「3年前、初代0311 GEN1アイアンを発売した時、既存のアイアンよりはるかに優れた製品でなければリリースはしないと約束した。第2世代モデルのGEN2アイアンは、すべての点で初代モデルより優れている。GEN2はこれまでの最高傑作であり、初代GEN1はその次に優れたアイアンだ。」(PXG創業者兼CEO ボブ・パーソンズ)
私が初めてアリゾナ州スコッツデール・ナショナル・クラブの小さな看板を通りすぎ、ゲートをくぐったのは3年前のことだった。その頃ボブ・パーソンズ氏はPXGの初代アイアンを発表していた。そのアイアンは、平均的な価格設定より高めであったが、私は彼が情熱を注ぐビジネスが成功するのではないかと思っていた。それから3年が経過した。
当初は、傲慢で欲張りでバカげているというような批判を受けた。PXGのすべてが無価値だと言われ、半年か1年以内には倒産するとの噂もあった。
3年が経ち、その間に170の特許を取得した。当初の憶測は外れ、PXGは今も順調だ。顧客の対象は異なるものの、PXGの成長と成功はキャロウェイの近年の実績よりも顕著だ。PXGが存続していることだけでなく、成功していることに驚いている人もいるだろう。
3年前には、スコッツデール・ナショナル・クラブの敷地内にトレーラーを置いて運営していたPXGは、今では172人の従業員を抱える会社となった。会社の本部として新しい建物を構え、急成長を始めている。3年間で専門スタッフは1人から17人に増員された。PXGのクラブは、PGAとLPGAのツアー勝者たちのバッグの中には必ず見られるようになった。ライダーカップでは優勝はしなかったものの、初めて成績を残した。
PXGは学生ゴルフの領域に急速に進出した。ナイキが学生向けゴルフ用品市場から撤退したことで、マーケットにできた隙間を埋めるべく名乗りをあげたのだ。男子と女子の両チームに隔たりなくサービスを提供して成功を収めた。PXGの大学ゴルフへのスポンサーシップに対するアプローチは珍しいものだった。パーソンズ氏は他の方法を考えてもいなかったかもれないが、女子チームに対しても平等にサービスを提供したことは、結果的にはPXGのサクセスストーリーの要素の1つになった。
PXGはパーソンズ氏が想像していたよりも急速に成長したが、この3年間で彼のゴルフビジネスに対するアプローチは変わっていない。パーソンズ氏は、愛されようが嫌われようが、周りがどう思うかは気にしていない。初代PXGを売り出した時と同じように、有り余る情熱をこめて次世代のPXGクラブを市場に送り出す。
「誰も私たちのようにはクラブを作れない。」 これはPXGのキャッチフレーズだ。この信念は、新しい0311GEN2アイアンでも変わらない。
今回の新モデルについてパーソンズ氏は言う。「GEN2アイアンは、あらゆる点でGEN1より優れている。史上最高のアイアンだ。」
この言葉を信じるか否かはあなた次第だが、パーソンズ氏の口から曖昧なコメントが出てくるとは誰も思わないだろう。それがPXGの方針でもある。
あらゆる点で優れたアイアン0311 GEN 2
パーソンズ氏が「あらゆる点で全モデルより優れている」と言うからには、彼はそれに確信を持っているということだ。あらゆる点というのは以下の項目だ。
・飛距離(高いボールスピード)
・高打ち出し
・低スピン
・最高到達点
・スティープなランディングアングル(着地角度)
・改良されたディスパーション(分散)
これに加えて新しいモデルは、より滑らかなターフインタラクション(芝のすべり)を実現した。これは、以前からMyGolfSpyが改善する必要があると感じていた領域である。
低スピンに関しては、注意が必要かもしれない。アイアンでスピンを減らすのは常に懸念されるポイントだが、今回の場合は、高い打ち出しと急激な降下の組み合わせにより低スピンを補うだけでなく、ランディングの際により高い制動力が働くという。
パフォーマンスには関係ないが、個人的には前モデルに比べてルックスがかなり良くなったと思っている。全体的な美しさはビンテージ感のないPINGというか、とてもPXG的な美しさといった感じだ。
PXGの説明で特に驚くべき点はないだろう。どのゴルフメーカーも同じような宣伝文句をうたっているからだ。他社の広告のほうが、規模が大きかったり頻度が多い場合もある。新製品のリリースに3年かかったというのは、現在のゴルフ業界では長いほうだと思う。
