パターにおいてMOI(慣性モーメント)は重要か?

もし新しいフロントラインパターにおけるクリーブランドの考え方が正しいなら、MOIは重要だということになる。ただし、少し違った意味合いだ。

高機能で魅力的な価格帯のパターという意味では、クリーブランドにあまりそのイメージはない。

ベティナルディやキャメロンのようなハイセンスな見た目でもなく、ピンやオデッセイ、テーラーメイドにあるツアーモデルの魅力や大量生産、大量販売の戦略もない。

あるのは幅広いゴルファー層に対応できる豊富な製品のラインナップだ。

ボールをカップインさせることだけが目的で、そのために法外な料金を払う気がないなら、これほど優れた製品はなかなかないだろう。

フロントラインを発表することにより、クリーブランドが出した声明はこうだ:パターのMOIについて持っている知識なんてぜんぶ忘れちまえ、と。

それがなにより重要だと。

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前方重心設計のフロントライン(最先端)

4.5メートルのバーディーパットに臨む際、もし誰かがタイムアウトをコールして貴方のボールを拾い、1.5メートル近づけ残りが3メートルになったら?

「当然だが、パターはボールを33%もホールに近づけることはできない」と、クリーブランドゴルフのマーケティングディレクター、ブライアン・シャルキ氏。「ただ、フロントラインに備わるフォワードCGテクノロジー(重心位置を前方に置く)のおかげで、4.5メートルのパットが3メートルのときと同じ確率で入るようになる」。

しかし実際にパターの重心位置を前方に置くことでMOIを低くすることは可能なのだ。

技術については簡単に説明できないが、もっともな疑問は低MOIがパターにもたらす利点は何なのかということ。

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高MOIパターの利点は、高MOIドライバーのそれと同じだ。

パターはドライバーほどのスピードで移動しないとはいえ、それでもオフセンターヒットはボールスピードが減るし、ボールがパターフェースから離れる際にサイドアングルを変えてしまう。

その結果、パットはショートし、ラインも外すことになる。MOIが高ければそうはならない。

しかし、MOIを上げるためにはパターヘッドを大きく、時には極端に大きくする必要がある。

MOIが高くなるほど、パターヘッドの重心位置を深くしなければならず、それがともすれば横方向のオフセンターヒットに繋がり、皮肉なことにラインを外すミスを引き起こす。

「クラブは重心位置のまわりを回るものだ」とはクリーブランドの技術研究開発ディレクターのダスティン・ブレッキ氏。「重心位置が深くなるほど、ボールを前進させるより大きな力が働く。しかし深重心はまた、わずかではあるもののボールを横にずらす力も働かせてしまう」。

「重心位置をフェース面に持ってくれば、横にずれる力はゼロになるが、それは実現不可能だ」。

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もちろんセンターで打てば、望む方向に望むスピードで打ち出すことができる。

しかし史上最高のパットの名手でさえミスヒットするのだ。

フロントラインシリーズの設計において、クリーブランドはコンピュータシミュレーションで、重心位置と横方向のオフセンターヒットとの関係性を調査した。

前重心のブレードタイプと深重心のマレットの比較で、20ミリのオフセンターヒット時に、マレットが2度オフラインだったのに対し、ブレードは0.5度にとどまった。

パットの距離次第だが、その1.5度の差はカップに入る入らないの差となりうる。

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「0.5度のズレなら、6メートル以内のパットはカップインする」とシャルキ氏。「しかし、それが2度になると、1.5メートルのパットでもカップを外すことになる」。

それがたとえ10ミリのミスヒットでも、深重心パターでは1度のズレを引き起こすが、前重心のパターなら0.25度で済む。

「自分がベストを尽くしてもミスは起こるものだ。スピードよし、狙いもよし、スクエアにインパクトしている、しかしほんの少しだけオフセンターだった、フェース向きはスクエアなまま。それでも1.5メートルのパットを右に外す可能性はある」とシャルキ氏。

