クリーブランド「RTX 6 ジップコア」ウェッジ ‐ 概要
・「RTX」第6世代となる本モデルは前作に引き続き『ZIPCORE(ジップコア)』テクノロジーを搭載
・進化したハイドラジップフェースによりウェット時(濡れた状況)のスピン性能が向上
・サンドウエッジに新たに加わった「LOW+グラインド」でバンカーショットも安心
・1本169.99ドル(約22,000円)。1月20日発売
クリーブランドの新作「RTX 6 ジップコア」ウェッジについて言うならば、“ZIP”満載モデルということだろうか。
“ZIP”満載!と言っても正確には3つだ。
本作はクリーブランドを代表する「RTX」ウェッジシリーズの第6弾で、クリーブランド独自の『ZIPCORE(ジップコア)』テクノロジーを採用した第2世代となる。
さらに、進化した『ULTIZIP (アルティジップ)グルーブ(溝)』と新たに『HydraZip(ハイドラジップ)』なるものが搭載された。ハイドラジップは名前から想像できる機能を有しているに違いないが詳しくは後述する。
前作は単に「RTX ジップコア」という名で2020年の夏にリリースされた。発売周期が2年ということから、シリーズの愛用者にとっては「出るのがちょっと遅いんじゃないの」と文句のひとつも言いたくなるだろうが、なにしろコロナ騒動があったわけなので、そこは致し方がない。
とはいえ、クリーブランドはウェッジをリリースするごとに興味がそそられるテクノロジーを必ず備えており、2020年のモデルもクリーブランドにとって大きな飛躍となった。
さて、今回の新作はその勢いを維持できるだろうか?そして『ハイドラジップ』はその名の通りの働きをするのだろうか?確かめるためには、色々と“UNZIP(解凍)”しなくちゃならないな。ということで早速ジッパーを開けてみよう。
クリーブランド「RTX 6 ZIPCORE」ウェッジ:ZIPの禅
ところで、英語の「Zip」という単語は用途がとても広い言葉だ。 チャックやファスナーを「締める」という意味もあるし、「勢いよく進む」のような意味もある。名詞の場合は「ビュッ」というような飛ぶ弾丸などを表すこともある。 ファイルを圧縮するのも「Zip」だし、郵便番号も「Zip」だよね。
今回のクリーブランド新作ウェッジは『ジップコア』『アルティジップ』『ハイドラジップ』の三段構えとなっている。これからそのすべてを解き明かすが、製品が完成して広告宣伝的に気の利いたテクノロジーっぽい名前を思いついちゃったとはいえ、 “スピン”こそがウェッジの本質なのだ。
「ウェッジ製品の全てにそれぞれ異なるイチオシのテクノロジーがある」と、クリーブランドのツアー工学技術マネージャーのパトリック・リップ氏。「それが『ジップコア』であろうと『ハイドラジップ』であろうと、『Feel Balancing(フィールバランス)』なんていうのもあったけど、結局のところ“スピン”こそが、イチオシのテクノロジーなんだ」。
「スピンは我々にとって永遠の研究対象だからね」。
ではそろそろ興味深い進化を遂げた『アルティジップ』と大幅に改善された『ジップコア』、新導入の『ハイドラジップ』が搭載されたクリーブランドの新作「RTX 6 ジップコア」ウェッジについて探っていくとしよう。
名前に使われていることだし、『ジップコア』から始めよう。
寛容性と打感
2020年に導入された『ジップコア』は、各ウェッジのネック下部からヒールに配された独自の (特許技術の)“ 低密度コア”のこと。余剰重量を作り出し再配分することで、「フェースセンターに近い」重心位置を実現した。
「RTX」の過去の世代では、クリーブランドはネックを「細く短く」することで同じことを達成しようと試みた。その結果、重心位置はフェースセンターに近づいたが、トウヒール方向と上下方向の両方で慣性モーメントが減少することになった。
「『ジップコア』を追加することで、ネックを「太く長く」し、ヘッド形状を維持しながらも重心位置を実打点であるフェースセンターへ近づけることができた」とリップ氏。「ネックを太く長くしたことで、重心位置から重量を削ることとなり、慣性モーメントの増大が可能になった。つまり、スイートスポットの位置と慣性モーメントの増加との関連性を断つことができたんだ」。
