“GPS vsレーザー距離計”論争には共通の真理があり、いいスコアを目指すとき理解しておきたい二つの要素がある。『方向』と『距離』だ。
きっと、ヤング・トム・モリス(21歳で全英オープン4回連続優勝を果たした若き天才といわれたスコットランド人プロゴルファー)が最初に訊ねたのは「どれくらいの距離か?」だったに違いない。
『方向』というのは、「あの木の方向に」とか「グリーンの左方向に」といったように目で確認できる。一方、「あのバンカーまで何ヤードか」、「ピンまでどれくらいの距離か」といった『距離』は推測しにくいものだ。
では、どのように『距離』を測るのか?
1990年代までは『距離』に科学の力は必要なかった。ティーショットではできるだけ打ちたたいて、150ヤードの「杭」を見つける。そして、ボールから歩いて距離を測り、頭で計算する。それで、ほぼ正確な距離を予測できると誰もが信じていたはずだ。
ロックフェラーなら、スプリンクラーにもヤードを印してもらえただろうが、悲しいことに私達はロックフェラーではない。
『距離』への挑戦
レーザー距離計もGPS技術も、現代人のゴルフを変えた。単にプレーや多少の賭けごとを楽しむ人や、純粋にゴルフが好きな人はヤーデージブックを特段気にしないし、ヤーデージを計測するためにくたくたになるほど歩き回りたくもない。一昔前のゴルフを懐かしむのもいいけれど、ゴルファーをさしおいて時代は進化していることを忘れてはいけない。
距離測定への技術開発は20年前からはじまった。それ以来、多くのゴルファーがレーザー派とGPS派に分かれたはずだ。一方で、どちらにも興味をもたない頑固者もきっといる。
さらに距離計に飽くなき探求心を持つ者もいる。現在レーザーを使用しているからといって、それがベストとは限らないし、その逆もまた然りだ。どちらにも「良い点」と「悪い点」があり、各距離計の特徴のとらえ方や、プレーする場所によって選ぶべきモデルが変わる。
今回の内容は、以前掲載した「レーザーとGPS距離計 バイヤーズガイド」のような、モデルごとの特徴を比べるものではない。それとは異なるアプローチでレーザーとGPSの技術をもう少し掘り下げて調査した。これを参考に、自分に適切な距離計を選んでもらいたい。
レーザー距離計の場合
焦点を合わせて、クリック。
文字通り、距離計の使い方は、多少の注意事項があるもののとてもシンプルで、「アプローチショット」によく使われる。もちろん、ここでは「ピンが見える状態」という条件つきだ。
レーザーは、ライフルスコープの技術を駆使したものなので、いずれにせよ見えないものには焦点を定めることは難しい。視界が遮られたアップヒルでは、ターゲットが見えるところまで登らなくてはならないため、正確な距離は得られない。
逆に、フェアウェイバンカーまでの距離や、ドッグレッグ付近の木までの距離を測ることができるのがレーザー距離計だ。しっかりとターゲットを定めることできれば、誰にでも正確な距離が計測できる。
それから、「スロープ(坂)」を測る機能がある。
たしか、「スロープ(坂)機能は、神が我々を愛し、幸せになってもらいたいと願い作られた。」といったのはベンジャミン・フランクリンだったか、言いたいことは同じだ。
トーナメントと無縁のゴルファーにとって、あまり必要のない性能かもしれないが、「スロープ(高低差計測)機能」はアップヒルショットをどれくらい長く調節すべきか、逆にダウンヒルはどれくらい短くなるのか教えてくれる。
この機能は一瞬にして計算してくれる優れもので、頭で地形を考え、推測するよりはるかに精度が高い。
スロープ機能付きは、少し高価になるがGPSにはない機能だ。
GPSは基本的にプレーヤーの位置を察知して、自分とターゲットとの距離を計測するのが特徴で、ターゲットはグリーンのフロント・ミドル・バックと設定する。
しかし、『Arccos(アーコス)』のAI搭載GPS距離計だけは例外で、「サブスクリプション(月極使用料を払うサービス)」によってさらに高性能なサービスが受けられる。
その中でも、Arccos Caddie Rangefinder(アーコス・キャディー・レンジファインダー)には、リアルタイムでスロープや、風、気温、湿度、高度などを調節する機能が向いている。
アップヒルや、ダウンヒル機能は、GPSには備わっていない性能だ。
よく知る馴染みのコースでは、特にレーザー距離計で十分だろう。時々、先の見えないままショットを打たなければならない場合があるが、コースをよく知っていれば問題ない。
ピンさえ見えれば正確な距離を飛ばすこともできる。ホームコースでは、距離計を使うべきか、単に中心を狙うだけでいいか容易に区別できる。
簡単な操作とターゲットをとらえる精度といった点では、GPSよりレーザー距離計に票が集まるだろう。
GPSの場合
