新旧打ち比べ！キャロウェイ「パラダイム」のデータを徹底検証！「ステルス2」との違いは？

今回は、キャロウェイの3つのシリーズ「エピック」「ローグST」「パラダイム」のデータから比較し、どのくらい進化を遂げているのか？を、まずは検証してみたいと思う。

我々の記事で注目のクラブと言えば、テーラーメイド「ステルス」とキャロウェイの「パラダイム」。やはり、この大手2社は毎年注目度が高い。

初代「ステルス」のカーボンウッドの印象が強く、2022年はテーラーメイドに軍配が上がったが、2023年我々の人気記事のトップに居続けたのはキャロウェイ「パラダイム」だった。

キャロウェイと言えば、『AIフェース』と『JAILBREAK（ジェイルブレイク）』テクノロジー。自社のクラブ設計の可能性を強化するために「AI（人工知能）」を採用することを話題にした最初のメーカーだ。

今では多くのメーカーも何らかの形で「AI」を活用しているが、同社ほど「AI」を広く活用しているメーカーは他にない。

今も尚、ゴルフ業界におけるAI技術と機械学習を牽引し続け、「AI」を駆使したデザインの継続的な進化は起こり続けている。目的とテクノロジーが進化するに従って具体的な『JAILBREAK』の“最適化“にも変化が起こる。

しかし、このテクノロジーの目指すゴールに変わりはない。

過去のランキングから

遡ること2018年から我々の製品テスト『MOST WANTEDテスト』において、常にトップ5にあり続けてきたキャロウェイ。2021年には2年越しの王者へ返り咲くものの、翌年2022年に王座を奪われ、2023年の今年、4位という結果だった。

トップ5にランクインしているものの、トップとの差は開きテーラーメイドに大きく離された結果となったのだ。

データそのものではなく、ある意味劇的に進化し続けるテーラーメイドに対し、一歩出遅れているようにも感じるキャロウェイ。トップとのその差は何なのか？

ではその要因を、キャロウェイのもはや敵なしと思われた2021年のデータから遡り、詳しく見ていこう。

2021年から振り返るキャロウェイのテクノロジーと特徴

2021年、キャロウェイは「EPIC SPEED（エピックスピード）」「EPIC MAX（エピックマックス）」「EPIC MAX LS」ドライバーの3モデルをリリースした。「EPIC SPEED」「EPIC MAX」は前作を継承し、「EPIC MAX LS」は完全最新モデル。

「EPIC SPEED」は、3つのモデルの中では最も「浅重心」になっていることから、他のモデルよりも「初速が出る」。「EPIC MAX」は『スライド式ウエイトトラック』が特徴で、「MOI（慣性モーメント）」が最も高く「寛容性」がある。

そしてキャロウェイの商品としては意外とも思える「EPIC MAX LS」。この「LS」ロースピンモデルは、可能な限り「ニュートラル」にデザインされ、フェースはオープンでもクローズでもない。つまりドローバイアスでも、フェードバイアスでもなく、重心はフェースの真ん中に近くなるように設定されている。

事実上、「EPIC MAX LS」は好きなように振ってもらえるように設計されており、「ミスヒットに強い」とか「弱い」とかそういったこともなく、何かを強調しているわけでもない。

キャロウェイのテクノロジーの全てを投入したが、その他は“ありのまま”ということ。

少しのフェードでもドローでも、「EPIC MAX LS」はあなたの邪魔をすることなく、思い通りに振ればその弾道を実現してくれるという。

その「EPIC MAX LS」は、2021年『MOST WANTEDテスト』で38モデルの中からベストドライバーに選ばれている。

18,000以上のショットによるデータを2ヶ月近く費やして集めた結果、「EPIC MAX LS」がNO.1になった一番の要因は、我々が“商品そのものの実力”としてみている「ストロークス・ゲインド」で他のモデルを突き放した結果と、「トータル飛距離」にあり、多くのテスターからも最も人気を集めたモデルとなった。

だがそれだけではない！キャロウェイは、2021年の「総合ランキング」だけでなく、この年の「低ヘッドスピード部門」と「高ヘッドスピード部門」においてもトップの座を獲得し、もはや敵なしという年となったのだ。