クリーブランドは別に誰もが今すぐ最も薄いブレードタイプを買いに走るべきだとは言っていない。

彼らが言っているのは、重心位置を前方に移動させることにより、オフセンターヒットをしたとき、横方向に外れていく力を封じ込めることができるということだ。


 

フロント、センター、ヒール、トゥ

ではクリーブランドはどのようにして重心位置をフロントラインの前方に移動させたのか。それはトゥとヒールにインサートした2つの高比重タングステンウェイトによる。

これにより47.3グラムもの重量を目一杯前方に移すことができた。また、パターヘッドの形状は、前作のTFi 2135シリーズで採用したものをほぼ踏襲している。

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「前作のエルバドとフロントラインのエルバドを比べると、重心位置はおよそ30%変わっている」とブレッキ氏。「全体的な形状や見た目などはほぼ同じ。あらゆる箇所から重量をかき集めて前方に持っていき、ヒールとトゥに配分することで、MOIを犠牲にすることなく、打球のばらつきを抑えることができた」。

高MOI/深重心位置のもうひとつのメリットは、オフセンターヒット時のボールスピードの減速を最小限に抑えることだ。

クリーブランドは、スピード・オプティマイズド・フェース・テクノロジー(SOFT)という技術でそれを可能にした。モデル別にミーリング形状を最適化し、フェースの広い範囲において均一なボールスピードを維持する。

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特別なことではないし、他社でも例はあるが、端的に言えばフェースミーリングの模様は、センター付近ではより多くの溝を設けてボールとの接触点を減らし、センターから遠ざかるほど溝は少なく接触点を増やすものだ。

オフセンターヒットしても、ボールとの接触点を増やすことで、ボールスピードの減速を軽減、カップインの確率を高めるというわけだ。

ブレッキ氏によると、SOFTテクノロジーこそが前方重心のカギなのだという。

「ただ単に重心を前方に移動しただけでは、ボールスピードの減速を防ぎきれず、ショートすることもあるだろう。また、SOFTテクノロジーだけでは、距離は正しく打てても角度のズレが起こる可能性がある。

だから我々はラインとスピードという、パッティングに欠かせないふたつの要素を両方採用した」。

クリーブランドは実はオリジナルのハンティントンビーチコレクションでもSOFTに似た技術を採用している。

フェースのミーリング形状をそれぞれのパターに最適化。高MOIのマレットと低MOIのブレードタイプでは異なるフェースパターンが求められるからだ。

フロントラインパターに採用されたのも同じような技術だが、ステンレススチールのパターヘッドにミーリングを施すかわりに、溝のパターンをアルミニウムのインサートに鍛造した。

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「前世代ではすべてミーリング、つまり回転させたり切ったりする大がかりな道具が必要だった」とブレッキ氏。

「その機械では円弧の半径を変えることは不可能だった。しかし鍛造ならばこのようにS形のミーリングパターンも施すことができる。必要なのは小さな彫刻ドリルだけ。それぞれの溝をそれぞれ彫っていけばいいのだ。この方法はピンやイーブンロールも採用している。彼らの製品が高額なのはそのせいもある」。


 

2135はいずこへ?

フロントラインシリーズは、2年前に発売されたTFi 2135サテンパターシリーズの後継モデルだが、前作で採用された2135アライメントは本モデルでも健在だ。

アライメントラインやドットその他の仕掛けがいろいろあるなか、2135アライメントの革新性はなかなかのものだ。その名前は、ゴルフボールの赤道の高さをミリメーターで表したもの。

目の位置がボールの前か上か後ろかに拘わらず、ボールのど真ん中、つまり地面から21.35ミリのところにサイトラインを位置しやすいようにと考えられた。

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前作の2135モデルでは、実際のサイトラインはやや後ろ、かつパターのトップラインより低めに位置していた。そのためアドレス時には独特な見え方をしていた。

フロントラインでは、サイトラインは21.35ミリの高さのまま、トップラインそのものに位置している。

そのすっきりとした、よりクラシックな見た目は、パターにその人独特の意見や主張のある者をも満足させることだろう。

また、クリーブランドはマレット3種において、フェースをスリムにし、トップラインがボールの赤道とぴったり同じ高さになるようにした。

唯一のブレードタイプはそれより高さがあり、よりクラシックなフェース形状をしており、2135アライメントは採用していない。

「2135のおかげでアライメントを定めることが容易になり、距離感やラインの確認にすぐに移行することができる」とシャルキ氏。「ただ、例えばもし10度オープンに構えて打ったなら、どんなテクノロジーの助けがあっても望み通りのパッティングはできない」。

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結論。価格とシャフトオプション、発売時期

というわけで、パターにおいてMOIは重要か?

