ゴルフ業界の真実。進化は永遠に続くが、革命はまれだ。
MyGolfSpyを長く読んでいる人なら分かると思うが、「データ」は私たちの命だ。15年近く行っている『Most Wantedテスト』の目的は“最高性能のクラブ”を見つけ出すことに尽きる。
しかしながら、ランキングで1位にならなかったとしても、そのシーズンの注目商品、技術、企業にフォーカスすることは、MyGolfSpyの本質でもある。購入を決めるのは決してランキングだけではない。
それに決して悪いことでもない。
毎年のこの企画ではギアを少し違う視点から捉え、今後のゴルフ業界を盛り上げてくれると確信したブランドや製品を主観的に選んでいる。このアワードは、スタッフやプレーヤー、テスターのフィードバックがすべて考慮されている。
業界に衝撃を与えた2022年の最も革新的な商品に注目してほしい。大きなブレークスルーがほとんどないこの世界で、創造性、創意工夫、独創性に優れたものだけを選んでいる。
では早速紹介しよう。
今年の最優秀「ゴルフストーリー」:キャロウェイの拡大
「経営の多角化」とよく言われる。「圧倒的シェア」という言葉は言い過ぎかもしれないが、キャロウェイはゴルフ界の未来を独占するべく最善を尽くしている企業だ。
昨年は、「TopGolf(トップゴルフ)」を取得し、屋内ゴルフフランチャイズ「5 Iron Golf(ファイブ・アイアンゴルフ)」に3,000万ドルの投資を行った。加えて、以前には「Travis Mathew(トラビス・マシュー)」や「Ogio(オジオ)」、「Jack Wolfskin(ジャック・ウルフスキン)」の買収もしている。
何であれキャロウェイは全てに手を付けているような感じだ。
売上は?それも上手くいっている。しかし、急速なビジネス展開に本業を超えているのではと思う人もいるだろう(確かキャロウェイの本業はゴルフ用品だったと思うが)。だが、これがキャロウェイの取り組みの狙いだ。
クラブ業界が崩壊したとしても、「Top Golf(トップゴルフ)」だけでも同社はやっていくことができると聞けば納得だ。
ゴルフクラブ開発のテクノロジー:テーラーメイド「カーボンフェース」
「Welcome to the Carbonwood Age(カーボンの時代へようこそ)」は、今年のキャッチフレーズだったがそれにはれっきとした理由がある。
前途の通り、この業界に革命が起こることはまれであり、時の洗礼をうけてみない判断し難いことだが、同社は『カーボンフェーステクノロジー』がドライバーのフェース構造の根本を変えると考えている。
20年と60のカーボンレイヤーを経て、同社は『カーボンフェーステクノロジー』を実現した。それ自体が「革命」である。今回が初めてというわけではないが、競合他社の注目を一身に集めたという意味では“最初”に間違いない。
『カーボンフェーステクノロジー』が時代の先を行くものになるのか、新しい競争の始まりになるのかはまだ分からない。
とにかく、リスクを避ける現状維持型のこの業界では、一流ブランドがまだ証明されていない技術で大きなリスクを冒し、今後チタンフェースドライバーを作ることはないと述べるのは、かなりのこと。
「カーボン」は一時代を築くだろうか?時が教えてくれる。
ドライバー:テーラーメイド「STEALTH(ステルス)」
真のテクノロジーのブレイクスルー、光沢のある赤いフェース、それともストーリー自体が消費者の心を掴んだのか?そんなことはどうでも良い。「ステルス」ドライバーほど、業界内や小売店で話題をさらったゴルフクラブはかつてない。
ボール初速がはやく、『Most Wantedテスト』で素晴らしい性能を見せた「ステルス」が、主流の『カーボンフェーステクノロジー』の第1世代であることは間違いない。今後さらに進化するだろう。
時代は変わり、チタンは時代遅れになるのか?
