・コブラ「AEROJET(エアロジェット)」ドライバーから3つのモデルが登場
・エアロダイナミクス(空力)効果により初速アップを実現
・「LS」は低スピン。「MAX」は最大の「やさしさ」が特徴
・価格は549ドル(約72,000円)で、2月10日に発売
さて、この「エアロジェット」という名前の由来は何だろうか?あまり話題にしたくないテーラーメイドの2つのドライバーの掛け合わせだと思う人がいるかもしれない。
また、「エアロジェット」と聞いて格安航空会社を思い浮かべる人もいるだろう。
冗談はさておき、「エアロジェット」という製品名はこのドライバーの目玉機能、「エアロダイナミクス(空力特性)」を表しており、初速向上(ジェットは非常に速い)の意味合いを込めている。
ブライソン・デシャンボーやカイル・バークシャーがコブラの契約プロであるということからも、「世界で最も飛ぶ(longest in the world)」というキャッチフレーズに期待が膨らむ。
世界トップクラスのロングドライブ競技者の彼らは常にさらなる初速を求めていて、そして偶然にも『エアロダイナミクス』がその解決策のひとつになるとコブラが発見したのだ。
「エアロジェット」に搭載されているテクノロジーは、既存の初速重視のドライバーから少しずつ受け継がれているのも事実。
では、それがアベレージルファーにとって何を意味するのか? 紐解いていこう。
レベルアップした「エアロダイナミクス(空力特性)」
微妙なバルジ&ロールはさておき、ドライバーのフェースはある程度フラットである必要がある。
一般的にドライバーのような大きく平らな表面的な形状は、「エアロダイナミクス効果」を期待しにくいのだが「エアロジェット」ドライバーのヘッド形状、特に「LS」の形状は“飛行機の翼”の機能に似ているという。勿論、ゴルフに適応できる範囲での話だが。
コブラが開発した高度なエアロダイナミクスの技術は、その形状からもわかるように特に低スピンモデルの「エアロジェットLS」が最も空力に対応したモデルとなっており、高ヘッドスピードのゴルファーにより効果が発揮される。
エアロダイナミクス(空力特性)を採用し続けてきた同社だが、今回はフェースがクラウンとソールに接するリーディングエッジ部分がかなり滑らかになっている。実際、大きく丸みのあるカーブに気がつくはずだ。
「LS」モデルのクラウンはより丸みを帯びており、高さの頂点が前作よりヘッドの後方に位置するように設計されている。
ドライバーのスカート(ソール)部分でも、後部 (テール) 部分が高くなっており、空気抵抗をさらに減らす設計になっている。
プログレッシブエアロ
同社は「エアロジェット」ラインナップ全体で、エアロダイナミクスに『プログレッシブ(漸進的)アプローチ』と呼ぶものを採用している。「LS」モデル は、3モデルの中で最も空力特性に優れている。繰り返しになるが、「LS」はその効果を十分に享受できるヘッドスピードの速いゴルファー向けだ。
エアロダイナミクスは増加率(ヘッドスピード× x%) で示されるため、エアロダイナミクス効果を最大に得られるのは言うまでもなくヘッドスピードの速いゴルファーとなる。
ラインナップの中でも真ん中に位置する「エアロジェット」のスタンダードモデルは、昨シーズンの「LTDx LS」と同等の空力特性を提供するという。「LTDx LS」のエアロダイナミクス設計は最も優れていると言われていたが、スタンダードモデルの形状が空力特性に欠けるというわけではない。
とは言っても、典型的なアベレージプレーヤーに最もメリットもたらす、高いフェースに大きなヘッド形状(よりやさしい) を優先して、エアロダイナミクス効率を少し犠牲にしているのは事実だ。
最後に、最も「寛容性」のある「エアロジェットMAX」には、昨シーズンの「LTDx」と同等のエアロダイナミクス効果がある。
「MAX」のターゲットは、ヘッドスピードが遅いゴルファー向けと考えられる。そのため、エアロダイナミクスによるメリットを全く享受しない可能性があり、得られない「初速」を得るために、わざわざ一番欲しい「寛容性」を犠牲にする必要はないと考えるのが普通だろう。
PWR-BRIDGE(パワーブリッジ)
