スリクソン/クリーブランドのすべてのラインナップが、プレーのあらゆる場面で何より頼りになる存在であることは誰もが認める事実だろう。スリクソン/クリーブランドは、できるだけやさしいクラブが必要なハイハンデのゴルファーから、セクシーなブレードタイプを求める上級者まで、あらゆるゴルファーに十分な選択肢を提供しているブランドだ。
スリクソンが2年前に発売したZ565/Z765は過去の「MyGolfSpy Most Wanted」の1位に輝き、読者やスタッフのお気に入りのクラブとなった。しかし優れた性能や人気があっても、賞味期限が切れてアップデートされる時がやってくる。それが、今だ。
先日、前モデルよりはるかに革新的とされるスリクソンの新製品、Z85の記事を公開した。しかしアイアンに関して言えば、スリクソンは「革新的」と言うより「進化」と言ったほうがしっくりくる。彼らはそれを「インクレメンタル・チェンジ(漸進的変化)」と表現する。
すでに高性能だった前モデルから劇的な変化が見られるわけではないが、新Z585/Z785アイアンにはいくつか面白い改良が加えられている。
変化
メーカーが新モデルを発表する時は、それが「改良」なのか、それともリリーススケジュールに合わせ新製品を売るための単なる「変更」なのかを必ず確認すべきだ。もちろん、マーケティングを利用した金もうけ以外の何ものでもないという厳しい意見もあるだろう。
しかし、一般的にメーカーは2年サイクルに基づいた新製品の発売を一種の「ブランドを継続するための手続き」と見ており、サイクル毎にパフォーマンスの向上に焦点を当て、より優れたクラブを提供していると思っている。
Z585/Z785の改善は軽微だが、スリクソンはそれを「インクレメンタル(漸進的)」という言葉で表現する。Z585はカテゴリーの定義を壊すように進化してきた。スリクソンの中でも最も「中級者向け」らしいアイアンではあるが、「上級者向け飛距離重視アイアン」のカテゴリーから外れているわけでもない。このカテゴリーの競合には、ミズノJPX 900 ForgedやキャロウェイApex CF16、タイトリスト AP2などがある。
Z785は人気があったZ 765の後継であり、スリクソンの「上級者向け 次世代型フォージド・キャビティーバックアイアン」である。タイトリスト718CBや、ウィルソン Staff FG Tour V6、ミズノMP18などがこのカテゴリーに属する。
「この2モデルは、素晴らしい打感と美しいルックスを兼ね備えている。コンパクトでトップラインが薄いZ585は打感と飛距離に優れ、Z785は打感とコントロール性の良さが特徴だ。」(スリクソン マーケティング部長 ブライアン・シェルケ氏)
新しいユーティリティーアイアンを組み合わせれば、どちらのモデルでもユニークなコンボセットを作ることができる。
改善された飛距離と打感
Z565は、2017年の「MyGolfSpy Most Wanted中級者向けアイアン」で1位を獲得したアイアンだ。高い強度を持つSUP10スチールのフェースと、1020カーボンスチールの鍛造ヘッドが特徴だった。相当高度な技術だっただけのことはあり、新モデルZ585にも同じ設計が採用されている。
実際に役立つのだろうか?