今回の新世代で、クリーブランドはジップコアの素材の量をほぼ2倍にし、ロフト角ごとに異なる形状のジップコア形状を採用した。
「我々はあらゆるネック長を検討し、スイートスポットをセンターに保ちつつ、どのモデルでも適切な寛容性と慣性モーメントを得ることができた」とリップ氏は語る。
言い換えれば、クリーブランドは『ジップコア』のおかげで、実際に外周を重くすることなく、外周に重量を配分したウェッジと同じ性能を生み出すことが可能になったということだ。
「『ジップコア』を搭載したCBXウェッジでは、大きなサイズそのものが慣性モーメントを増大させることになる」とリップ氏。「寛容性もさらに高まる。ならばツアーサイズのウェッジではどうなのかというと、我々は上級者が求める外観と打感を損ねないようにしながら、可能な限り寛容性をもたらすべく努力している」。
『ハイドラジップ』:ウェット時にも滑らない
特にロフト角が大きいウェッジほど、濡れた状況化で不安定になる。インパクトの衝撃が強いほど摩擦が失われ、ボールはフェース面で滑りやすくなる。その結果、打ち出し角は上がりスピン量は下がる。相当下がる場合もある。
但し、PINGの場合はスピン量が上がる。これは本当だ。
MyGolfSpyの過去2回のウェッジランキングで、クリーブランドのラインナップは、総合およびウェット性能部門の両方で非常に高いスコアを記録している。
2021年には、初代『RTXジップコア』が総合5位、スピン部門でも5位にランクインした。サテンクローム仕様がウェット性能部門で2位、ノーメッキは4位だった。
残念ながら昨年は後継となる2年目の製品をテストできなかったため、「OG RTXジップコア」は含まれていない。しかし、中級者向けの「CBX ジップコア」は、ウェット性能部門で4位となった。
しかし、PINGの「Glide(グライド)」は実際ウェット時にスピン量が増すわけで、他社ではこれに負けじとエンジニア魂に火がつくことになる。
というわけで『ハイドラジップ』の登場だ。
「フェース全体の処理をどうするかということだよね」とリップ氏。「ドライスピン、ウェットスピン、ラフスピンでは、それぞれ対処法は大きく異なる。『ハイドラジップ』はウェットスピンで効果を発揮する。ボールとフェースの間に水分が入り込んだときに摩擦を増やすための方策だ」。
フェースブラストによる摩擦
『ハイドラジップ』は、クリーブランドではお馴染みの『Rotex』ミーリングに独自のレーザーミーリングパターン、フェースブラストを組み合わせたものだ。すべては水を流すという名のもとに。
「フェースブラストでは、高圧ガンで硬度と粒径の異なる素材をウェッジのフェースに噴射する」とリップ氏。「より多くの表面積と隙間ができるため、水分を逃がすことができる。金属とボールカバーの接触がより多く得られるということだ」。
フェースブラストとレーザーでミーリングされた“ミニグルーブ(溝)”にパターンは、ウェッジのロフト角ごとに異なっている。
ピッチングウェッジとギャップウェッジ、つまり46度と48度のウェッジは、控えめなフェースブラストと、長いが本数の少ないミニグルーブが特徴。50度と52度ではブラストとミーリングの両方が増える。最もスピンが求められる54度から60度のウェッジには最も密度が高いパターンが刻まれている。
「最大のスピン量にしたい」とリップ氏。「但し、ウェットコンディションでもドライコンディションでも一貫したスピン量が得られることを重視している。そうすれば、ウェットでもドライでも、キャリーの距離と打ち出し角の条件を同じにできるからだ」。
クリーブランド独自のウェットコンディションテストにおいて、新しい「RTX 6 ZIPCORE (58度)」は2020年モデルよりも43%多くのスピンを保持したという。我々の2023年ランキング用にテストするのが待ちきれないというものだ。
『アルティジップ』をきっちり適用
3つめの“ZIP”は、進化し続けるクリーブランドのグルーブ(溝)テクノロジー『アルティジップ』。クリーブランドはこの新しいバージョンを、これまでで最もシャープ、最もタイトで、最も深い溝を備えていると声高に言っている。
これについてはUSGAにも意見があるはずだが、果たしてそんなことが可能なのだろうか?