今回新たに登場するのが、『PWR-BRIDGE(パワーブリッジ)』という従来の初速を向上させるテクノロジー『PWR-COR(パワーコア)』の進化版。基本的にはクラブの“底”に固定された大きなスチールの塊のことをいう。
『パワーコア』の考えは、可能な限り多くの重量を低く前方に配置することだった。その考えは 『パワーブリッジ』でも同じだが、この最新技術にはいくつか異なる点がある。
まず、『パワーブリッジ』の重量をクラブの内部底面ではなく、フェース寄りの低い位置に配置。これはヒールからトウ側にかけての“吊り下げ式”となっており、フェースとソールからほぼ浮いた状態で配置されている。
設置方法の変更により、『パワーブリッジ』は『パワーコア』よりも前方(フェース寄り)にくるようになった。これにより、重心位置が遠くなり、RADSPEEDで説明した「重量分布(回転半径)」の恩恵をより多く受けることができる。
どちらも、「慣性モーメント(MOI)」を押し上げる「ペリメーターウェイト(周囲にウェイトを配置)」としても機能する。
また、『パワーブリッジ』は『パワーコア』のようなフェースの真後ろに固定するためのネジがないため、フェースのしなりを制限することなく、より速いボール初速を実現することが可能となる。
PWRSHELL(パワーシェル)H.O.T.フェース
「エアロジェット」ドライバーでは、同社のアイアンに搭載されている『PWRSHELL(パワーシェル)』テクノロジーを初めてドライバーのフェースに活用している。ちなみに『パワーシェル』は、簡単に言うと『鍛造Lカップフェース』のこと。ポイントは、フェースの一部が下を包み込み、ソールに直接つながっていることだ。
『パワーブリッジ』により可能になったこの設計は、フェース下部で約15%反発性能が増すことがわかっている。つまり、フェースの中心を外し、下部に当たったとしても初速が落ちないということ。
『パワーシェル』は同社テクノロジーの『H.O.T.フェース』と組み合わせている。これは AIを活用したフェース設計で、戦略的に厚くする部分と薄くする部分を組み合わせて、フェース全体のボール初速を最大化させるもの。
「インフィニティーフェース」はなし
『パワーブリッジ』と『パワーシェル』の導入により、従来のCNCミルド『インフィニティーフェース』はなくなった。現在の技術では、『パワーシェル』 のフランジ設計を削り出すことができないため、同社は選択を迫られたというわけだ。
そこで最終的に、ミーリング(削り出し)加工がもたらす「一貫性」よりも、『パワーシェル』のパフォーマンス上のメリットを優先したのだろう。
とはいえ、ヘッドが設計スペックどおりになるように、ヘッドのバルジとロール、およびフェースの厚さをまだ綿密に調査している最中だ。
※バルジ(フェースの水平方向の湾曲)、ロール(垂直方向の湾曲)
マルチマテリアル(複数素材)構造
カーボンとチタンの混合素材については業界では一般的なため、詳細は割愛する。重要なのは、クラウンの厚さを30%削減したことで、ヘッドからサポートリブの一部を取り除くことができたことだろう。
それにより軽量化が実現し、ヒールとトウにウェイトパッドを配置して「MOI」を向上させることに成功。まだ触れていないが、「回転半径(Radius of Gyration)」も重要なポイントとなる。
3つのモデル
コブラではお馴染みだが、「エアロジェット」でも3つのモデルが登場する。
「エアロジェット LS」
コブラドライバーに馴染みがない人でも、「LS」モデルの特性を見ればそのほとんどが理解できる。
「スピン」を減らしたい場合は、「エアロジェット LS」が最適。小さなドライバーヘッドもさる事ながら、体積は457cc(他の2モデルは460cc)と容量が少ない。
エアロダイナミクス形状に留まらず、ややシャロー(厚みが薄い)なフェースと、よりコンパクトな 形状が特徴となっている。
より効果的な『エアロダイナミクス』に改善した結果、「LS」の重心はわずかに高くなったのだが、実際の打ち出し角やスピン量への影響はわずか。
「ペリメーターウェイト」を施すことで「LTDx LS」に比べて「慣性モーメント(MOI)」が若干増すが、『パワーブリッジ』効果による前方重心により、ボール初速が向上する。
