コブラ「RADSPEED」アイアンの主な注目点
・コブラの「RADSPEED」アイアンは、昨年デビューの「SPEEDZONE」アイアンよりもスッキリしていてスリムな見た目。
・「3Dプリントメダリオン」により、中級者向けアイアン部門での「最低重心」をキープ。
・ワンレングスバージョンは、打ち出しを改善するため「さらに重心が低く、深い」。
・コンボセットとブラックPVD仕上げはオプションで選択可。
どんなゴルフライターでも、今日はこのコブラ「RADSPEED」アイアンの発売記事で「RAD」に触れまくるだろう。断っておくが、我々もそうなるはずだ。
もし、コブラ「RADSPEED」ドライバーに関するMyGolfSpyのトニー・コビーの記事を読んだのなら、「RAD」が「ラディアルウエイト(回転半径)」であることはご存知のはず。
もし読んでいないなら、「ラディアルウエイト」こそコブラ「RADSPEED」アイアンを激速にした要因なので、今すぐ読んで欲しい。
※訳者注:ここでいう「回転半径」とは、実際に性能の向上に寄与するウェイト配置による「シャフト軸から重心までの最大距離」と推定される。つまり、重心からかなりの量のウェイトを“押しのける”ことで、「RADSPEED」各モデル間で明確な「パフォーマンスの違い」を生み出すことを目的としている、という意味。
読み終わるまで、待っているから。
さて、みなさんの足並みが揃ったかな?ところで、コブラでは「F9 SPEEDBACK」と「SPEEDZONE」アイアンの直近の中級者向けアイアン2モデルには問題があったという認識を持っている。
両アイアン、特に「F9」は「Most Wanted」テストで良いパフォーマンスを見せていたが、見た目の評価はイマイチだったからだ。
というわけで、今回の「RADSPEED」アイアンは見た目が洗練されている。しかし、外見は上辺だけのことだが、今回のイメチェンはそれだけに止まらないのだ。
コブラ「RADSPEED」アイアン - スッキリ&スリム
パフォーマンスはさて置き、コブラによれば「F9 SPEEDBACK」と「SPEEDZONE」アイアンに関するフィッターや市場の反応はあまり芳しいものではなかったという。
コブラのR&D VPのトム・オルサヴスキー氏は「この業界では絶対に聞きたくないネガティブな言葉をいくつか耳にした。分厚いとか大きいとか…設計者が耳にしたくない言葉だ」とコメント。
コブラ「RADSPEED」アイアンをカッコ良くするのは簡単なように聞こえる。
しかし、「あっちをイジり、こっちをイジり」は意図しない結果を招いてきており、「F9 SPEEDBACK」と「SPEEDZONE」アイアンは「中級者カテゴリー」の中で「最低重心」になるようにデザインされたが、結果としてソールがボコっとした「厚底デザイン」になってしまっていた。
「実際のところ(前作2モデルは)特定の性能を発揮できるようにデザインされており、その点では素晴らしいギアだった」と語るのはオルサヴスキー氏。「しかし、キャディバッグの中や、店頭に並んだ時にスリムに見えるようにしたかった」。
「超低重心」は「中級者向けアイアン」のデザインにおいて至高の目標だ。
特にスイングスピードが遅いプレーヤーにとっては、重心が低ければ低いほど、ボールを上げることが簡単になる。
そして打ち出しが高くなればなるほど、落下角も鋭角になる。これは低スピンの「中級者向けアイアン」にとっては大切なこと。特に8番アイアンよりも大きな番手でグリーンを捉えたいゴルファーにとってはそうだろう。
では、市場にある「中級者向けアイアン」において最低重心をキープしたままで、その最低重心をもたらした“要素”を捨て去るにはどうすれば良いのだろうか?
