3択クイズ
「Proto-Concept(プロトコンセプト)」とは?
A. イーロン・マスク氏の新プロジェクト
B. Hi-Cフルーツポンチの元祖商品名
C. 日本の高級ゴルフクラブ
B)も同じくらい斬新なのだが、ここは子供に何とかビタミン“C”を摂取させようとあの手この手を考える場ではない。
ならば、「Proto-Concept(プロトコンセプト)」とは何か、なぜ我々が興味を抱いたのか。深く掘り下げる前に、少し「JDM( Japanese Domestic Market=日本国内市場)」に注目してみたい。「Proto-Concept」は主に日本の国内市場での流通を図るために設計されたゴルフ用品ブランドだ。
そこは「高性能クラブ」の基準が世界の他の地域とは異なる独自の市場である。日本ブランドの支持者は、他のゴルファーが特に気にしないような些細な要素を高く評価することがよくある。
さらに言えば、ゴルフ用品をリリースする際の細かな情報には常に気を配るのも特徴だ。日本のギアの場合、「生産国」と「評判」は切っても切り離せないのだ。この関係性については、以前にも触れたことがある。
例えば、日本のゴルフブランドをドイツのエンジニアリングやスイスの時計と同じように考えていただくと分かりやすいだろう。
「PROTO-CONCEPT(プロトコンセプト)」とは?
「Proto-Concept」とは、『Real Style』 をコンセプトに2019年に立ち上がったゴルフブランドだ。
数々の名器を生み出した鍛造技術
「Proto-Concept」のヘッドを製造している鍛造メーカーは「フォージング(鍛造)技術」で定評のあるゴルフ業界で一目置かれる企業だ。
間違いなく、「ミウラ」や「ミズノ(中央工業)」などのゴルフメーカーと同等のクラスだ。その中で、この鍛造メーカーは多数のブランドをクライアントとして抱えている。
「スリクソン」、「ヤマハ」、「ミズノ」、「本間」、「ブリヂストン」、「ツアーステージ」、「S-Yard(セイコー)」、「ダイワ」、「キャロウェイ」、「タイトリスト」など、ここに列挙したすべての企業が、時としてこの鍛造メーカーに頼ってプレミアムラインのアイアンとウェッジを作ってきた。そして、多くのメーカーが今もその関係を続けている。
まるで、他所ではできなかった修理を頼む自動車修理店のような存在だ。
そして今日話題にする「Proto-Concept」もこの鍛造メーカーが手がけている。
「PROTO-C」
「Proto-C」とは、「Proto Concept(プロトコンセプト)」の略で、設計の限界に挑む彼らの意思を反映している。分かりやすく、“コンセプトカー”のように考えていただきたい。
あるいは、価格や発売日ありきで進行する通常のクラブ開発とは一線を画し、一切の制作を排し「実験的に機能を追求したクラブ」といった方が妥当かもしれない。
コンセプトに基づく「プロトタイプ」の開発は、マスマーケットに向けたクラブ開発とは全く異なる。
ゴルフ用品開発の世界では、基本的に「素材」と「製造工程」がメインとなる。多くの場合、より高価な素材を使えば、従来の設計では諦めてきたものを実現することができる。
たとえば、やさしく低スピンのドライバー。または、アドレスではマッスルバックのように見えるが、中級者向けのようにやさしいアイアンなど。
要するに、「コンセプトクラブ」とは、従来不可能とされた2つのことを同時に追求するためのクラブだ。
「Proto-C」の開発チームは、最初のリリースで新潟の鍛造メーカーと共同で業界初の製造プロセスを開発したと発表した。言わずもがな、この鍛造メーカーは複雑な形状の鍛造技術に優れた企業だ。
その結果、従来の鍛造製法での打感に近づけるために余分な素材を加えることなく、より規準の高いスペック許容値をパスしたクラブを作り出すことができる。
さらに、製造プロセスの違いにより、「Proto-C」アイアンとウェッジとは別々のものだという。つまり、「ルックス」は似ているのだが、各モデルの「パフォーマンス特性」はそれぞれ全く性質が異なっているわけだ。
「PROTO CONCEPT」最初のラインナップ
「Proto-C」の最初の製品として、アイアン4モデル、ウェッジ2モデル、ドライビングアイアンとフラッグシップドライバーがラインナップされた。パッと見た目では、他の有名ブランドと似たり寄ったりかもしれない。だが、いつでも「ストーリーを動かす」のは考え抜いて仕込まれた“細部”なのだ。
では、アイアンから見てみよう。
「PROTO CONCEPT」アイアン〜ストーリーその1〜
「Proto-C」を開発するにあたり、彼らは4つのモデルの“使用目的”を明確にすると同時に、アドレス時のルックスを同じにしたいと考えていた。
