キャロウェイ「パラダイム」フェアウェイウッド＆ハイブリッド登場～安定して狙える正確性～

・キャロウェイが「パラダイム」フェアウェイウッドとハイブリッドシリーズを発表

・狙った距離とバラツキの少なさを約束

・メーカー希望小売価格は、フェアウェイウッドが349.99ドル（約46,000円）、ハイブリッドが299.99ドル（約40,000円）

・先行販売は1月13日、店頭販売は2月24日

キャロウェイの「エピック」シリーズは2023年に刷新されると思われていた。

しかし、そうではなかった。「エピック」はここでおしまい。

これからはキャロウェイ「パラダイム」の時代だ。

「エピック」のどぎついグリーンはなくなり、少なくともここからは「ローグ」について語ることもない。2022年「ローグST」の構造をかなり踏襲しているフェアウェイウッドとハイブリッドではあるが、「パラダイム」はキャロウェイの完全なる最新シリーズとなっている。

と言うわけで、メタルウッドの新シリーズの一番の疑問点は 「ドライバーのキーポイントとなる技術や素材は、どの程度までフェアウェイウッドやハイブリッドに採用されているのだろうか」ということ。

時にそれが大切な場合もあるが、大抵は名ばかりの製品発表の方が多い。

では、キャロウェイ「パラダイム」フェアウェイウッドとハイブリッドはどうだろうか？

キャロウェイ「パラダイム」フェアウェイウッドとハイブリッドのテクノロジー

「パラダイム」ドライバーの話題の大部分は“パフォーマンスを360°変える”に集約されるが、フェアウェイウッドとハイブリッドには必ずしも当てはまらない。そして、そこにはちゃんとしたワケがある。

「パラダイム」ドライバーでは、ヘッド重量の1/10を削り、重心を数ミリシフトさせるために用いている。一般的にドライバーと比べてフェアウェイウッドは体積が小さく重量が重い。

ざっくばらんに言うと、フェアウェイウッドはドライバーに比べて、スピン量や弾道、寛容性／MOI（慣性モーメント）とのバランスとるために周辺重量を意図した場所に動かすことは“比較的簡単”なのだ。ゴルフクラブの全てのデザインは一連のトレードオフの結果とも言える。

それはさておき、（スチールやアルミニウムの代わりに）カーボンを採用することに関してはメリットもあるにはあるが、（ドライバーほどに）大量に使うほど劇的なメリットではない。

今回キャロウェイは、この「パラダイム」において少量ながらドライバーと同じ「フォージドカーボン」を採用した。その用途はフェアウェイウッドとハイブリッドのソールの特定箇所に限られている。とはいえ、この「フォージドカーボン」は、スチールに代わる存在として多くの余剰重量を作り出している。

そして、その余剰となった重量の一部は、「パラダイム」シリーズで復活した調整機能の『オプティフィット・ホーゼル』に割り当てられている。2022年の「ローグST」シリーズのホーゼル（ネック形状）は固定式だったため、ゴルファー（そして一部のツアープロ）は残念に思っていたからだ。

「アダプター」は、多用性とフィッティングには利点があるが、重さと言う点においては悪影響を及ぼす。バランス的に、「アダプター」があると（重いため）重心が高めでヒール寄りになり最適とは言えないのだ。しかし、明確ではないがメリットもあるようだ。

「パラダイム」版のコウモリ

「ローグST」フェアウェイウッドにおいて、キャロウェイは新しい「JAILBREAK ST（ジェイルブレイクST）」構造を導入。“コウモリの翼”のような形状をしたこのテクノロジーを、キャロウェイは『バットウイング』と名付けた。

この『バットウイング』テクノロジーは、フェースとソール、そしてクラウンを繋げるもので、フェースのたわみを妨げることなく垂直方向の剛性を向上させるのに役立っている。

しかし、かつてアメリカのバンド“スパークス”が“この街は俺たちには狭すぎる(This Town Ain’t Big Enough for Both of Us.)”と唄ったように、フェアウェイウッドのヘッドは小さい。

「ローグST」ではトゥとヒールそれぞれに１つずつ合わせて2つの『バットウイング』を搭載していたが、今回の「パラダイム」ではトゥ側に『バットウイング』を搭載し、ヒール側には『オプティフィット・ホーゼル』を搭載。

これが事実上の『バットウイング』の役割を果たしている。（これが前述の、本来ならデメリットとなる重量物である「アダプター」が果たすメリットということ。）

キャロウェイはフェースカップに「鍛造C300」を使用し続けているが、これはパフォーマンスの向上に繋がると考えており、AI設計によるものだ。どのメーカーももちろんコンピューターなどの人工知能（AI）でデザインを最適化しているものの、キャロウェイは、AIを打ち出すことで注目を集めるというマーケティング戦略をとっているのだ。

「AI」のことはよく分からないかも知れないが、基本的にはコンピューターに特定のパラメーターを設定して、シミュレーションを繰り返し、結果を見るというものだ。実際そこまで簡単ではないが概念は分かってもらえるだろう。

今回の場合、キャロウェイはフェース中央下部の動きに注目していた。というのも、フェアウェイウッドとハイブリッドのショットの“約75％はフェースのセンターより下で当たっている”ため、キャロウェイはこのエリアこそパフォーマンスを向上させるメリットがある領域だと考えたわけだ。