これも時が教えてくれるだろう。
フェアウェイウッド:該当なし
多くのゴルファーにとって、「フェアウェイウッド」は後回しだ。いずれにせよ、毎年リリースされるフェアウェイウッドのテクノロジーストーリーのほとんどが、ドライバーに便乗していることは間違いない。
毎年「フェアウェイウッド」のカテゴリーでこれだという一品を見つけることは滅多にない。そのため、今回も『エディターズチョイスアワード』は該当なしとした。
ユーティリティー:該当なし
『Most Wantedユーティリティランキング』を発表した後でも、満場一致で選ばれた商品はなかった。DTCブランドやランキングで1位を獲得したSub70など素晴らしいユーティリティーはあったが、“圧倒的”とは言い難い。
これまでを振り返っても、私たちを驚かせるようなユーティリティは存在しなかった。2022年にも当てはまるようだ。
上級者向けアイアン:タイトリスト「T100」
「AP2」の第2世代を思わせる「T100」は、PGAツアーで最も使われるアイアンだ。「T100」を今年の『エディターズチョイス』に選んだ理由はそれだけではない。
ストーリーはとてもシンプル。「T100」のアドレスはブレードのようなルックスだが、キャビティバックのためマッスルバックよりもやさしい。このカテゴリーなら誰もが期待することだが、「T100」の素晴らしさは他社が成功しなかったことを成し遂げた所にある。
ツアープロにまだブレードの愛用者がいるため、すべてのメーカーがブレードを作り続けている。一方で、これらのメーカーがかつてブレード愛用プロをキャビティバックに転向させようと試みたのも真実だ。ほとんどが失敗に終わったのだが。
その点「T100」は注目すべき例外だ。100%成功したわけではないが(タイトリストにはまだブレード使用者がいる)、一部のトッププレーヤーはブレードアイアンを離れ「T100」に定着するようになったのだ。
上級向け距離系アイアン:ミズノ「225」
まさに歴史的瞬間。「221」、「223」、「225」アイアンがこれまでで最高のテクノロジーを駆使したMPモデルになると同社がほのめかした時、期待が高まったのを覚えている。
今シーズンの『Most Wantedテスト』で証明された「225」は、あらゆるカテゴリーで優れたパフォーマンスを発揮。『エディターズチョイス』に選ばれた決定的な理由は、「MP20 HMB」から改善されたためだ。
ほんの数世代前、ミズノ「MP」シリーズはほとんどテクノロジー的な話題に乏しかった。
ゴルフが変わりつつある中、ミズノのアイアンデザインの考え方も変わった。彼らは間違いなく次世代プレーヤーの心を掴む、より前向きな考えに適応していった。またチャンスを伺い、絶好のタイミングでそれをつかんだのだ。
同社がゲームとゴルファーの進化の波に乗っているとき、『エディターズチョイス』を獲得するのは当然の成り行きだ。
中級者向けアイアン:プロトコンセプト「C05」
LPGA選手のリディア・コが、キャディーバッグに入れるまで誰もこのブランドを知る者はいなかっただろう。多くのゴルファーにとっていまだ聴き慣れない名前ではないか。
「プロトコンセプト(Proto-C)」は、フォージングで知られる「遠藤製作所」と「Golf Partner(ゴルフパートナー)」の共作として始まった。すべてのカテゴリーで商品を展開しているが、その中でもその性能に感銘を受けたのが中級者向けアイアン「C05」だった。
今季の衝撃の登場から、「プロトコンセプト」のさらなる飛躍を期待したい。
初級者向けアイアン:該当なし
このカテゴリーには高い基準がある。コブラの「FMAX」が2年連続で勝利をおさめた後、新しい初級者向けアイアンの中で驚くべき傑作を見つけるのは難しかった。
来年に期待したい。
ウェッジ:該当なし
市場には高性能なウェッジが溢れているが、他のカテゴリーに見られるような目に見えるテクノロジーがほとんどないため、独自のスピン性能をストーリーとして謳うことが多く、業界を揺るがすような革命は見られなかった。
とは言うものの、現在進行中の『Most Wantedテスト』で次の大物を発見できるのではないかと期待している(ウェッジカテゴリーでも)。
ブレードパター:コブラ「KING GRANDSPORT 35(キング グランドスポーツ35)」