丁寧に順を追って説明する。
ステップ1:「ラディアルウェイティング」
低重心をキープさせる「ステップ1」は、実際に重心を“真ん中”にすることにある。極限のヒール・トゥウェイトである「ラディアルウェイトシステム」は、ここから始まるからだ。
「可能な限り、ウェイトが“遠く”なるように設定している」とオルサヴスキー氏。「重心に対して戦略的にウェイトを配置した。『断面回転半径』を大きくするため、ウェイトをできるだけ“離す”ようにしている」。
というわけで、コブラ「RADSPEED」アイアンには、ヒールに3gとトゥに10gのスクリュー型ウェイトを採用している。
オルサヴスキー氏によれば「ウェイトを分散することで安定性と寛容性を高次元で実現できる」とのこと。「こうすることで、重心を打点の後ろに配置できるし安定性も増す」という。
また、10gのウェイトは標準スペックだが、異なるスクリュー型ウェイトにより±6gの調整も可能だ。しかし、これらのウェイトはユーザーが調整できるわけではない。
フィッターやカスタム業者が、個々のゴルファー向けにパフォーマンスを微調整することができるが、重心位置に大きな影響を及ぼすほどでもないようだ。
「我々のアイアン販売は成長しているし、カスタムがその牽引役となっている」とオルサヴスキー氏。「フィッティングは業界の成長分野となっている。フィッティングをするなら、徹底的にやって欲しい」。
ステップ2:ソールの出っ張りを取る
コブラの「SPEEDBACK」の形状は、「低重心」にすることが全てだった。しかしお伝えしたように、あれは少々ナンセンスだったかも知れない。
今回のコブラ「RADSPEED」アイアンは、(中級者向けアイアンとしては)全体的に薄くなった形状と、幸いにも「削ぎ落とされたソール」が特徴となっている。
オルサヴスキー氏は「今回のモデルではソール形状を改良し後部をスリムにした」とコメント。「中級者向けアイアンにはよくあるソールになっている。若干のソール幅と若干のバウンスは必要であり、さらに扱いやすさも備わっている」。
ソールの出っ張りがなくなったことで、新しいソール形状はよりスムースでトラディショナルな見た目になった。
実際、全体的なヘッド形状は薄く、トレーリングエッジに丸みがありトップラインからソールへの流れも良く、洗練された形状になっている。
しかし、こうした改善には犠牲も伴う。アイアンのヘッド後部とソールからウェイトを削ると重心は高くなり、そもそも最低重心だからこそ得られていたパフォーマンスが損なわれるからだ。
そこでコブラでは、HP社(ヒューレットパッカード社)のおかげで、さらなる低重心を実現した。
ステップ3D:メダリオン革命
「3Dプリントキャビティ・メダリオンシステム」という、「RADSPEED」の重心を「ヘッド低部の下方」に配置する3つ目の最も抜本的なステップこそ一番革新的なことだろう。
「複数素材を採用しているのでシステムと呼んでいる」と語るのはオルサヴスキー氏。「実際にはこれはアイアンの背部に採用している3Dプリントのポリマー素材だ」。
コブラは、実際のクラブ製造に「3Dプリント」を使用した初の、そして現状では唯一のメーカーだ。
コブラが「3Dプリントを活用したクラブ開発」に取り組んでいることを知ったのは昨年(2019年)6月で、11月には「KING SUPERSPORT-35」パターをリリース。
コブラ「RADSPEED」アイアンでは、独自の高強度で軽量の3Dプリント格子構造の組み合わせで、重心をさらに低く設定されている。
オルサヴスキー氏は「“メダリオン”は一般的には、極薄フェースでスピードが出るアイアンの“振動を抑えること”を目的としていると考えるだろう。課題はメダリオンを採用するとウェイトが増えること。3Dプリントは、構造剛性を維持しつつも軽量化を図る上で優れた設計方法といえる」。
「ポリマー素材のメダリオン」は約6gのウェイト抑制を可能にしており、これによる重心は昨年の「SPEEDZONE」よりも深部に配置することが可能になった。またコブラによれば、このメダリオンにより打感も改善されるという。
カーボンファイバー、PWRSHELL、そしてターボイエローと機能満載
コブラでは、ゴルファーだけでなくフィッターやショップスタッフ達が「SPEEDZONE」アイアンのトップラインにある「カーボンファイバー・ストリップ(細長いライン)」を好まなかったことを理解している。
ストリップ自体は軽量化に役立ったが、まぁ見た目は変わっていたというわけだ。
そこで「RADSPEED」では、心地よく感じてもらうために「黒いストリップ」を採用。黒だと結局のところスリムに見えるというのが理由だ。
「(SPEEDZONEを含む)これらのアイアンの背後にあるアイデアの主旨は、軽量化の方法論にある」とオルサヴスキー氏。「(このストリップは)2gの軽量化に過ぎないが、見た目が良い。トップラインに馴染ませることで、『上級者向け』アイアンっぽい見た目に近づけるようにした」。
間違いなく、見る人次第だとは思うけれども。
またコブラでは、「PWRSHELL」と呼ばれる「変厚カップフェース」を改良。17-4ステンレススチールによる今回のバージョンは厚さが2mm以下で、下部にある「インターナル・スピードチャンネル」はフェースに柔軟性をもたらすという。