ポイントは、Speed Groobe(スピードグルーブ)と呼ばれる「溝」にあるという。
「周囲がスプリングで囲まれた巨大なトランポリンをイメージして欲しい。我々はバックフェースの周辺部分を少し削って溝を作ることでフェースにより柔軟性を持たせた。これによって、ボールスピードの向上が期待できる。」(シェルケ氏)
フェースの柔軟性はディスタンス系アイアンでは特に重要であり、各メーカーがそれぞれに取り組んでいる課題だ。フェース上で柔軟性が高いエリアが広いほど、ミスヒット時の飛距離ロスを減らし、芯に当たった時の飛距離を最大化する。
しかし、ここで問題になるのが「打感」だ。スリクソンはスピードグルーブを覆う黒い素材を利用することで、その問題を解決しようとしている。
「ディスタンス系アイアンの中には『カチッ』とした打感のものがあるが、我々のアイアンは強度の高いフェースの周囲に柔らかい素材を使用することで、振動をしっかり吸収する。」 (シェルケ氏)
3番から7番アイアンはキャビティーバックを完全に囲うフルスピードグルーブを特徴とし、8番と9番はソールのグルーブのみで、PWとSWにはグルーブがない。
数か月前、私たちがUSGAのウェブサイトに載っていた初期のZ585の写真を紹介した時、柔らかく、黒い湿り気のある素材がかなり話題になった。正直に言うと、写真は酷いものだった。好みは分かれるだろうが、個人的には実物はもっと洗練されていると思う。Z565ほどのクリーンさはないが、ゴルファーの目には美しく映るだろう。あなたがクラブを眺めるのが好きなタイプならばこの黒い縁どりは気に入らないかもしれないが、そもそもスイング中にバックフェースは見えないので問題ないだろう(見えたとしたら、スイングが間違っている)。
もっと大切なのは、スピードグルーブで本当にボールスピードが上がるのか、ということだ。スリクソンの社内テストによると、効果が見られたという。スリクソンのZ785とJPX 900 フォージド、タイトリスト AP2の7番アイアンのボールスピードを比較したところ、ミズノに対して0.44m/s以上、タイトリストには1.79m/s近くも差をつけた。
何回かに及ぶラウンドや練習場でのセッションを終え、打感に関してはスピードグルーブは宣伝文句通り、Z585は素晴らしい打感を持つアイアンだということがわかった。飛距離に関しても、確かに問題はない。MyGolfSPyは今後競合クラブとの比較テストを行う予定だ。
スリクソン独自の「VTソール」も、Z585用にわずかに調整されている。Z565ですでに優れていたソールをわずかに広くすることにより、ターフインタラクション(芝との接触、滑り)が改善された。
※用語:MODEL(番手)/LOFT(ロフト角)/LENGTH(長さ)/LIE ANGLE(ライ角)/LEADING EDGE BOUNCE(リーディングエッジ バウンス)/TRAILING EDGE BOUNCE(トレーディングエッジ バウンス)/OFFSET(オフセット)/STEEL SW(スチールシャフト:スイングウエイト )/GRAPHITE SW(カーボンシャフト:スイングウエイト )/AVAILABLE OPTIONS(利用可能なオプション)
操作性と打感
Z785には特に外見的な変化を加えていないが、おそらく正解だろう。Z765はかなり甘美なルックスのアイアンであり、後継モデルのZ785もそれを引き継いでいる。Z785は1020カーボンスチールから成る単一構造の鍛造だが、いくつか機能性なひねりが利かせてある。
「打感を良くするため、フェースに素材を少し多めに使っている。フェースのちょうど真ん中、つまり上級者がボールを当てる場所にだ。これによって操作性が良くなり、りスイングがしやすくなる。」(スリクソンブランドマネジャー ザック・オークリー氏)
素材を少し増やすことで、クラブに活力も加わる。スリクソンの契約プロたちはZ785により、ボールの高さとスティープな落下角度を得ながら、飛距離も伸ばしているという。
さらに、ヘッド形状もほんの少し調整されている。Z765よりわずかにコンパクトになり、トップラインも少しシャープになった。VTソールもまた、リーディングエッジバウンスを増やすなどのひねりを利かせてある。
「ツアープロたちは気に入ってくれたようだ。打ちたい強さで打てるし、芝を切るような感覚があるという。ボールの下部を打つ傾向のあるゴルファーでも、ボールスピードを損なわずに済む。ミスヒットしてグリーンにまったく届かなかったような場面でも、グリーンのすぐ手前まで持っていくことができる。」
今回はブレードタイプの新モデルを発売する予定はなく、2016年のZ965ブレードは現在スリクソンのウェブサイトに載っていない。
前述のとおり、スリクソンは新Zシリーズを組み合わせてコンボセットを作ることを強く薦めている。Z585とZ785はフェース形状とサイズが似ている。一番の違いはソール幅、フェースの外周の長さ、バックフェースのデザインだ。Z585は黒いスピードグルーブを採用しているが、組み合わせてもミスマッチになることはなく、スペックで組み合わせてもデザインが合うようになっている。
※用語:MODEL(番手)/LOFT(ロフト角)/LENGTH(長さ)/LIE ANGLE(ライ角)/LEADING EDGE BOUNCE(リーディングエッジ バウンス)/TRAILING EDGE BOUNCE(トレーディングエッジ バウンス)/OFFSET(オフセット)/STEEL SW(スイングウエイト )/AVAILABLE OPTIONS(利用可能なオプション)
コンボセットをさらにパワーアップしたいなら、改良されてラインナップも増えた「ユーティリティーアイアン」を検討すべきだ。
ツアーNO.1
ZU65 ユーティリティーアイアンはツアー使用率No.1、スリクソンの自信作だ。
「我々の契約プロのほとんどが、試合で1~2本使っている。練習ラウンドでも、プライベートのラウンドでもこのユーティリティーアイアンを使う。そして翌日、一緒にまわった人が自分用に購入するということがよくある。」(シェルケ氏)
U65は、品切れになるくらい小売店でも人気だった。では、人気商品をどうして改良するのだろうか?
