2019年になってまだ7日しか経っていないが、私は言いたい。
新製品の「ストーリー」が多すぎやしないか?
映画「ディッキー・ロバーツ 俺は元子役スター」のセリフを借りれば、先週はまさに「nucking futts(とても狂った)」1週間だった。
1月3日にTENが新製品のストーリーを発表した。翌日(1月4日)は、キャロウェイの話でもちきりだった。新製品が6つも発表され、ソーシャルメディアでシェア合戦が行われ、ライブウェブキャストも実施された。なかったのは、だけだ。
ワクワクする人も、うんざりする人もいるだろうが、ものすごく退屈という人はいないだろう。
今日はミズノの番だ。新しいST 190シリーズの発売は、華やかさや宣伝文句では見劣りするかもしれないが、このドライバーは、2019年モデルのドライバー群のダークホースであることを自ら証明できるかもしれない。
ST 190/190 Gは、過去3ヵ月にわたってインターネット紹介されてきたため、例えば、カラーがミズノブルーではなくブラックだということはすでに皆知っている。今日は、ようやく詳細を紹介することができる。
注目すべきフェアウェイウッドもあるので、見逃さないでほしい。
「ウェディングスープ・ミズノ風」
イタリアン・ウェディングスープ(ミネストラ・マリタータ)がそう呼ばれるのは、イタリアのウェディングとは関係がない。
「ウェディング」という名前は、唯一無二の味を生み出す調理法を結婚に例えたことに由来している。ミズノのクリス・ボシャル氏によると、ドライバーにもまったく同じことが言えるそうだ。
「ドライバーを優れたものにするのは、一つの要素だけではない。『ジェイルブレイク』だけでは駄目だし、ツイストフェースやスピードインジェクションだけでも駄目だ。マーケティング部門は一つの要素だけを取り上げて飛距離を伸ばした理由を説明するが、結局のところ、すべての要素が融合しなければ実現しないのだ。」(クリス・ボシャル氏)
要は、ST 190/190 Gの技術的な「ストーリー」は、ミズノがメタルウッドをアップデートする上で継続的に行ってきた改良や調節の「ウェディングスープ」なのだ。人工知能やScrewFaceに頼るのではなく、単に「洗練」させる作業を続けているだけだ。
「確かに、ミズノは様々なドライバーを展開してきた。2008年には、調節機能が付いているドライバーと付いていないドライバーを、2009年には非常にやさしいドライバーを発売した。それからは、MPシリーズとJPXシリーズの間を行ったり来たりしていた。上級者向けモデルと中級者向けモデルの間を行き来したことで、ミズノのドライバーの本質がわかりにくくなってしまった。」(クリス・ボシャル氏)
昨年ミズノはMPシリーズとJPXシリーズを廃止し、メタルウッドにST(Speed Technology)とGT(Gravity technology)という新しいアイデンティティーを与えた。
ボシャル氏によると、ST 180ではすべての重量がボールスピードに、GT 180ではすべての重量が調節機能にフォーカスされているそうだ。
それから1年経った今、新たなアップデートが加えられた。
「私たちが学んだのは、スピードこそが重要ということだ」と彼は述べた。「スピードがないと、それ以外の要素も足を引っ張られるし、フィッティングでも飛距離を伸ばすことはできない。」
ST 190/190 GはどちらもSTシリーズに属しており、同じ技術を共有してスピードに重点を置いている。ST 190はST 180の後継モデルであり、純粋かつ単純にボールスピードを追求している。
ST 190 Gもボールスピードを追求しているが、GT 180と比較してずっとシンプルで直感的なスライド式ソールウェイトを備えている。
最高の素材との出会い
ST 180はキャリーが長く、スピン量が少ないモデルで、MyGolfSpyの「2018 Most Wanted」では、平均的ヘッドスピード向けで1位タイ、高ヘッドスピード向けで2位タイだった。2019年モデルにも同じ技術が使われているが、いくつかの調節が加えられている。
2019年モデルにも、同じフォージド(鍛造)SP700ベータチタンフェースが使われている。
しかしミズノは、コンポジットクラウンを追加し、独自のWAVEテクノロジー、CORTECHテクノロジー、再設計されたCT Ribsの一部を変更している(CT Ribsの機能についてはこれから説明する)。