WazeやGoogle Mapsが普及する前、どうやって人は経路を探したのだろう?地図に線を引いたり、曲がる交差点の名前を書き留めたりしたものだ。
全体像を把握したい人もいれば、線の方がいい人もいる。これはかなりの確率であたっていると思うが、紙に交差点をすべて書き出すタイプはGPSウォッチ、地図に線を書き込むタイプは携帯用GPSかアプリを使う傾向がある。
では、方向がすぐ理解できて覚えていられる人は?彼らは、レーザー派だ。
もちろん、GPSにも2種類あり、グリーンのフロント・ミドル・バックを選択するベーシックなウォッチタイプと、全ホールの画像が搭載された携帯用GPSデバイスやスマートフォンアプリがある。一部のウォッチタイプにも、性能によってホールの画像がみられるタイプもある。これについては、後ほど話そう。
繰り返すが、よく知る馴染みのコースなら、グリーンフロント・ミドル・バックまでの距離を表示してくれる200ドル程度のGPSウォッチで十分事足りる。
アップダウンの激しいコースではあまり役に立たないが、ホームコースなら問題ないだろう。
これで十分にコース情報が得られるなら、他の機能にこだわる必要はあまりない。もっと詳しい情報がほしい人、各地のゴルフコースを楽しむ人はホール画像搭載のGPSが役にたつだろう。
GPSウォッチの中にも、ホール画像を見ることができるモデルもある。例えば、Sky Caddieの新モデルLX5は、ティーからグリーンまでホール全体を確認することが可能。
さらに、カーソルを動かせば、バンカーや、木、池などのハザード区域までの正確な距離も表示できる。グリーンのフロント・ミドル・バックだけでなく、カーソルを使ってピンまでのおおよその距離を測ることもできる。
GPSの最も有利な点は、コースの全体像が確認できることだ。
一方、馴染みのないコースをよくラウンドする人にとって、画面が大きく、ホール画像がみられる携帯用GPSデバイスは心強い助っ人になるだろう。
カートに備えつけのGPSスクリーンは今ではリゾートゴルフ場では定番になったが、コストの関係で廃止するゴルフ場も多い。特にキャディーの助けが借りられない場合、フォーサムでは誰かひとりがGPSを持っていると助かる。
スマートフォンアプリは、比較的経済的なオプションだ。
通常、無料プランに登録されているコースは一握りで、最新のGPS画像や総合的な機能は期待できない。それに充電の消耗もはげしい。1ラウンド保つには、スクリーンセーバーを50%にした方がよい。きっと晴天の日なら問題ない。
Sky Caddie SX500などの携帯用デバイスや、同種のSX400などは、ホールの全体画像や、カーソル機能、コースマッピングなどを搭載。Sky Caddieは、ほとんどすべてのコースを歩き電動でマッピングするため、最新かつ正確なホール画像を提供する。
また、タッチ式スクリーンのカーソルを使って自分の望むスポットにカーソルを合わせることができるため、特にパー5で役立つと思う。
先にも述べたが、スロープ(坂)だけはGPSは助けてくれない。
価格的には、豊富な機能搭載の携帯用デバイスが、高性能レーザー距離計と同じくらいだ。
低価格帯では、機能性GPSウォッチやレーザー距離計が200ドル以下で購入できるため、価格による差はない。
アプリは無料のものから50ドルまで、実用的なものから機能的なものまで揃う。アプリの良いところは、好みでなければ手軽に他のアプリに乗り変えることができる点だ。
GPS VS レーザー距離計 <決定的なポイント>
共通認識として、ハンディキャップが低い人ほど、ホール全体画像が搭載されるGPSは役に立たないと言える。なぜなら、うまいゴルファーならレーザー距離計や、グリーンのフロント・ミドル・バックを測るGSPウォッチで十分にプレーできるからだ。
5~10年前だったら、それが普通だった。いつも同じコースでラウンドする、うまいゴルファーには今でもこの認識は当てはまるだろう。
しかし、携帯用デバイス技術の登場で、さらに詳しくコース情報が得られるようになり、ハンディキャップ問わず、どこでも誰でも使えるようになったのは言うまでもない。
一言でいえば、すべて「コースマネージメント」のためにある。
「例えば、残り250ヤード、何も考えずに3ウッドで打つか、6番で打ってウェッジでよせるか?と迷ったとき、GPSがあれば残りのアプローチショットが何ヤードになるか自動的に計算してくれる。」(Sky Caddie 営業部長 ポール・カラブレーゼ氏)
このような場合、高ハンディキャッパーほど3ウッドを使いたがると思うが、ウッドは風に乗りやすくグリーンからそれて池やバンカーに入りやすい。
そして、たやすくボギーや最悪の場合トリプルをたたいてしまう。Sky Caddieがあればこのようなもったいないミスを減らし、4打、5打セーブすることも可能になる。