「グランドスポーツ35」が登場した時は、正直言って懐疑的だった。なぜなら、コブラがフルラインのパターを発売してから間もなくのことだったため、「Anser(アンサー)」以上のものが市場に出回るのは衝撃的だったからだ。
それでも、「3Dプリント」と『SIKフェーステクノロジー』は当初は実体を超える別のストーリーのように感じたが、「グランドスポーツ35」が2022年『Most Wantedテスト』でNo.1ブレードパターに輝いたときは、単なる3Dプリントだけでなく性能にも優れたパターだと確信した。
そしてコブラは最新のパター市場で注目株となっている。
マレットパター:PXG「BATTLE READY BAT ATTCK(バトルレディ バットアタック)」
デザインが進化した「バトルレディ バットアタック」には感銘を受けた。マレットパターテストで1位の座を獲得しただけでなく、100%ミーリングされた「複合素材構造」により、「最も格好いいパター」に進化したと言える(少なくともボブ・パーソンズによると)。
今シーズンのPXGの最大の成果といえば、パターヘッドのネジ数が減ったことだろうか。冗談はさておき、 300ドル以下でNo.1の性能が手に入るなら文句なしだ。
ゴルフボール:タイトリスト「PRO V1 LEFT DOT(プロv1 レフトドット)」
実際に購入できないゴルフボールを『エディターズチョイス』に選ぶのはナンセンスかもしれないが、タイトリストが「プロv1 レフトドット」を数量限定でリリースしたとき、これまでにない混乱が生じた。元祖カークランド「シグネチャー」ゴルフボール以来だ。
「プロv1 レフトドット」は、低弾道、低スピン、以前はツアー専用の「プロV1」。マーケットテストとして、タイトリストは数量限定で発売した。それらはすぐに売り切れ、人気に拍車がかかりeBayでは100ドル以上で転売されるようにまでなってしまった。
買っていたのは紛れもなくゴルファーだ。
出回る商品数が減っている中、ゴルファー間での需要は増えるばかり。「Left Dot」が小売店で販売されるのは時間の問題だと考えている。
ゴルフシャフト:フジクラ「VENTUS(ベンタス)」
フジクラ「Ventus」シャフトの弾道は想像を超える。元祖「Ventus」は3年以上前に発売された。最近リリースされた「TR」シリーズがある程度取って代わったが、それでも「Ventus」の絶対的な力はまだまだ健在だ。
一般ゴルファーの「Ventus」人気はさておき、PGAツアーへの影響を見てほしい。アマチュア界では、オープンチャンピオンシップで使用されるドライバーシャフトの25%近くが「Ventus」という現実がある。ある週では、その使用率はさらに高くなる。
新しいシャフトが次々と発表されが出、ツアーにおけるシャフト選択が多岐に渡る中、「Ventus」はその勢いを増しているだけでなく、史上最も成功した「カーボンシャフト」であるという功績がある。
トレーニング器具:「THE STACK SYSTEM(スタック・システム)」
「The Stack(スタック)」は2シーズンに渡り注目を浴びている。ピンの「スピードの魔術師」マーティ・ジェルトソン氏とサショー・マッケンジー氏の発案による高度なトレーニング器具により、クラブのヘッドスピードを簡単に上げることができる優れもの。
自身の経験からこの器具が効果絶大なのはわかっているが、「Stack」ユーザーの、マシュー・フィッツパトリックの全米オープン優勝でさらに関心が高まった。飛距離が欲しいなら、「The Stack System」は最高の助っ人になるだろう。
しかし需要が非常に増えているため、配送は10月以降になるそうだ。
グローブ:PXG「PLAYERS GLOVE(プレーヤーズ・グローブ)」
今年もPXGの「Players Glove(プレーヤーズ・グローブ」が『エディターズチョイス』を獲得。2年連続で、この上質なカブレッタレザーにアワードが贈られた。グリップ、フィット感、スタイル、全てが申し分ない。
距離計:該当なし
今年は、感銘を受けるほどの距離計には出会わなかった。確かに、ブッシュネル「Pro XE」は優れた性能を実証した。しかし、創意工夫の点でアワードには届かなかった。
スパイクシューズ:フットジョイ「TOUR ALPHA(ツアーアルファ)」
靴ひもに並々ならぬ思い入れと情熱を持っている人はいるだろうか?