「SP700がゴルフ用品に使われるのは初めてではないが、一般ゴルファー向けクラブでは比較的新しいものだ。SP700は、昔のテーラーメイドのツアーモデルやタイトリストのC16、ツアーエッジのハイエンドモデルExoticsにも採用されている。これまで一般ゴルファー向けクラブに使われなかったのは、非常に高価な素材だからだ。」(クリス・ボシャル氏)
ボシャル氏は、SP700の最大の利点はCOR(反発係数)とCT値の関係が改善されたことだと言う。
新しいUSGA規格では、CORが0.83を超えていても、ヘッドがCT値の制限に準拠していればいいので、これは非常に価値がある。我々がやたらと深堀りしているように見えるかもしれないが、読み進めてほしい。
「その関係が改善された理由は、強度が加わって(6-4チタンより10%強度が増した)、たわんだ状態から復元するスピードが速くなったからだ。」(クリス・ボシャル氏)
USGA、CT値、239マイクロ秒など難しい言葉がたくさん出てきた。いったん深呼吸してみよう。
確かにCT制限は239マイクロ秒で、測定上の許容誤差は257マイクロ秒だ(その差は18 CTポイント)。
製造上の許容誤差は、通常プラスマイナス10 CTポイントであり、USGAが発表したペンデュラム試験(振り子のような重りを上から落とし、フェースに当てて計測する)における測定上の許容誤差は、およそ7 CTポイントだ。
それらを合計して切り上げると、18 CTポイントの許容誤差になるというわけだ。
製造上の許容誤差はあらゆる業界に存在する。製品の仕様に対して、工場が一貫して製造できる許容範囲(基本的には正規分布)がある。許容誤差を厳しくすることはできるが、それには高価な機器や材料が必要になる。
ミズノは、より高価なSP700という鍛造可能な材料を使用し、小ロットで製造することによって、このプラスマイナス10 CTポイントを効果的になくすことができるという。
「このフェースにさらなるコストをかけることで、CT値を限界近くまで上げることができる。そうすることで、239~240マイクロ秒から始めるのではなく、240台後半から始めることができる。」
そう、ミズノはUSGA規格に準拠しないCTレベルで設計している。USGAに電話する前に聞いてほしい。ここでCT Ribsが登場する。
これによって、少なくともUSGAがペナルティーフラッグを投げない値(おそらく239以下)までフェースを硬くして、USGA規格に準拠させるのだ。これらのリブは、フェースの上部・下部の裏側にあり、USGAが眉をひそめない程度にCT値を抑えている。
どこかで聞いたことがある話だ。
ボシャル氏は、あたかも最近パーティーで知り合った人のようにCT Ribsを紹介したが、それはM5/M6ドライバーに採用されたスピードインジェクト・ツイストフェースのコンセプトに非常によく似ているように思える。
つまり、一旦USGAの規定値を超えさせて、それを絞るというコンセプトだ。そのために、テーラーメイドはインジェクトレジンを使用し、ミズノはCT Ribsを使用した。
テーラーメイドがこれを画期的なテクノロジーだとして盛んに宣伝しているのに対し、ボシャル氏はミズノがこれを「長年」にわたって行ってきたと話す。
「スイートスポットに恋してる」
ミズノはCORAREA(フェースの楕円形のスイートスポット)をアップデートして、可能な限り大きくすることが大好きだ。そのWAVEソールは、フェースをよりたわませ、CORAREAをより下部まで拡大するように設計されている。
「クラウンはフェースに対して鈍角であるため、クラウン側についてはそれほど問題ない。ただ、ソール側は鋭角になので、(フェース下部は)硬くて反発しにくい。」(クリス・ボシャル氏)
ミズノは、CORAREAを、「0.80 CORを超える、フェースの一部」と定義している。フェースの下部で打つほど、CORが低下し、ボールスピードが落ちる。それは、ボールがフェースの硬い部分に当たっているからだ。私たちがやろうとしていることは、フェースの下部をフェースの中央や上部と同じように機能させることだ。」
WAVEソールは、フェースの下部がもう少し反発するように、その鋭角を和らげている。このコンセプトは新しいものでも独自のものでもないが、どんなコンセプトでもさらに洗練させることはできる。
今回WAVEソールは、さらにたわませるために、前モデルよりもヘッドの奥深くまで入り込んでいて、その角度も変わっている。