ただ期間の長さより、研究開発部門の有能なスタッフがどのように完璧なクラブを作り出したのかに興味がある。PXGのエンジニアチームは、ためらいなく詳細を説明してくれた。
「これはアイアンを作る最適な方法だ。もし誰もが同じように作れるのならば、これより良い方法はない。」(PXGチーフプロダクトオフィサー ブラッド・シュバイゲルト氏)
COR2ポリマーによるボールスピード効果
GEN2のストーリーの中心は、文字通りヘッドの「中心」に注入されているCOR2と呼ばれる新しいポリマー素材だ。PXGはCOR2の詳細を伏せているが、発泡素材でないことは確かなようだ。そして、この素材が重要なポイントなのだという。PXGのエンジニアがGEN1のエラストマー素材を超えるものを探し出すまで、目立った進化は見られなかった。
「COR2の類似品もあるだろうが、性能は及ばない。私たちの使うCOR2ほど優れた素材は他にはない」(ブラッド・シュバイゲルト氏)
COR2の性能を数値化してみよう。この新素材を注入したことで、前モデルのエラストマー素材よりもボールスピードが20%向上し、0.45~0.89m/s速いスピードを実現している。
これにより、高い弾道を実現しながら飛距離を伸ばすことができるのだ。COR2の優れた弾力性と設計の向上により、ミスヒット時のボールスピードを維持できる。ディスパーション(横の散らばり)に関しては40%も減少したのだ。これは驚くべき数値だ。
ブラッド・シュバイゲルト氏は言う。「信じがたい数字だが、これは事実だ。ロボットにより、複数の場所から打って出したテスト結果である。ディスパーション(横の散らばり)に40%の改善がみられた。」
GEN1のエラストマー素材と比較して、キャビティの上部、中部、下部の領域により多くのCOR2素材を使用している。飛距離とディスパーションの向上に加え、打音と打感も良くなったという。
※図の左が初代、右が2代目。2代目の方が上部・中部・下部のすべてでコア素材が多く使われている。
フェース内部のデザイン
2つめの大きな進化は、フェースのデザインだ。より深くアンダーカットされたキャビティを利用して、フェースとアイアンの境界をより外側に移動した。PXGは他社製品に対してコメントをしていないが、機能的には「カップフェース」に似ている。この進化した構造によって、フェースのエリアが広くなった。シュバイゲルト氏によれば、GEN2のフェースは15%拡大したという。スイートエリアが広くなり、フェース全体でボールスピードを加速する。
変化したボディ
GEN2のボディの素材は、8620フォージド(鍛造)スチールである。新しい素材(GEN1はS25Cスチールであった)を採用したことで、ソフトな打感が可能となった。同時に耐久性にも優れており、傷やへこみに対する強度も増した。高価なクラブなので、耐久性は高くて当然だ。
フェースの素材は、前モデルと同じく高強度HT1770マレージング鋼で、厚みはわずか1.5ミリほどだ。これは業界一の薄さである。
「スクリューウェイト」はPXGの象徴だ。GEN2には9個のウェイトポートがあり、ヘッド重量とスイングウェイトの微調整が可能だ。
外見の変更点の1つに、面取りして角度をつけたトップラインがある。面取りによってトップレールが薄く見えると同時に、MOI(慣性モーメント)を高めるためにトゥ側に質量を寄せたテーパーデザインをなだらかにしている。テーパーの幅はモデルによって異なり、Tモデルが最小でSGIモデルが最大となっている。
最後に、これは些細な変更点だが、ソールに刻印された番手表記の数字をトゥ側に寄せた。地面との接触を減らしてペイントを長持ちさせるためである。
4つのモデル
GEN2の3つのモデルは初代GEN1のモデルを受け継いでいるが、SGIモデルは全く新しい商品だ。PXGにとって画期的なクラブであり、市場でも類を見ない。
ヘッドサイズと形状はモデルごとに異なるが、上記のコアテクノロジーは、ラインナップ全体で共通している。
PXGはすべてのモデルで飛距離が向上したと主張しているが、GEN2のロフトはGEN1から変更されていない点は指摘しておこう。
0311 GEN2 Tモデル
GEN2のラインナップで最もブレードに近い「T(Tour)モデル」は、前モデルよりツアー向けにデザインされている。MOI(慣性モーメント)は2%高く、重心は少し深めになったが、オフセットが小さくなり上級プレーヤーやトラディショナルなアイアンを好むゴルファーにアピールする作りだ。