さらにカーソルを望むボールの着地点に合わせて、実際のグリーン形状が確認できる機能は、特に低ハンデの人には貴重な要素だ。
「Sky CaddieのIntelliGreen®機能は実際のグリーンの形状を表示する。アプローチの角度によって、ローテーションするようになっていて、そこからカーソルをピンに合わせることができる。この機能によって、よりターゲットゾーンを狭めることができる。例えば、グリーンフロント142ヤード、ミドル155ヤード、バック168ヤードだと読んだとする。そして、カーソルをピンに合わせると150ヤードと出る。そうすると、このクラブではフロントまで届くけれど、ピンを超えるには足りないといった判断をすることができる。」(カラブレーゼ氏)
先にも述べたように、いつも決まったコースをラウンドする人は、レーザーかシンプルなフロント・ミドル・バック式のGPSウォッチで十分だ。
ホール画像はご自身の経験からイメージできるはずで、どこのホールで距離計を使うべきか自然にわかるようになる。アップダウンの激しいコースなら、スロープ機能付きのレーザー距離計を選ぶといいだろう。
ビジネスシーンでのゴルフや、新しいコース好きの人は、ホール画像搭載の携帯用デバイスが絶対おすすめだ。
ドッグレッグや隠れたハザードが見えない場合などは、レーザー距離計やベーシックなGPSウォッチではあまり役に立たない。
もちろんスコアカードやヤーデージブックからコースの概要は得られるが、SX400やSX500などのデバイスを使えば、より詳しいコース情報を得ることができる。
また、アプローチの角度によってスクリーンが自動的にまわるようになっていて、より正確な距離や特定のターゲットにカーソルを合わせることも可能。
これらのデバイスは、『デジタルキャディー』や『プロ用ヤーデージブックデジタル版』と呼ぶにふさわしい。
「アマチュアゴルファーに、打っても大丈夫な場所を教えてくれる。それだけではなく、個人のニーズや、スキル、要望にしたがってカーソルを移動すれば、さらにカスタマイズも可能だ。」
GPS VS レーザー <結論>
『距離』のためにこれだけ豊富な機能をそろえたテクノロジーには本当に脱帽する。ただ問題は、自分のニーズに最も合う距離計を探すこと。
1つに絞る必要はなく、ホームコースではレーザーとGPSウォッチ、初めてラウンドするコースでは携帯用デバイスやアプリを使うゴルファーもいる。
ラウンド中に、両方を駆使する場合もあるだろう。ホール全体のレイアウトや形状の情報は携帯用デバイスから得て、アプローチショットにはレーザーで距離を測るなど両者を使いこなすことも可能だ。
レーザー派には、スロープ機能は貴重なオプションだ。
トーナメントでない限り、どんなに真剣なラウンドで使っても問題ない。多くのデバイスは格好良く、良品質だが、MyGolfSpyバイヤーズガイドではさらに複雑なマーケティングのうんちくをかみ砕いて説明しているので、自分に合う距離計が見つかるのではないかと思う。
また、200ドル程度の手頃なGPSウォッチも機能的には問題ない。
ウォッチタイプにさらに機能を求めるなら、Sky CaddieやGarminがフル装備ウォッチとして、豊富なホール画像を提供している。もちろん、多少価格は上がるが、その分性能も折り紙つきだ。MyGolfSpyバイヤーズガイドを参考にしてほしい。
携帯用デバイスも、総合的に非常に機能性が高い。
しかし、すべてのGPS機能が同じではない。多くのアプリや携帯用デバイスは、衛星画像を利用しているため、あるコースでは新設ホールやティーボックスの位置、一部のハザードなどがアップデートされていないこともある。
その点、Sky Caddieは多くの予算と人を使い、実際にコースを歩き、バンカークリークや、池、グリーン形状を正確にマッピングする。
最後に注目したいのは、『ショットトラッキング』機能だ。携帯用デバイスでも可能だが、この分野は「Shot Scope(ショット・スコープ)」と「Arccos(アーコス)」が独占している。両者とも自動でデータを集め、高度な分析ツールをユーザーに提供する。
もうひとつは、これらの高性能テクノロジーはプレーを遅くするという批判的な意見もある。しかし、実際に使ってみると真逆なのがわかる。ヤード杭を探してボールの場所まで歩く時間と、レーザー距離計やGPSを取り出すのと比べたら結果は歴然だ。
『距離』の測り方にかかわらず、スロープレーヤーはスロープレーヤー。距離計を使っても使わなくても変わらないものだ。これらの距離計がラウンドを速めてくれる可能性はあるが、スローな人はテクノロジー関係なく常にのんびりだ。
読者の皆さんはどんな距離計を選ぶだろうか?
Leave a Comment