ピンのアイデンティティーは、MOI(慣性モーメント)とやさしさに加え、ある機能を進化させることで他の部分のパフォーマンスにしないというポリシーに根ざしている。
ピンの新製品に常に進化が見られるのはそのためで、彼らは新製品は既存のものより優れているべきだと考えている。
しかし、その信念には欠点もある。現代社会では一貫性や信頼性より、分かりやすいテクノロジーやキャッチーな宣伝文句のほうが効果的だ。そのため、ピンは多くの優れた性能を提供しているにもかかわらず、オプション機能で遅れをとっていると思われている。
確かに、当てはまる点もある。メタルウッドに調整可能なホーゼルを設置したメーカーの中で、ピンは(一番とは言わないまでも)かなり遅れている。
テーラーメイド、キャロウェイ、コブラなどの競合他社は、かなり前からさまざまな工夫をこらしてきた。可動ウェイトは10年以上前からあるが、ピンは最近になってやっと採り入れたばかりだ。
そういう意味では、2019年のG410 PLUSドライバーは競合モデルに影響を及ぼすほどの勢いはないが、感覚的にはG400のパフォーマンスを超え、ピンのレベルを引き上げるモデルになる予感がする。
G410 PLUS
設計の目的を簡単に言えば、ツアープロから一般ゴルファーまで、幅広いゴルファーに対応することだ。
G410 Plusの原動力となったのは、PING WRXが受けたカスタム注文の3分の2と、ツアーの注文のほとんどに、ヒールまたはトゥのカスタムホットメルトが含まれていたことだ。
これに対するピンの解決策は、左右の調整機能をドライバーに採用することだった。つまり競合他社のように、調整機能を一度に採用したわけではない。
では、なぜそんなに時間がかかったのだろうか?
その理由は、「他の部分の性能を犠牲にしない」という前提を崩すことなく調整ウェイトを採用するというピンの信念だ。この点については、これまでにも何度か触れた。
調節ウェイトを採用するには、それなりの構造を求められる。その構造によって低重心や高MOI、空力特性、さらに打感や打音が犠牲になる可能性がある。
ほとんどの場合、可動式ウェイトシステムは代償を伴う。ピンは、性能を犠牲にしないために時間をかけたのだ。
ウェイト調整機能はクラウンとソールのつなぎ目にそって、ヘッド後部の周囲に位置している。 16gのウェイトには3つの固定位置があり、ヒールまたはとトゥ方向に重心を2.5mm動かすことができ、10ヤードまでの弾道調整機能がある。
特筆すべき機能ではないが、ここで重要なのは、ピンがG400の利点を失うことなく調整機能を追加したことだ。構造は最小限に抑え、可動ウェイトをヘッドの外周に搭載したため、G400のMOIをさらに向上させながら調整ウェイトを搭載することができた。
ピンはホーゼルスリーブも再設計した。新バージョンではセッティングを5つから8つに増やし、±1.5度のロフト調整ができるようになった。この新しいホーゼルスリーブは上級者のために3つのフラットセッティングも選ぶことができる。
繰り返しになるが、ピンはホーゼルスリーブとその構造の重量を増やすことなく、さらには空力特性も犠牲にすることなく、堅牢で競争力のあるホーゼルを実現したのだ。
新設計のマイナス面(一部の人には重要かもしれない)は、新しいホーゼルスリーブは以前のG410のヘッドと互換性がない点だ。つまり、既存のシャフトは新モデルには合わない。
ピンはこの点に関しては非難を受けるかもしれないが、これは彼らの最初の調整可能なドライバーであるAnser以来の重要なアップデートなのだ。
広がるフィッティングの選択肢
調整ウェイトと新ホーゼルの組み合わせにより、ピンは多くのフィッティングの選択肢を得た。フィッティングでは、ヘッドやロフト、シャフト、可動ウェイトなどの調整機能がパフォーマンスの違いを生む要素だ。
それに加え、シャフトの長さや総重量、ロフト/フェース角やライ角の調整、フレックス、グリップ、スイングウェイトなどの微調整によっても変わる。
ピンは目的別に4つのドライバーヘッドを提供しているが、例えばスライスに悩むパワーヒッターにはそれだけでは不十分で、前述の「調整」と「微調整」のどちらも必要になる。ヘッドスピードが遅いスライサーにはSFTが適しているが、 速いスイングにはあまり向かない。