また「タングステンスピードカートリッジ」は、これまでのキャロウェイのフェアウェイウッドデザインのように重量を低／前部に集約させる役割がある。重心を前方に配置すると、スピンを軽減する一方でボール初速が向上。

「パラダイム」ドライバーと同様に、結果として打ち出しがより安定し初速が出る状態となり、最終的には飛距離のバラツキが抑えられるようになる。

キャロウェイ「パラダイム」フェアウェイウッドシリーズ

今回の「パラダイム」フェアウェイウッドは、「パラダイム」「パラダイムX」「パラダイム◆◆◆」の3モデルがある。

想定通り、スタンダードの「パラダイム」フェアウェイウッドは、最もニュートラルで幅広いゴルファーにフィットする。他の2モデルよりも多くソールに「フォージドカーボン」を採用していることが特徴。23gの「タングステンスピードカートリッジ」により、低／浅重心を実現している。

高校の数学において、“X”は独立変数を意味したが、キャロウェイの用語では“X=ドロー”を意味する。多くのゴルファーがドローバイアスのフェアウェイウッドを必要としているものの、彼らは“ドロー”というワードが入っていないモデルを好むため、「パラダイムX」というネーミングになったというわけだ。

今回のモデルにおいては、ウエイトをヒール側にキープするため、「フォージドカーボン」をトゥ側に配置しており、またライ角もややアップライトにしていることから、適度なドローが実現するようだ。

シリーズの中で一番低スピンモデルとなっているのが「パラダイム◆◆◆」だ。よりコンパクトな形状でディープフェースになっていることが特徴。主に直進性を求める力のあるゴルファーに最もフィットする。またターゲットプレーヤーを考慮し、ソールに「鍛造コンポジット」は採用されていないが「3軸カーボンクラウン」を搭載している。

キャロウェイ「パラダイム」ハイブリッドシリーズ

「パラダイム」ハイブリッドの主な目的は、ゴルファーの多くが小ぶりなフェアウェイウッドだなと感じるような新形状を創造することにあった。テクノロジーに関して言うと、『バットウイング』構造と、新しい「カットウェーブ・ソールデザイン」が一番の注目ポイント。ここでは「フォージドカーボン」は話題にはならない。

その他は「パラダイム」フェアウェイウッドと同じだが、このハイブリッドにはフェアウェイウッドで使われた「C300」とは対照的に、「455スチール」が採用されている。

「カットウェーブ・ソールデザイン」は、ラフでのヘッドの動きを簡単にし、どんなライでもリーディングエッジを低い位置にキープするために取り入れた。そして「パラダイム」フェアウェイウッド同様、「AIフェース」の形状は距離のバラツキを抑えることを主な目的としており、形状はモデルごとに異なっている。

つまりキャロウェイは、「パラダイム」ハイブリッドの方が、「ローグST」よりも正確でやや速くなっていると考えているのだ。

今回発表されたハイブリッド2モデルを比べてみると、スタンダードの「パラダイム」はより「操作性」が高く、一番上のスコアラインがないため、理論上はアドレスでよりスクエア（真っ直ぐ）に構えることができるようだ。

一方、「パラダイムX」は、投影面積が大きくなっており、ロングアイアンの代わりなることが意図されている。はっきりとドローバイアスのモデルとは明示されていないが、私が思うにスタンダードの「パラダイム」がそのタイプではないだろうか。

キャロウェイ「パラダイム」- 私見

キャロウェイのプレーヤーとロボットテストの結果は具体性に欠けるが、「ローグST」に比べ今回の「パラダイム」全モデルは、わずかにボール初速が上回っている。それはそれとして、キャロウェイが“安定して狙える正確性“を売りにしているという事実は、本当の“パラダイムシフト”と言えるだろう。

では、これで飛距離が話題にならないのかと言えば、そうではない。キャロウェイが飛距離を売りにしなかったのは、消費者にトータルパフォーマンスをもっと理解してもらうと考えたのかも知れない。

“飛び”のアピールが売りに繋がることは既に各メーカーは知っているので、飛距離を打ち出す方が無難なはずなのは確かなことではあるが、ラウンドで1打でも少ないスコアメイクができるクラブをゴルファーに提供することを見過ごしてはいけない。

2022年は他のブランドよりもキャロウェイのフェアウェイウッドとハイブリッドがゴルファーに選ばれた。これはキャロウェイの誇りであり、2023年に対する前向きな兆しと言えるだろう。

純正シャフト

「パラダイム」フェアウェイウッドとハイブリッドシリーズには純正シャフトが4つある。

・アルディラ「Ascent PL Blue（アセントPLブルー）」は高弾道とスピンを求めるゴルファーの軽量バージョン

・プロジェクトX「HZRDUS Silver（ハザーダス シルバー）」は中弾道、中スピンのオプションとなる

・プロジェクトX「HZRDUS Black（ハザーダス ブラック）」は中／低弾道、中／低スピンオプション

・ディアマナ「Kai’Li White（カイリホワイト）」、多くのゴルファーに最も低弾道、低スピンのオプションとなるはずだ

純正グリップはゴルフプライド「Tour Velvet（ツアーベルベット）」だ。