さらにミズノは、コンポジットクラウンをSTシリーズで復活させている。繰り返すが、これは何ら新しいものではない(ミズノは、2004年までコンポジットクラウンドライバーを発売していた)。
しかし、ミズノは、ヘッドに接しているクラウンの面積に対して、サポートされていないクラウンの面積を最大化する方法を考え出した。
それによって、軽量化が実現し、重量の再配分が可能になった。それが飛躍的進歩なのか、ミズノの技術が競合他社に追いついただけなのかはわからないが、この軽量化は、ST 190とST 190 Gの違いを明確にしてくれる。
Gにするか、Gにしないか、それが問題だ
ST 190とST 190 Gの基本的な違いは、調節機能の有無だ。190はホーゼルが調節できるだけだが、190 Gはそれに加えて、下部に7gのスライド式タングステンウェイトが2つ備わっている。
ミズノは、MOI(慣性モーメント)を高めてCG(重心)とスイートスポットを下げるために、190でウェイトを低い位置に戻した。ミズノはこれを低スピンヘッドとして分類している。
190 Gのスライド式ウェイトはヒールとトゥに配置されているため、左右のバイアスを調節することができる。ウェイトは固定されていないため、ヒールかトゥのどちらか一方に2つのウェイトを配置することもできる。
ウェイトとウェイトトラックの構造によって下部に重量を持ってくることができるため、重心は190 Gよりも190 Gのほうが少し前方にある。
ミズノはこれを超低スピンヘッドと呼んでいる。2つのウェイトを最後部に持って行く、シャフトによっては、190と同じようなスピン量になる。
最初に述べたように、新しいST 190はブラックであり、ブルーではない。ブルーは賛否両論あるカラーであり、中立の意見はあまりない。1%でもシェアを伸ばしたいメーカーが、極端に走る余裕はないのだ。
しかも、ブルーはツアープロにも不評だった。
「他社と契約している場合もあるので、ミズノだけをベタ褒めできないのだろう。ブルーが好きな人はブラックも好きなことが多いが、ブルーが嫌いな人はとにかくブルーが嫌いだ。一方、ブラックのドライバーを嫌う人はいない。」
次に、ツアー使用率について話そう。
ツアーにおけるミズノ
以前の記事でもお伝えしたが、もう一度繰り返したい。販売されているドライバーの90%は上位5ブランドが占めており、他のブランドは残り10%のパイを争っている。スリクソン、クリーブランド、ウィルソン、ミズノなどがシェアを求めてひしめき合っている。
そして、好むと好まざるとにかかわらず、ツアー使用率によってドライバーの価値は決まる。
ミズノのメタルウッドはツアーではほとんど存在感がないが、その状況は新しいSTシリーズや、ミズノのツアーに対する前向きな態度によって変わりつつある。
「ミズノのクラブをツアーで使用しているプロの満足度は向上している。しかし、10本のクラブ契約があるとすると、アイアンとウェッジを渡して、あとはテーラーメイドかキャロウェイへ、という具合だ。そのくらいウッドの使用率は少ない。」
ミズノは今年、ドライバーにかなり自信を持っている。そして、ST 190を使ってもらうために、ツアープロに働きかけている。ルーク・ドナルド、ルーカス・グローバーが契約を交わし、他のプロは現在テスト中だ。
「私たちは本気でそれに取り組んでいる。ミズノのアイアンはうわべだけではない。ツアー使用率は上がっているし、契約していないプロたちもミズノのドライバーを使いたいと言ってくる。かつては、契約プロを獲得することでさえ苦労していたのに。」
オプション/価格/販売予定
ミズノのST 190シリーズは効率的だ。標準ST 190には、9.50度と10.50度(HL)という2種類のヘッドがある。どちらもプラスマイナス2度調節できるため、実際には7.50度から12.50度の範囲だ。
ST 190 Gは90のヘッドのみで、70から110の間で調節できる。レフティーに対応しているのは、残念ながら9.5度のST 190だけだ。ST 190の標準シャフトはフジクラAtmos Blue(S)とRed(R)で、ST 190 GはアトモスBlack Tour Spec(S)とRed(R)だ。また、どちらのモデルも「45インチ」というトレンドを押さえている。
「ミズノはスピードを求めており、クラブを長くすればそれを実現できる。しかし、45インチ以上のクラブが一般ゴルファーに合うとは思っていない。」