次に2022モデルの「ローグST」はどうか？

2022モデルでの再設計と共通テクノロジー

2022年モデルで、キャロウェイは「ROGUE ST（ローグST）」ドライバーシリーズとして「ローグ ST MAX」「ローグST MAX D」「ローグ ST MAX LS」「ローグ STトリプルダイヤモンド LS」の4モデルをリリースした。

4モデルの特徴として、必ずと言っていいほど多くのテクノロジーが各モデルに同じように搭載されている。

その共通点となるテクノロジーは、各モデルの新形状に加え、『タングステン・スピードカートリッジ』、『ジェイルブレイクテクノロジー』、『AIフェース』、『ユニボディー構造』と『オプティフィット・ホーゼル』だ。

こう並べられても、何がどんな効果があるのか…。確かにそうだ。

簡単に説明すると、キャロウェイと言えば「初速」だが、この『タングステン・スピードカートリッジ』により「初速」だけではなく、そこに「寛容性」も加えたということ。

次にお馴染みの『ジェイルブレイクテクノロジー』は、前作からさらに「初速アップ」するよう再設計し搭載。そしてコンピューターで生成されたデザイン『AIフェース』は、キャロウェイがデザインに課す要素を拡大し、「ボール初速の最大化」だけでなく、「スピン量の軽減」も実現している。

『ユニボディー構造』とは、インパクト時におけるフェースのたわみをコントロールしやすくし、こちらも「初速アップ」が目的とされている。

最後に『オプティフィット・ホーゼル』だが、調整可能な『オプティフィット・ホーゼル』を搭載しているが、ユーザーが交換できる「ウエイト」は搭載していない。これは大手メーカーとしては珍しいことだ。ウエイトが固定されているので面白みはほぼないが、それにより効率の良いデザインにはなっていると言える。

そしてこの年（2022年）の『MOST WANTEDテスト』でキャロウェイは、「ローグ STトリプルダイヤモンド LS」が38モデル中の2位にランクインしている。

その他モデルの順位は、簡単にボールを上げることができ、それでいてスライスを減らすことが可能な「ローグST MAX D」が6位、「飛距離」と「寛容性」をベストマッチさせた「ローグ ST MAX」が8位、「ロースピン（低スピン）」を謳いながらも、多くのゴルファーが良いパフォーマンスを発揮することができた「ローグ ST MAX LS」が14位という結果だった。

「スピン量を減らす必要があるプレーヤー」に向いている「ローグ STトリプルダイヤモンド LS」が選ばれた要因は、「ストロークス・ゲインド」でトップ、「飛距離」と「正確性」がトップクラスだったこと。

ゴルフファーによっては、スピン量を減らすことで「寛容性」を実現することもあるので、このモデルはそういうタイプのゴルファー向けにデザインされている。そのため、誰にでもマッチするわけでないということは伝えておきたい。

ここまで、ざっと過去のモデルを振り返ってみたが、キャロウェイのドライバーを愛用したことのあるゴルファー、また一度は手にしたことがあるとういうゴルファーがほとんどだろう。そして当然のことながら、私には合わなかったという方も多いはずだ。

そして、キャロウェイのテクノロジーには新鮮味がなくなってしまったという声もあるだろう。では、2023年のモデルはどうだろうか？

2023年モデル「パラダイム」～“パフォーマンスを360°変える”～

キャロウェイは、「パラダイム」ドライバーシリーズ“パフォーマンスを360°変える”として「パラダイム」、「パラダイムX」、「パラダイム◆◆◆（トリプルダイヤモンド）」の3モデルをリリースした。

パラダイムが過去のモデルと何が違うのか？という点の1つとして、このキャロウェイが言っている“パフォーマンスを360°変える”というドライバーのボディ、あるいはシャーシ（枠組み・フレーム）が挙げられる。

ウエイトを中央に配置することが望ましくないということは、ゴルフクラブ設計の基本だ。

中央に配置された“塊”は何の役にも立たないが、ゴルフクラブ設計においては、クラブの真ん中から大量のウエイトを取り出して、クラブのギリギリ前後と周辺に移動させることができれば、低スピン、MOI（寛容性）の向上、そして大まかに言うと、弾道とスピンについてほぼ自由自在にできるという、あらゆる選択肢を手にすることができる。