G410では、フィッターはヒール側にウェイトを移動することで必要な補正を加えながら、適正なスピン量を保つことができる。さらにホーゼルで微調整することで、さらに優れたフィッティングが可能になる。
ピンは今回、G410 Plus(標準モデル)に加えてG410 SFTも発表した。 SFT(Straight Flight Technologyの略)は、これまでどおりスライサーの強い味方だ。こちらは固定ウェイト設計で、ヒール側に多くの重量を持たせている。
これによって重心がヒール側に50%ほど寄っており、G410 Plusよりも大幅なドローバイアス設計だ。ピンはSFTのスイングウェイトを減らし、D1にしている。これは、ゴルファーがインパクトでヘッドをスクエアに戻すのに役立つはずだ。フェースは2~3度閉じているが、右のミスを避けたいゴルファーには好都合だろう。
ドローバイアスのドライバーでは一般的だが、SFTのMOIはG410 Plusほど高くはない。しかしピンのクラブの特徴である「やさしさ」については、競合クラブよりも優れているはずだ。
ピンの標準機能セット
G410 PlusとG410 SFTのヘッド体積はどちらも455ccだ。軽量化されたドラゴンフライ・クラウン両方のモデルに引き継がれているが、過去の変更ほど顕著ではない。
ドラゴンフライ・クラウンについては、好みでない人ためにトーンダウンしている。ボディー素材は811チタン、フェースは T9S+チタンで作られている。
他のモデルと同様に、フェースにはスピンを軽減するテクスチャード加工が施されている。G400の打音もピン独自のタービュレータと同様に、新しいヘッド形状に合うように最適化されている。
新しいシャフト
いくつかのシャフトメーカーは自社製品の詳細を明らかにしていないが、ピンは自社製造のシャフトに自信を持っているという。
標準シャフトのラインナップは、自社のシャフト2種(PING Alta CBとPING Tour)と他社のシャフト2種(三菱Tensei CK Orange(ノンプロ)とProject X Evenflow)だ。自社のシャフトのうち、アップデートされたAlta CBに注目したい。
この新バージョンでは、シャフトのバット部分に8gのタングステンプラグが追加されている。タングステンプラグが手元側を重くすることで、重いヘッドに対応する。このラインナップにより、ピンのフィッティングの汎用性が高まるだろう。
耐風ヘッドカバー
ヘッドカバーの説明に時間を割くのは珍しいことだが、ピンの新しいヘッドカバーについて興味深い話があるのでお伝えしておこう。
調査によると、消費者は「重さ」と「質」は比例すると考える傾向があるという。ピンはこの結果をヘッドカバーに採用することにしたが、注目したいのは重さだけではない。
ピンは長年にわたって、風変わりなテストを実施してきた。
リーフブロワー(送風機)テストでは、ピンの新しいヘッドカバーは風速13.4m/sの風でも飛ばされないという。些細なことなので新しいドライバーを買う理由にはならないかもしれないが、風に飛ばされたヘッドカバーを追いかけて、フェアウェイを走る必要はなくなりそうだ。
リリースが見送られたのは?
私のように、「新しいLSTはあるのか?」と思う人もいるだろう。
今のところ、答えは「ノー」だ。設計には妥協しないこと、そして既存の製品よりも優れていることをエンジニアが証明するまではリリースしないというのがピンのポリシーである。
「G400LSTは非常に優れたクラブだ。正直なところ、それを超えるのは難しかった。」と技術担当のポール・ウッド氏はコメントしている。
将来新しいLSTがリリースされる可能性もあるが、すでにLSTを持っている人は安心してほしい。今から1~2年経っても、現行のLSTが非常に優れていると確信できるはずだ。
最大のMOIを実現したG400 MAXにも同じことが言える。発表から1年が経過したが、今のところ次のリリースの計画はなさそうだ。
将来、さまざまな調整機能を持つG400(LSTとMAX)とG410(PlusとSFT)が生まれ、ゴルファーにナイスショットをもたらすに違いない。
スペック・価格と販売予定
G410 Plusドライバーのロフトは9度、10.5度、12度、G410 SFTは10.5度だ。メーカー希望小売価格は540ドルだが、市場価格はおそらく500ドルぐらいになるだろう。
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