フットジョイ「ツアーアルファ」に関して言えば、『BOA』テクノロジーが今年のNo.1スパイクシューズに忍び寄ったとき、そのような人(Mygolfspyのトニーだけかもしれないが)は戸惑ったのではないか。
パフォーマンスで1位を獲得した「ツアーアルファ」は、トラクション(グリップ力)、安定性、カラーオプション、レース(紐)の心地すべてで優っていた。結局のところ、「レース(紐)は信者のためにある。」とトニー氏。
では、今年の『エディターズチョイス』がなぜ重要なのか?驚くかもしれないが、フットジョイはここ数シーズン、『Most Wantedテスト』のランキングでなかなかトップに立てないでいた。2022年「ツアーアルファ」は、ついにランキング常連のアディダスを打ち負かしたのだ。
今年の最優秀ゴルフカンパニー:キャロウェイゴルフ
キャロウェイの業界頂点への挑戦は注目の的になっている。今年の第1四半期の売上高は10億ドルを超え、純利益は8,700万ドル近くを達成。
これは、3月にボールカテゴリーで記録的22%の市場シェアを達成し、「トップゴルフ」を獲得し「ライフスタイルとエンターテインメント」企業に変身した後のことだ。収益60%の増加は平然とできるレベルではない。
「Rogue」ブランドの再考が謳われた後、より収益性の高いビジネスに焦点を当てるためにゴルフが後回しになっているのではないかと疑念が湧く人もいたはずだ。
18,000ショットテストした今シーズンの『Most Wantedランキング』の後、「Rogue ST トリプルダイヤモンドLS」が総合2位を獲得した時は、その疑念を払拭できたはずだ。
減速の兆し?そんなものは全くない。
今年の最優秀DTC(直販)カンパニー:SUB 70
「Sub 70」は、カスタマーサービスに力を入れる企業として急速に伸びている。顧客のすべてに対応する優良企業で、決して安価な商品を売るだけの会社ではない。イリノイ州シカモアの新興企業からは想像できないほどの大規模なDTC(直販)市場を握っている。
今年の『Most Wantedテスト』が終了した後、「Sub 70」に関しては特別な企業だと確信した。大手ブランドは気付いているだろうか?彼らのドライバー飛距離は「Rogue ST Max」より2ヤード短かっただけだ。つまり4.5フィートで220ドル払っていることになる。
ベストコラボレーション:テーラーメイド × KITH(キス)
このようなコラボレーションが毎年あるわけではないが、「テーラーメイド」と「キス」のコラボはこれまで見たことのないものだった。
24Kで飾られた完全カスタマイズの「K790」アイアンセット、「Kith」スタンプが控えめに刻印されたステルス、または90年代を思わせるジャケットは、これは過去5年間で最もユニークなコラボレーションの1つだ。
ベストコラボレーション:バイス × アディダス
「バイス」は流行りのボールメーカーというだけではない。もともとはライダーカップの開催コースであるウィスリングストレイツ(ゴルフコース)の記念品として販売されていたが、アディダス『ブーストテクノロジー』に描かれたカモフラージュ柄とドリップパターンにより、2022年の『エディターズチョイス』に見事選ばれた。
さらに限定リリースの「Vice Pro Drip Limes」には、12個のボール付き。「Drips」は、ゴルフシューズの伝統を上手く活かしながらも、少しスパイスを利かせ、創造性・快適さ、そしてラウンドにとって最も重要な「足裏(ソール)」で話題ををかっさらい消費者の心を捉えた。
ベストニュートレンド:バーチャルフィッティング
家にいながら最高のクラブとボールをフィッティングしたい?
フィッティングの新たな手段を提供してくれたコロナに感謝したいと思う。ブリヂストンや、ピン、 タイトリスト、TrueGolfFitなど、数え切れないほどのメーカーがスマートフォンを介して知識豊富なフィッティングを提供するようになった。
これらはゴルフの未来につながる。バーチャルフィッティングはソーシャルディスタンス対策のもと生まれた案だったが、偶然にも世界中のほぼどこからでも最高のクラブを見つけられるようになった。
MyGolfSpyでは、「フィッティング」こそ命と考えているが、(コロナになるまでは)誰もができることだとは予想だにしなかった。
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