本間ゴルフ「T//WORLD GS」アイアン – 主な注目点
・本間における中級者向けの「XP-1」アイアンのアップグレードモデル
・ロングアイアンには「Lカップフェース」、「バリアブルワイズスリット」、「低／深タングステンウェイト」など飛距離アップのテクノロジーを搭載
・スチールシャフトは1,224.99ドル、カーボンシャフトは1,294.99ドル
本間ゴルフの「T//World GS」アイアンは、同社における米国チームと日本のデザインチームのコラボクラブ第2弾。コラボすることで日本の伝統を守りつつ北米のゴルファーの好みに合うクラブが創造できる、というのが“本間の理論”なのだ。
コラボ第1弾となった本間「TR」シリーズのアイアンとウッドは「余裕の三塁打」。この「T//World GS」アイアンはコラボ第2弾。このモデルも本間ゴルフの「長打率」アップに貢献するかも知れない。ところが、米国の開発チームは既に解散してしまったようなので、第3弾がお目見えすることはしばらくないだろう。
それはさておき、本間の「T//World GS」は「中級者向けアイアン」で、“見た目”も中級者向けアイアンとなっている。これって悪いことなのか？それは場合による。
本間ゴルフ「T//WORLD GS」アイアン：中級者向けがてんこ盛り
「『GSシリーズ』は、日本の酒田市と、ここカールスバッドのオフィスが一緒になって開発した」と語るのは同社プロダクト・ディレクターのプレストン・トゥーロン氏。「Gain Speed（スピードの獲得）を略して『GS』というのは、日本のチームが思いついた」。
上級者は、「中級者向けアイアン」を鼻で笑うこともあるだろう。ストロングロフトだし、ヘッドは大き過ぎるし、おかしなスイングを修正してくれることもない、などなど、という具合に。でも、実際ゴルフは難しい。
ゴルフレッスン関係者は「レッスンを受けて」と気軽に言うが、ゴルフ好きの大半は、子供がいれば、仕事もあるし、生活だってある。信じられないかも知れないが、彼らは楽しむためにゴルフをしているのだ。週末に18ホールを回るだけでも精一杯ということもあるってこと。
練習？現実を考えて欲しい。
だからこそ、ほぼ全てのメーカーにおいて中級者向けクラブが売れ筋になっているのだ。「中級者向けアイアン」は、ボールが上がりやすく、グリーンに向かって飛んでくれることで、ゴルファーにちょっとした楽しみを与えてくれる。どんな見た目だろうと、これって良いことだろう。
本間ゴルフの「T//World GS」は、「厚いキャビティ」「ワイドソール」「カップフェース」「ソールのスリット」「タングステンウェイト」、そしてみなさんが思うほどではないがロフトも立っている。という中級者向けアイアンのお手本といえるテクノロジーが特徴だ。
テクノロジーのまとめ
「T//World GS」アイアンには、従来の中級者向けアイアンのテクノロジーに本間独自のアレンジが加わっている。例えば４番Ｓから7番までは、「AM355Pマレージング鋼」を採用した「極薄カップフェース」が特徴で、「バリアブル・フェースリブ」でサポートされている。
各メーカーは、薄さ／強さの比率を最大化するために、「バリアブル・フェース・シックネス（フェースの肉厚を部分的に変化させるテクノロジー）」にしてみたり、何らかのポリマーを注入している。
本間の「バリアブル・フェースリブ」は、カップフェースの後ろ側のインパクトポイントで「リブ」が半月状に一体化されたもので、「バリアブル・フェース・シックネス」を取り入れていることは明らかだ。トゥーロン氏によれば「よりスピードをアップさせるカギの一つはフェースを薄くすることにある。しかし、破損するまで薄くするわけにはいかない。リブは、周辺部分のフェースの厚みを減らすことができ、よりミスヒット時のスピードを上げる効果がある」という。
また今回、本間では「T//World GS」のソールに「バリアブルワイズスリット」と呼ばれる独自の工夫を施している。このスリットは、トゥ側が幅広でヒール側が幅狭になっているユニークな形状が特徴。
これにより、ヒール側に当たった時よりもトゥ側で当たった時の方が、フェースがたわみやすくなる他、フェース下部でインパクトした時のボールスピードをキープすることができる。
加えて、ロングアイアンは低・深部に配された「タングステンウェイト」が特徴で、これによりボールを上げやすくしているのだ。
一方、「スコアリングアイアン（ショートアイアン）」は少し異なる。この手のアイアンは飛距離重視でないことから、「Lカップフェース」は搭載されていない。
しかし、フェースは非常に薄く「バリアブル・フェースリブ」で支えられているという具合だ。また、スコアリングアイアンには、重心を最適化するためソールにタングステンではなく「スチールプレート」が採用されている。