コンボセット用にオプションを増やすことが理由の一つだ。
「我々はアイアンセットを進化させ、組み合わせやすくするために、Z85のアイアンとユーティリティーアイアンを設計した。」(オークリー氏)
ZU85はZ585/Z785のユーティリティー(ウッド)に比べ58ドル高い。セットの中のユーティリティーで、アイアンの割合が多くなればセットの価格は上がるということだ。価格は199ドルで、テーラーメイドのGAPRやキャロウェイX Forgedのユーティリティーアイアンより50ドル安い。
U85はフル中空構造で、Z585と同じ1020鍛造ヘッドとSUP10 高強度スチールフェースを採用している。U65と比べてU85のソールは幅広く、重心位置が深い。
「フル中空構造は業界のトレンドの一つだ。この構造により重心位置が下がり、ボールが上がりやすくなる。特に2番、3番アイアンはボールが上がるかどうかが重要だ。」(オークリー氏)
「目には見えないが、中空構造は理想的な重量配分にも役立っている。見た目はブレードだが、機能とやさしさはキャビティーバックと同等だ。」(シェルケ氏)
※用語:MODEL(番手)/LOFT(ロフト角)/LENGTH(長さ)/LIE ANGLE(ライ角)/STEEL SW(スチールシャフト:スイングウエイト )/AVAILABLE OPTIONS(利用可能なオプション)
コンボセットのオプションとして、スリクソンはU85を2番から6番まで用意している。U65は2番、3番、4番のみだった。例えば、飛距離とやさしさを求める場合に、Z585の7番からPWにU85の4番、5番、6番ユーティリティーを加えたり、操作性とやさしさが特徴のZ785に、上記の3本を組み合わせることもできる。
さらに、ユーティリティー(アイアン・ウッド)とZ585、Z785をミックスすることも可能だ。また、より簡単に組み合わせが決められるよう、シャフト(追加料金なし)の種類も豊富にそろう。
「今回のユーティリティーアイアンがどのくらい売れるかは分からない。なぜなら、過去2年間は在庫品を販売していたからだ。その分、今回の新モデルには期待している。」(シェルケ氏)
スリクソンから中空アイアンのフルセットが発売される日は近いだろうか?
シェルケ氏はイエスともノーとも言わず、「考えている」とだけ答えた。
オプション・価格・販売状況
スリクソン Z585アイアンは3番からAWまであり、7本セットでスチールシャフトは999ドル、グラファイトシャフトは1,199ドル。標準のスチールシャフトは日本シャフトの「Modus3 105」、グラファイトシャフトは「Miyazaki Kuala」だ。オリジナルグリップは、ゴルフプライドのTour Velvet 360だ。
Z785も同じく3番からAWまであり、7本セットで999ドル。日本シャフトの「Modus3 120」が標準シャフトだが、グラファイトシャフトはない。グリップも同じTour Velvet 360だ。
ZU85ユーティリティーアイアンは2番から6番まであり、標準シャフト・グリップは「UST Recoil 95」と「Tour Velvet」だ。
Z85シリーズは、全体を通して豊富なシャフトオプションを用意している(追加料金なし)。オプションには、日本シャフトの「Pro Modus3」「Pro 950」、「Dynamic Gold」「Dynamic Gold Tour Issue」「DG 105」「DG 120」に加えて、True Temperの「AMT Black」や「Tour White」がある。「KBS Tour」「Tour 90」「Tour V」「Tour FLT」「C-Taper」「560/580 Junior Shaft」の他、「Project X PXi」「Project X LZ」も追加料金なしのオプションとして用意されている。
グラファイトシャフトのオプションには、「The Recoil 95」や「Recoil SMACWRAP」「Steel Fiber 95」などがある。
グリップオプションもまた、ほぼ全てのゴルフプライド、「Lamkin」、「Winn」など豊富だ。
スリクソン新Zシリーズアイアンは、特定の小売店かスリクソンのウェブサイトで先行販売している。9月14日から小売店に並ぶ予定だ。
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