ヘッドの全てのパーツを一つにまとめ保持するためには、それなりの複雑な構造と、目をつぶらざるをえない“重量”が必要になるが、本来であればヘッドの中央部分にそういった“サポート構造”がない方が良いというわけだ。

この「360°カーボンシャーシ」の注目すべき点は、チタンより「44％軽い」ということ。

さらに、AI主導で微調整された「パラダイム」ドライバーのフェース部品同志の繋がり。今回は、プレーヤータイプに合わせて打ち出し条件を最適化できるように、フェースのたわみ具合を刷新、また3モデルにはそれぞれ独自のフェースデザインが採用されている。

これにより、「初速」を犠牲にすることなく、安定した「打ち出し」、安定した「スピン」、そして突き詰めると「バラツキを抑えたショット」を実現するという。

「パラダイム」3モデル

まず、スタンダードの「パラダイム」は、「MAX」と「MAX LS」にあたり、3モデルの中で最も「寛容性」が高いモデルとなっている。

キャロウェイでは、スタンダードの「パラダイム」が最も幅広い層にマッチすると考えており、だからこそ15gの『APW（アジャスタブル・ペリメーター・ウエイト）』が搭載されている。

ここでゴルファーが理解すべきは、「ウエイト」の目的は弾道を「変える」ことでは無く「調整」であるということ。つまり、「ウエイト」には、それを交換したとてドライバーの性能を劇的に変えるほどのインパクトはないということだ。

次に、「パラダイムX」。こちらは、ターゲットによっては「ローグMAX」か「ローグドロー」の代わりになるモデルだ。

モデルの構成を見ると「パラダイムX」は3モデルの中で一番ヘッドサイズが大きくなっている他、ドローバイアスが強くなっており、それぞれのロフトで打ち出しも高くなっている。

他の2モデルとは異なり、この「パラダイムX」には『可変式ウエイト』がなく、はっきり伝えておくと、「パラダイムX」は「ある種の寛容性」（＝安定して打ち出しが高くスライスしない）を必要とするゴルファーに向けてデザインされているものの、「MOI（寛容性）」においてはスタンダードモデルほど高くないと言える。

そして最後に、「パラダイム◆◆◆（トリプルダイヤモンド）」ドライバー。

「トリプルダイヤモンド」は、この3モデルの中で一番コンパクトであり、他2モデルには度合いは違えどドローバイアスがかかっているが、ドローバイアスがなくニュートラルな弾道を実現するようにデザインされている。

また、過去の「トリプルダイヤモンド」は低スピンで、“ツアー限定”を表していたが、今回はそうではない。

このモデルは、シリーズの中で一番の低スピンを実現するが、キャロウェイによると、PGAツアーで使用される予定のものとほぼ同じとのこと。

ではここで、キャロウェイの契約プロがテストで実感した改良点を簡単に紹介する。

・「ジョン・ラーム」が1.79m/sの初速アップに成功し合計6ヤード飛距離アップ

・「ザンダー・シャウフェレ」は、1.79m/sの初速アップと4ヤード飛距離アップ

・「ローズ・ジャン」は、1.34m/sのボール初速アップと7ヤード飛距離アップ

このボール初速の数値は、キャロウェイのメインテーマが「一貫性」と「バラツキ」を抑えるという事実だけなら不思議なことだが、これに加えて初速アップもするというなら、それはそれで悪くないだろう。

このテストをした時点で、ツアーでの「パラダイム」のパフォーマンスを評価するのは時期尚早だと思っていたが、つい先日（4/6〜4/9）行われた2023年「マスターズ」において、見事ジョン・ラームがマスターズ制覇した。

その時のジョン・ラームのクラブセッティングがこちら。

・ドライバー：キャロウェイ パラダイム トリプルダイヤモンド（10.5度）

・シャフト：アルディラ ツアーグリーンATX 75（硬さTX）

・フェアウェイウッド：キャロウェイ パラダイム トリプルダイヤモンド T (3番16度、5番18度)