そしてセット全体としては、中級者向けアイアンで見られる「ディープキャビティ」と「ワイドソール」も特徴と言えるだろう。
本間ゴルフ「T//WORLD GS」アイアンはストロングロフトなのか？
今回のモデルがどのくらいロフトが立っているのかって？
「2021年の中級者向けアイアン」の中では、そこまでではない。おかしく聞こえるかも知れないが、7番アイアンでたったの29度だ。
７番で27度というのが主流となっている中で、このアイアンは打ち比べた時に不利になるかも知れない。
「ゴルフ業界の大きな流れはそうなっている」と言うのはトゥーロン氏。「ゴルファーが、スクリーン上の数字を見て『おっ！飛んでる』と判断するのは簡単だが、スピードを追求するあまり、ゴルフ場でゴルファーが不利になるようなことになってはいけないと思う」。
確かにゴルフクラブは「ゴルフ場」で使うものであり、「弾道測定器」のためにあるわけじゃない。まさにその通り。
「７番で155ヤードのキャリーなら160ヤード飛ぶのは素晴らしいこと」とトゥーロン氏。「しかし7番アイアンで160ヤード飛んでも、キャリーが135ヤードならゴルファーとしてはよろしくない」。
飛距離で悩んでいる多くの中級者にアイアンを売ることは難しい。“ロフト角2度がもたらす飛距離アップ”はとっても魅力的だ。
だからこそ、本間は移動できるフィッティングカーで本格的な本間流のフィッティングを実施することに専念し続けている。今日現在で、本間はフル装備のバンを15台所有しており、全米のほとんどをカバーしているのだ。
本間のクセ（個性）とシャフト
本間の「T//World GS」アイアンにおいて一つ気になることと言えば、「PW」と「GW」がないことだろう。日本にそのルーツを持つ本間では、それらを「10番」「11番」アイアンとしているのだ。
「当社は日本の会社としての誇りがあり、その日本の伝統を我々の製品から取り払うことはない」とトゥーロン氏。「それ（番手が数字）は本間らしさの一つであり、イケてるとも思っている。ちょっとクセがあるけど、クセがあることも悪くないと思う」。
本間は、同社のカーボンシャフト製造ラインを「GS」シリーズにも生かしている。新しい本間の「SPEEDTUNED(スピードチューン)」シャフトは、酒田とカールスバッドによるもう一つのコラボだ。チップ部（シャフト先端）とバット部（末端）の剛性がともに高いカウンターバランス設計で、中間部は「ハーモニック・キックポイント」呼ばれている。
トゥーロン氏によると「シャフトの中間部を柔らかくすれば、ゴルファーは手に違和感なく、トップでフェースがどこにあるのかを感じることができる。それができれば、タイミングを取る感覚が良くなり、インパクトでフェースをスクエアに戻せる可能性が高くなる」という。
本間がスチールシャフトとして採用しているのは、日本シャフトの「N.S. PRO 950GH neo」。日本シャフトによると、このシャフトは「ストロングロフトのアイアン専用」として開発したとのこと。「950GH neo」は 先端部が走るよう、同社曰く「フローキックポイント」が採用されており、スピン量を最適化していることが特徴となっている。
また軽量であることも特徴で、Rフレックスで94.5g、Sフレックスで98gとなっている。
純正グリップはゴルフプライドの「Tour Velvet（ツアーベルベット）」。本間のカスタムフィッティングを活用すれば、シャフトとグリップの選択肢も広がる。
価格と発売時期
本間の「T//World GS」は、発売から18ヶ月が経った「XP-1」シリーズの完全な代替モデルとなる。「XP-1」アイアンがクリーンでクラシカルな見た目が特徴だったのに対し、「GS」アイアンはちょっとゴチャゴチャした感じがあるだろう。
また、レッド（メンズモデル）やイエロー（レディースモデル）をどう感じるかによっては、よりカラフルな印象を受けるかも知れない。
今回のアイアンは、メンズが「5番から11番（5番からGW）」、レディースが「6番から11番」までが標準のセッティング。
メンズモデルは先述した日本シャフトの「N.S. PRO 950GH neo」のRとSが純正スチールとなっており、55gの「SPEEDTUNED」が純正カーボンシャフトとなっている。42gの「SPEEDTUNED」はレディースモデルの純正カーボンシャフトだ。
価格はスチールが1本175ドル、カーボンが185ドル。7本セットならスチールで1,224.99ドル、カーボンだと1,294.99ドルだ。レディースの標準6本セットは1,110となっている。
なお今回のモデルは男女とも右利き用のみとなっている。
本間の「T//World GS」アイアンはすでに発売中。
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