「あらゆる面で、重要だ」とブレッキ氏。「重心位置をかなり前方に移していながら、ウエイトをヒールとトゥに置いたことで、フロントラインは前作と同じMOIを保持している」。

「これは決して妥協したわけではなく、前方重心設計とSOFTフェースミーリング、ふたつのテクノロジーによってベストの結果が得られるからだ。これで距離性と方向性の両方を手に入れた」。

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ご存じのように、MyGolfSpyの『MOST WANTED』テストでは、フロントラインに搭載された技術がどう機能するかということには重きを置かない。

しかし、試打や実際のラウンドを経れば話も変わってくる。まず、かなりの前方重心のおかげでフロントラインの打感は独特なものになっている。

より深重心のマレットあるいはネオマレットならば、持ったときに違いを感じるだろう。

距離のコントロールに関してはまさに言われた通り。SOFTおよび他社と類似のテクノロジーを採用しているので当然ではあるが。

またモデルによって見た目の個性は十分に発揮されており、様々な打ち方に対応するので、ほとんどのゴルファーの好みに合うものが見つかるはずだ。

ただ、ブレードから一番大きいマレットの中で、最も使われるのはネオマレットになるだろう。

前述のように、マレット3種、ブレード1種というフロントラインのラインナップは多くのゴルファーにフィットするだろう。

4.0(ブレード)はクラシックなアンサータイプ。ヘッド重量は350グラム、適度なトゥバランスにクランクネックで、フェースはやや開閉する。

マレットは全てヘッド重量370グラムで、ネオマレットのエルバド、曲線的なセロ、四角くヘッド後方がオープンなイソのラインナップ。

マレット各種は、真っ直ぐ引いて真っ直ぐ出す派にシングルベンドのフェースバランスタイプ、開閉派にはスラントネックのトゥバランスタイプと、2種類のホーゼルから選べる。

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フロントラインパターには33、34、35インチモデルがある。標準はロフト3度ライ70度。当初はフェースバランスのエルバドのみレフティ対応可。

純正グリップはフロントライン仕様のラムキンSINKFitピストルタイプ。黒シャフト黒ヘッドと合わせれば、キャプテンミッドナイトの佇まいになる。

「市場調査によるとグリップは重要だ。グリップによって、ショップでそのクラブを握って試してみたいと思うかどうかが決まる」とシャルキ氏。

「我々がどれだけの技術をパターヘッドにつぎ込んだとしても、誰かが『あー、このグリップ嫌い』と言ったら、それで買ってもらえる可能性どころか試してもらえる可能性もゼロになるからだ」。

結論として、フロントラインはベティナルディやスコッティほどセクシーではなく、ピンやオデッセイほど洗練されてはいないものの、価格を考えても十分によいパターだ。

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フロントライン4.0(ブレード)の小売価格は$179。マレット3種は各$199。9月13日に店頭に並ぶ。

クリーブランドはフィッティングを必要としない$200以下のパター市場において、非常にうまい立ち位置を見つけた。

ハンティントンビーチ本社ですべてのクラブを組み上げるので、カスタム部門がいかようにでも求めるスペックを作り上げてくれる。

フィッティングを必要としない、また、この価格におさえられる理由はそこにあるのだろう。ただし「パターメーカー」と「パターも作るゴルフメーカー」という違いは当然ある。

クリーブランドはたくさんの機能を詰め込んだパターを作り上げた。

ただ問題は、これでクリーブランドをパターメーカーとして認めるのに十分なのかどうかだ。