ドライバー以外では、「中級者向けアイアン」が最も多くのテクノロジーが搭載されているものだ。
そして、そうしたテクノロジーはキャビティ部分にあるため、その見栄えをよくする上であらゆる試みが施されており、「RADSPEED」のメダリオンの3Dプリント技術を際立たせるカラーリングは「ターボイエロー」と名付けられている。
さらに今回のアイアンは、標準のクローム仕上げに加え、「シルバーソール」という独特のデザインを取り入れた「ブラックPVD仕上げ」もラインナップ。
見た目が変わっていることは確かだが、ブラック仕上げが好みでソールの傷が嫌という人なら、これも選択肢となるだろう。
これについてオルサヴスキー氏は、「採用しているDBM(ダイヤモンドブラックメタル)よりもPVD仕上げは傷になりやすいことは理解しているが、これまでもPVDの代わりになるものは探してきた。
ゴルファーは他とは違うものを欲しがるし、この仕上げやアイアンが小さく見えるこのデザインを絶対に好むはずだ」と語っている。
コブラ「RADSPEED」アイアン – ワンレングス
コブラのワンレングスの売れ行きは予測しやすい。デシャンボーが好調なら、コブラ同様だからだ。
これまでワンレングスアイアンの販売はコブラの販売実績のおおよそ35%を占めていたが、今年は40%に迫っているという。
全米オープン覇者がワンレングスアイアンのポスターに描かれていることが、それを後押ししているのは明確だ。
今年のデシャンボーは、コブラのユーティリティアイアンではなく「SPEEDZONE」のロングアイアンを起用した。
「彼は(ロングアイアンの)性能を気に入ったようだ」というのはオルサヴスキー氏。「ロングアイアンの重心の方が、ユーティリティよりも後ろにある。彼が求めていたのは、非常に高い打ち出しとグリーンに乗せるための方向性。全米オープンにおける彼の戦略はそれがカギだった」。
今回のコブラ「RADSPEED」アイアンのワンレングスバージョンは、シャフトの長さが番手ごとに異なるモデルよりもロングアイアンでさらなる低・深重心を実現。
ブレードとソールはやや厚みがあり、高弾道でソフトにランディングさせることを可能にしている。
「重心を後方に動かすことができれば、ゴルファーが求める高さを出すことができる」とオルサヴスキー氏。「今回はクラブの長さを短くしたことで、やや高さが抑えられていると思う」。
これまでワンレングスアイアンは、コブラが経験値を積むことで、新モデルが出るたびに微調整が行われている。
そして、どの番手も7番アイアンの長さとなっているため、適切な弾道にするためそれぞれのヘッドを変更する必要があり、ミドルアイアンとショートアイアンでは重心が最適化されている一方で、ロングアイアンでは重心は低く、深く設定されているのだ。
また「RADSPEED」アイアンのワンレングスバージョンは通常モデルよりもウィークロフト設定。
ロングアイアンにおいて、短めで軽量、そしてやや柔らかいシャフトを装着することで通常モデルに近い弾道が手に入るという。
スペック、価格、販売時期
「RADSPEED」アイアンの通常モデル7本セット(5番からPW)の純正シャフトはKBS「Tour 90」。
カーボンシャフトモデルは、UST 「Recoil 460 ESX」が純正シャフトで、アーコスがビルトインされたラムキンの「クロスラインコネクト」が標準グリップとして装着されている。
一方、ワンレングスモデルは、KBS「Tour 80」、「90」、「120」の3モデルがスチールシャフトのラインナップ。
カーボンは、UST「Recoil 460」と「480 ESX」だ。グリップは同じくラムキンの「クロスラインコネクト」。
価格は通常モデル、ワンレングスともにスチールシャフトが899ドル、カーボンシャフトは999ドルとなっている。
またお伝えしたように、今回の「RADSPEED」アイアンには100ドルの追加で通常モデル、ワンレングスともにブラックPVD仕上げもある。
このブラックPVD仕上げは、カスタムオーダーでのみオーダー可能だ。
さらに、5番アイアンの代わりに「RADSPEED」ハイブリッドを入れたコンボモデルも、クローム仕上げが1,099ドル、ブラックPVD仕上げが1,199でラインナップしている。
レディースは、コブラの「エルダーベリー(黒紫)・カラー」を採用した通常モデルだけがラインナップ。純正シャフトはUST「Recoil 450 ESX」で、グリップはラムキンの「クロスラインコネクト」が装着されている。
セッティングは、5番からGWまでか、5番アイアンの代わりに「RADSPEED」ハイブリッドを入れたコンボセットの2種類。価格はメンズと同じだ。
全ラインナップとも右利き用、左利き用が用意されている。
コブラ「RADSPEED」アイアンの発売日は1月29日。
「RADSPEED」のドライバー、フェアウェイウッド、ハイブリッドも発売される。
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