8番、9番、ピッチングウェッジは、アイアンからウェッジへ円滑に移行できるよう、より丸みをおびたデザインだ。リーディングエッジが直線的になり、キャンバーソールが控えめで、トレーリングエッジが増したことで、ターフインタラクションが改善された。
※表は0311 GEN2 Tモデルのスペック。CLUB(番手)、LENGTH(クラブ長・インチ)、LOFT(ロフト角)、LIE(ライ角)、BOUNCE(バウンス角)、OFFSET(オフセット・インチ)、SWING WEIGHT(スイングウェイト)。
0311 GEN2 Pモデル
P(Player)モデルは、初代0311の代替品だ。PXGのツアースタッフ(特にLPGA)の一部で使われている。ツアーレベルからハンディキャップが2桁のプレーヤーまで、幅広く対応するクラブとしての位置づけだ。
Tモデルと同様に、Pモデルも比較的上級なプレーヤー向けだ。GEN2は初代GEN1に比べ、トップラインが薄くオフセットが少なく、重心位置が深いのが特徴で、MOI(慣性モーメント)も3%高くなっている。リーディングエッジが直線的でキャンバーソールが控えめなところもTモデルと共通している。
※表は0311 GEN2 Pモデルのスペック。CLUB(番手)、LENGTH(クラブ長・インチ)、LOFT(ロフト角)、LIE(ライ角)、BOUNCE(バウンス角)、OFFSET(オフセット・インチ)、SWING WEIGHT(スイングウェイト)。
0311 GEN2 XFモデル
「0311 GEN2 XFモデル」は、多くのゴルファーのゲーム改善に役立つアイアンではあるが、どちらかといえば上級者向けだといえる。GEN1と比べてトップラインは薄くなっている。オフセットはわずかに大きくなっているが、うまくマッチしており、気付かない程度である。ターフインタラクションを改善するために、キャンバーソールをおさえた設計だ。Pモデルと同じく、MOI(慣性モーメント)はGEN1より3%の向上が期待できる。
※表は0311 GEN2 XFモデルのスペック。CLUB(番手)、LENGTH(クラブ長・インチ)、LOFT(ロフト角)、LIE(ライ角)、BOUNCE(バウンス角)、OFFSET(オフセット・インチ)、SWING WEIGHT(スイングウェイト)。
0311 GEN2 SGIモデル
SGIモデルは、PXGのラインアップに新たに加わったモデルだ。SGIとは、Super Game Improvementの略である。SGIモデルは極端に広いソールと大きなオフセット、太めのトップラインと長いブレードが特徴の非常に大きなアイアンである。
「誰にでも使いやすいクラブを作りたい」というボブ・パーソンズ氏の指示で生まれたクラブだ。SGIモデルは完璧性を求めているというよりは、ミスを減少することを目的に設計されている。PXGのシニアデザイナーのマイク・ニコレット氏は、「このクラブをボールの後ろにアドレスしてヒットすれば、自然にそれなりのショットが打てる。」と言う。
※表は0311 GEN2 SGIモデルのスペック。CLUB(番手)、LENGTH(クラブ長・インチ)、LOFT(ロフト角)、LIE(ライ角)、BOUNCE(バウンス角)、OFFSET(オフセット・インチ)、SWING WEIGHT(スイングウェイト)。
0311 X GEN2 ドライビングアイアン
新しいドライビングアイアンは、他の0311 GEN2ラインナップのトレンドを継承している。ドライビングアイアンもやや上級者向けだ。薄いトップラインや縮小したキャンバーソールが特徴だ。ティーグラウンドからも使えるし、鋭いショットを狙う上級者には、ロングアイアンの代わりとしての使用も可能だ。常にゴルフバッグに入れておくクラブではないだろうが、天候やコースコンディションによっては活躍するだろう。
※表は0311 X GEN2 ドライビングアイアンのスペック。CLUB(番手)、LENGTH(クラブ長・インチ)、LOFT(ロフト角)、LIE(ライ角)、BOUNCE(バウンス角)、OFFSET(オフセット・インチ)、SWING WEIGHT(スイングウェイト)。
PXG 0311 GEN2の検証結果
最近スコッツデール・ナショナル・クラブで行われたPXGのイベントで、0311 GEN2アイアンを試打する機会があった。
私の0311 GEN1アイアンと0311 Pモデルを同じシャフトで比較したところ、ボブ・パーソンズ氏の主張どおりの結果となった。ボールスピードは0.89m/sほど早くなり、良いショットでは飛距離がクラブの半分ほど伸びた。
