PXG「ブラックジャック」パターを初めて見る方なら、他のマレットパターが頭に浮かぶだろう。紛れもなくこの「ブラックジャック」には、テーラーメイドの「スパイダー」のDNAの多くを感じるからだ。
しかしながら、今回PXGの開発陣は、クラシカルなマレットパターに新しい要素を紡いだ。そう、私にとってスパイダーはもはやクラシカルなヘッド形状。
「アンサー」ほどの古さはないが、このマレットデザインが幾度も採用されていることから、ヘッド形状の原型としての地位を確立していると言えるのではないだろうか。
では、PXGの「ブラックジャック」が「スパイダー」の世界をどう紡いでいるのかチェックしてみよう。
PXG「ブラックジャック」マレット:スペック
・素材:エアロスペースアルミニウム/高密度タングステン
・重量:可変(ネック形状により360gから445g)
・構造:100%ミーリング
・フェース:オプティマイズド・ピラミッドフェース・パターン
・長さ:33-38インチ
・ネック形状:ヒールシャフト、プランバーネック、ダブルベント(+アームロック)
・ロフト:3度
・グリップ:PXGラムキンSink Fit(スタンダード)
・右用、左用あり
・価格:525ドル(期間限定395ドル)
PXG「ブラックジャック」:テクノロジー
PXG「ブラックジャック」は、書斎の壁に飾られるような他の高額パターと異なり、ゴルファーのカップインに役立つ特徴が詰まっている。このパターは、使ってナンボのギアであり観賞用ではないということ。
PXGが、「ブラックジャック」の安定性と寛容性を謳っている通り、プレスリリースでも「入るパター」という言葉が使われている。
では、ここからは、皆さんにメリットとなるPXG「ブラックジャック」のテクノロジー面を見ていこう。
PXG「ブラックジャック」:高MOI
「スパイダー」っぽいデザインということは、高MOI(慣性モーメント)設計であることは保証されたようなものだ。
この「ブラックジャックマレット」では、周辺重量配分とヘッド素材によりMOIが向上している。ヘッドの各コーナーにあるウェイトがMOI向上の確固たる理由。
これは性能上のデザインプランであることは間違いないが、各コーナーにウェイトを搭載しているパターの全てが、このPXG「ブラックジャック」のようななめらかな美しさを備えているわけではない。
皆さんはスコッティ・キャメロンの「フューチュラX」をご記憶だろうか?
「フューチュラX」も、MOIをアップさせるためウェイトをコーナーに搭載していたが、そのデザイン性に魅了されたのはアダム・スコットと私だけだろう。
今回PXGは、ウェイトをパターヘッドの底面(ソール部)に配置したことで、アドレス時の見た目の良さだけでなく、MOIをアップさせながらも低重心化にも成功している。
低重心と高MOIが組み合わさることで、より寛容性が増しボールの転がりも良くなるのだ。
最近まで「スパイダーX」を使っていたが、PXG「ブラックジャック」へ移行することが簡単ということも分かった。ミルドフェースは、テーラーメイドのインサートよりも若干ソリッドな印象だが、ともに高MOIで同じようなストロークのフィーリングが得られる。
PXGブラックジャック:オプティマイズド・ピラミッドフェース
パターに詳しい人なら、PXGが『バリアブル・フェースミーリング』で何を実現しようとしているのか理解できるだろう。
しかし、もし私と同じように思っているなら、あなたも勘違いしている。
ピンの『TR溝』のようなバリアブル・パターンでは、芯で当たった時とそうでない時のバランスを保つためセンターヒットした時の転がりを抑制させるが、PXGの『オプティマイズド・ピラミッドグルーブ』の削り出しフェースでは、センターヒットしたときのスピードがアップする。
正直に言うが、これにはちょっと驚かされた。普通はヒールやトゥに当たると、転がりはセンターヒット時よりも悪くなる。
この溝の場合だと、フェースの色々な場所に当たった時の転がりの差異が、より強調されてしまうように聞こえるからだ。
これにはビックリしたので、より慎重に調査する必要があるだろう。
私がPXG「ブラックジャック」を使った時は、センターヒットで意図したよりも転がりが伸びたという感覚はなかった。つまり溝についてはスピード以上の話があることは間違いないのだ。
PXG「ブラックジャック」:複合素材構造
MOIについて語ったくだりで、『複合素材構造』のことを忘れたわけではない。
実際、PXGの「ブラックジャック」が「スパイダー」的な形状の他のパター一線を画すのは、これがあるからだ。また、『複合素材構造』こそ525ドルという高額の表示価格になっていることを正当化している。
今回の「ブラックジャック」は、“アルミ削り出し”のボディを採用。
「スパイダー・ツアー」やオデッセイ「Ten」のようなインサートメインで削り出しではないパターと異なる。一方、前述した(愛する)「フューチュラX」やベティナルディの「iNOVAi」パターのように、“アルミ削り出し”を特徴にしているマレットパターも存在している。