「LS」の場合、 ヒール側に重い (12グラム) ウェイトがあっても、少しフェードバイアスとなるが、ウェイトを3グラムに交換すると、フェードバイアスがさらに大きくなる。
それが合わない場合は、同社の「MyFly ホーゼルアダプター」を利用しフェードバイアスを軽減できる。ニュートラル/ストック設定が一番フラット。ロフト角を調節するとヘッドがよりアップライトになる。実際のアップライト設定では、ヘッドはニュートラルよりも約 2.5 度アップライトになる。
「エアロジェットLS」のロフト角は、9度と10.5度がラインナップ。
コブラ「エアロジェット」
昨年、コブラはLTDx を「ユニコーンドライバー」と表現した。同社によれば、ボール初速を犠牲にすることなく高いレベルの「寛容性(やさしさ)」を提供できるように設計されたスタンダードの「エアロジェット」も同様だという。
基本的には標準的な設計を用いているのだが、誰もが合うわけではない(「LS」と「MAX」がある理由はそのため)。
標準モデルは比較的ニュートラルだが、わずかにドローバイアスといった方が近い。
「エアロジェット」のロフト角は、9度、10.5度、12度がラインナップ。
「エアロジェット MAX」
多くののゴルファーが望む性能をバランス良く提供するのが「スタンダードモデル」だとすると、「MAX」は最も多様性に富んだモデル。特定のニーズに応じて、「寛容性」やショット形状の補正 (ドローバイアス) が最大化できるように設計されている。
後方に重いウェイトが搭載されており、「MAX」は23年ドライバー市場で“最もやさしいドライバー”のひとつに仕上げられている。
ピン「G430 MAX」やPXG 「GEN5 XF」のような限界に挑んだクラブではないが、「やさしさ」という面では方向性を同じくするモデルで、高い「MOI(慣性モーメント)」と他の性能とのバランスをとろうとするコブラの哲学を反映している。
ヒール側にウェイトを配置しているため、「MAX」はスライス防止に向く。「LTDx. MAX」 はにドロースペースで素晴らしいドライバーだったが、「エアロジェットMAX」はさらにショットを8ヤード補正するといい、スライス対策に一役買うはずだ。
「エアロジェットMAX」のロフト角は、9 度、10.5 度、12度がラインナップ。
「エアロジェット」のカラー
コブラと言えば何種類もの配色が特徴だが、今回のメンズに使用されているのは白/青/赤のみ。サテンブラックのボディーにアクセントカラーといった組み合わせだが、クラウンはローカーボンファイバーの光沢仕上げになっている。
クラウンのマットな風合いと若干の光沢により、色味を抑えた感じもギラギラ感もない。文句なしのルックスだ。
レディースモデル
「エアロジェットMAX」 は、レディースモデル(10.5度と12度)で発売される。シルバーに涼しげなブルーといった配色と短いレングスを除けば、ヘッドは「メンズ」バージョンと同じ。
「エアロジェット」ジュニアモデル
昨今見られるようにコブラからもジュニアバージョンが登場するようだ。
ジュニアモデルには、39、41、または 43インチのシャフトが用意される。子供は成長していくものなので、サービスの一環として購入者は無料でシャフトを1つアップグレードすることができる。43インチの場合、レディース、またはシニアフレックスのフルレングスモデルにアップグレードできる。
「エアロジェット」オリジナルシャフト
「エアロジェット」のオリジナルシャフトには以下のオプションが揃う。
・UST「ヘリウム」(高弾道)
・三菱「Kai'Li Blue(カイリブルー)」(お得意の中弾道シャフト)
・三菱「Kai'Li White(カイリホワイト)」(低〜中弾道)
・HZRDUS 「ブラック」(低弾道)
キャロウェイの「パラダイム」オリジナルシャフト同様に、壮大なセレクションではないが丁度良いオプションが揃う。
価格と発売予定
コブラ「エアロジェット」ドライバーの価格は549ドル(約70,000円)で、2月2日より販売予定。
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