「過去モデルも含めて常にUSGAが定めた限界に近づけようとしてきた」とリップ氏。「製造技術の向上や、溝を削る道具の寿命を把握し適切に取り替えるようにしたことも役に立っている」。
溝のシャープさに関して、USGAは“エッジ偏差”と呼ばれるものを測定する。これは、壁の角度と溝の半径を組み合わせたものだ。
「USGA規則では、深さと幅の組み合わせは無限にある」とリップ氏。「彼らはそれぞれ特定の特性を制限してくるが、こちらはこちらであらゆる角度の深さやピッチ、溝の間隔の組み合わせを試すことになる。さまざまなロフト角、ショットの種類、ヘッドスピードに対して、これらすべての組み合わせを研究している。『アルティジップ』ではこれらの最適な組み合わせを見つけたが、一貫してその溝の設計をUSGAの限界ギリギリに保つため、製造プロセスに引き続き焦点を当てている」。
クリーブランド「RTX 6ジップコア」:グラインド&バウンス
ソールグラインドの選択肢の多さや、装飾的な外観を求めるなら、新しい「RTX 6ジップコア」は不向きだ。しかし、シンプルかつ必要最低限の多用途性があれば十分というなら、任せて欲しいとクリーブランドは言う。
「ユーザーのため可能な限りシンプルにしようとしている」とリップ氏。「店に足を踏み入れるゴルファーの多くは選択肢が無数にあり、なにが自分にとって最適なのかを理解しようとするだけでも大変だろう。クリーブランドは、ゴルファーが最善の決定を下せるようラインナップしている」。
新作「RTX 6ジップコア」は4種のソールグラインドから選べる。「LOW」は58度と60度のロブウェッジ用C字型グラインド。バウンス角は6度、あまりディボットを取らない入射角がシャロー(鈍角)なゴルファー向け。
「MID」グラインドはバウンス角10度の伝統的なV字型ソールで、ロフト角を問わず全モデルで選択可能。また「FULL」グラインドは54度〜60度のモデル向けで、最もハイバウンスなソール(12度)となっている。ラフやバンカー、より軟らかい地面、スティープ(鋭角)なスイングタイプ向けに設計されている。
新たに追加された「LOW+」は54度と56度のみで選択可能だ。
「これは『LOW』バウンスグラインドから派生したもので、リーディングエッジ側のバウンス角を増やしている」とリップ氏。「バンカーショットを想定して、もう少しバウンスが欲しいというプレーヤー向けのモデルだ」。
また、クリーブランドは再び小売店とECで「クロスオーバーチャート」を提供している。
今現在使っているウェッジから乗り換える際に、それがボーケイやキャロウェイ、テーラーメイド、PING、ミズノの製品であろうと、またクリーブランドの初代RTX以降のどのウェッジであろうと、「RTX 6ジップコア」から最適なタイプを選べるようにするものだ。
クリーブランド「RTX 6ジップコア」ウェッジ:スペック、価格、選択肢
クリーブランド「RTX 6ジップコア」ウェッジシリーズは、ロフト角は2度刻みで46度から60度まで、グラインドとバウンス角は前述したオプションから選択可能。すべてのラインナップで左利き用と右利き用が用意されている。
クリーブランドは最初にツアーサテンを発売する。ブラックサテンとツアーラック(クリーブランドのノーメッキ仕上げ)は春に発売予定。
純正シャフトはトゥルーテンパー『ダイナミックゴールド スピナーツアーイシュー』。クリーブランドによれば、特徴はDG S200に似ているものの、ウェッジ専用設計となっている。
純正グリップはラムキン『クロスライン360』。
また、ウェッジをカスタムしたいなら、クリーブランドは引き続き、カスタム刻印&カスタムカラープログラムを提供している。これは業界でも最高にお得感のあるオファーのひとつだ。
15ドル(約2,000円)で3面(ロゴやロフト表示部)に20色から選んだカラーでペイントでき、さらに15ドル(約2,000円)で最大5文字までオウンネーム刻印可能。
新しいクリーブランド「RTX 6 ZIPCORE」ウェッジは、小売価格169.99ドル(約22,000円)、1月20日より発売開始。
Leave a Comment