やさしさとディスパーション(散らばり)の指標となるボールスピードとキャリーの標準偏差も、より向上していた。これは私の主観だが、GEN2のほうがよりソフトな打感だったことも加えておこう。
試打では、4つのモデルをすべて試すことができた。それぞれのヘッド、シャフトやフレックスへの先入観を持たずテストしてみた。私が最後にフィッティングをしたのはずいぶん前のことだが、時が経てば変化するものだと実感した。
個人的にはTモデルのアイデアとルックスは良いと思うが、私を含むすべてのゴルファーは自分の限界を知る必要があると思う。このクラブを使いこなせるかもしれないと自分を納得させたいところだが、正直なところ私には無理なようだ。
0311 XF GEN1のパフォーマンスには感心したが、私が日ごろ使っているアイアンより少し大きかった。私は気にしなかったが、その点は考慮するべきかもしれない。飛距離(7番アイアンで190ヤード超)と洗練された形状に関しては申し分ないだろう。
コアデザインの比較
最終的に、私とフィッターのジェイソンは、XFモデルの4~6番とPモデルの7~GW(ギャップウェッジ)のミックスセットに日本シャフトのModus3 120シャフトを合わせることに決めた。過去にはKBSのC-Tapers、最近ではプロジェクトXのLZで試行錯誤してみたが、今回は以前とはまったく違うものを試してみたいと思う。結果が楽しみだ。
他のメーカーと同様に、0311 GEN2のラインナップも組み合わせが可能で、シームレスなセットが作れるようデザインされている。過去にミズノのアイアンでも経験済みだ。正直なところXFモデルの7番については真剣に迷ったが、よく考えた結果外した。後悔するかもしれないが、選んでも同じように後悔するかもしれない。結果は時間がたてば分かるだろう。
SGIモデルも試す機会があった。私とは相性が合わなかったが、このカテゴリーと価格帯の中では群を抜いて優れたクラブだと思う。ダブリとは無縁で、打ち出しは高く、そして打感も議論の余地なく最高クラスである。
これらの利点は、0311 GEN2ラインの他のモデルと共通している。素晴らしいアイアンだと認めざるを得ないが、もしパーソンズ氏が多くのゴルファーに使ってもらおうと思っているのなら、価格を下げたほうがいいだろう。それは私の切なる願いでもある。まあ、この願いがかなうとは思わないが、気持ちだけは伝えておきたい。
「ほとんどのゴルファーは、正直なところPXGのクラブでプレーしたいと熱望している。」(PXGシニアプロダクトデザイナー マイク・ニコレット氏)
高い価格設定
新製品のリリースのたびに、PXGは着実に価格を上げている。今回の0311 GEN2アイアンが、1本400ドルだというのも驚きではない。グラファイトや105種類のシャフトのオプションに追加料金が課されないので、値上げ分の一部は相殺できるだろう。
たとえ追加料金がなくても400ドルは高いと思う。在庫セットも、フィッティングカートもないことも指摘しておかなくてはならない。PXGのスコッツデールにあるフィッティングスタジオと米国内のフィッター店舗の他に、米国、カナダ、英国で46台のバン(移動車両)を稼働しており、それらのバンにはPXG本社と同じ在庫(膨大な数のヘッドと300以上のシャフト)を取り揃えている。
フィッティングには1~2時間要するが、たとえ長くなっても追い出されないので安心してほしい。フィッティングは無料か、もしくはクラブの代金に含まれている。PXGでは「スペックチェック」と呼ばれるサービスを提供している。
これは以前のフィッティングが今でも機能しているか、フォローアップするためのミニフィッティングだ。変更だけの場合は無料であることが多いが、交換が必要な場合はリーズナブルな価格で提供してくれる。
ボブ・パーソンズ氏は言う。「要するに、PXGのクラブは手の届く贅沢品なのだ。」
PXGのクラブは高価格だが、それに見合ったサービスが受けられる。ゴルフ用品ビジネスではまれに見る高いレベルのサービスだ。一言でいえば、それがPXGのやり方なのだ。
価格と在庫状況
PXG 0311 GEN2アイアンの小売価格は、クロームが400ドル、エクストリームダークが500ドル。2018年4月19日から販売開始予定だ。
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