本間ゴルフ「TW-W21」ウェッジは、この日本メーカーによる受賞ウェッジ「TW-W4」の後継モデルだ。
期待に違わず、本間ゴルフは「TW-W4」に成功をもたらしたものを「TW-W21」の礎として継承している。
「TW-W4」は2019年の『Most Wantedウェッジ』に選ばれた。データを見れば「TW-W4」はあらゆる面で確かな性能を発揮していることがわかる。しかし何より重要なのは、「見た目」や「打感」などの主観的な評価を鑑みても、目立った弱点が見当たらなかったことだ。
本間ゴルフ「TW-W21」の設計思想はシンプルだ。使えるものはそのままに、少しでも性能を向上させる機会を逃さないこと。結果が出ている設計をないがしろにするのは愚策だからだ。
使えるものはそのままに
ということで、まずは変わらないものから紹介しよう。
「TW-W21」は一見、現行の「TW-W4」とあまり変わらないように見える。そしてその感覚は正しい。本間ゴルフは、基本形状、逆テーパーのトップライン、ロフト・バウンス・ソール形状の種類をそのまま採用している。
本間ゴルフは、56度、58度、60度のウェッジに「逆テーパーブレード設計」を採用している。これはつまり、トップラインの幅がヒールからトウに向かって徐々に広がっていることを意味する。最大のメリットは、重量をハイ/トウに再配分することで重心を高くできるということ。
本間ゴルフによると、重心を高くすることで、フェースの高い位置で捉えたショットの性能が向上し、通常の打点ではより「低弾道・高スピン」のショットが放てるようになるという。
48〜54度のウェッジでは、この「逆テーパー構造」は見られない。本間ゴルフは、標準的な「フラットブレード設計」が、(このロフトのウェッジに必要とされる)フルスイングに最適な「低・中重心」を生み出すと考えている。
基本的には、ピッチングウェッジやアプローチウェッジなど、フルショットを打つ場面が多いクラブでは、従来のアイアンの「重心位置」や「フランジの設計」を反映させるのがベストだと考えている。
しかし、より目的に特化したウェッジ(サンドウェッジやロブウェッジ)では、ハーフショットやスリークォーターショット、またグリーン周りでのチップショットやピッチショットなど、多彩なショットを繰り出さなければならないことを考慮している。
「TW-21」のソール形状
多くのメーカーは、ウェッジの「寛容性」は「バウンス」と「ソール形状」がそのゴルファーのスイングに合っているかどうかで決まると考えている。したがって、適切なフィッティングをせずに目的に特化したウェッジを購入することは、宝くじのスクラッチカードに5ドルを投じる行為となんら変わらないということになる。まれに当たることがあったとしても、確率は決して高くないということだ。
48〜54度の本間ゴルフ「TW-W21」ウェッジでは、「フラットブレード設計」、「低・中重心」の設定に加え、「I-SOLE」形状も採用されている。「I-SOLE」は標準的な幅で、トレーリングエッジが細く落とされている。この形状は、スクエアな構えでのフルショットに適している。
一方、56〜60度の本間ゴルフ「TW-W21」ウェッジでは2種類の「ソール形状」が選択可能だ。「C-SOLE」は両者のうち「バウンス」が少ないタイプ。ヒールからトウにかけバウンス角が大きく落とされている。入射角がシャロー(浅い角度)なゴルファーや、フェースの「操作性」を重視するゴルファーは、「C-SOLE」形状を選ぶのがいいだろう。
よりバウンスの多い「S-SOLE」では、4方向に削られた丸みを持たせたソールを採用している。一般的に、ソール幅が広くバウンスの多いウェッジは、密集したラフやフワフワしたライからのショットに適している。一方、バウンスの少ないウェッジは、硬いライや締まった硬い砂質のバンカーで威力を発揮しやすい。
ボーケイのようなブランドに比べると、本間ゴルフのバウンス・ロフト構成の選択肢は多くはない。しかし、多くのゴルファーにとっては、ハイバウンスとローバウンスの2種類があれば十分だろう。溝
本間ゴルフ「TW-W21」は「TW-W4」と同じ「溝」パターンと「マイクログルーブ」を採用している。「溝」の最大の目的は、間に入るカスを除外してフェースとボールの接触をよりクリーンにすることだとまず知っておいてほしい。
しかし、タイヤのトレッドパターンが異なるように、すべての「溝」が同じというわけにはいかない。湿ったコンディション(露や濡れたラフなど)を想定して性能を評価するために行われたテストでは、水分が介入した際に最も大きな相違がみられたのは「スピン量」だった。
トップのピンは、乾いたコンディションでのスピン量の約88%を維持。本間ゴルフ「TW-W4」は72%、テストした20モデル中6位となった。
ちなみに、ピンやミズノなどは、湿ったコンディションでのスピン保持力を高めるためのフェーステクノロジーを導入している。ピンは「ハイドロパール」仕上げ、ミズノは「ハイドロフローマイクログルーブ」を採用。他のメーカーが同様の道を歩むかどうかはまだわからない。
本間ゴルフの場合は、標準の「溝」と「マイクログルーブ」の組み合わせにより、意図的ではないかもしれないが、このようなメリットが生まれたのだろう。
本間ゴルフ「TW-W21」新機能
正直なところ新機能はあまりない。しかしもちろん、本間ゴルフは存在しない問題を解決しようとしているわけではない。「TW-W21」のウェッジには2つの注目すべき変更点がある。
ひとつ目は「見た目」、そしてもうひとつは「素材」の変更だ。今回、本間ゴルフは「サテンハーフミラー」と名付けた単一の純正仕上げを採用している。まだ実物を見ていないので判断は保留するが、一見したところ他のサテン仕上げよりも少し明るく、クロームよりはだいぶ鈍い感じだ。
もうひとつの変更点はより明白だ。本間ゴルフは、スチール製の「キャビティインサート」をアルミ製のものに交換した。この金色のインサートは「8620マイルドスチール」を用いてボディを鋳造した後に施される。
アルミはスチールよりも軽いため、交換により生まれた余剰の数グラムを再配分し、全ロフトにおいて重心位置をさらに最適化することができた。
総論
2019年、「TW-W4」は『Most Wanted』の予期せぬ勝者となった。消費者は、小売実績においてもツアー使用率においても抜きんでているボーケイやクリーブランド、キャロウェイといった大手ブランドが最も優れているに違いないと合理的に結論づけるかもしれない。
しかし、必ずしもそうとは限らないのだ。特にウェッジの場合は、メーカーがドライバーやアイアンほど技術的な限界に挑戦していないこともあり、(研究開発予算が大幅に少ない)中小企業でも勝負ができるといえる。
今回のリリースはもうひとつの理由からも興味深いものだ。「TW-W21」ウェッジ開発に携わった北米のデザインチームはもう本間ゴルフにはいない。
「TR-20/TR-21」シリーズ全体に言えることだが、本間ゴルフは、日本の美意識と北米の消費者が求める性能を融合させることで成功を収めたのだ。となるとここで「本間ゴルフはこれからどうするのか?」という重大な疑問が生じる。
前期の発表で本間ゴルフは「上級者向け」のクラブを作りたいという思いを明確にした。「TW-W21」ウェッジはまさにその最後の一片と言えるだろう。では、このウェッジは前世代の終わりなのか、それとも次の世代の始まりとなるのか?
いつも通り、ご意見をお聞かせ願えるとありがたい。
本間ゴルフ「TW-W21」発売日と価格
店頭販売は8月2日より開始。
「TW-W21」全ウェッジの希望小売価格は165ドル。
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