第一に、「プロトコンセプトC01」は、伝統的なマッスルバックアイアンだ。正直に言うと、完全にそうというわけではないのだが。基本ブレードアイアンの形状を維持している点で、「やさしさ(ヒールトゥMOI)」はすでに限定的だ。
この制約を回避するために、「S20C(1020)鋼」に丸いチタンロッドを含浸させる。コルネの中にクリームを詰めるようなものだと考えていただきたい。アイアン作りの場合は、はるかに複雑で高価なのは当然。
「チタン」は「1020鋼」よりも約50%軽量な素材だ。したがって、25gのチタンロッドにより17g削減できるというわけだ。削減された分は再配置され、重心位置をより深く、キャビティバックアイアンに近いフィーリングが可能になる。
チタンロッドはインパクト時にわずかに硬い打感を生み出すため、5番から7番には柔らかい「S20(1025)鋼」、8番からPWには「S25鋼」を使用している。参考までに、「1025鋼(日本/韓国ではS25C)」は、ミズノやミウラなどの日本の有名メーカーでも採用している。
プロトコンセプト「C03」、「C05」、「C07」アイアンは、上級向けキャビティバックアイアンをテーマにしたラインナップ。数字が大きいほどよりやさしいアイアンモデルになる。
「C03」は、「C01」と同じ「S25C軟炭素鋼」からの鍛造アイアン。スモーキーブラックのキャビティカラー以外の主な違いは、5〜7番に小さなアンダーカットキャビティがあること。適切な弾道とスピンを維持するために、このCNCミルドは8番からPWには採用されていない。
「PROTO CONCEPT」アイアン〜ストーリーその2〜
「C01」と「C03」は、「C05」と「C07」と同様にペアで扱うことができる。それは、4つのモデルを組み合わせてコンボセットを作ることが不可能という意味ではない。素材とデザインの観点から、4モデルを2セットに分けて考えるのが妥当だろう。
「C05」と「C07」のアイアンは、2つの異なる素材によりクラブヘッドが構成されている。ボディは「S25軟炭素鋼」の鍛造で、フェースはより薄く、柔軟な「鍛造SAE8655クロムモリブデン鋼」を使用。フェースがボディーに精密に溶接される。そこで生まれる紙のように薄いフェースの主なメリットは、上級プレーヤーが望むより速いボールスピード、つまり飛距離を生成する。
さらに、「C05」と「C07」はどちらも、すべてに「ミルドポケットキャビティ」を採用することで、底重心を可能にし、ウェイトはクラブヘッドの周辺部分に再配置されている。
通常、溶接タイプは一体型の鍛造アイアンとはまったく異なる打感が生まれる。この場合、“異なる”と一言でいっても望ましいという意味ではない。そこで、この鍛造メーカーが持つ製造技術が活きる。
プロトコンセプト「C05」アイアンでは、フェースの厚みを2.4mmから2.7mmの間で変化させることにより、距離と打感のバランスをとっている。一方、「C07」アイアンでは、フェースに2.7 mm、2.3 mm、1.8mmの3つの厚さを持たせている。
すなわち、共通する要素を持ち合わせながら異なる4つのモデルを作成することこそが、「プロトコンセプト」の全体的なコンセプトとなる。
「C01」と「C03」は、「S20C / S25C一体型鍛造」アイアンで、「C03」と「C05」の構造はやや異なるが、ソール幅と全体的なルックスは共通している。さらに、「CO5」と「CO7」のルックスは同じように見えるが、フェースの特徴は少し異なる。
「PROTO CONCEPT CO1.5」ハイブリッドフォージドアイアン
すべてのクラブには、それぞれの特有の役割がある。ユーティリティアイアンは、標準のロングアイアンよりもやさしさ重視の設計だが、ハイブリッドやフェアウェイウッドよりもスピンが多く、弾道が低くなってしまう。ほとんどのアマチュアゴルファーにとって、あまり遭遇しないケースだ。ただ、このトピックに関しては少し隅に置いておこう。
プロトコンセプト「C01.5」ハイブリッドフォージドアイアンは、別名ユーティリティアイアン。「C01」アイアンの外観を引き継ぐが、素材は「C05」と「C07」と同じものを採用している。
中空ボディアイアンは、同じ「SAE8655クロムモリブデン鋼」のフェースと「S25C鋼」のボディーから作られている。2.3mmという均一なフェースの厚さはフェアウェイウッドやハイブリッドよりも厚いが、これにより「C01.5」のパフォーマンスや打感がよりアイアンに近くなるという。
「PROTO CONCEPT」ウェッジ
開発チームによると、プロトコンセプトフォージドウェッジは、ボールスピード、弾道、スピンの最適なバランスを備えているという。
他のウェッジメーカーも一様に同じことを宣伝しているように思うだろう。「性能が限定的で、ボールスピードが最適でなく、一貫性のない弾道」のウェッジを一体誰が欲しがるのか?
