りで効果的なスピンをもたらす。


PARALOID™ハイブリッド2.0カバー

「ERC Soft」はアイオノマーカバーボールだ。実際は「アイオノマーブレンド」だが、変わりはない。「アイオノマー/サーリン」と「ウレタン(多層レイヤーのツアーボールに使用されるカバー素材)」の間には、基本的に違いが2点ある。

まず、誰もが知っている通り、アイオノマー樹脂の方が“安価”だということ。

もう1つは、アイオノマーは通常硬くて厚いため、耐久性が低く、ウレタンよりもスピン量が劣る。また、打感はそれほど柔らかくない。

市場に「プレミアムアイオノマー」というカテゴリーが出現したことに伴い、メーカーはコストを低く抑えながら、カバーにもう少し「スピン性能」と「打感」を与えるべくより洗練された「アイオノマーブレンド」を追及するようになった。

そこでキャロウェイが出した答えは、『PARALOID™ インパクト・モディファイア』を特徴としたカバーを採用すること。

キャロウェイによると、ダウ・ケミカル社製の素材によってグリーン周りでのスピン性能が向上し、より柔らかい打感が実現するという。結局のところ、「ウレタンではない素材」を「ウレタンのように機能させる」試みと言えるかもしれない。


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ERC SOFT VS 競合品

同社のマーケティング資料によると、「ERC SOFT」ゴルフボールはタイトリスト「AVX」 やテーラーメイド「Tour Response」に勝るとも劣らないという。

これらのボールや「初代ERC SOFT」と比較すると、「ERC SOFT」の打ち出しはより高く、スピン量が少なく、「AVX」より3.9ヤード、「Tour Response」より3ヤード飛距離が伸びたという。

正直に言って、比較ポイントに疑問が残る。これら競合ボールは両方ともウレタンカバーだ。これらのスピン量は多いはずだし、「AVX」に限ってはソフトボールカテゴリーとは異なる。設計上では、低弾道ボールの部類に入る。

つまり、キャロウェイは良いところだけを“つまみ食い”したと言える。

これも、自社テストではよくあることだ。とは言うものの、その昔タイトリストがアイオノマーカバーの「Tour Soft」とキャロウェイ「Chrome Soft」を有利に比較するため同様のアプローチをとった際、キャロウェイが意見を申したこともあった。

おあいこだろうが、五十歩百歩と言おうが、あまり重要なことではない。ただ付け加えると、最もまともな比較対象を挙げるとすればタイトリスト「Tour Soft」なのだろうが、今回は選挙権を得られなかった。


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BALL WARS(ボール戦争)

これは、昨今のゴルフボール業界の歴史の足跡として、キャロウェイとタイトリスト間で繰り広げられる戦いのすべてだ。ある時点から「Chrome Soft」が、タイトリストの市場シェアを少しずつ奪っていった。

「AVX」は、「Chrome Soft」への対抗策として発売された。その後「ERC SOFT」はさらに「AVX」に対抗するため、続いて「ERC SOFT」に対して「Tour Soft」がリリースされるなどと繰り返され、今に至るのだ。

これらのやり取りを見ていると、両社とも互いに意識し過ぎていたことは確かだ。だが、これこそキャロウェイが言うように、新「ERC SOFT」に“隠されたストーリー”なのだろう。

今回の新ボールでは、顧客であるゴルファーが最終的に望むものを提供することにより力を入れた。

誰にでも分かるような明白なことだと思うだろうが、競争から1歩リードしようとしたり、ささいな事で見失ったりすれば、いとも簡単に“消費者”を見失ってしまう。おそらく、ゴルファーが望むものが、彼らの作る最高性能の商品と一致しないと、異議申し立てるメーカーなどいないと思うが。

これは、誰もが飛距離を望むドライバーでは非常にシンプルな話だ。

しかし、ゴルフボールの場合少し微妙で、ゴルファーが望むものには、「柔らかな打感」や「明るい色(または色なし)」「高スピン(または低スピン)」「飛距離」「格好いい柄」「派手なロゴ」「手頃な価格」、さらに「本物の性能」など多岐に渡る要素が含まれる。


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キャロウェイ「ERC SOFT」:消費者の認識と現実

ここで大事なポイントは、消費者が実際に受け取る認識や好みは、実際の性能より、もしくは同じ位重要であるということ。

それを念頭に置くと、アベレージゴルファーの協力のもと競合商品と新「ERC SOFT」ボールをテストして収集されたデータはある程度重要である。

自社テストという優位性はあるものの、キャロウェイのテストグループは「AVX」よりも「ERC SOFT」を気に入り、特に「高い打ち出し(弾道)」に注目が集まった。

なぜ、そう(「ERC SOFT」の打感が柔らかく、「AVX」は柔らかい割に、弾道が低い)思うのかには理由があるが、最終的には、認識だろうが現実だろうが、性能や好みよるものであっても、これらの理由はあまり関係ない。

非常にシンプルなことで、「ERC SOFT」ボールが好き。それだけだ。

おそらく、多くのゴルファーがそうであって欲しいとキャロウェイは願っているだろう。


キャロウェイ「ERC SOFT」ゴルフボール-価格と販売予定

キャロウェイ新作「ERC SOFT」ボールの価格は、34.99ドル/ダース。「トリプル・トラック」と「トリプル・トラックイエロー」の2種類が販売される。