ミズノの小売店では、三菱テンセイWhite、Blue、Orange、Kuro Kage Silver TiNi、三菱Bassara、ATMOSのフルラインナップなど、18種類の無料オプションを利用できる。その他のシャフトは、ミズノのカスタム部門を通して入手できる。
グリップは、Tour Velvet 360のミズノバージョンであるM31 360だが、ミズノのカタログに掲載されているグリップならば、追加料金なしで利用することができる。
ST 190は399ドル、スライド式ウェイトが付いたST 190 Gは499ドルで販売される。発売予定日は2月15日だ。
ST 190フェアウェイウッド
フェアウェイウッドが「おまけ」と思われるのは気の毒だが、仕方がない。ドライバーは使用頻度が高いが、フェアウェイウッドは1ラウンドで1~2回しか使われない。
昨年のST 180はコンビの相方のようなドライバーだった。シンプルで、ホーゼル調節機能しか付いておらず、GT 180は調節可能なソールウェイトを備えていた。ST 190は180の後継だが、ソールウェイトはなくなった。
「GTには大きなソールウェイトが付いており、これを使って様々に調節することができた。しかし結局のところ、ヘッドが小さいフェアウェイウッドでは、ウェイトが10グラムでも60グラムでもあまり変わらず、実際わずかな変化しかない。そのうえ、中央を横切るウェイトトラックの重量は、低スピン設計に悪影響を与えていた。」
150の3番ウッドと180の5番ウッドでは、ホーゼル調節機能もなくなった。ホーゼル調節機能が必要な人には、プラスマイナス2度調節できる150 Tour Spoonがある。
それは、ホーゼルが固定されたモデルよりも少しスピン量が少なく、ロフトが少し大きく、アドレス時のフェースアングルが少し開いている。
強化されたWAVEソールをはじめ、より軽量なコンポジットクラウン、ディープフェース、より低いスイートスポット(すべてST 180との比較)といったST 190フェアウェイウッドのすべての要素は、スピンを減らし、ティーショットと同じくらい、芝の上でも打ちやすいように設計されている。
「ティーから打ちやすいフェアウェイウッドもあるし、芝から打ちやすいフェアウェイウッドもある。その両方を満たすフェアウェイウッドを開発するのが私たちの夢だ。」
ボシャル氏は、ミズノのフェアウェイウッドは、ドライバーと比較するとあまり改善されていないことを素直に認めている。「ST 180、GT 180、JPX 900は時代に遅れており、満足のいくものではない。これらに関してはさらなる改善が必要だと思う。」
2018年の実地テストによると、ミズノのST 190は競合他社と比べてスピン量が少なく、ボールスピードが速く、キャリーが長かった。
しかしボシャル氏でさえも、これらの数値に本当の価値があるかどうかわからないという。「競合メーカーも同じことをアピールするだろう。」
価格/販売予定
ホーゼルが固定された3番ウッドと5番ウッドは250ドル、調節機能が付いたTour Spoonは300ドルで販売される。
ホーゼルが固定されたモデルの標準シャフトはAtmos BlueとRedで、Tour SpoonはAtmos Black Tour Spec(Sフレックス)とAtmos Blue(R)、グリップはミズノM31 360だ。
ドライバーと同じように、ミズノはフェアウェイウッドでも追加料金なしで幅広いシャフトとグリップのオプションを提供している。発売予定日は2月15日だ。
レフティーのあなたへ
私は、レフティー用クラブが少なすぎるので暴動がおきるのではないかとボシャル氏に話した。彼はそれを理解し、それが経営効率にフォーカスした判断であることを認めている。
「これは個人向けではなく、大衆向けのビジネスなのだ。」
「ミズノのウッドのシェアは約1%だ。そしてレフティーは市場にほんの少ししかいない。レフティー用クラブを作らないという決定は、もっと上の立場の者が下したことだ。彼らは『これでレフティー用フェアウェイウッドの在庫を抱えなくて済む』と言っていた。」
「2019年の目標は、ウッドのシェアを拡大することだ。それが実現すれば、レフティー用クラブの製造を始めることができる。」
レフティープレーヤーにとっては嬉しくない情報だろうが、彼らの正直さは評価したい。
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