とにかく、基本的な形状と特性以外に、別の2つの特徴がある。1つ目は「Face Dot Milling(フェースドットミーリング)」。新潟の鍛造メーカーによる精密フェーススコアラインの鍛造プロセスは、機械加工よりも正確だという。
さらに、一連の「極小のドット」がグルーブ間の水平部分に削られ、さまざまなライや気象条件でより一貫した打ち出しとスピンを可能にする。
2019年に、私達はウェットコンディションでウェッジテストを行ったことがある。高性能ウェッジは、ドライコンディション時のスピンの85〜90%以上を維持することがわかった。しかし、性能の劣るウェッジでは、50%以上のスピンを失うという結果を得た。
2つ目の特徴は、「標準」、「ワイドソール」、「カットダウン」の3種類のソールグラインドだ。基本的に、これは3つのバウンスオプション(高、中、低)を提供する。「標準ソール」はフルスイング/スクエアフェイスショットに最適。
さらに、「ワイドソール」と「カットダウン」は、グリーン周りで打ちたいショットタイプとスタイルに応じることができる、サンドウェッジ/ローウェッジオプションだ。
「プロトコンセプトフォージドCB」ウェッジは、やさしさ重視でペリメーターウェイト(ヘッド周辺にウェイトが配置)の助けを借りたい初心者ゴルファーに最適な、ユーザーフレンドリーなオプションだ。高バウンスかつやさしいソール設計で、全体的に大きめのヘッドシェイプが特徴である。
「PROTO CONCEPT CO1D」ドライバー
1,100ドル。
これが「Proto ConceptC01D」ドライバーの価格。多くのゴルファーにとって、目が飛び出る価格だろう。理由は何であれ、コンセプトクラブの価格を呑み込むのに苦労するのは当たり前だ。
ここで、高価なゴルフ用品に関する2つの真実を思い出してみよう。
・ハイエンドクラブは、決して低価格カテゴリーを奪い取ろうとはしない
・「高価」の定義は人それぞれ
この鍛造メーカーはメタルウッドを製造しない。その理由は、実に単純で“コスト”が高いからだ。このメーカーの鍛造技術を完全にドライバーとフェアウェイウッドに適用すると、製造コスト含め最終的な価格が1,000ドルを越える。それがまさに今日紹介する「プロトコンセプト」だ。
これについて話始めると長くなる。しかし、簡単に説明すると、「Quattro Forged Face(クワトロ・フォージド・フェース)」と呼ばれる独自のフェーステクノロジーは、業界のブレークスルーになり得ると彼らは考える。
または、マーケティング資料にあるように「可能なすべての機能、素材、技術」をコスト度外視の少量生産に盛り込んでいるのだ。
ただし、ドライバー設計、もっというと性能に対するルール基準に関しては、どのメーカーも同じ制限の中で戦わなければならない。それでも、これらの制限に対応する彼らの「リソース」と「方法(技術)」を持ってすれば、「答え(性能)」は違うものになるだろう。
近年ドライバーの飛距離がすでに限界に達しているという考えは、間違っていると断言したい。2021年「Most Wanted」ドライバーテストでは、飛距離(スイング速度105+ mph)の差が約35ヤードも開いたのは事実である。
ルール基準は統一されていても、“性能”はそれとは別である。彼らは「CO1D」ドライバーが伝説を作ってくれると信じている。
最終考察
コンセプト主導のゴルフ用品が市場に出回るようになったのは、ここ最近のことだ。PXGが2015年に最初のアイアンセットをリリースしたとき、1本350ドルという計り知れない数字に驚いた。
アグレッシブな価格設定や禁じ手なしのPXG独自のアプローチにより、このような限定的なクラブカテゴリーに新たなパラダイムが広がったのは確かだ。
その後まもなく、タイトリストがコストやリリース日の制約なしに、新しい素材やエンジニアリング技術を実験的に試す場所として、「CNCPTプラットフォーム」を公式化した。
そして、2016年4月同社はC16ドライバー(999ドル)とC16アイアン(2,700ドル /セット)を限定リリースした。どちらも売り切れだった。
ここでの重要な点は、コンセプトクラブから一般のゴルファーもその恩恵を受けられること。たとえば、タイトリストの「ATIドライバクラウン」や「SureFit CGウェイト」は、「C16」ドライバーから生まれた。PXGが「中空ボディのポリマー充填構造」を開発した際は、競合他社を含む業界全体を動かした。
世界的なこの鍛造メーカーが「プロトコンセプト」と共同開発に取り組んだ理由は、新たに開発した製造プロセスを共有し、自社のブランドまたは他の契約クライアントに活用できるからだ。
とにかく、現在のゴルフ業界はクラブ設計の革命につながる新たな素材やプロセスを探求し続けるために、「プロトコンセプト」のような企業を必要としているのだ。
価格と販売予定
価格は、シャフトやフィッティング料金、カスタムオプションにより異なる。
フォージド/フォージドCGウェッジは、1本350ドルから。
Cシリーズアイアンは、1本350-450ドルから。
「C01D」ドライバーは、1,100ドル。
「PROTO CONCEPT」は、アメリカ国内の限られたショップにて販売されている。
Leave a Comment