・アイアン：キャロウェイ APEX TCB（4番～PW）

・ウェッジ：キャロウェイ JAWS RAW（52、56、60度）

・パター：オデッセイ ホワイト・ホット OG ROSSIE S

・ボール：キャロウェイ クロムソフトX

言うまでもなく、この優勝はキャロウェイとっては非常に大きい。

では、我々の製品テストにおいて、各モデルがどうだったか？2021年モデルから比較し、それぞれ見てみよう！

各モデルのデータ

2021年「エピック」シリーズのデータ

2022年「ローグST」シリーズのデータ

2023年「パラダイム」シリーズデータ

※MYGOLFSPYでは、「ストロークス・ゲインド」を商品そのものの実力としている。

各モデルの「ストロークス・ゲインド」のデータは下記よりチェックできる。

各『MOST WANTEDデータ』はこちら

・2021年『MOST WANTEDデータ』

・2022年『MOST WANTEDデータ』

・2023年『MOST WANTEDデータ』

「初速」を重視していた「エピックシリーズ」、そしてさらに「初速」アップを追求した「ローグST」。だが、「ローグST」にはそこにトップクラスの「正確性」が加わっている。

そして「パラダイム」では、パフォーマンスの注目点を“バラツキを抑えて飛距離を伸ばすこと”に置いている。つまりキャロウェイは、初速を落とすことなく「正確性」と「一貫性」を向上させようと考えているわけだ。そして、それは「360°カーボンケージ」によって可能になった「MOI（寛容性）」の向上によってもたらされている。

確かに「パラダイム」のこのデータを見ると、「初速」を犠牲にすることなく、安定した「打ち出し」、安定した「スピン」を実現しているように思う。

では、次にテーラーメイド「ステルス2」とキャロウェイ「パラダイム」のデータ比較をしてみよう！

テーラーメイド「ステルス2」とキャロウェイ「パラダイム」のデータ比較

テーラーメイド「ステルス2」ドライバー

キャロウェイ「パラダイム」ドライバー

そして、この2モデルの「飛距離」、「寛容性」、「正確性」はそれぞれ何位だったのか？（下記が2023年製品テスト30モデルを比較した順位。）

テーラーメイド「ステルス2」ドライバー

キャロウェイ「パラダイム」ドライバー

こうして見ると、やはりテーラーメイドの方が全体的パフォーマンスに優れていることがわかる。

キャロウェイでは、スタンダードの「パラダイム」が最も幅広い層にマッチすると考えているが、このパフォーマンスではゴルファーは納得がいかないだろう。

しかしながら、「パラダイムX」の対象である、「安定して打ち出しが高くスライスしない」ドライバーを必要とするゴルファーには「パラダイムX」を1つの選択肢として加えるに十分価値あるモデルと言える。

「寛容性」はスタンダードの「パラダイム」より高くないと思われたが、結果「飛距離」のみを重視するゴルファーでなければ、パラダイムシリーズの中で「パラダイムＸ」が最も高い「寛容性」と「正確性」、この2つを得ることができる。

しかし、ドライバーの価格の高騰、割引率からして、新作ではなくとも良いと考えているゴルファーもいるだろう。

そこで、参考までにキャロウェイ「ローグST」の「飛距離」、「寛容性」、「正確性」、「ストロークス・ゲインド」の38モデル中の順位がこちら。

キャロウェイ「ローグST」ドライバー

「ローグST」の各モデルを詳しく知りたいという方はこちらをチェック。

また「ローグST」各モデルの中古価格はこちらを参考に金額を見てみると良いだろう。

「ローグST」ドライバーの中古価格サイト

・「ローグST」ドライバー中古価格

今回の結果から、「パラダイム」ではなく「ステルス2」を検討したいという方は、『新旧打ち比べ！テーラーメイド「ステルス」と「ステルス2」のデータを比較し徹底検証！』を参考にしていただければ、あなたに合ったモデルが見つかるだろう。

年々ドライバーの価格が高騰している。「新品」であれ「中古品」であれ予算と自分のプレースタイルに合ったクラブが見つかることを願っている。