PXGの「ブラックジャック」が他の『アルミ削り出し』や『複合素材構造』と異なるのは、他のデザインがウェイトをステンレススチールで周辺に配分している一方、PXGではタングステンを用いそれを実現していることにある。
タングステンウェイトを用いたというだけでなく、タングステンバーを周辺に配置しているのだ。
タングステンは高密度であり、これによりウェイトバランスがアルミニウムの中心から外れることで、MOI値が劇的に向上するのだ。
ではなぜ、競合はタングステンを採用しないのだろうか?理由はタングステンが高額だからだ。
PXGの開発陣は製品最終版のコスト面でより設計自由度が与えられている、というのが私の見立てだ。タングステンが良ければ、彼らならタングステンを使うということ。
PXGでは、設計における考え方が違うのだ。PXGのクラブが高額であることは周知のことだが、その理由はこれでお分かりいただけたのではないだろうか。
PXG「ブラックジャック」:特注オプション
PXGの「ブラックシャック」は、ゴルファーのストロークタイプに合わせて設定可能だ。
3つのネックオプションで、マレットタイプを使うプレーヤー(ダブルベンド)、ブレードタイプを使うプレーヤー(プランバーネック)、ストロークのアークが大きいプレーヤー(ヒールシャフト)に応える。
マレットパターのレビューのたびに伝えているように思えるが、我々がここで言及しているのはブレードのように使えるマレット。また、PXGではデャンボーのようなタイプ向けにアームロックバージョンもラインナップしている。
ライ角、ロフト角、長さ、ヘッド重量も調整可能だ。中でもヘッド重量の可変性は興味深いオプション。ネックの選択が重量に影響を及ぼし、ダブルベントが一番軽く、プランバーネックが一番重い。
そして、周辺に配置するウェイトで最終の重量が決まる。チタンあるいはタングステンのウェイトは、5、10、15、20グラムのオプションがあり周辺に配置することが可能だ。
もしどの重量が自分にマッチするのか分からないようなら、75ドルを追加してPXGウェイトキットを購入すると良いだろう。
私の場合、ヒールシャフトの「ブラックジャック」で標準の370グラムだとやや重めに感じたが、前部の10グラムのウェイトを5グラムに変えると、非常にフィットした。
もちろん、理想的なウェイトのセットアップが分かっているなら、ウェイトキットで迷うこともなく、好みのスペックで購入すればOK。個人的には、微調整を楽しんでいる。
美観
PXG「ブラックジャック」は、私のパター貯蔵庫で新入りとなるが、すでに見た目が最高なマレットパターの一つだ。
そして、その評価は主観的ではあるが、「ブラックジャック」のほぼ全てのビジュアル的要素は機能的でもある。アドレス時の見た目も最高。
目線がパターのセンターに集まるが、これにより「ビハインド・ザ・ボール』となるので機能的長所でもある。
ブラックとタングステン部分のカラーとフィニッシュ(仕上げ)は重厚感こそあるが、やり過ぎ感はなし。付属の全写真は、普通ならこのタイプのデザインの場合“ギラギラして光沢が出る”ような直射日光の元で撮影されたものなのにだ。
また、このパターに一切のチープさは感じられない。525ドルのパターなら、そうしたこと(高級感)を期待するものだが、「ブラックジャック」のような要素を持つ高価なパターはめったにないだろう。
そしてヘッドカバーも高品質で見た目もクール、大胆に「スカルと26」という数字が描かれ、ベトナムに従軍したパーソンズへの敬意が表されている。ブラックシャフトもデザインに完璧にマッチ。
ウェイトが異なると、重さに応じて黒くカラーリングされたサークルの数も異なる。その程度のカラーリングなどどうでも良いかも知れないが、細部にこだわるPXGパター愛好家心をよく表現していると言えるだろう。
コスト75%で150%の価値
PXG「ブラックジャック」の価格が525ドルであることを擁護するつもりはない。なぜなら無意味だからだ。何でもそうだが、パターなら尚更、その価格の妥当性は個々のユーザーが決める。
しかし、「ブラックジャック」の構造と素材を考えると、他のパターよりもその製造コストは高いはず。タングステンと削り出しは高コスト。「ブラックジャック」の価格には正当な理由があるのだ。
価格面でのグッドニュースは、期間限定でこのPXG「ブラックジャック」を395ドルで注文できることだ。まだ高いとは言え、市場にある同じ様なパターと競争力がある価格と言える。
スコッティ・キャメロンの「ファントムX」は429ドルで、既製のテーラーメイドの「スパイダーX」は350ドル。そう考えると、「ブラックジャック」の395ドルはお買い得だろう。
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